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異世界魔眼魔術師の軌跡 旧名:6seconds  作者: 結城紅
第一・五章 ~ダルクでの騒動~
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033.言葉の応酬と武器選び

アクセス数が2万を突破! ユニーク数も4千人を越えました! これも皆さんのおかげです。ありがとうございます。これからもよろしくお願いします!

 相対する俺と少女。視線と会釈を交わし、俺はどうすれば好印象を得られるのか模索していた。

 異世界初の日本人との接触。この機会を棒に振るつもりはない。


「初めまして。俺の名前は咲野優」


 柔和な笑顔を浮かべて手を差し出す。相手は一瞬惑乱するものの、差し出された手を一瞥。怜悧な視線を注ぎ、


「悪いけど、本心で喋らない人間は嫌いなの」


 虚空に浮かぶ手を振り払った。無下に扱われた手は対象を失い空を掻き、主の様相を鏡に写したかのように如実に虚脱を体現していた。


「本心で喋らない……? それはつまり、君の友人は嘘偽りなくモノを語ると?」


 呆けるのも束の間。俺は不退転の意志を示し食い下がる。少々意地が悪い返答に少女は諦念の滲んだ溜め息を吐いた。


「ええ、少なくとも貴方よりはね」


 嘘八百も大概にしろ、と言いたいところだが俺が嘘つきの道化であることは百も承知だ。利己主義、日和見、なんとでも言え。


「俺は武器を購入しに来ただけなんだけど?」


「あたしは自分の作品(武器)に誇りを持っている。嘘つきなんかに渡すものはないね。あたしがこれらを託すのは純粋な戦士だけだ」


 なるほど、確かに変わっている。営利だけを貪る輩とは一線を画している。


「本心で喋ったら君の癇に触るかもしれないよ?」


「底意が見える喋り方よりはいい」


 底意ね……。同族にそんなこと言われるとは思ってもいなかったよ。まあ、普通に歓迎されるよりかは面白いけど。

 本心を晒すのなら容易い。


「あんたの最高傑作を寄越せ」


「それは今からあたしが決めることだ。まあ、とりあえずは及第点かな」


 言って、あちらから手を差し出してきた。


満月天音みちづきあまねだ。よろしく」


「こちらこそ、よろしく」


 それにしても……。


「趣味悪いな、あんた」


「なんのこと?」


「とぼけるなよ」


 嘯き肩を竦める少女に目を細めて嗤う。一体いつまでこの茶番を続けるのかと。


「師匠? 一体何を言って……?」


 その一方で疑問符を浮上させるシェイラ。少女、満月天音は彼女に興味深げな視線を注いでいる。俺は視線で牽制を入れ、愛弟子を諭す。


「さっきみたいな経営手腕じゃ稼げない。如何な辣腕とて非効率極まりない愚挙では王都の中枢に店を構えることなど出来はしない」


 現実は無駄な矜持を持たせるほど甘くはない。

 取り敢えず、シェイラへの説明を端的に言うと、こいつは……。


「俺をからかってたんだよ」


 マジメなフリしてな。本心を隠していたのは、虚言を吐いていたのは誰よりもあいつだ。

 嘘つきが高らかな哄笑を上げ、斜に構えた態度で口を開く。


「からかってたなんて言わないでよ。あたしはただ、久しぶりに見た日本人を試していただけだよ」


「それをからかうっていうんだよ」


「まあ、そうかね」


 くつくつと、歳相応の少女に似合わぬ噛み殺したような笑声を上げた。


「日本人っていうなら、もうひとりいるんじゃないのか?」


 俺は凝り固まった疑問を氷解すべく頭中に浮かぶ言葉をそのまま告げた。

 俺の疑問に少女は機敏に反応した。


「あんな奴を同族だとは認めたくないね。稼ぎはあたしより上だけど」


 唾棄するように吐き捨てた。琴線に触れてしまったか。


「なんというか、気分を害してしまったようですまない」


 ここは素直に謝意を見せた方が良いだろう。


「いや、いいんだよ。最もな疑問だし。っていうか、いい加減に人をあんた呼ばわりするのはやめてくれ」


 むず痒そうに少女が目を細めた。


「じゃあ、なんて?」


「天音ちゃん、で」


「ハンッ!」  


「おい、優。今あんた鼻で笑ったろ?」


 当たり前だ。あんな提案一笑に付すに限る。

 少女の腐りきった愚案を笑殺した俺は新たな案を提示する。


「今後からは姉御と呼ばせてもらいやす」


