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ローザタニア王国物語 〜A FAIRY TALE〜  作者: 月城 美伶
jardin secret ~秘密の花園~

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第4章 Jardin secret ~秘密の花園~ 第二話

ナルキッス大国のジョージ陛下主催のパーティーにご出席されるため、ウィリアム様とシャルロット様ローザタニアのご一行は遠路はるばるグララスの古城へと向かわれておりました。

 途中、湖の畔で休憩をされていると、好奇心旺盛なシャルロット様は近くの森の中へと入って行かれたのですが…。


さぁ第二話スタートです。 

 「姫様大丈夫ですか?大分森の奥へと進まれているような気がしますが…」


湖から森に入ること少し、シャルロット様は前だけを向いてズンズンと森の中を歩まれておりました。そんなシャルロット様の後をキョロキョロと辺りを見回しながらセシルは心配そうについて行きます。


「さすがセシル、よく気が付いたわね!そうよ、どこが出口か分からなくなっちゃったの!」

「えっ!!さっき大丈夫って言ったじゃないですか!!」


クルッと後ろを振り返り、シャルロット様は自信満々でセシルに笑顔でそう告げました。

まさかとは思っておりましたが、やっぱりいつも通りの展開か…と落胆したセシルは大きく肩を落とし、ヴィンセントばりの大きな溜息を一つしてその場にヘタッと座り込んでしまいました。


「さっきまでは大丈夫だったの!ホラ見て、あの樹を目印にしていたんだけど…同じ様な景色ばっかりで何だか分からなくなってきちゃったの!」

「…仕方ないですね、私、さっきこんなこともあろうかと目印のハンカチを結んできたんです。来た道を戻りましょう」

「さすがセシルだわ!」

「姫様が無防備すぎるんですよ…」


頭を抱えながらスクッとセシルは立ち上がり、さぁ戻りましょうとシャルロット様を促して来た道を戻り始めました。


「…あれ?おかしいですね。もうそろそろ私のハンカチがあるはずなのに…」


少し来た道を戻り、セシルは自分のハンカチを結んだであろう樹の場所まで戻ってきたつもりでしたが、そこにはセシルの結んだハンカチが無く、今までの景色となんら変わらずただたくさんの樹木が多い茂っているだけでした。


「ねぇ、ここさっき通らなかった?私あの花見覚えあるもの」

「…えぇ、先ほど私も見かけたので覚えています。この花はここ以外では見かけませんでしたから」


シャルロット様が指さした先には、とても大きくて濃い赤色をしたローザタニアには生息しない珍しい花が数本咲いており、シャルロット様もセシルもこの花を見かけたことは覚えていらっしゃいました。


「…ねぇ、もしかして私たち本当に迷っちゃった?」


不安そうにシャルロット様がセシルに問いかけます。セシルも不安でいっぱいでしたが今はシャルロット様をお守りしなければ…と気丈に振る舞っています。


「だ…大丈夫です、シャルロット様。私たちそんなに森の奥深くへ行っていないはずですから…」

「えぇ…そうね」

「でも不思議ですね…同じ場所をグルグルと歩いているみたいな感覚ですね。道はそんなにややこしいものではありませんでしたし…何かおかしいような気がします」

「どういうこと?」

「あの赤い花もそうですけど…道は一つしかないところばっかりだったはずです。なのに何でこんなに迷ってしまったのか…」

「…何だか気味が悪いわね」

「えぇ、一刻も早く元の道に戻らねば。きっと皆心配されているはずです」

「どうしよう、セシル…」

「大丈夫です!きっとケヴィンや皆が見つけてくれるはずです!!だからそんなに悲しそうなお顔をしないでください…。幸いにもまだ明るい時間です。大丈夫…ケヴィンが何としてでも見つけてくれるはずです!!」


