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異世界魔眼魔術師の軌跡 旧名:6seconds  作者: 結城紅
第一・五章 ~ダルクでの騒動~
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025.ひと狩り行こうぜ!

すいません。おふざけが過ぎました。

 魔人の集落、『ダルク』。王都とキーラの間に位置しており、周囲を森林に囲まれているため注意深く見なければ入口すらわからないだろう。

 アルンカとは違い、入口にアーチはなく一目見ただけでは名もない村にしか見えない。入口近くには長屋があり、その少し先には平屋が立ち並んでいる。更にその奥に二階建ての村長宅があり、それに付き従うように農地が広がっている。栽培しているのは主に菜類。人参やピーマンみたいな食物が多く見かけられた。肉類はというと村の中で腕の立つ者が周辺の魔物を狩り、持ち帰った物を分担して皮と肉に切り分ける。皮は王都に売りに行けるので、食用の肉も取れて一石二鳥だ。必要な生活物資は、余った肉と剥いだ魔物の部位を売った金で補給する。このため、どうしても王都に行かなくてはならないので、見つかる危険性と利便性の間をとった中途半端な位置にこの集落はある。


 今回、俺の任された役割は魔物を狩ること。至って単純だが、俺が魔術師だということがバレると私怨を買うので魔術は自重しなくてはならない。魔術を封じられた魔術師なんてただの人だ。渡された短刀だけでどう切り抜けたものか。せめて、もう少し刃渡りが長ければ亜流の剣技を流用することができたのだが……。


「さてと……。ここらで狩れる魔物について説明する」


 集落から少し外れた森林に入ること数分。リーザックが立ち止まり、身を翻した。


「主にこの辺りに出現する魔物は三種類。トライホーンとシルバーウルフ、それとファングボア。ファングボアやトライホーンは突進してくるので、間合いにさえ気をつければどうってことない。シルバーウルフは群れているため数が多く面倒だが個々の戦闘力は低い」


 トライホーンは鹿みたいなもので、ファングボアは名称から分かる通り牙のある猪。シルバーウルフは凶暴性の増した狼だ。魔術さえ使えれば大した相手ではない。使えないから困ってるんだけどな……。


「だが、シルバーウルフはできるだけ速やかに倒せ。戦闘中に遠吠えされると厄介なことになる」


「厄介なことっていうと、増援か?」


「いや、それだけじゃねぇ。遠吠えに反応して奴が来る」


「奴?」


「ヌシだ」


 俺の記憶によると、ここら一帯には先般説明した以外にめぼしい魔物はいないはずなんだが。文献に載っていなかっただけで、他にいたのかもしれない。なにぶん資料が古かったからな、知らないのも仕方ない。


「昼間は滅多に姿を見せないんだが、夜になると活発的になり魔物を貪る。夜行性の魔物なんだが、大きい音に反応して起きることもある。はっきり言って、ヌシにはどう足掻いても敵わない。だから、なるべく音を立てないようにして行動してくれ」


 リーザックが懐から二本の短刀を取り出して、囁くように告げた。俺は頷くことで諾意を示した。

 説明を聞く限りかなり危険な相手と予想できるが、リーザックはそれ以上は語らなかった。聞くな、ってことなんだろうな。

 俺も短刀を構えてリーザックに続く。足元に気をつけて移動する。隠密行動という言葉がやにわにメタル○アを彷彿とさせた。ダンボールに入って移動したくなるが、緊張感に欠けるので胸の裡に留めた。


「おい、ユー」


「はい、すいません」


「いや、なんで謝るんだ……?」


 不審がるリーザックが少し先の獣道を指差した。茶と白のマダラ模様の表皮を被り、大きな三叉の角を携えた生物が視界に入った。


「獲物だ」


 そう呟き舌なめずりするリーザックは狩人、ハンターと呼ぶのに差し支えない雰囲気を帯びていた。一体何度このような経験をしたのか。俺には計り知れない。


「ユー。まずはお前が行ってくれ。お前の実力を見てみたい」


「……はい?」


 え、てっきりリーザックが行くものかと思ってたんだけど……? 獲物だ、とか思わせぶりな発言はどこに行った?


