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復活

車酔いか、ジャンヌが嘔吐した。


ミカエスト王国に辿り着いていたのは幸いだった。


王都に向うつもりでいたが、ジャンヌを自宅に返すため進路変更。


ついでに当主に報告した。


「話は聞いている・・・ありがとう。儂からも心から感謝しておる。うむ、褒美は奮発せんとな。あ、いや、だがまだ喜んでばかりもいられんのか」


俺達のことは手紙鳥で参謀殿に伝えてくれるらしい。


正直馬もなく、アームローダーの燃料はいっぱいいっぱい。


休息も必要だったので助かった。


当主に一応ジャンヌの世話役として侍女の派遣を頼んだら、快く了承してくれた。




王都からの返信は早かった。


向こうから来てくれるってことで、俺と親父は自宅待機。


折角なので久々のちゃんとした入浴を楽しんだ。


あ~~・・・癒やされる~。


で、風呂上がったら派遣された侍女が深刻な顔で待ち受けていた。


「おそらくですが・・・ご懐妊されているかと」


このタイミングで!?


いや、でも、マジか・・・うん、そっか・・・すっげー嬉しい。


俺も父親かぁ。


「俺もお爺ちゃんかぁ」


つか、身ごもった腹で戦ってたのかアイツ。


それはダメだな・・・ジャンヌはここで戦線離脱だ。


ちゃんと言いに行こう。


身籠もってくれた感謝と、同族のケリは同族(おれたち)でつけるって。



参謀殿がプロテスト公領に辿り着いたのは、翌日の朝。


疲れてたのかガッツリ寝てた所を起こされ寝ぼけ眼で参加させられた。


つか早くない?来んの早くない?


どうやって時短したのかと思ったが、軍師の技能“鳥の目”で俺達がプロテスト公領に進路をとったのを捕捉、直ぐに城を出たらしい。


ストーカーか、お前は?


「手紙である程度お伝えしていますが、まずは現状の真王の動きと各国の情勢について間諜達の報告も交えてお伝えします。」


公爵邸に着くやいなや、そんな前置きと共に会議モードに場を包んだ。


「まず北の聖国ノースガブリ。大魔龍と魔神達の侵攻によりケルビム侯爵が治める西側の領域が崩壊というべき状況、さらに王都が魔神達に占拠されています。過去のモンスター襲撃の際、南のセラフィム侯爵領も蹂躙されています。生存する住民達は東のスローンズ侯爵領に避難。マナウタ殿達の活躍により大魔龍は討伐され、魔人達の討伐も聖国と我が国の連合体により、おそらく近日中に討伐が完了するでしょう」


「アベル殿下もオソドクス郷も帰還されるのでは?」


「アベル殿下より、この後備えねばならない南からのまとめ役として、オソドクス郷の先行帰還を提案頂きました。カタリナ殿下も剣を掲げたとのことですが、まだまだ気力弱く。また王都を奪還したところで直ぐに住民を戻せる訳ではありません。緊急避難的にケイトリック領で住民達の一部を保護する方針をスローンズ侯爵と取り決め、避難民の守護役を兼ねて後日御帰還成されるとのことです」


「こういってはなんだが・・・よく陛下が許されたな?」


たしかに、息子の安全絶対守るメンじゃなかったっけ?


「エバ王妃陛下に諭されたようです。世界の危機に剣を持てぬ聖剣士を国民の姿に晒すのが愛する息子のためになるのかと」


母ってつえー。


「聖王が崩御され、後を継ぐ者もなき今、我が国の支援なしに、この先聖国は立ち行きません。そもそも王位を引き継げず、既に聖国と呼んでよいのかすら怪しい状況。こう言っては何ですが王妃殿下には感謝しか在りませんね」


当主と参謀殿の会話を聞きつつ、頭の中のミカエスト王国戦力表に書かれたアベル王子の名前に×をつける。


そもそもアテにはしてなかったりするが。


「次に西のウリウェスト帝国、といっても既に国家は崩壊していますが・・・。現在、突如空より降り立った男が王都の兵士達と交戦中。魔人に変異した聖剣士達と激闘を繰り広げています。おそらく今回の聖国遠征でマナウタ殿達が出会った方でしょうね。」


ラスボス君のことは既に報告を受けていたらしい。


説明が省けて助かる。


しかしまあ、西に飛び立ったと聞いてはいたけど、あの子そんなことしてたのね。


「生存する住民達は避難先として南の皇国或いは帝国西の植民地を選んだようです。勿論先の聖国もそうですが、その場で隠れ、戦い、耐え忍ぶという選択をする者もいるようですが。」