今にも泣きだしそうなお顔をされているシャルロット様の手を握り、セシルは自分にも言い聞かせるような強い気持ちでシャルロット様を励まされました。


「…そうよね、ケヴィンが居るんだもの…大丈夫よね」

「そうです!大丈夫です!!…この森は猛獣の気配もしませんし、下手に動き回るよりもしばらくはじっとしていましょう」

「そうね…」


木の葉が揺れる以外は全くと言っていいほど音がしない不気味なくらい静かな森の中で、シャルロット様とセシルは不安に押しつぶされそうになりながら立ち尽くしております。

少し座って休憩しましょう、とセシルは一本の大きな木の下にシャルロット様を座らせました。

風が出てきたからでしょうかザワザワと風に木の葉が大きくざわめいて二人をさらに不安な気持ちにさせます。


「…ごめんねセシル。私がもっと早く引き上げていればこんな道に迷ったりなんかしなかったのよね…」

「何を仰いますやら!私がもっとしっかりとしていればよかっただけの話です!シャルロット様には怖い思いをさせてしまって…申し訳ございません…」

「セシルのせいじゃないわ。私の好奇心のせいよね…ごめんね、いつも厄介なことに巻き込んで…」

「大丈夫ですよ、シャルロット様の厄介ごとなんて可愛いもんですし慣れてますから」

「意外と酷いこと言うわよね…」

「すみません…つい本音が…。でも私たちはそんなシャルロット様が大好きですのでお世話をさせていただいているんですよ」


シャルロット様はガクッと肩を落としてうなだれておりましたが、そんな様子をたいして悪びれることもなくセシルは笑いながらシャルロット様のお手を取られました。


「セシル…」

「大丈夫です!きっと皆シャルロット様のことを探し出してくださいます!だって皆シャルロット様の事が大好きですから」

「…うん」


少し気分がほっこりされて落ち着かれたシャルロット様はふと視線の先の森の中で何やら影が動いたのを感じました。


「ねぇセシル…さっきあそこに何か影が動かなかった…?」

「え?」

「私の見間違いかしら…。何かが一瞬動いたような気がしたの」


シャルロット様はあそこら辺…とセシルにも分かるように、木がたくさん覆いかぶさるように群生している藪の方を指さされました。

セシルには何も見えなかったようでジッと目を凝らしておりましたが、ゴクリ…と唾を飲みこみ意を決したようにゆっくりと立ち上がりました。


「…私ちょっと見てきます。シャルロット様は危ないからここに居てください」

「そんな…セシルが危ないわ!」

「私は大丈夫です…毎日ケヴィン達と鍛えていますから。いいですか…絶対動かないでください」


同じく立ち上がろうとしたシャルロット様を右手で制止し、セシルはゆっくりと足音を消す様に歩きはじめ不審な場所へと向かっていきます。

そんなセシルを後ろからシャルロット様はひやひやとした表情で、何もないことを祈りながら見守っています。

その時、シャルロット様の背後にある大きな木の後ろからガサガサと音がし、振り返ろうとしたシャルロット様の肩に掴まれるようがっしりと何かが触れました。


・・・・・・・・


 「このぬかるみにある足跡は…シャルロット様の靴の形だと思うんですよね。こっちのは多分セシルのブーツですよね…」

「そうだな、あの二人のだろうな。しかし全然人が入らない森というものは道らしきものは皆無だな」

「まるでリアル迷路ですよ…。シャルロット様が少しヒールのある靴を履かれているから何となく見えたりしてますが…もう少し落ち葉があったりしたら完全に探しきれませんよね」

「あぁ。だがしかしヒールの跡ですら薄らだからな。これはなかなか探すのが難しいかもしれんな」


シャルロット様とセシルを探すために、ウィリアム様とケヴィンはおそらく二人が歩いたであろう柔らかい土に微かに残っているシャルロット様のヒールの跡とセシルのブーツの跡であろう痕跡を、目を凝らしながら探して歩いております。


「すぐに二人を追って入ったのに…なかなか見つけられませんね。あの二人の事だからそんなに早足で歩けるわけなさそうなのに…」

「シャルの事だからきっとあっちこっちフラフラ~と歩いているはずでまだその辺に居そうな気がするんだがな…。しかし同じような景色ばっかりで目立つものが無くて方向が分からなくなりそうだ」

