Ⅲ 罪深き男たち(4)
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ロータスとは聖国の南側にある聖都で、教会の最高位の聖職者である教皇が君臨している。
聖都の神域内には聖具と呼ばれるものが複数、貯蔵されているという。
その中には死者を蘇らせるという代物もあるらしい。そんな噂を聞きつけて、何人がそれを目指したのだろうか。クラウンは静かに片目を閉じる。
彼も、また聖具を求めて旅立った内の一人だった。バイスは、顔を上げずに答える。
「はい。でも、結果は、まともに取り合ってすら貰えませんでした」
「そうだろうな。……気の毒だが、術の方はまだ完成していない」
顔を上げたバイスの顔には蒼白で、絶望の色が見える。流石のクラウンもいたたまれなくなって視線を逸らした。
「やはり先……しか……」
バイスが何か呟いたが、小声すぎてよく聞き取れない。クラウンが彼の方へ視線をやると、青年はふらふらと覚束ない様子で立ち上がる。
「申し訳ありません、お邪魔を致しました」
「外まで送ろう」
クラウンはそう言って、肩を落とす青年を玄関へと誘う。
外へ出ると目眩がするほど強い日光が射していた。暗闇から出たクラウンはその眩しさ目を細める。
「……諦めた方がいい。目指す先には何も無いのだから」
それはクラウンにも、本当はもう分かっていたことだった。それでも、諦め切れないということも、痛い程に理解をしている。
青年は何も言わなかったが、眼鏡の奥に隠された瞳が何かを決意したような堅い意志のようなものを感じさせる。
罪悪感のようなものを感じて、クラウンは森林へ視線を逸らした。
木々のざわめきに混ざり、翡翠色の輝きが見えて言葉を失う。硬直するクラウンを不審に思ったのだろうか、バイスが「どうかなさいましたか?」と声をかける。
だが、彼はその声すら明確にとらえられない程の様々な記憶の渦に支配されていた。
「(忘れもしない。あれは、ペルレの――)」
それがある一点に巡り着いた時、クラウンは意識を覚醒させた。
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光彩を放つ月光が、銀の髪を鮮やかに照らし上げる。端正な顔立ちをした男、トロイアは宿の露台で一人、夜空を見上げていた。




