035.聖騎士
連続投稿後半部分です。時間を空けて投稿していますが、前半を読まずに最新話から飛んできた方は、お手数おかけしますが前の話をクリックしてください。
僅かなブレさえも見せない構え。反目して互いの隙を窺う両者。
逃げていたはずの群衆が再び広場に戻り、観衆と化して勝負の行く末を見守っていた。
本来ならこのように目立つ事態は避けたかったのだが、シェイラとミルが侮辱されたまま引き下がることは出来ない。
この戦い、一瞬で終わらせる。
「うおおおおぉぉぉぉ!」
雄叫びを上げ、騎士が吶喊してくる。
その様を見て思惟する。
(思い知らせてやる。勇敢と蛮勇は違うことを)
そして――
後悔させてやる。俺を怒らせたことを!
「――ッ!」
叫ぶことはなく、ただ正面を見据え発破をかけて地を蹴った。比喩にあらず、足元が砕ける。
高速とは言い難い騎士の突進に対し、音速で迫る。
「ライベル亜流剣術――」
「ライベ……」
その先を言わせる気はない。
「<爪牙>!」
すれ違いざまに斬撃を三発喰らわせた。
閃く空色の軌跡が騎士の剣を叩き、返す刀で騎士の剣を完膚なきまでに破砕し駆け抜けた。銀褐色の光芒が破片となって空中分解、遊離する。勢い付いた彗星は再度瞬き、淡い尾を引き連れ、音を置き去りに甲冑を砕いた。
「グァッ――!」
全力で振り抜いた剣は甲冑を砕くに留まり、殺しきれない衝撃が騎士を近場の家屋の壁面に衝突させた。衝撃波が周囲を蹂躙し、観衆が後ずさる。中には転倒する者さえいた。
俺は周囲に目もくれずに騎士へと近づく。
騎士は虚ろな瞳でこちらを見遣ると折れた剣を軸によろめきながら立ち上がった。
「カハッ……」
喀血。口内から、甲冑の割れ目から血が溢れ出す。放射状にヒビの入った甲冑は痛ましいものだった。もう使い物にはならないだろう。
騎士が折れた剣を杖がわりに膝を屈した。
俺は騎士の前に屹立し、苦痛に歪む顔を俯瞰する。
「訂正しろよ。お前が間違っていたって」
「まだ……だ」
再度立ち上がる騎士。
魔眼を使うまでもない。
俺は甲冑の割れ目――つまり傷口に蹴りを入れた。
「グフッ――」
そして、今度こそ騎士は沈黙した。
死んではいない。ただ、気絶しているだけだ。
俺は剣を鞘に収め、シェイラに向かい歩を進める。
と、そこで。
コツン、と頭に石が当たった。見れば、観衆の一人が俺に向かって投擲の構えをとっていた。それに続いてシェイラやミルにも石が当たる。
「出て行け、悪魔!」
――この時点で俺の冷静さは失われた。
「そんなに死にたいのか……」
再び剣に手をかけた時――
「皆さん、道を開けてください! 騎士団の者です!」
俺の脳を揺さぶるように凛乎とした声音が響き渡った。
第三者の介入により俺の頭はクールダウン。冷静になった思考で誰かが通報したことが推測できた。
人波を割って出てきたのは俺より少し年上の、先程の騎士よりも立派な甲冑を身に纏った女性の騎士だった。
「貴方が騒ぎを起こした者ですね」
「したくてやったわけじゃない。あんたのとこの騎士の躾がなってなかったんだよ」
俺は事のあらましを聞かせた。憤慨するかと思いきや、女性の騎士は得心のいった表情で頷いた。背後に控えている部下達は憤っているように見えるが。
「なるほど、分かりました。ケットシーの人権は認められています。悪いのはこちらの団員です。そちらの団員には厳重な処罰を与え、被害の賠償もこちらでするので、どうかこちらの不祥事を許してくれませんか」
「あ、ああ……」
俺は女性騎士の言葉に呆気にとられる。
世の中にはちゃんと道理が分かる奴もいるんだな……。少し嬉しくなった。
「念の為に身分を証明するものを拝見させてください」
「じゃあ、これで」
というか、これしかない。
俺は懐から金色に輝くギルド証を取り出した。
正直、これ以上目立ちたくはなかったんだが……。
女性の騎士は酷く驚いた様子だった。
「え、Sランクだと……!? これは驚いた。ウチの団員が敗れたのも頷ける」
驚きつつも、納得しているようだった。
ギルド証を返してもらい、懐にしまう。
「そういう貴方は……?」
彼女はシェイラやミルがケットシーであるということが分かっていても嫌な顔ひとつしなかった。是非とも名前だけでも知っておきたい。
彼女はもったいぶる様子もなく、淡々と告げた。
「私の名はレイヤ。聖騎士です」
これにてユニーク、アクセス記念の連続投稿は終了です。また何か記念になることがあったらやろうと思います。
それにしても、一度壊れたからかパソコンが遅い……。
本日二度目の
次回予告(嘘)
「聖騎士!? え、マジで!? じゃあなんか聖剣とかもってんの!? 見して見して!」
ここに来て異世界じみた騎士の登場にユーは興奮を隠しきれなかった。
レイヤも気を良くしたのか、腰の鞘に手をかける。
「しょうがないな。一度だけだからなー」
そして鮮やかに抜剣! 日光に輝く聖剣とは――!
『ヴィィィィン』
短小の棒が駆動音を立てて小刻みに震えていた。
「「…………」」
気まずい沈黙の後にユーが叫ぶ。
「またこれかよッ!」
次回、冬に入ってから街中で見かけるリア充が増えた気がする。みんなまとめて爆発してしまえばいいのに……。なんてことは微塵も思わず今日もにこやかに中指を立てています。
ネタが思いつかなかったんです。また下ネタですみません……。