「それだけはやめてくれ」


 断固拒否されたので渋々と引き下がる。

 面白そうなんだけどな。


「天音ちゃんは無理だから、天音の姉貴でいいよ」


「あたしのことは今後から天音と呼んでくれ」


 頑固だな。

 そう思惟する横で天音はツレの二人に厳戒な注意を喚起していた。そんなに嫌なのかよ……。


「ああ、そうだ。優、確認したいんだが……」


「何を?」


 あだ名のことなら廃案にしてやったから心配するな。

 なんて、軽く考えていた俺に天音が慧眼を発揮していたことなど看破できるはずもなく――。



「そこの二人は魔族なんだよね?」



「「「――ッ!?」」」


 何故バレた……? 正体が見透かされるような愚挙は犯していないはずなのに……!? 外面も、内面も。気が狂うくらい注意してたのに。

 俺の戸惑いを見抜き、説明するかのように天音が恬然と話し始めた。


「なんていうか……。分かるんだよね、そういうの。仕事柄、よく色んな種族の人と顔を合わせるし。利き耳ならぬ利き鼻ってやつかな」


 鋭敏な感覚の前にはあらゆる理屈は塵芥に等しいのか。もしかすると、その第六感こそが彼女のチートなのかもしれない。と、すると。初めのやり取りで彼女が俺に告げたことはあながち嘘ではないのかもしれない。 


「違うかな?」


 即答出来かね逡巡する。まだ彼女らがケットシーであるということは事実上露見していないが、既にその状態に近い。例え誤魔化そうとも、証拠を見せろと言われればその瞬間に虚言は張子の虎に過ぎなくなる。所詮、縫い目だらけの嘘などその程度のものなのかもしれない。


 と、なると問題は天音が彼女等にどのような感情を抱いているかだ。それが悪質なものであったら手を打たねばなるまい。


「……そう思うなら確かめてみろ」


 一歩引き下がり、天音に道を空ける。

 すると、彼女は……


「いや、もうわかったからいいや」


 と、ひとり納得顔で腕を組んだ。

 俺は心の裡で舌打ちした。

 ……潔白ならば、面倒を誘うような言い方はしない。俺か彼女らが即刻目深なコートを剥げばいいのだから。

 俺の言葉は彼女の予想を確定付けるものとなってしまった。


「それで、どうするんだよ? お前……天音も他の奴らと同じ考えなのか?」


 あんな、非道徳的で不徳で、非合理的な馬鹿げた考えを良しとするのか? そんなナンセンスな大衆意識を敬うと?


「おお、怖い怖い。あたしは別にそんなことしないって」


「じゃあ、何を?」


 天音は気負うことなく答える。それは、恐らく偽らざる本心。


「いや、何も」


 即答。

 思慮深い者かと思いきや、考えずに喋ることもあり、竹を割ったように見える性格は本性のブラフなのか迷ってしまう。飄々としており、掴みづらいことこの上なかった。


「何も……?」


 嘘つきの言葉は信用できない。それは、嘘つきである俺が一番知っている。同族とはいえ、根拠のない信頼は置けない。搦め手から襲ってくるかもしれない。


「そう、何も。疑ってるようだけど、あたしが彼女らを告発しても何の利益もないよ?」


「…………」


「告発したところで貰えるのは(はした)金さ。ここは儲かってるし、そんなことをして君の機嫌を損ねる方がデメリットになる」


 確かに一理あるが……。天音がこちらの知らない情報、例えば魔族を捉えた者に金以外の特別なものが与えられるだかがあったとすれば話は別だ。いや、待てよ。俺はこの店に来ただけであって、天音は俺たちがいつ王都についたかは知らないし、もし仮にそんな情報があったとしても俺が知っていたら無意味。博打に出る必要性なんてあるのか……? というか、そんな情報があったらミルが知っているだろうし、真っ先にこの話題に反応するはずだ。無反応だということは、天音の言葉には嘘偽りがないってことなのか……?


「疑り深いねぇ……。日本人の奴らは大抵金持ってるから顧客にしたいっていう思いは至極納得のいくものだろ?」


 艶のある黒い長髪を典雅な挙措で掻き上げ、艶美な笑みを浮かべる。


「まあ、そうだな……」


 道理には適っているし、仮に事に至ったとしても俺の力でなんとかなるだろう。


 余談だが、俺の右目……カイロスの瞳は推測するに術者以外の意識ある者の体感時間を止めることができることがわかった。発動中に植物が揺れていたのも頷ける。……ザ・ワー○ドみたく時を止められないのは残念だが。


