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ファーストアタック

南に向って親父と水入らずのドライブ旅行。


目的はまあ、アレなんだけど。


運転を途中交代した感じ、我が愛車ホライゾンは絶好調だ。


本気で頑張れば1日で到着したかも知れないが、どう考えても深夜になるし、こっちの疲労が半端ない。


今も皇国は攻撃を受けているのだろうが、安全第一。


目的を見失ってはならない。


俺達は真王とか本気で名乗っちゃってる日本人を止めなければならない。


だから、サウスラファを視界に捕えたのは出発した翌日の昼。


すまぬ皇国。


ちょっとゆっくり寝過ぎた。




先に手紙鳥を飛ばして貰ったので通知は行っているはず。


が、飛ばした次の日に出発しているので、返事は確認出来ていない。


少なくとも俺達は。


衛兵に「どんな者は知らん!!こっちに来い!!」とは言われたらどうすんだと文句を言いたくなったが、先の聖剣盗難事件未遂でサウスラファは文句を言える立場ではない。


加えて敵に匹敵する兵器を所持していることも書きしたためておいてくれるらしい。


皇国がまともな判断をするなら、現時点では間違っても皇国が俺達の身柄や持ち物を奪うことを考えることはなく、敵に勝てるかもしれない俺達を有効に使おうとするはずだと。


とはいえお役所仕事。


末端まで話が伝わっているかは保証できんので、その辺りも連絡してくれるそうだ。


即ち「砦の扉を破壊してでもぶっちぎって下さい」とのことで。


何故だか知らんがイケスカイケメンが少しだけ好きになった。


ヨシュアよ、今後は名前で呼んでやろう。


「よし、ここから運転代わるぞ」


おっと考え事している場合じゃない。


親父に運転を代わり、俺は助手席で新兵器を手に取る。


グレネードの準備は万全だ。


窓を開けいつでも撃ち込めるように構える。


車はぐんぐんと進み、砦の扉が見えてきた。


砦の扉は開いていた・・・残念とは言うまい。


その周囲をたくさんの人が取り囲んでいる。


この状況でぶっちぎったら大惨事だ。


「あー、王国への避難民・・・かな?」


「だろうな」


考えてみれば当然だが、当然大混乱に陥った東と北に人が集中。


あぶれた人と、より安全な場所へと考えた人達が王国に向って避難しようとしているわけだ。


出発前に避難民が既に出て来ているのも聞いていたが、こうして直に見ると感じる物も変わってくる。


集まった人々が避難民なのは身支度を見ればなんとなく解る。


持てる者は全部持ったぜと言わんばかりの大荷物。


その大荷物を傍らに集まった人達はモーセの割られた大海の如く中央に道を開けている。


ワタシは侮っていたようだ。


皇国の仕事はこっちが思うより早かった。


「俺達の到着が遅かったとも言う」


仰る通り。




唖然とした顔で口をポケーッと開けながら我々を眺める皇国国民達を、時に横目に、時避けながらさらに南下する。


悲鳴を上げて逃げてくれる人は寧ろありがたい。


通路の邪魔をしないから。


「さて問題です。本日親父は何回クラクションを鳴らしたでしょう?」


「勘で一応応えるとして、お前正解知ってんのか?」


「答えは、思い出すだけじゃ足りない程度」


「なるほど。数字じゃなくていいわけだ」


イライラする親父を冷静にするため会話を繋ぐ俺って出来る子。


風景は田舎町から段々都市っぽい様相へ。


プロテスト公領とこの辺りは同じだ。


もうすぐ皇国東のサンライズ侯爵邸が見えるはずだが、十分休憩もとった今回は挨拶なんて面倒で悠長なことをする気はない。


ナナちゃんまで快速運行、途中停車はない。




都市っぽい風景がまた田舎町のような風景に戻る。


これを抜けて現れる都市こそが王都ということだ。


そして本当の意味で愛車が活躍するのもこの後だ。


まさかファンタジー感溢れるこの世界で、最終対決が車両VS車両になるとは思わんかった。


ちなみに正々堂々なんて言葉は俺と親父にはない。


言ったぞ?


