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episode.6

よろしくお願いします


102、106はそれぞれ『いちまるに』、『いちまるろく』と読みます。



2組戦のバレーボールが終わった。私達女子バレーは15点以上の差をつけ快勝。一方で、男子バレーは苦戦を強いられ、2点差で負けてしまった。


「みんなお疲れ〜」


「おつかれ〜」


「応援ありがとねー、めっちゃ声聞こえてたよ」


「それならよかった!

紬も颯も、2人ともかっこよかったよ!」


「えーまじ?嬉しいわー」


試合を終え、コートの横に置いておいた水筒やタオルを取りに行くと、コートサイドで応援していてくれた洸太や一織、瑠依が声をかけてきた。するとそこに…


「いやー女バレもおつかれ!ナイス試合だったねぇ〜」


「おー祐希じゃん!ありがとね〜」


「いやもうほんとに女子みんなうますぎだよね、相手も頑張ってたけど、ほぼ手が出てなかったじゃん?」


確かに今回の試合はみんな動けていたし、しっかり『繋ぐ』ことが出来ていたと思う。失点はすべて、相手のプレーによって点数を取られたのではなく、全て自チームの失敗によって取られてしまったものだ。相手コートの前にボールを落とそうとしてネットに引っ掛けた、とか惜しいミスばかりだった。こういうと私たちがものすごく強かったように聞こえるかもしれないけど、相手もボールを落とさなかったし、決して弱い訳ではなかった。多分サービスで攻められたのが大きな勝因だろう。


「あれ、てか祐希も男バレでてなかったっけ?」


「あーうん、出てたんだけどね〜、なかなか上手く出来なくて足引っ張っちゃった、」


「負けちゃったと言っても数点差でしょ?どんまいどんまい!てか得失点差で言えば余裕で勝ってるから気にしないで〜」


「ありがとねー、でも次はちょっとがんばらないとだなー」


「まあまあ祐希なら行けるって、前向いてこ〜」




「颯ー!!!」


「あれどうしたの瑠依?」


さっきコートサイドにいたのに、姿が見え無くなっていた瑠依が1体の入口から姿を現した。


「なんか女バドの方で選手が足りてないみたいで!オーダーシートの補欠に颯の名前があったから、バドの巧さ的に颯に出て欲しいんだけど…出てくれる?バレーの直後だけど…」


「え、まじ?出ていいの!?出たい!」


スタメンには今回名前が入ってなかったからバドは出るのをあきらめてたけど、出れるんならバド大好きだから出たい!!


「良かったー!颯ありがとね!もう練習始まってるから、2体の方に来て欲しい!」


「おっけ!じゃあ、先にバドの方行ってます!」


「おー颯ちゃん頑張ってねー!空振りすんなよ!」


「頑張れ颯ー」


「空振りなんてしないわ!っと、ありがとう!行ってきます!」


駆け足で瑠依の後をついて行く。あれ、私ラケットってあったっけ?


「ねー瑠依!ラケットって執行から貸し出しあるっけ?」


「あったはず!まだ確か余ってたはずだよー」


「おっけーありがとう!」


1体と2体は隣接しているのでさほど時間もかからずに2体に着いた。まあ走ってるから尚更なんだけどね?


「颯連れてきたよ!まだ時間大丈夫!?」


「まだ全然!瑠依ないす!颯もほんとにありがとね、てか女バレもお疲れ様!」


「ありがとー!無事勝ったよん。んで、ラケットってどこにあるかな?練習始めちゃいたい!」


「あそこの箱の中にあるっぽい!ラケットとってきたら私と打ちあおう!」


「おっけ、とってきます!」


2体で声をかけてくれたのは絢音あやねだった。中学の頃にバド部で、うちのクラスのバドをまとめているエースである。いまも金髪のボブの髪を揺らしながら、コートの隅に向かって鋭いスマッシュを放っている。


「ラケットとってきた!」


「おっけ、じゃあこっち側のコート入ってくれる?アップ代わりに軽く打とう!」


「はーい」


絢音の向かいのコートに入り、靴紐をしっかりとむすび直す。それからその場で軽くジャンプし、体の調子を確かめた。


「じゃあ始めるよー」


「おっけいかもん!」


絢音が高めに山なりに出したシャトルの下に素早く入り込んだ。利き手と肘を高くあげ、反対側の手でシャトルを掴むようにしてトロフィーポーズをとり、シャトルとの距離をはかる。後もう少し、あと3センチ……ッッ。ここだというタイミングで利き手を高く振り上げ、反対側の手を体に引き寄せ、ラケットがシャトルに当たる瞬間にラケットを強く握る。そして、体をひねりつつ腕を体に巻き付けるようにして素早く振れば…………パーンッッ!!!ラケットのスイートスポットに綺麗に当たった音がした。少しドヤッとしながら絢音の方を見ると、やはりここまでできると思ってなかったか、驚いた顔をしている。それから、絢音もにやりと笑うと……コート右前方にヘアピンショットを打ってきた。こんにゃろ、こちとらついさっきまでバレーをやって、そのうえでバドもほぼ初心者なんだぞ、鬼畜かよ!なんて思いながら急いで走り、何とか床に落ちる寸前のシャトルまで追いついた。ここまで遊ばれちゃったらやり返したいな、絢音の立ち位置がコート右後ろに寄っていることを確認し…………その絢音の判断を嘲笑うかのような、コート左前へのヘアピンを打ち返した。


