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異世界魔眼魔術師の軌跡 旧名:6seconds  作者: 結城紅
第一・五章 ~ダルクでの騒動~
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028.高校生魔眼魔術師の珍道中

た、タイトルを変えたらお気に登録が減っただと……!?

減った分取り返せるようにもっと頑張ります。

「いやー、昨日のお肉は旨かったにゃー」

 

お祭り騒ぎの夜が明け、翌朝。ミルは俺と顔を合わせるや期待に満ちた眼差しで俺を射抜いた。


 ミル。お前たちは知らない。獣の肉に混じって竜の肉も食っていたことに。ミルが言っている肉はそれに違いない。残念だが、もう二度と口にする機会はないだろう。


「ユーの弟子も来るのにゃ?」


「ああ、一応伝えておいたんだけど……」


 昨夜、あんなことがあったからな……。来るかはどうかはわからない。


「本人次第、かな?」


 彼女が来るかどうか分からない以上、俺とミルは集落の入口で立ち往生することしかできない。


「ユー、そろそろ出発時間にゃ。もう待てないにゃ」


 しょうがない。

 俺が集落に背を向けると背後から聞きなれた声が聞こえた。


「ししょぉ~~~!」


「シェイラ!」


 俺とミルの元まで駆けてくるや否や、面持ちを上げ息絶え絶えに声を発した。


「師匠、私まだよく分かりません。魔人が良いのか、悪いのか」


 俺は黙って彼女の言葉に耳を傾ける。彼女は彼女なりの言葉を紡ごうとしている。師匠としては、弟子の想いに真摯に向き合うのが筋ってものだろう。


「ここの人達は優しいけど、アルンカでのこともあるし。よく分からないんです。結論はまだ出ません。だから、もう少し。もう少しだけ様子を見ることにしました」


 安易に決断は下せない。慎重な彼女らしい言葉だ。


「それでいいと思う。身辺が落ち着いたらまた考えればいい」


「はい!」


 まあ、とりあえず……。

 荷物持ち一人確保に成功。

 俺は心の中でほくそ笑んだ。


「二人共、良さげな雰囲気のところ悪いんにゃが、そろそろ出発にゃ」


 正面には……御者台に乗り込んだミルが冷ややかにこちらを俯瞰していた。     




 無限に続くような青天井の蒼天、広大な肥沃な緑地。野を駆ける動物の数々、咲き誇る珍しい植物、中空を切り裂き飛び交う野鳥の群れ。どれも現代日本では拝めないような幻想的な光景。馬車の中から垣間見える光景に、俺は終始興奮しっぱなしだった。シェイラやミルは見慣れているのだろう。大した反応は見せない。


 シェイラは風景になど興味がないようで、一心に食い入るようにこちらを見ている。

 さっきミルに茶化されたからな……。根に持ってるんだろうな。


「師匠……」


「ん? 何?」


 俺に答えられることならなんでも答えよう。

 勝景を見たことによって気分が高まり、有頂天だったのだろう。俺はこの時重大な事実に気づいていなかった。


「師匠っていくら持ってます?」


「何を?」


「いや、だからお金」


「…………あ」


 あれ、そういえば俺って……。



 一文無しじゃね?



「師匠、私持ってませんよ」


 俺は慌ててバッグを取り出し、金目の物が入っていないか探る。

 異世界の服なんてオーバーテクノロジーだから流出すると大問題だし、異世界の金銭は使えない。十円玉と百円玉を銅貨や銀貨と交換してくれるかも、って程度だ。つまり、ヤバイ。このままだと、せっかく王都に行くっていうのに荷物持たせられるだけで終わってしまう! なんとかして金を工面しなくては……。


 因みに。

 この世界では、銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚。金貨100枚で、魔貨と呼ばれる滅多にお目にかかれない貴重な貨幣へと同価値となる。昔、この世界の貨幣を日本円に換算したことがあり、その結果銀貨1枚が一万円程度の価値があることがわかった。つまり、銅貨1枚が100円、金貨が100万円、魔貨だと1億円ということになる。

 まあ、銅貨もかくやっていう状況では用をなさない話だけどな。


<収納>(アセプタン)


 魔術を発動して異空間に収納したワイバーンの部位を取り出す。


「って、師匠!? 魔術発動しちゃっていいんですか!?」


 俺の突然の行動に狼狽し、異空間へと繋がる穴を必死で隠そうとする。

 シェイラもシェイラなりにあの集落における魔術師の立ち位置(魔術師は主に貴族がなるもので、魔人たちから人権を奪ったのは王族と貴族だ)を考慮していたのだろう。


「いいんだよ。昨日酒に酔った勢いでリーザックが喋っちまったから」


 当然それ以上情報が拡散しないようにその場でリーザックを潰しミルに口止めしておいた。ミルには悪印象を抱かれると思ったが……。


「ミルはユーのことをそれなりに分かってるつもりにゃ。魔術師だからって忌避したりはしないにゃ。それに……」


「それに?」


「荷物持ちとしては優秀だにゃ」


 それはまた随分と打算的な。まあ、でもミルらしいな。

 視線をシェイラに戻すと、彼女は手元の素材を睨むように注視し、訝しんでいた。


「師匠、その素材どうしたんですか?」


 取り出したワイバーンの部位を指差してシェイラが問う。

 ミルにも俺が魔術師だってことがバレてるから、洗いざらい吐いてしまってもいいかもな。


「これは、ワイバーンの部位だ」


 瞬間、空気が凍った。シェイラの表情が凍りつき、ミルはこちらに向けていた顔を無言で前面へと戻した。

 辛うじて停止状態(フリーズ)から立ち直ったシェイラが強ばった表情で尋ねてきた。


「倒した……んですか?」


「じゃなかったら今ここにないだろ」


 異空間から他の部位も取り出していき……。

 

