episode.2
よろしくお願いします
週の終わりの金曜日。みんな1週間の疲れが溜まり、どことなくだらけた空気が教室に漂っている。
「次の授業ってなんだっけー?」
教室の後ろにあるロッカーに前の授業を置きに行く道すがら、紬に話しかけた。
「なんだったけ?あー、あれじゃない?球技大会の選手決め」
「この前先生が言ってたやつかー。何出るか大して決めてなかったなぁ」
「颯、あんた運動神経いいんだからなんでも出れるでしょ?」
「いやぁ、そうだったらいいんだけどねぇ・・・」
「え、なに?なんか気がかりなことでもあるの?」
話すか少しだけ迷ってから、そっと秘密の話でもするかのように紬の耳元に口を寄せ、小声で呟く。
「私玉入れ苦手でさぁ・・・」
数秒間の間が空いてから、紬が吹き出した。
「え??!嘘でしょ?玉入れ苦手ってなにそれ?笑笑」
賑やかな紬の笑い声に釣られて、クラスメイトの何人かがこちらに寄ってきた。
「なにー?なんの話ししてるのー?」
「あ、いいとこに洸太きた!ね聞いてよ、颯にも苦手な競技あるらしいんだって」
洸太は、クラスメイトの1人だ。色々な分野に対する知識が幅広く、歩く百科事典とも呼ばれている。それに本人曰く大して勉強はしてないらしいが、めちゃくちゃ勉強ができる。羨ましい奴だ。
「え、颯に?そんなことある??」
「いやそれ私も思ったんだけどさ、、その返答がめっちゃ面白くって。話しちゃってもいい?颯」
「いいけどさぁ・・・そんなにバラしたい訳じゃないからもうちょっと小声で・・・」
「あーごめんごめん、気ぃつける。
でね、その種目っていうのが・・・玉入れ、なんだって!」
また紬の時と同じく少し間が空いてから・・・
「え?嘘だろ笑笑
玉入れに苦手も何も無くない?」
「それは思った笑笑
てか私よりも絶対できるよ颯なら!」
洸太と一緒にこちらに来ていた一織が洸太に続いて話した。一織は、洸太と同じくクラスメイトの一人だ。眼鏡をかけているため一見陰キャのように見えるが、話すとすごく面白く、私の想像していた為人とは違って驚いた記憶がある。さほど仲良くないので詳しくは知らないが、どうやらスキーがものすごく上手い、らしい。
「ねぇ颯、なんで玉入れ苦手なの?苦手になる要素なくない?」
「そんなこと言わないでくださいよ紬さん!苦手なものは苦手なんだ!!」
「うーん、僕も苦手な理由気になるかなー」
紬や洸太の言葉にうんうんと一織も頷いている。さすがにこれは理由話さなきゃいけない流れかなぁ。
「昔、小学一年の頃とかに、運動会で玉入れが競技にあってさ、やらされたんだよね」
「あーそ言えばあったね、懐かしい」
「そうそう、それで出たのはいいんだけど。当時の親が撮ってた動画とか見たらね、玉入れってそもそもは玉を籠に向かって投げ入れるものでしょ?」
「まあ、玉入れだからそれが普通だよね?」
「そうなの、それが普通なはずなのに、なんでか知らないけど私、玉を投げることなく玉を持ったままその場でジャンプしてたのよ」
「「「・・・・・・」」」
なんかみんなすごい無口だなぁ。
「「「あはははははは!!!」」」
「めちゃくちゃ笑うやん!!!」
「「「これは笑っちゃうでしょ(だろ)!!」」」
だからこれいうのやだったんだよ、といじけたように口を尖らせる。
「なんて言うか、苦手というより・・・向いてない?」
と、洸太。
「こんなエピソード颯にあるなんてなんか意外だなぁ」
と、一織。
「可愛いなーうちのそうちゃんは!!」
と、私の背中をバシバシと叩きながら紬が笑っている。
「だから言いたくなかったんだよ・・・」
「まあでもいいんじゃない?きっと玉入れ以外にしてくれる、んじゃ、ないかな・・・?」
「この話しちゃったら絶対玉入れやらせようとするでしょ!あーもうほんとにうちのクラス負けても知らないからね!」
いじいじ、といじけながらつい口元が緩んでしまう。
「あ、颯にやにやしてるぞー?」
「し、してないし!」
「これは玉入れに名前入れて欲しいんだなー?みんな颯のこと玉入れに入れてあげてね!」
わかったー、と文化運動の子から返事がくる。
「もう紬、なんで玉入れに入れるの!」
「えー?颯が嬉しそうだったから?入れてもいいかなー?って」
「よくない!!」
洸太や一織が私たちの掛け合いを見て笑っている。なんかこんな感じの話しかしてないな最近。
「もうしょうがないから、玉入れやることになったら頑張るけど、失敗したらごめんね皆」
「まあ大丈夫でしょみんな優しいし。私は一切関与しませんけどー」
「いや責任取れよ!てなワケで紬も玉入れに入れてもらってもいい?」
「え、私も??私はバレーでばしばしスパイク決める予定入ってるんだけど?」
「そんなもの知らん!文化運動よろしくね!」
わかったよーと笑ってみんな許してくれた。
望んでないと言えばそこまでだけど、出る種目が決まって良かった。それに、私たちの掛け合いを通して、クラスみんなが仲がいいことがわかったから、それはいい収穫かな?このまま球技大会も成功するといいな、と思う。
いよいよ来週から、球技大会が始まる。
お読み頂きありがとうございました




