聖地巡礼(3)
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ベルが不思議そうな顔でリヒトの方を見つめている。彼はそれが不快だといわんばかりに顔を逸らした。
ネージュは大きく頷いてから答えた。
「私は魔人、リヒトは魔人と人間のハーフだ」
見た目に関係なく、魔人同士はお互いに人でないということが分かる。
魔力が強い魔人は自分の気配を消したりもするが、強力な者ほど人間とは遠い容姿をしているので、見た目で分かりやすいのである。
「魔人の国から来たのであるな。もし、良かったら我が輩がここを案内するのであるよ」
ベルがぴょんぴょん跳ね出したので、その喜劇的な動きが面白くてつい笑ってしまう。
リヒトはというと、まだ微妙な顔をしていてベルを完全に信用していないような様子を見せている。
その時、像奥の扉から金髪の女が現れた。濃紺色の衣服、胸に掛かった十字架が揺れている。
彼女は不機嫌そうに腰に手を当てた。
「ベル。もう、こんなところにいた。司教様がお呼びよ。早くいらっしゃい」
ベルはしまったという顔をしてから、申し訳なさそうに頭を下げる。
「ネージュ殿、やっぱり案内は出来そうにない……」
「ああ、気にしないで行ってくれ。有り難う、とても楽しかった」
そういうと、お互いにまた手を握りあって、ベルはすごすごと女の後に続いて行った。彼が去った後でネージュは腹を抱える。
「いやぁ、実に愉快な男だったな」
「他人を簡単に信用するんじゃない。それでなくてもお前は王族なんだぞ」
「全く、お前は心配性よな。相手は同族だ。平気、平気」
「人間か、非人間かという問題じゃない。お前は危機感がなさすぎる」
はいはい。と適当に返事をしてネージュは女神像に向き直った。
「それにしても美しい」
「はぁ」
リヒトは短く息を吐いて、頭を抱えた。やはりネージュはそわそわと落ち着かないのだ。
「しかし、なんだろうなこの妙な感じは……」
そう呟いた時、急に教会内が騒がしくなった。続いて複数の悲鳴が響き渡る。
耳の中がどうにかなりそうな程の砲哮が響くとリヒトが叫んだ。
「――外だ!」




