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招かれざる者(3)


「すみません」


 ションボリと肩を落として謝罪するヘルツに、少しだけ胸が痛んだが妙なことをされて、何かあってはクロイツにはどうすることもできない。


「気にしないでくれ。本当にそのうち目覚めるだろう」

 男は確信めいた声でそう言いきった。


 それからというもの男は、片時も少女の側離れなかった。加えてヘルツもまた二人の側を離れようとしなかった。

 外はあんなに良い天気だったのに、いつのまにか雨が降り始めている。




 †


「あの、ボク、お姉さんの目が覚めるまでここにいてもいいですか?」


 無言の静寂を破って、ヘルツは男に尋ねる。ベットの脇に腰掛けた彼が静かに頷いたので、木の小さな腰掛けに浅く座る。


「君がいると回復が早い」


「え、どうしてボクがいると回復をするのですか?」


 ヘルツは訳が分からず首を傾げた。そして、消え入りそうな声で呟く。


「ボク、お兄さんのお役にはあまり立てないと思います」


「そんなことはない。君は魔力が強いようだ。こいつは君の側にいるだけでいい。その有り余る生気を吸収する」


「魔力? 吸収?」


「こう見えて俺もネージュも人ではない。君と同じ、魔人だ」


「そう、なのですね」


 そこでヘルツは顔を曇らせた。それを見て男は長い息を吐く。


「何か気に障るようなことを言ったか?」


「いいえ、違います。やっぱりボクは魔人なのかなって思って」


 言ったヘルツに今度は男が顔を曇らせた。ヘルツはおずおずと話し出す。


「いろいろ事情があって、ボクは最近までずっと自分は人間だと思っていたのです」


「……魔人は嫌か?」


「いいえ。正直に言うと魔人とか人間とか、ボクは分ける意味がよく分かりません。クロイツだって、ボクが魔人だってことは気にしていないから。ただ姿が違うだけなのかなって」



 ヘルツは続ける。


「でも、聖国は魔人が嫌いな人間がいるって聞きました。

 拷問とか処刑って、どうしてなのかなって思うんです。ボクは悪いことはしてないけど、魔人だから殺されるんでしょうか? だから閉じこめられていたの?」


 ヘルツは、目にいっぱい涙を貯めながらそう言った。細い指を強く握っている。そんなヘルツから男は視線を逸らした。


「俺はあまり他者の気持ちを理解(さっ)する事ができない。すまないな。不躾なことを言った」


「――ああ。本当にそうだな、大馬鹿者」


 まだ言葉を発していなかったヘルツは驚いて口を噤んだ。はっとベットを見るとネージュと呼ばれた少女が不快そうな顔をして上半身を上げている。


 男が少しほっとした様子で「馬鹿はどっちだ」と呟きながらネージュの肩に手を置いた。


「おいこらリヒト、人様を泣かせておいて謝罪の言葉だけで済まされると思うなよ」


 ネージュが無い腕をバタバタと振り上げている。ヘルツはそんなに振り回して、腕は痛くないのかなと心配になった。


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