episode.5
よろしくお願いします
球技大会の2日目が始まった。次に私たち6組が戦うクラスは2組らしい。
ちなみに言うと、今回の球技大会は学年ごとに総当りで戦う。種目は男子ドッヂボール、女子玉入れ、男子バレー、女子バレー、男女バドミントンの5つだ。6組は中々に強く、女子バレーについてはこれまで戦った4戦中1試合も落としていない。
「まさかうちのクラス、こんな強いとは思ってなかったよねー」
机の上に広げた〇ッキーを取った紬は、ひらひらと手を動かしながらしみじみと言う。
「ほんとそれねー、余裕でぼろ負けしてると思ってた!」
「この前塾で他クラスの友達から『6組になら勝てそう』って言われてた笑笑」
同じ机に向かってる同じクラスの子達も紬に続く。
というか、そんなにうちのクラス弱いと思われてたんだ。
なんだかものすごく、癪、だなぁ。
「ちょっとこれは負けられないね?」
「おっと、颯ちゃん悪い顔になってるよ?」
「そこまで言われちゃあ黙っていられない」
「なんか寸劇始まった?」
「我らが6組の力を見せて差し上げようでは無いか」
「戻っといで颯ちゃーん?」
「いざ尋常に…参る!」
「どこに???」
こなれた私たち二人の掛け合いに、周りから笑い声が上がる。ほんとふたりなかいいよねー、と私の隣に座っていた子が言った。
「でっしょー、瑠依?」
「わかったからそんなにドヤ顔せんでいいって笑」
呆れたように笑うのは村上瑠依だ。ダンス部所属の子で、背中の途中まである長い髪(中をインナーカラーでピンクに染めている)が特徴である。メイクなど、女子力がとってもたっかい。私が男だったら、瑠依に惚れていたと思う。面白く、さっぱりとしつつも可愛らしい、魅力的な女の子だ。
「ほんともう颯ちゃんは私の事大好きなんだからぁ♡」
「はいはいもう夫婦漫才はいいから。で、何の話してたんだっけ?」
他の子たちが話についてこられるように、瑠依がさっと周りに水を向けた。ほんとにこの子は周りを見てるし、それに会話の回し方が上手いなあ。今度教わりたい。
「たしか球技大会の話だったよね?」
「あーそうだったそうだった、洸太ないすー」
「え、あのさ、私はあんま詳しく知らないんだけど、みんな何出るの?」
「あっちゃん生徒会の方で運営やってるから中々教室いないもんねー。えっとね、私と紬が玉入れとバレー、洸太はバド、一織は一応ドッヂボール。で、瑠依はなんだったっけ?」
「私は玉入れとバレーかな?多分颯達とほぼ一緒?」
「あーそっかそっか、そういえば選手名簿の方で見たことあったかも」
「結構みんな出るのかぁ、応援しなきゃ」
なるほどなるほど、と頷いているあっちゃんこと菅淳祐くんは生徒会、うちの学校で言うと執行委員会に所属している。勿論役割は生徒会と同じなので、学校行事ーー学祭やその他新入生歓迎会などーーを取り仕切る。そのため、クラスの方にはあまり参加出来ず、自分の出番の時だけ教室に戻るというスタイルだ。
彼はものすごくピアノが上手い。実際に聴いたことはないけど、いくつものコンクールで賞を取っているらしい。今度是非とも聴いてみたい。頼んだら弾いてくれたりするかな?
「あれ、今って何時?」
少し慌てたようにあっちゃんが声を上げた。
「今は……11時過ぎくらいだね、なんかあった?」
「あ、やばっ!11時10分からSOの確認入らないといけないんだった!」
「え、まじで!?結構時間ないじゃん!」
「あっちゃん急いだ方がいいよ!ここの片付けしとくから、先に行きな?」
「うん、ありがとう!お先に失礼します!」
急いで走っていくあっちゃんを見届けながら隣にいた紬がぼそっと呟いた。
「ほんといっそがしいよねぇ……あれ、SOって実際に試合に出る人が事前登録されてる選手と合ってるか確認するやつでしょ?」
「そうらしいよね…ほんとに行事の運営まるっと全部執行でやるのまじで大変そう」
「ほんとに感謝だよねー。
って、私達もあと5分で集合じゃん!紬も颯も次出るんでしょ??」
「次は……2組戦か!私は全く出番ないけど、めっちゃ応援してる!」
「僕も観客席から見てるよ〜」
「まじ!?ありがと!!めっちゃ声出しといて笑」
「全勝ちしてくるよーん」
「はいはい分かったから急ぐ急ぐ!」
「ごめんってるいさん今急いで準備してるから!」
「じゃあ行ってきま〜す」
「ちょっと颯!?準備はや過ぎない??」
「私は準備周到なんですぅー!じゃあ、おっさきー」
「こらぁまて!!!」
後ろからの紬の声に追いかけられながら、机の合間をすり抜け出口の方に向かう。最初に出る競技はなんだったっけ、あぁ確か、バレーボールだった気がするな。2組がどれだけ強いかは分からないけど、紬もいるし他にも経験者の子も出るみたいだから、きっと勝てると信じてる。
「待って……ってば〜!ちょっと颯、走るの早すぎ!
競技に出る選手疲れさせてどうするの?!」
「ごめんごめん…って、私も紬さんと同じく選手なんですけど?」
「あんたは別!この体力おバカ!」
「それは紬さんの方がじゃないかなぁ?」
「エ?ナンカイッタ?」
「いーえ、なな、なんでもないですぅ〜」
「全く………ってそんなこと言ってたら1体着いたじゃん!颯、これでへばったら許さないかんね?」
「ふふん、上等!この颯さまがヘマするとでも?」
「はいはいわかった、ほら行くよ」
待ってってば、これじゃあさっきと真逆じゃん、なんてブツブツ呟きながら紬の後を追う。1歩体育館に足を踏み入れたら、特有の熱気がぶわりと体を包んだ。
さあ、盛り上がっていこうぜ
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