 ……と、いうわけで。最悪体感時間止めればなんとかなる、うん。人間にとっては時を止められるに等しいし。


「容疑が晴れたみたいでよかった。柄にもなく緊張しちゃったよ」    


 言葉とは裏腹に余裕の笑みを浮かべる天音。次いで、真摯な瞳でこちらを見遣る。


「で、優たちは何をしにきたんだい? まさか、見にきただけ……とはいわないよな?」


 雅な雰囲気が一変、怒気が放出され室内が緊張に満たされる。弛緩した雰囲気はいずこやら、と言わんばかりに瞬時に場を掌握した天音は切れ長な瞳を一層鋭利に細めた。


 背後からは、「はうう……」や「おっかないにゃー」などと声が上がっている。

 俺とて遊びに来たわけではない。彼女を諌めるのも兼ねて用件を告げる。


「お客様にそんな態度取るんじゃねえよ……。最初にも言った通り、最高傑作を寄越せ」


「ほう……。なんで?」


 訝しむ天音に率直な理由を述べる。


「その場凌ぎでいいんだけど、半端な物は持ちたくないんだ」


「その場凌ぎ?」


「ああ、竜種の素材を手に入れてな。それで剣を作って欲しいんだ」


「へえ……。中々やるね、優クン。日本人でも竜種を狩れる人なんてそうそういないよ?」


 天音は大して驚きもせずそんなことを言ってのけた。っていうか、いるんだな。他にも竜種を狩れる奴が。


「あと、彼女にも手頃なものをひとつ見繕ってやってくれ」


 後ろでボーッと傍観している弟子を指して言った。


「えっ? いいんですか、師匠?」


「いいも何も、自分の身は自分で守れるようにしなくちゃいけないだろう」


 シェイラは、「そうですねー♪」と答え上機嫌にその場でターンした。……空気のくせにあざといな。その所為なのか、横でミルが舌打ちしていた。

 俺は店のカウンターに残ったワイバーンの素材……角と牙を2つずつ乗せた。


「剣はどんなタイプのを造ればいいの?」


「片手剣で頼む」


 魔術を行使する以上最低でも片手は残しておきたい。

 天音が素材をカウンターの裏に回収し、頬杖をつき尋ねる。その際に、天音の双丘が岩盤もといカウンターに乗り上げたのを妬ましそうに背後の二人が睨んでいた。

 ……別にどうでもいいだろ、あんなの。


「予算は?」


「糸目はつけなくていい」


「ふふ……久しぶりに腕がなるねぇ……。そこのお嬢ちゃん!」


「は、はい!」


「ちょっとこっちおいで」


 手招きでシェイラを呼び寄せるや否や、あろうことか天音はシェイラのフードを勢い良く剥いだ。


「え、ええ!?」


「なんだ、何も驚くことはないだろ。あたしはもう既に知ってんだから」


 確かに、彼女はシェイラとミルが魔族であることを知ってはいるが……。やるなら事前に言ってほしかった。店内に俺達以外の客がいなかったからよかったものの……心臓に悪い。

 剥がれたフードから視線を外し、頭頂部を一瞥した天音は物珍しげな声を上げた。


「おお、ケットシーに会うのは久しぶりだよ。人権が認められてるとはいえ、あまり王都には訪れないからね。っていうか、だったら告発云々は問題じゃなかったね」


「いや、バレるとマズイのには違いない。面倒事は極力避けたいんだ」


 口を挟んで天音の言動を訂正した。


 それを興味なさげに聞き流すと、天音はシェイラに幾つかの質問を投げかけた。


 曰く、どんなことが得意だとか。今まで武器を扱ったことは、戦闘経験は、優れていると思う点は……などなど。

 結果……。 


「お嬢ちゃんにはこれがちょうどいいよ」


 天音がシェイラに手渡したものは煌びやかな装飾が施された鉤爪だった。篭手のような部分は灼熱の色に染まり、巧緻な技術を以てして黄金のエンブレムが刻まれている。その先から伸びるのは鋭利に研ぎ澄まされた銀色の刃。絶大な力を秘めている予感がする。


 考えてみれば、シェイラの特異体質も素早さを基調としたものだった。彼女自身も脚力には自信があるようだったし、ピッタリの武器かもしれない。それに……


「「猫だしね~」」


 異口同音。俺と天音の口から吸い寄せられるように全く同じ言葉が紡がれた。


「優クン……わかってるね」


「そっちこそ……」

 こいつとは気が合うな。


「?」


 当の本人は首を傾げているが。


「優クンにはこれかな」


 弛緩した空気を一転、天音はカウンターの裏から一本の剣を取り出してきた。

 陳列されたものではなく、奥から取ってきたということは……。


「あたしのとっておき。君の言う最高傑作さ」


「おお……」


 柄は潔癖の白。ナックルガードは翼を広げるような感じに左右に伸びており、刀身も同色の透明感のあるコバルトブルーで彩られていた。一見華美とも思える装飾は余りにもこの剣に嵌っていて寧ろ妥当であると思わせる。俺には分不相応に見える。 