「本当にそうですよね…一応目印で何ヵ所か木にロープ付けたんですけど、こんなにも訳が分からない森だったらもっと要りそうですね」

「さすがだケヴィン、気が効くな。…しかし本当に手のかかる妹だな…」

「まぁまぁ…。久々にお城の外に出られてテンション上がったんじゃないでしょうか」


ウィリアム様は少し頭を抱えられて溜息をつかれました。そんなウィリアム様をケヴィンはなだめられます。


「もう14だというのに…落ち着きのない妹だよ。いつもお前たちには世話になりまくっているな」

「まぁ飽きなくていいですけどねー!ヴィンセント様のお顔に青筋が立ち上がってバルトに八つ当たりしまくって俺がバルトを慰めるまでが毎日のデェフォですよー!」

「うん、目に浮かぶよ…」


ウィリアム様の頭の中にはその構図がしっかりと鮮明に思い描かれ、あはは…と笑いながらも若干青ざめておりました。


「まぁローザタニアが平和ってことですよ!」

「そうプラスに考えておくよ…ありがとう、ケヴィン」

「いえいえ!それよりも…何だか先程から少し霧が出てきてませんか?」

「そう言えば…そうだな。それに少し風が出てきた…急いだ方がよさそうだな」

「はい。まぁセシルが一緒に居るから…お一人ではないのがまだ救いですね。とりあえず声出して呼んでいきます!姫様ーっ!セシルーっ!!」

「あぁ…シャルーっ!セシルどこだー!?」


お二人はシャルロット様とセシルの名前を呼びながら森の中を進んでいかれます。

程なくして、ケヴィンが何やら見つけたらしく大声でウィリアム様へとお声掛けされました。


「陛下っ!こちらに足跡があります!!…もう一つ足跡がある…」


ケヴィンは足跡に近づいて足跡のその先を見るためにジッと見つめていますと、シャルロット様のヒールとセシルのブーツ跡らしき足跡の他にもう一つ足跡があることに気が付きました。


「…どういうことだ?」


怪訝な顔をされながらウィリアム様はケヴィンへと近づかれます。


「見てください、陛下。こちらがシャルロット様、こちらがセシルの足跡だと思われます。何度かこの辺りを行ったり来たりしてるのか至る所にある…。そして…これ見てください。ここに違うヒールの跡があります」

「もう一人誰かいるのか?」

「おそらく…。この足跡は…あ、あっちの茂みから出てきてますね」

「3つともこっちに続いているな」

「あっ…あれセシルのハンカチだ…」


ふと顔を上げたケヴィンが、木の枝に巻いてあるハンカチを見つけました。


「あれ、前に俺が上げたやつです!やはりここをお二人は通っていますね」

「そしてもう一つ謎の足跡だ」

「…これは気を付けた方が良いかも知れません」

「そうだな…」


お二人が固唾をのんでいらっしゃると、遠くの方で聞き覚えのある鈴の鳴るような可憐なお声の悲鳴が微かに聞こえてきました。


「…今悲鳴が聞こえませんでしたか?」


恐る恐るケヴィンがウィリアム様に問いかけました。ウィリアム様にもそのお声が聞こえたようで、神妙なお顔をされて声が聞こえた方向を見つめていらっしゃいました。


「…シャルの声か?」

「姫様のお声…ですね。あちらの方からですね…行きましょう!」


ウィリアム様とケヴィンはお顔を見わせ、悲鳴が聞こえた方向の方へと走っていかれました。

たくさんの枯れた木の枝や小さな葉っぱが生い茂っており、頭上には蔦がお二人の行く道を塞ぐかのように幾重にも重なって垂れ下がって道を塞いでおります。


「くそ…っ木が邪魔だなっ!」


腰に携えている剣を出して、ケヴィンは枝や葉っぱ、蔦などを切り払って道を作っていきます。ウィリアム様も剣を取出してケヴィンと同じく森の道を切り開いて行っております。


「陛下、急ぎましょう!霧が濃くなってきました!!」

「あぁ!だがしかし…まるで我々の行く先を塞ぐかのように木が絡まって生えて邪魔してくるなっ!」

「まるで意識があるみたいですね…っ!陛下、お気をつけてっ!!」

「…シャルっ!どこだっ!?」


ウィリアム様はシャルロット様の名前を呼びながら、道を切り開きつつ森の中を進んでいきます。

まるで獣道のようなこの道の先に果たしてシャルロット様は居るのだろうか…などお考えになりながらウィリアム様は必死に進んでいかれます。しかし悩んでいる暇はありません。シャルロット様の無事を願いながら、ウィリアム様はシャルロット様のお声であろう悲鳴が聞こえた方向へと無我夢中で向かわれていきます。

「陛下、少し明るくなってきましたっ!この先開けた場所に出るかも知れませんっ!」


「ケヴィン、気を付けて参るぞっ!!」

「はいっ!」


鬱蒼としている森が少し開けているのでしょうか、数メートル先が少し明るくなっております。ウィリアム様はそこにシャルロット様が居ることを願い、一目散にそこを目指して進んでいかれます。

ケヴィンも細心の注意を払いながら道を切り開き、ウィリアム様と共に進んでいきます。

絡みつくように邪魔をするたくさん生い茂った木々を切り開き、ウィリアム様とケヴィンは場所へと飛ぶように少し開けた場所へと出て来ました。

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