まったくないからな?


だからその姿が見えたとき、ためらうことはなかった。




◇◆◇◆◇


まるで楽しむかのように、嫌みなほどにゆっくりと迫ってくる巨大な鉄の塊。


自身を真王と名乗り、既に二国を滅ぼした悪夢が、自身の守るべき場所へと迫っている。


尊皇アルリムはもうすぐ援軍が来ると言っていた。


その希望を胸に力を振り絞った。


僧侶の治療を受け、傷つくことにも構わず視力を振り絞り、長引かせたこの戦線も、もう限界だ。


鉄の箱の上部から生えた10本の腕。


4本の腕は信じられない速度で矢を連射しながら近づく者を殲滅する。


死にものぐるいでかいくぐった先にまつのは、更なる絶望。


他の4本の腕から吐き出される炎がすきまなく壁をつくり、人を火だるまへと変える。


遠距離攻撃はまるで効果はなく、矢は勿論、魔法ですらびくともしない。


そして、その悪夢は一撃毎に城壁を吹き飛ばす、悪夢のような何かを残りの2本の腕で投げているのだ。


長い射程から撃ち出される超破壊力の兵器に、王城は為す術もなく、只なぶられている。


なぶって、壊して、既にわかりきった勝敗。


しかし、降伏を促すことなく目の前の悪夢は進み続けている。


明確な意思表示。


望むものはただ一つ。


尊皇の命。


即ち、この国そのものの命。


王の力なしに国がまとまることはない。


それは周知の事実。


誰もが当たり前のこととして受け入れている事実。


その命が消えるば、当然その国も消える。


絶対に許せない。


許してはならない。


だがどんなに怒りに猛ろうが、正義に心焦がそうが、己の刃は届かない。


自身を庇い、戦う力を失ったローラン団長。


アストルフォも今さっき足に負った負傷で倒れている。


急ぎ僧侶の所まで担いで帰ったがどうか。


僧侶が首を横に振る。


これで残る戦力は自身只一人。


「いや、私とて戦力と呼べるのか・・・」


口に出すまいと思っていた弱きがとうとう漏れた。


心が折れたのが解った。


悪夢は進み続ける。


王城に更なる悪夢を投下せんと、破壊の爆炎を司る2本の腕が後部へと引き倒される。


ベルナデッタは全てを諦めた。


既に射程内だ。


この一撃は届く。


尊皇アルリムが住まい、今兵達に匿われているであろう王城の中央へと。


「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」


ベルナデッタから発せられた悲嘆の叫びは、しかし只の声。


如何なる願いを込めようとも、何の力も持たない只の音。


だが、その声と共に発せられた轟音は違った。


城を蹂躙する鉄塊の側方、轟音発したる場所より放たれた蒼き一筋の閃光は、並んで生えた2本の腕の根元を、その一筋で捕え貫き破壊した。


「な、何が!?」


愕然としながらその閃光放たれた方向を見る。


ベルナデッタは知っている。


聖剣士を地に伏せる存在は、なにもこの鉄塊ばかりではないのだ。


「あ・・・あれは・・・」


ベルナデッタは知っている。


大敵たる鉄塊を小さくしたような、走る箱から身を乗り出し、奇妙な筒を構えるその者を。


尊皇アルリムが呼び寄せた援軍。


「マナウタ、殿・・・」


未だ戦地にいることも忘れ、思い出す。


敵として祠で出会い、瞬時に容易く皇国最強の聖剣士2人を制した1人の男への恐怖を。


その男が援軍だというのなら、


(・・・もう、大丈夫だ)


明確に勝てる根拠があるわけではない。


それでもベルナデッタは心から溢れた安堵に心を委ね、何故か疼き始めた尻をそっと手で押さえた。


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