「一見客には見せないようにしてるんだけどね。あんたらは別だ。こっちもわざわざ丁寧に接する必要もないだろうし。まあ、当座はそれで凌ぎな」


「……幾らだ?」


 早くも懐事情が気になる。金貨240枚を稼いだとはいえ、同じ日本人同士の取引だとあっという間になくなりそうだ。


「お嬢ちゃんのアイアンクローで金貨2枚。優の片手剣で4枚。都合、6枚だね」


 なあんだ、安……くねえよ! 金貨6枚ってことは600万円、大金だ。


「これでも負けてやってる方なんだよ」


「何、大丈夫だ」


 さらば、600万円。まだ2億3400万あるとはいえ。

 必要経費だと思っておこう。

 俺は懐から金貨を6枚出して会計を済ませた。


「毎度有り~。オーダーメイドの剣は一週間もしたら出来るから、その時また来てね」


「ああ」


「それじゃあ、今後ともご贔屓に」

 笑みを交わして俺ら一行は店を後にした。





~~~~~~


「師匠、なんというか……すみません」


「いや、気にすることはない。必要なことには金は使うべきだから」


「それにしても、一気に金貨を6枚も使うにゃんて豪快だにゃ」


 いつもに増してミルの語尾が多い気がするのは気のせいか。


「まあ、あんまりケチケチするのも悪いしな。吝嗇家じゃあ、あるまいし」


 言って、足を止めた。


「ここか……」


 脳内に記憶した地図を再度確認し、対象の店を視認する。

 そこは、二人目の日本人の店。玩具屋だと聞いてはいたが、果たしてどのようなところなのか……。

 俺は看板を見上げてウンザリする。


「『カズマのお・も・ちゃ・や♡』だと……」


 日本人であることを隠す気がさらさら感じられない。それに、なんかウザイ。イライラする。

 聞くところによると、ここのオーナーは他にも事業を起こしているらしい。


 取り敢えず、中を見てみないとどうにもならないので扉を押した。

 カランカランと和やかなカウベルが鳴り、俺を筆頭に店内へと足を踏み入れ――絶句した。


「やあ、いらっしゃいませ」


 奥のカウンターではに16歳程の少年がにこやかに手を振っている。

 それ自体は何の変哲もないことなのだが、その周囲を囲うモノが異物過ぎてなんとも言えない違和感を醸し出していた。

 店内一面に所構わず陳列されていたのは……


「ようこそ、僕の玩具屋へ」


 おもちゃと言えども、『大人』のおもちゃだった。

 最後に出てきた店のオーナーである少年は完全にネタキャラです、はい。

 色々あって、本来更新三日後に出す予定が大幅に遅れてしまいました、すみません。詳しくは活動報告に載っておりますので、興味のある方はそちらをお読みください。本当、最悪でした。

 アクセス数が2万越え、ユニークが4千越えたのを記念して、何かやりたいと思います。……あまり期待しないで下さい。


次回予告(嘘)


予想外の事態にユーは完全に困惑していた。

(おもちゃって、大人の方かよ! なんだよここ、アダ○トショップかッ!)

ユーに続きミルも眼前に広がるモノの使用用途を悟り頬を赤らめる中、シェイラは純真無垢な瞳でユーに尋ねる。

「ねーねー、師匠。これなーにー?」

 無邪気に彼女が手にしたものは『ヴィィィィン』と駆動音を立てていた。

「――ッ!?」

 ユーにかつてない衝撃が走る!

「そ、それは……」

「ねーねー、なーにー?」

 言葉に詰まるユー。一瞬の逡巡の後、彼はやつれた笑みで答えた。

「ソレはアレしてコレしてこーする物なんだよ」

「説明になってないですよ、師匠」

「もー、駄目ですよシェイラちゃん。ママはこんなもの買いませんからね。メッ!」 

 ヤケになったユーはシェイラの額にデコピンを喰らわせて黙らせた。


 次回、ネタだから大丈夫。危ないことはしないから、この作品は健全な少年少女の物語だからエロ方面に突っ走ったりしないからお願いだから見捨てないで~~(泣)


 なんだかだんだんこれ(次回予告(嘘))にも慣れてきた……。

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