「悪魔族を倒したんだから、あのぐらい楽勝だろ?」


 いえ、ですからね。あの時は魔術を使えてたからなんとかなったんですよ。剣技も使いましたけど、今手元にある短刀じゃどうにもならないし……。

 こうなったら……。


「おい、ユー!?」


 俺は手の力を緩めて短刀を落した。故意的に落した刃が木漏れ日に反射して俺の顔を映し出した。鋭利な双眸が自分自身を睨めつけていた。

 上手くいくかは分からないが、


「――フッ!」


 俺は蹶然と地を蹴り魔物の死角から飛び出した――!

 魔物――トライホーンがこちらに気付き突進してくるが、それを意に介さずリーザックに聞かれないように<身体強化>(コルペ・ロブル)と呟き無詠唱で魔術を発動した。ただ、普段と違う点が一つ。魔術構築の際に注ぐ魔力の量を多めにした。魔人襲撃の際には1割程注入していたが、今回は3割にしてみた。上位攻撃魔術数十発分の魔力だ。

 無謀かもしれない。俺は――

 

 魔物に徒手空拳で挑んだ――!


 突進してくるトライホーンを上方に跳躍して躱そうと飛上がり――驚愕に目を剥いた。

 出し抜けに視界が青色に染まったからだ。は? と間の抜けた声が無意識に出て、下方を見遣ると……。

 一面の森林と小さな集落が見えた。その前方には煌びやかな都市が……って、おい俺今まさか……。

 上方を仰いで、俺は自らの予想が的中したことを悟った。


 俺は今、空にいます。空中とか、そんな言葉が生ぬるいほどの高度に。

 敬語になるくらいビビった。自分でもまさかここまでの力が出るとは予想だにしていなかった。強すぎて逆に危険だ、コレ。 

 上昇する勢いが止まり、一転してもの凄い速度で落下していく。まるで、乱気流に巻き込まれたみたいだ。髪は逆立ち、服の裾がバタバタと激しく音を立て俺を中心に渦が巻く。空気そのものに割って入るみたいで、身体中から筋肉が軋む音が聞こえた。急激な高度差に耳がキーンとなって頭痛がする。