まあ、家を捨てるって簡単に決断できる選択じゃないからね。


「現在の帝国にはまともな戦力を期待できませんからね。こう言ってはなんですが、竜の力を使うその方の活躍を祈る位しか出来ることはありません。」


大陸対面に手は回らんよね現実論。


「さて、そして問題の南の皇国ですが、西のムーンロード侯爵領は巨大な鉄の兵器により蹂躙され、やはり崩壊状態。帝国よりの急な避難民受け入れで混乱していたところに襲撃を受け、サウスラファ王都と北のスタードーム侯爵領に避難民が流れて混乱が伝播。さらに今度は王都に侵攻した帝国兵器に苦戦中。避難民は東へと流れ、皇国全域がまさに大混乱です。戦闘ではそれでも魔法により一応の足止めはしているものの、とてつもない間合いを誇る炎と矢の連射に加えて未知の爆発兵器により聖剣士も太刀打ちできず・・・」


「ちょっと待った!!・・・爆発兵器?」


「ええ。間諜の報告ではマナウタ殿がかつて披露した“花火”のようであったと」


へ?・・・話が違うぞ?


思わず親父を見る。


「材料さえ揃うならばだが、弾丸は1発つくれば狩人を脅せば量産できる。格納できずとも装甲車に積めば良いのだからな・・・確かに向こうがその手の兵器を持たないと考えたのは浅はかだったか・・・」


「続けます。帝国に亡命したタダイが死亡後、情報を得た皇国はアストルフォ殿に聖剣を取得させ、聖剣士は現在3名。内、ローラン殿をベルナデッタ殿を庇った際に腕を失う傷を負い、戦線を離脱。岩場いわばジリ貧とも言える中で抵抗を続けていますが、王都陥落は時間の問題でしょう。寧ろよく保っているというべきでしょうか」


皇国ボロボロやな。


いや、どこもかしこもボロボロだけども。


「聖剣盗難未遂の件があった為、尊皇アルリムは我が国への救援要請を大分渋っていた様ですが、遅い苦渋の決断をされ、昨日王城にアルリム陛下本人の書状が届きました」


「といっても今から行ったところで間に合うまい」


「はい。そこで度々で本当に申し訳ないのですが・・・」


「また、マナウタ殿達に頼ろうというのか!?」


「情けない話ですが、他に手がないのです」


「よろしいか?」


親父がこういうとことで珍しく自分から手を挙げた。


「北からの帰りと同様の速度で行くのはもう無理だ。難しい説明は省くが、俺の乗っていた兵器はもう殆ど動かない」


イケスカイケメンが「え!?」って顔で見返している。


燃料という概念がないんだろうが、世の中無限で動くものなんてないのよ?


「それに相手の戦力を考えるなら、投石機と花火を戦闘の主軸においた防衛戦が妥当だろう」


結局俺と親父の対ナナちゃん戦略は、なんにせよ装甲車破壊を優先して、ナナちゃん生きてるかは運、という結論に至ったのである。


つまり尤も安全かつ効果的な戦闘方法は今親父が行った通りだ。


その通りなのだが・・・


「それは・・・困りましたね・・・」


そして困ったコイツを助ける趣味なんて俺にはまるっきりないのだが・・・。


「いや・・・手はある」


なんで思いついちゃうかな俺。


でも、これ以上ナナちゃんに手を汚させちゃいけないと思うんだよ。


これから生まれる命に胸張りたいって思っちゃったんだよね・・・。


だから、やれることやんなきゃって。




我が家に帰り急ピッチで準備を進める。


親父が来たときもちろんでくれたソーラーパネルと蓄電器のおかげで最悪コイツがなくなっても今とお同じ生活が出来るのが幸いってもんだ。


息子か娘かまだわからんけど、出来るだけ良い生活させてやりたいしね。


整備を終えた親父の手によって、約一年ぶりにエンジン音を発したホライゾン。


「マナ・・・無事に帰って」


「ああ、ジャンヌも、もう独りの身体じゃねえんだからな」


「それをいうなら貴方もでしょう?」


「そうだな。それじゃ、また」


「ええ」


さよならも、帰ったら・・・なんて仮定の未来も言葉にする必要はない。


絶対に帰るから。


「フッ、お熱いことだ。忘れ物はないな?」


「ああ、銃もグレネードもばっちりだ。足りないのはハンカチとちり紙位だよ」


「減らず口がたたける余裕があるなら問題ないな。さて、じゃあ行くぞ?」


「おう」


だから、さっさとケリをつけに行こう。

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