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夢の終わり

「何が起きた!?」


応える者はいない。


「チィッ!役立たず共が!」


車両の後ろに並ぶ奴隷達に奴当たりつつ、状態把握に努める。


「クソ!!投擲アームが死んだか」


装甲車の最強火力であり、逢真の切り札、炸裂弾。


その発射台が突如反応しなくなった。




ドラゴンの素材から火薬をつくる方法は知らなかったが、逢真の手元には愛詩が飛んだあの日、手に入れていた弾丸があった。


撃つためにはドラゴンの鱗で銃身をコーティングされた特別製の銃が必要だったが、銃は愛詩が持っていってしまった。


ならば妥協案をと大魔竜に四大竜を狩らせ、手に入れた素材を狩人に命じ弾丸に代え、分解して火薬を生み出した。


それを使って炸裂弾をつくり、後は買った奴隷に再度炸裂弾を登録させ、たっぷりの素材を渡して車に詰め込む。


格納と矢作りという技能を持った、狩人を乗せた装甲車は、弱点たる弾切れすら克服した最強の兵器であるはずだった。


その炸裂弾用に設置した投擲アームが動かない。




何の危惧もない蹂躙が、逢真の油断を産んだ。


いや、元々油断し、見下し、取るに足らぬ相手と決めつけていたのだ。


愛詩を。


生きていたことすら意外だった。


それでも持っていった機材の全てを使い果たして、漸く生き延びただけだと割り切っていた。


あんなガキが余所の世界でまともに生きていけるわけがないとタカをくくっていた。


だから道薙だけを警戒した。


強力な銃を開発したのも知ってはいたが、試射の結果、とても人に撃てるような反動ではなかった。


どうせ撃ってもまともには当たらない。


つまり道薙のメインウェポンはアームローダーだけ。


なればアームローダーを封じれば、逢真の勝利は決まりだと思っていた。


その上で万全を期すためにトゥーリアを送り込んだ。


トゥーリアが愛詩を警戒していたからだ。


「ならばお前の手で仕留めてこい」


大魔竜が道薙と交戦している間、愛詩をトゥーリアの手で仕留める。


それで終わりの筈だった・・・




(あの車は・・・)


周囲を見回せば直ぐに目に付いた。


砂埃を挙げながらこちらへと走り来るホライゾン。


その車の運転席に座る道薙と、そこから身を乗り出し、銃を手にしてこちらを見ている“ガキ”の姿。


逢真は気付いた。


根本的な前提を間違えたことに。


その2人が向ってくる事実の意味に。


「鬱陶しい・・・鬱陶しいぞ、クソ共がぁッ!!」




◇◆◇◆◇


「親父!!後ろに人が乗ってる!!下手に車体は攻撃できねえぞ!!」


ライフルのスコープ越しに見えた情報を共有する。


「おそらくお前と同じ職業の者達だろう」


「ちと目が虚ろだった。無理矢理従ってる感すげえな」


「解析した。彼等は奴隷だ」


「技能デビューおめでとう・・・って人間マガジンってことか。人権的に容赦ねえな」


「ひとまず車を止めるのが先だ。タイヤ狙えるか?」


「ライフルはあと1発。猟銃使うならもう少し近づきてえ所だが、向こうの武器が邪魔だ」


「なら武器から破壊しよう。機動力ならこっちが上だ。作戦通り行くぞ」


「おう」


作戦と言ってもたいしたことはない。


敵が装甲車ならスピードはホライゾンの方が絶対上だからね。


相手を中心に円を描くように走り、狙いを絞らせない動きを徹底するってだけ。


「鬱陶しい・・・鬱陶しいぞ、クソ共がぁッ!!」


「ナナちゃん超キレてんぞ?」


「ストレスに弱い奴でな。だが都合が良い。冷静になられる前にやるぞ」


キレてる相手は更に怒りを煽るのが基本だ。


相手の左側面から向っていった俺達の車は、射手の俺が円の内側になるよう反時計回りの進路をとる。


相手が冷静ならこの進路に妨害が入ると予想したから、確かに都合が良い。


そのまま装甲車の尻に回り込む。


連射式クロスボウがこっちを向いたが、その前に親父に目を瞑るよう指示して、地面に閃光照明弾を叩き付けた。


こっちの世界に持ち込んだゴーグルが役に立った。


目を瞑ったあと直ぐにゴーグルをかけて目を明ければ、まだ眩しいが視界は確保出来る。


コレも親父との作戦。


そもそも1人で何本も腕を操ることなんて出来ない。


当然装甲車の腕の動きにはエイムにAIサポートがされている。


とはいえ所詮先頭を専門にしているわけでもない一企業が、それも臨時で用意したもの。


カメラ画像を閃光で染められれば、動作を止める程度の性能しかない。


その間はやりたい放題だ。


猟銃でクロスボウを撃ち抜く。


「いいぞ!その調子だ!」


「調子に乗ってんじゃねえぞ!!」


怒号と共に火を火炎放射で車両を覆う装甲車。


だがの間合いで火炎放射は役には立つまい。


まずはクロスボウからだ。


「ナナちゃんも動き始めたぞ。多分間合いを詰める気だ」


「防御力のある車じゃないからな。クロスボウの弾幕射程に捕えて蜂の巣にしたいんだろうよ」


「んで、その後火であぶろうってかよ。よく日本で一般人やれてたなアイツ。普通に思考がサイコパスじゃねえか」


「相手が何でも武器の強さは変わらん。念のため動きを制限しておけ」


「あいよ」


応える様に建物に向ってグレネードを放り込む。


「ぐおぉぉぉ!?」


グレネードによって吹き飛ばされた瓦礫の衝撃で、驚いたナナちゃんの絶叫が聞こえるが。


装甲車だけを壊す予定なので直接は当てられないが、足止めには効果的だ。


土地の持ち主には悪いが、今まで誰かさんが破壊行為に徹してくれたおかげでそこら中そもそも瓦礫の山である。


今更気にしなくて良いだろう。


そしてあるものはしっかり使っていこう。


俺達は視界から消えるように瓦礫の向こうに車体を向わせ、一旦大きく距離をとる。


さて、ナナちゃんに問題です。


次の攻撃はどこから来るでしょう?




◇◆◇◆◇


長い地獄のような時間だった。


自身の野望が潰えていくのが解った。


そもそも射程でクロスボウは猟銃に敵わない。


それなのに閃光照明弾とグレネードを使い間合いを詰めては、丁寧に破壊していく。


自身も武器を変えるべきか?


ドラゴン製ではないが装甲車の中には通常の猟銃も備えられていた。


だがその勇気を出せなかった。


余りに確実な愛詩の射撃精度に対抗できる自信がなかった。


窓を開けて銃を構える。


要塞の隙間を空ける勇気を振り絞ることが出来なかった。


そしてクロスボウを全て失った。


そしてついさっき火炎放射も起動しなくなった。


車内モニターに映るエラー通知も、もう気にならなくなった。


車が傾いだ。


タイヤを破壊されたらしい。


他のタイヤも時間の問題だろう。


「終わり・・・これで終わりなのか」


閉ざされた孤独な空間で逢真は天を仰いだ。


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