「なッッ……!」


慌ててシャトルを追いかけて絢音は走り出したが、体の重心が後ろにあったため追い付けず、ギリギリでシャトルは床へと落ちてしまった。


「ちょっと颯!あんたほんとに初心者!?」


落ちてしまったシャトルをラケットの先ですくい上げキャッチしてから、絢音が納得の行ってない顔をしてネットを掴んだ。


「初心者だよん、一応。まあ、テニスの合間に同じラケット競技として嗜んではいたけどね?部活とか、習い事とか『ちゃんと』は一度もやったことない」


「なんでそれで、あんなに綺麗にヘアピンを返せるわけ!?私があそこに落としたら、狙って打ち返す余裕はなさそう、って1番飛んできやすそうな後ろに構えてたのに!」


「一応返す前に絢音をみたら、重心が後ろに行ってたからね、返すならここしかないかなって笑。とは言っても、そこまで狙う暇はなかったから『ただ』落とすだけになっちゃったけどねー」


「ただ落とすだけ、って……こんなにネットギリギリに落としといて?!てか、余裕があったらどんな手を使ってたの?!」


「そうだなー、もっとコントロールする余裕があれば、ネットにシャトルの頭をひっかけて、そのうえで絢音のコートに落ちるように調整してたかな?」


この前You○ubeで見たあと、バドをしていた時に戯れでチャレンジしてみた、ある選手の技を思い浮かべながら答えた


「うそでしょ!?それって日本の本当にトップの選手とかができる技じゃん!なんて習得してるの!」


「いやいや、彼らほどどんな場合でも出せるってわけじゃないからね、だから別に上手い訳じゃ「だから、普通の人はそんなこと狙って出来ないの!」


…………そうかな?」


「全く、本当に颯は規格外なんだから……」


私の言葉を聞いて、絢音が頭に左手を当て、ため息をついた。まるで頭痛が痛いようだ。


「絢音さん大丈夫?頭痛が痛い?」


「誰のせいだと思ってるの!てか頭痛が痛いは日本語おかしいでしょうが!ほんとに颯は心臓に悪い……」


「さっすが絢音さんナイスツッコミ〜」


そんなこんなをしていると、ぴりぴりりり、と試合前練習終了のタイマーが2体に鳴り響いた。


「まあいいや。とりあえず、颯は今みたいな感じで遠慮なくやっちゃってください。あぁそうだ、今回の颯の相手、2組女子多分1番強いひとだから。」


「えぇぇ!!絶対絢音出た方が勝てるって!全然練習出来てないし!」


「練習あんま出来なかったのは颯が悪いでしょ!というか、あんたなら全然大丈夫だと思うから。ほら、試合始まるよ」


「はーい、わかったよ……」


絢音に見放されたような心境で、自分の試合をするコートに向かってとぼとぼと歩く。相手って誰なんだろうなぁ、知り合いとかだったら気まずいなぁ……


「あれ、里奈次出るの?」


「うん、私ここのコートでやるんだよね」


「あ、じゃあ私と試合だ!お手柔らかにお願いします、、」


どうやら相手は部活が一緒の伊崎里奈いざきりならしい。知り合いどころか、チームメイトじゃん!最近なかなか部活の方に顔出せてないし、ちょっと気まづいかもなぁ……


「それでは、これから102対106の試合を始めます。サーブ権のジャンケンをしてください」


「最初はグー、ジャンケンポン!」


私が出したのはチョキで、里奈の出したグーに負けてしまった。


「それでは102の方のサーブで試合を始めてください。」


「それじゃあ、行きます」


里奈の言葉で私の中のスイッチが入れ替わり、視界がクリアになった。周りの試合、紬や瑠依、洸太や一織の応援してくれている声、外の風、湿度、里奈の視線、私の状態、全てが手に取るように分かる。あぁこれは、調子がいい証拠だ。


里奈がサーブを低く、短く出してくる。私はそのシャトルを難なく返し、コート中央で構えた。すると里奈は少し高めに上がった返球を私のコートの奥へと高く返してきた。後ろに下がり、ハイクリアで返す。そしたら里奈も同じくハイクリアで返して来て、何となく里奈の狙いが見えてきた。


『何回かクリアで返し続けて、その途中で前にでも落とす気かな?』


そうはさせてあげないよと、先に私が仕掛ける。きっと里奈が私にやろうとしていたことーーコート前に落とすことーーを先にやってやった。想定よりも状況が変わるのが早かったのか、里奈は少し慌てたようにコート前方に走ってきて、少しシャトルを高めにあげた。そう来ることを予測していた私は、そのシャトルを里奈のボディに向かって鋭く打ち返した。当然姿勢が崩れていた里奈は返球することが出来ずに、シャトルが床に落ちた。


「っしゃ!」


審判であるバド部の部員が得点板の点数を1枚ペラりと捲った。これで1-0。悪くない滑り出しだろう。

お読み頂きありがとうございました。

バドミントン経験者ではないのでバドに関する記述がおかしなところがあると思います。何かありましたら、教えていただきたいです!

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