「ハハッ、は、ハハハハ!」


 なんだか楽しくなってきた。


「ハハハ!」


 落下する勢いが増していき、目を空けていられなくなる。視界が真っ黒に染まり、奇妙な浮遊感と耳障りな音だけが頭に響く。


「ハハハハハハハハハハギャァァァァァァッッッ!!????」


 笑い声は途中から明確な叫び声へと変わり、一心に恐怖を体現していた。いや、だって目の前が見えなくなって落下してるんだよ? 怖いじゃない、うん、仕方ない。

 辛うじて目を開いた時には地上が近づいていた。呆然と目を開くリーザックと突如として消えた俺を探してトライホーンが狼狽える様子が窺えた。

 そして俺は空気を割いて着地する。否、着地なんて言葉では物足りない。俺は――地面を砕いた。

 小規模のクレーターのようなものができた。

 衝撃波と大音声に途端に森が騒がしくなる。

 そういえば、大きい音出すなとか言われてたよな……。

 黙りこくったリーザックと視線が合う。


「…………」


「…………」


「や、……」


「「やっちまったーーーーーー!」」


 その叫び声が呼び水だったのか、少し先からズシン……と、重低音が響いた。

 再度リーザックと視線がぶつかる。互いに大量の冷や汗を浮かべて。


「な、なにしてくれてんだテメェェェェ!!」


「うるせェェェェェェ! 俺だって自分がこんなことできるとは思わなかったんだよ!」


「なんだそれ自慢かァァァ!」


「っていうかお前がうるせェェェェ!!」


「お前もうるせェェェェ!」


「その『ェェェェ』っていうのやめろ! うるせェェェェ!!」


 最早収拾のつかない騒動に我ながら嫌気が差す。ヌシが起きたのは確定だ。焦燥感が加速していく。

 騒ぎに乗じてトライホーンが逃げ出そうとするのが目の端に見えた。


「逃がすか!」


 即座に補足して、圧倒的速度を有する腕をトライホーンの胴体に撃ち込んだ。

 スパァン! と甲高い音が耳朶に触れ、俺は違和感を感じて視線を下ろした。見れば、俺の腕はトライホーンの脇腹を貫通し、一瞬にしてその生命を奪っていた。

 次いで、ボタっと音がしたかと思うと……。


 ピンク色の臓物――恐らくトライホーンの心臓――が足元で脈打っていた。


「オエェェェェェェ!!」


「だからうるせェェェェ!」


 なんだか最近吐いてばかりな気がする。

 リーザックの叫び声で我に返った俺は重大な事実に気付く。


「リーザック!」


「どうした!?」


 周囲から無数の魔物の気配が近づく中、背中越しに相対するリーザックに俺は告げる。


「腕がベトベトして気持ち悪い!」


「そのぐらい我慢しろよ!」


 ああ、また服を駄目にしてしまった。魔物特有の濃厚な血に塗りたくられた袖を見遣り溜め息を吐いた。

 仕留めたトライホーンも食用として、素材としても使えないだろう。まさか腕が貫通するとは思わなかった。

 俺は気を引き締めて前方を睨む。ここまで事態が発展してしまったのだから、もう音を立てることを自重しなくてもいいだろう。問題は……。


「リーザック、いけるか?」


 彼の、実力。俺一人だけだったら、ヌシはともかく魔術を使わずとも切り抜けることができるだろう。だが、彼を守らなくてはいけない場合は別だ。防御用の魔術を敷く必要がある。逃げるにしても、戦うにしても魔術の必要性が出てくる。


「すまん、無理だ……」


 彼は既に諦観を露わにしていた。瞳からは闘志が消え失せ、諦念と心残りが混濁した色合いを醸し出している。


「いくらお前が強くても、この数相手じゃ……」


 恐怖に身を窶したその姿に、俺は魔術を発動することを決意した。


「リーザック」


 俺はなるべく強く名を呼ぶ。


「ユー?」


 俺は一歩前に出て血振るいするように腕を凪いだ。


「これから見ることは全て黙っていてくれ」


 懐から、いざというときに備えていたモノクルを取り出し、魔眼に装着した。

 無詠唱で<探知>(レペルタン)を起動し、即座に敵の数を補足。及び彼我との戦闘力を測る。アルンカでの戦いと比べたら、こんなの楽勝だ。


「今からこいつらを殲滅する」


 そして、俺は大規模魔術の詠唱を開始した。

6seconds、面倒なので6秒、を始めて3ヶ月程立ちました。当初は大まかなプロットだけ書いて具体的なことは何一つ考えていませんでした。毎回一話毎書きながら考えるという遅筆極まることをしていました。これからは一話毎にプロットを作っていきたいです。

 反省はここまでにして、三ヶ月を記念にこれからこの後書きでなにかやりたいと思います。では、以下初回~~。


 次回予告(嘘)

 大勢の魔物に囲まれて絶対絶命のピンチに陥るユーとリーザック!

 一大決心をして魔術を行使しようとするユーの背中にリーザックが爽やかな声音で宣言する!

「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」

 突然の宣言にユーは噴き魔術を発動し損ねてしまう! 

「いや、俺はまだこんなところで死ねないんだ。俺にはまだやるべきことが……あれ、なんだっけ? あっ、それより深夜アニメ録画しないと!」

 次回、死亡フラグとアルツハイマー! 空き容量がなくてもう録画が出来ない!

 あっ、TSU○AYAにDVD返さなきゃ。

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