episode.1
よろしくお願いします
10月某日。私、藤堂颯はいつものように市電で15分ほどかけて高校に通っていた。私が通っている南雲高校は県内では1番の偏差値を誇り、有名大に多くの合格者を出している。
市電をおりて歩きで数分、高校の校門が見えてきた。南雲高名物である白い石が見えてくる。
白い石とは、生徒玄関から外に出るとすぐそこにある、名前の通りただの白い石のことだ。それが妙な形をしていようが、高さが2メートルほどあろうが、白い石と言っている割に色々と絵の具で書いた跡とかついていようが、『白い石』であることには変わらない。もちろんこの石がここに置かれるに至った経緯には、「美術部の卒業生が、卒業時に当時在学中に作ったこの石を持ち帰ろうと外までは持ち出したが、それ以上動かす気力が無くなって置いていった」だとか、「突然空から降ってきた」とかは色々とあるのだが。
そんな曰く付き(?)な白い石を横目に生徒玄関へと向かう。
靴箱に外靴を入れ、上靴を取り出した。ふと、この靴もくたびれてきたことに気がついた。そりゃあそっか、この靴で体育もやっている訳だし。今度変えようかなぁ、なんて思いつつ上靴を履き、階段に向かう。私たち一年生の教室は3階だ。
この学校は、1階が図書室や事務室、書道教室や美術室など、2階が職員室、物理教室などの理科科目の特別教室、3階が一年生、4階が三年生、5階が二年生の教室となっている。
3階に向かうのでも階段がだいぶきついけど、二年生に上がったらさらに教室の階数が上がるって、めっちゃきつい気がするな。大丈夫だろうか?
「おはよー」
各々が勉強をしたり、雑談をしたりしている朝の教室の雰囲気を壊さないくらいの音量の挨拶とともに、私は教室の後ろの扉から入った。
「おはよー!ねぇねぇ、今日の英語の小テストの勉強した?」
クラスメイトであり、同中でもある國本紬が早速話しかけてきた。肩下の黒髪は今日もサラサラと揺れている。毎回思うけどほんとサラサラだな重さないのか?
「うわやば!今日だったっけ?なんもしてないわ」
「えまじ?今回の範囲けっこ重いよ??」
「うわ終わったぁ」
「まああの先生なら大丈夫そうじゃない?優しいし」
高校に入ってから、否、中学の頃から何十回と繰り返してきた会話。こんなのがいつまで続くんだろうな、と完璧に取り繕った笑顔の裏で、そっと息を吐く。
「おーいHR始めるぞ、席につけー」
担任である辻原和が教室に入ってきた。
今日もいい感じに頭テカってるなぁ・・・・・・いつも思うけど1回触ってみたい。
「もうすぐ球技大会だけど文化運動委員から何かないのか?」
あぁそう言えば、10月のはじめには球技大会があるのか。どんな競技あったっけ?
「今回の球技大会の種目としては、バドミントンとバレーが男女共通、ドッヂボールは男子、玉入れは女子のみの種目となっています。出場種目決定は次の・・・・・・いつでしたっけ、先生?」
「確か金曜の7時間目だった気がするぞ」
「あ、そうなんですね。では、次の金曜に出場種目決めるので、皆さん何やりたいか考えといてください」
はーい、とクラスのあちらこちらから気の抜けた返事がかえる。みんな案外やる気ないのかな?
「ねぇ、颯は何出る?」
今話しかけてきたのは席が隣の木本 祐希だ。名前はめちゃくちゃ日本人だけど外見は完全に外人の彼は、やはりというかめちゃくちゃ英語ができる。まあ、第一言語が英語というあたりからお察しではあるが。
「うーん、私は玉入れかバドかな?そんなにバレー得意じゃないしね。因みにラドクリフくんはどうするの?」
「だから俺はラドクリフじゃ無くてゆうきだってば・・・。そうだな、俺もバドとかかなぁ。」
「え、バレーとか出来そうだけど出ないの?」
「いやそんなに出来ないんだよね、バレー。バドはテニスと割と近いからさ、まだいけるかなって」
「あぁそっか、ラドクリフくんはテニス習ってるんだもんねぇ」
「だから俺はゆうきで「おいそこ何話してるんだー?まだ連絡事項話してるんだから聞けよー?」
いっけね、と思い先生の方を向くとそんなに怒ってなさそうで安心した。だけど、隣からひしひしとこちらを責めていそうな視線を感じる。恐る恐るそちらに視線をやると・・・・・・
「(じーーー)」
めちゃくちゃゆうきがこちらを見ていた。
「(ごめんって)」
「(許さん)」
「(えーひどーーい)」
「(大して酷いとも思ってないだろお前)」
「(えー?そんなことないよ?めっちゃ傷ついてるよ?)」
「(なんでお前が原因なのに傷つくんだよ!)」
「おい何を喋ってるんだー?やめろよ?」
「「すんませんした!!」」
再び先生に注意されたことでさらに強い視線を隣から感じたが、その視線は無視をして窓の方に視線をやる。秋晴れと言うのに相応しい綺麗に澄み切った空と、白山のコントラストが美しい。
白山とは、学校から5キロ圏内にある標高500メートル程の山だ。付近に住んでいるのであれば、誰もが山頂にある展望台に行ったことがあるような身近な存在である。
友達を揶揄い、丁度よくふざけたキャラである私、藤堂颯の日常は今日も恙無く過ぎていくらしい。
お読み頂きありがとうございました