 ワイバーンの角×2


 ワイバーンの爪×20


 ワイバーンの目玉×2


 ワイバーンの牙×2

 

 狭い馬車の中に異形の物体が陳列されることとなった。全く気味悪いことこの上ないが、やったのは自分なのでなんとも言えない。


「師匠、他の部位はどうしたんですか?」


「ああ、腹とか尻尾は肉がついてたからな……」


 言うべきかどうか迷い、瞬時の躊躇いのうちに言うことを決意した。



「昨日のパーティーに提供したよ」 



「「――ッ!?」」



 声にならない悲鳴が馬車の中に響き、馬は嘶いてミルの運転が乱暴になった。今まで直進してきた道を外れ、整地されてない地面を走り馬車が跳ねる。景観が左右にぶれまくり、引きずられるように俺とシェイラの頭が壁面に衝突する。


「ミル、安全運転! 安全運転! これ以上は速度制限に引っかかる!(そんなものは異世界にない)」


「竜の肉、竜の肉……。うっ、なんか気持ち悪くなってきたにゃ」


「駄目だ、聞こえてない! うぷ……やべ、なんか辛い」


「師匠、やめて、吐かないで! 吐くなら窓から顔出してーー!」


 場が一瞬で混沌に包まれた。

 道を外れた馬車は止まることを知らずに悪戯に速度を上げていくばかり。

 そろそろ我慢のきかなくなった腹を抱え、窓(というか木製の枠組み)から顔を出そうとした矢先に――。


「ブヒッ――!」


 衝突音と馬の鳴き声が聞こえた。

 馬車が跳ね、直後に激しく地面に叩きつけられる。そして、完全に停止した。

 俺は打ち付けた尻をさすりながらよろよろと立ち上がり、覚束無い足取りでシェイラに歩み寄り手を貸した。


「大丈夫か?」


「だ、大丈夫です」


 緊張したのだろう。僅かに頬を上気させながら俺の手を取り、立ち上がる。


「それにしても、一体何があったのでしょう」


 嫌な予感に駆られ、俺とシェイラは馬車から御者台へと顔を覗かせた。


「ミル、一体何が……?」


 ミルはわなわなと肩を震わせていた。その手には手綱が握られておらず、馬が暴走していたことが容易に見て取れた。


「ミルさん、御者変わりましょうか?」


 シェイラがミルの背中に声を掛けると、ミルは涙目でこちらに振り返った。


「や、やっちまったにゃ……」


「誰にでもミスくらいあるだろ。気にせず先行こうぜ」


 ミスで落ち込んだミルの肩を叩くと、彼女は御者を降りガタガタと高速で震える指を前方に向けた。そこには――。


っちまったにゃ……」


 白目を剥いた馬の死体があった。


「うにゃぁぁぁぁぁぁ、ステファンーーー!!」


 ここで初めて明かされる馬の名前。

 ミルは泣きながら馬へと駆け寄り――。


「よいしょっと」


 どこから取り出したのか、シャベルでせっせと穴を掘り始めた。

 高速で穴を掘ったかと思うと、ロナウジ○ニョもかくやという脚力で馬、もといステファンを穴の奥底に蹴り沈めた。そして、その上から土を被せ、懐からナイフを取り出し辺りの木々に戦闘痕らしき切り傷を刻み、フーっと一息ついた。


「よし、先を急ぐにゃ」


「おい待て、お前今何した?」


「にゃにって、埋葬にゃ」


「お前馬蹴ってなかった? それになんでナイフ出したの? これ完全に証拠隠滅だよね?」


「知らんにゃ。村長の馬は激しい戦闘の後、善戦虚しく戦死を遂げたのにゃ」


「他人の馬とか尚タチ悪いわ! 認めろよ、証拠隠滅だって認めろ――」


「うるせぇよ」


「はい、すいません」


 正座させられた俺を尻目に、背後からシェイラが身を乗り出した。


「ミルさん、なんでお馬さんは死んじゃったの?」


「木にぶつかったのにゃ」


「それだけで死んじゃうの?」


 きちんと育てられてる馬ならそれくらいじゃ死なないと思うんだけどな……。

 ミルは深い溜め息をつくと、翳りの差した表情で告げた。


「ステファンは、人間で言うところの70歳だったのにゃ」


 鬼畜、ここに鬼畜がいる! そんな馬を走らせるなんて鬼畜すぎるだろ。

 そして、ここで俺は重大な事実に気づいた。


「なあ、シェイラ、ミル」


「「ん?」」


 俺は一拍おいて残酷な事実を突きつけた。



「誰がこの馬車引くの?」



 馬、もういないじゃん。

 次回、ようやく王都に行きます。馬車を引くのは……、皆さんのご想像の通りになるかと思います。


 次回予告(嘘)

 道のりも半ば、いきなり馬を失ってしまい前途多難な三人。

 絶望感に打ち拉がれるユーとミルに嬉々としてシェイラが告げる。

「馬ならいるじゃない」

「「え?」」

「ほらぁ、ちょうどいいのがここに二匹も……ね」

 バッと脱ぎ捨てた旅装姿の下には――ボンテージとムチがッッ!

「さあ、二人共。私のために死ぬ気で馬車を引きなさい!」

「「ハイ、女王様!」」

「オーッホッホッホ!」

 かくしてユーとミルはシェイラの奴隷になってしまった! 

 次回、つい先週中古で買った新作ゲームが今日見たら半額以下になっていた。なんだろうこの無常感、まだチュートリアルなのにプレイする気が萎えてきたぞ!

 君の銀河はきっと輝く……!

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