Ⅲ 罪深き男たち(2)
爽やかな声色にクラウンがやれやれといった様子で背後を振り返ると、端正な顔立ちの男が佇んでいる。
手入れがされた銀色の髪は短く整えられ、同色の瞳が、まるで七色に輝く宝石、ダイヤモンドのように強い光を放っていた。
黄金の十字架が描かれた赤色の軍服に身を包み、長剣を携えたその姿は堂々たるものである。
しかし、クラウンにとってはその男のいで立ちや、ここへ来た目的もどうでもいいことだ。望まぬ来客に「帰れ」と言い放つ。
「まぁそう言わないでくれよ」
そう苦笑を返した男、トロイアの後ろから、ひょっこりと顔を出した少年がいた。赤と白で分けられた髪、右目は眼帯で見えず、背には鎌を担いでいる。
彼はギザギザの鋭く尖った歯で半月の様に笑う。そんな少年の姿を見てクラウンは「それは何だ」と眉を寄せた。
一方のトロイアは涼やかな表情を浮かべている。銀色の長い睫毛が彼が瞬きをする度に瞳を隠す。
「去年から組んで政務に当たっているんだ。
名はノヴァだ」
少年、ノヴァは歯を鳴らして「相棒なんだっ」と嬉しそうに答えた。その身体が動く度に、トロイアの腰元から少年の首輪へと繋がれた鎖が鈍い音を立てる。
クラウンが怪訝な顔で腕を組むと、トロイアは何度か頷くという動作を繰り返す。
「君の言いたいことは分かる」
「ならば、帰れ。そもそも私に会いに来た訳じゃないだろう」
「ああ、実は用事の途中でな」
そこでノヴァが腕をバタバタさせながら地団駄を踏んだ。
「大事な標的を見失っちゃったんだよっ!」
首輪から垂れた長い鎖が、耳につく不快な音を鳴らしている。クラウンは舌打ちした。
「お前とは話していない。五月蠅いから黙っていろ」
「ちぇー」
ノヴァはぷーっと頬を膨らませる。
その姿は先ほどまでとは打って変って普通の少年らしい。
トロイアは不満そうなノヴァの様子など全く気にしていないどころか無視をしている。
相棒という割には情の無い関係なのかも知れない。クラウンがそん考察をしているとトロイアが、口を開いた。
「この辺りで、男を見なかったか? 名前はアルタ・オルギネル。
行方を追って来たんだが痕跡がなくてな」
「相棒、早く見つけて始末しようよ~。僕、もう任務に戻って、いっぱい魔人狩りしたい!」
痺れを切らしたのかノヴァがよもや、一般男児なら口にしないようなことを叫び出した。そんな少年を見てトロイアは冷ややかな笑みを浮かべている。
人の身であって。全く人間らしからぬ、二人の様子にクラウンは「これこそが真の怪物なのだろうな」と、ぼんやりと考えていた。
トロイア・オルギネルは、クラウンがまだ聖国の騎士団にいた頃の同僚だ。
当時の彼はクラウンより遙かに年下であったがこと戦闘事に関しては秀でていて、よく「戦争時代に会いたかった」と惜しまれる声を聞いた。




