帰り道
ドラゴンを打ち倒し、残る敵は蔓延る変色兵士のみ。
特に俺がいる必要もなくなったので、後の事はアベル王子とレメクさんに任せる。
本当ならカタリナ王女が頑張る所だが、如何せん父親が亡くなった後。
ていうか、跡継ぎはどうなるんだろうか?
「こういう事態が過去になかったですからね・・・」
ジャンヌにも解らんことはある。
スローンズ侯爵家でそんな会話をしつつまったり休憩中。
いろいろとあった後、いくら耐性持ちとは言え身も心もイヤされる時間が必要だ。
時間が必要だと言ってるんだが・・・
「お休みの所失礼致します。ミカエスト王国より危急の報せが届いておりまして」
申し訳なさそうに手紙を持って来た侍女さんから、なるべく嫌そうな他一度にならない容器をつけつつ手紙を受け取る。
差出人はイケスカイケメン。
内容は「至急戻られたし」。
勝手にも程があるのではなかろうか?
ブチッといきそうになったが経緯が経緯なので帰る準備をすることにした。
今度は皇国がヤバイらしい。
凶悪な兵器を積んだ鉄の箱が皇国の西側をぶっちぎり、王都に辿り着こうとしているらしい。
これはアレだ。
間違いなくナナちゃんだ。
帝国を兵器とドラゴンで潰し、北を何故かドラゴンだけで攻めた理由がなんとなく解った。
あのイケスカイケメン嵌められてんじゃねえか!?
最近まで会社員だった奴に軍師が策略で負けんな、といいたいが教育レベルが根本違うんだろうと思うと仕方ない感じもある。
小説、漫画、ゲームに映画。
過去の戦争戦略を頭に入れるのに、現代社会は全く苦労がないよねクソッタレ。
他人に責任転嫁してないでやることやろうか。
といっても馬がまだヒーヒー言ってんだけどね。
「アベル殿下とレメク殿をどうするかという話もありますしね・・・」
ジャンヌにも迷うときはある。
さて、そも仮に帰るとして手段は・・・
「アームローダーにトラックベッドを繋いで走れば、2日で戻れるだろう。定員人数は運転手の俺含めて3人。つまり愛詩とジャンヌ君でギリだろうけどな」
「ハム君と馬を殿下達に任せる位はしてもいいよね。殿下達に使いを送って戻って貰うまでにはバイアリータークもマレンゴも復活してると思うけど?」
「聖国王都から今から戻ってきたとして2日・・・確かに」
「なら、乗り手がいればハム君と馬は王国に戻ってこられるな。そんで、手紙の内容的に既読スルーってわけにはいかない、と」
「聖国王都に使いを出すとして・・・聖国王都はどうします?」
「そこなんだよね・・・そういえばラスボス君はどこ行った?」
「聖王陛下の死を見届けた後、西に向って飛んでいきましたが・・・」
「チッ」
「舌打ちはどうかと・・・気持ちは分かりますが」
「火炎放射でエアレイドできるチート君がいれば王都制圧余裕だったんだが・・・」
「ないものをねだっても仕方ないだろう。考えたくないのは解るがアベル王子とレメク殿・・・だったか?に戻って貰わねばならん以上、聖国に戦力を出して貰わねばなるまい」
「いや、そうなんだけど・・・」
とても気は進まないが、落ち込んだカタリナ王女の尻を蹴りとばさなければならないらしい。
「お前がやる必要はあるまい。王女の説得は聖国の人間か殿下に任せれば良い。殿下を放置して帰るのは問題だが、連絡すれば先に帰る分には問題ないだろう。」
流石親父で元主任。
人の使い方がよく解ってらっしゃる。
会社の倉庫でボッチだった気がするけど。
「OK、それでいこう。ジャンヌ、アベル殿下宛に手紙鳥の手配を頼む」
手紙鳥は無事王子への連絡を果たしたらしい。
先に帰ることも馬のことも了承を貰えた。
ちなみに王女の説得はスローンズ侯爵が名乗りを上げてくれた。
手紙が返って来る間の時間は帰国準備にあてていたので、後は乗り込んで帰るだけだ。
40秒もいらない。
「慌ただしくて申し訳ありませんが、それでは」
「はい。この度の恩、聖国一同忘れることはないでしょう」
スローンズ侯爵に別れを告げ、いくつか荷を置いてできたトラックベッドの空きスペースに乗り込めば、アームローダーが走り出す。
ガタガタと揺られながら、アームローラーの後窓を開けて貰って親父に声をかける。
「で、だ。どうする親父?」
「何がだ?」
「ナナちゃんのことよ」
「ふむ」
「報告からして親父の予想通りの武装装甲車がナナちゃんの武器だとしたら・・・多分戦力だけなら何とかなる」
「確かに。アイツは俺やお前の武装の全部を把握しているわけじゃない。ましてお前が技能で火薬兵器を作れるなどとは流石に予想してはいないだろう。おそらくこのアームローダーだけを驚異として認識しているはずだ」
「ドラゴンをアームローダーの燃料消費に使ったてのは大胆な戦略だよね」
「それもあくまで予想だがな。まあ外れてはいないだろう。あの怖い目の女が言っていたように、この世界を変えて王になろうとしてるってことは、言い換えればこっちの世界をナメくさってるってことだからな」
「とはいえ相手の兵装は火炎放射と連射式クロスボウが精々。実際シールド付きの装甲大型車両で突っ込んで来られたら、こっちの剣士や魔法使いなら手出しできないだろうけど、今ならどっか防衛拠点に投石機総動員でガン積みして花火連射っていう人道を外れた手段もとれる。・・・相手の命を考えなければ」
「そうだな・・・」
「だからこそ、どうしたいか、だろ?」
「一度ちゃんと話をしたい。叶うならばな」
「ていうと思った。まあ、テロリストに出来る事って限られてるしね。言葉での説得からの自首がベストで次点が武力での制圧。最悪は・・・」
「射殺だな」
「望まない未来ってやつをもたらすのが、もし俺だったら?」
「そのときにお前に文句を言う気はない。だが出来れば俺がケリをつけてやりたいところだ。これ以上息子の手を汚さん為にもな」
「そっか、解った。つっても俺も親父の手を汚したくはないんでね。じゃあやっぱり説得がベストだ。んで・・・どうやって話す場所を整えるか・・・」
「テレビ会議ができれば楽なんだが、そうもいかんしな」
「丈夫な箱に引きこもって自分は無敵だと調子に乗った勘違い君に話を直接聞いて貰う方法ね・・・癇癪持ちのヒキニート働かせる攻略法とか役に立つかな?」
「あればな。あいにく俺はそんな攻略法知らんが」
「ですよねー。流石にディクションもアテにできねーな」
「引きこもる場所がなくなれば流石に出てくるだろうが・・・」
「結局は力業か・・・でもそれしかないかな」
「帰国までに時間はまだある。その間考えることは諦めんさ。答えは変わらんかも知れんがな。お前は暫く休め。十分に休養をとれたわけじゃないだろう」
「疲れてんのは親父もだろ?」
「だからだ。流石に徹夜で2日コイツ動かすのは勘弁だ。途中で交代するんだから寝ておけ」
「うい。りょーかーい」
「それに・・・」
「?」
「いや、結局直接会ってみなければ解らんこともあるだろう」
「そう・・・だな」
応えながら窓を閉めて座り直し、目を瞑る。
寝心地は悪いが、今なら少しくらいは眠れるだろうか。
目が覚めて運転して帰国してその後は・・・確かに。
結局は戻ってみなきゃわかんねえ、って思ったら急激に襲ってきた睡魔に抗うことは出来なかった。




