プランニング
さて、任されたものは仕方ない。
この後公爵家と仲良くやるためにも頑張ろうと思う。
ファーイト、俺。
さて、じゃあ何をしようかという話だけど。
まず今俺が出来ることはそこまでこっちの世界の料理人と変わらない。
技能があるだけ向こうの方が有利だ。
よって今ないものを揃えるのは必須となる。
酢、醤油、味噌。
ここまではOK。
OKか?
疑ったら負けだ。
ゴホン。
ではそれで何をしようか。
台所を見ると結構野菜というのは豊富にある。
土地が少ないから作れるものは限られている、とはいえ普段そんなに料理で豊富に材料使うかといえばそうでもない。
スーパーとかでも売れ筋って言うのは決まっているわけで。
基本的に貴族のもてなし料理はフルコースだ。
長時間にわたって料理が出続けることで会話も長くなる、という理由もあるらしい。
料理が出る、話す、料理が出る、話す・・・。
いっそ定食でも出してやろうかと思ったが、あまりこの形式を崩さない方が良いだろうか。
というわけでメニューを考える。
まずサラダ。
野菜はいつもの謎野菜でいいとして。
塩揉んだだけのサラダからは脱却したい。
酢が出来るならマヨネーズが出来る。
醤油があれば和風ドレッシングも行ける。
余り後に出す料理と味が被るのもな・・・。
もう一つ前菜を挟みたい。
何だろう・・・今俺が作れるのは。
短期間という条件付きで・・・。
どうせなら新しい味であるすとせとそをがつんと出すべきか?
漬け物を出したら面白そうだけど、つける時間がないし。
うーん。
いっそ前菜といいうものをぶっちぎって唐揚げととかどうだろうか?
スープは味噌が出来るなら豚汁かな?
単純に俺が好きだから。
米を出すかパンを出すか・・・希望制にしようか。
ステーキチェーン店の常套手段だ。
残りは飢えた侍女達が食べるだろう。
米は余り食べられないからいっそチャーハンにする方が受けるかも。
パンは今のパンならそれだけで驚いて貰えるはずだ。
メインは・・・パンがあるからフライ?
ソースがないが魚を使えばタルタルソースが使える。
或いはおろしポン酢でもいい。
ポン酢は作れるか?・・・ふむ。
でも豚汁で豚使うからな・・・つか公爵家ともなれば最高級の牛肉を出さないのはダメか。
ポン酢がありならしゃぶしゃぶとか・・・あ、箸が使えねーじゃん。
デザートは冷却できるならプリンでいいだろ。
結構難しいがある程度料理のピックアップは出来たな。
よし。
庭に出るとゴモラさんがせわしなく働いていた。
洗い場の拡張にバイオトイレの設置と大量のお仕事が舞い込んだらしい。
というか屋敷をほぼほぼ改装するそうだ。
流石に一人じゃ手が足りず、他10人程連れてきている。
因みにバイオトイレはおがくずを採用。
貴族にとって遠出は必須。
誰もがトイレには困っていた。
新しいポータブルトイレをここで売り出すために、屋敷のトイレを変えたいらしい。
とはいえ流石に客に自分で運べとは言えないからな。
小さい方は下水で、大きい方は滑り台方式で外に出して大量のおがくずに放り込んだ後掻き混ぜられる。
便が入ればおがくずは押し出され、そこから下水へ流す方式らしい。
これだと堆肥として使えないが、公爵家にとって重要なのは臭いがしないトイレ。
まあ、目的を達せればいいのだろう。
木がもったいなくないだろうか?
あとでパームの皮とかも使えると教えておこう。
で、誰が混ぜるんだろうか?
え、考えてねえのかよ!?
どうしたら良いって?
知らんがな。
考えろって・・・ああ・・・じゃあ水車とか?
屋敷の壁の周りの堀に流れている水を使って。
結構勢いあるし。
防衛の為のものだが、水が流れてないと臭くなるからと川からわざわざ引いてきているからね。
金の力って凄い。
水車ってのは、ええと・・・設計図・・・あった。
木の板か何か出して。
あと書くものも。
こんな感じ。
分かった?
良かった。
クソ、変なところで時間を使ってしまった。
孤児院に行きアリスたんの貸し出しをお願いする。
「ジャックさんのお知り合いですし、公爵家となれば信用できますが・・・子供ですよ?」
大丈夫ミサさん。
新しいことをするときは大人の方が使えないから。
それより報酬ですが。
「いえ、一人に任せてこちらが報酬を貰うのは。それに頂いた仕事と多額の寄付で現状生活には困っていませんし。」
あれ寄付じゃなくて報酬なんだが。
「だとしたら貰いすぎです!!」
子供15人だ。
1年で1000万ゼラは寧ろ足りないと思う。
折角見つけた労働力を失いたくないから大盤振る舞いしたのだが、うーん、やり過ぎたかな。
まあ、いいじゃない。
ぶっちゃけ、いつかいなくなる世界でしか使えない金だし・・・とは言わないでおこう。
それよりジャックが戻ってきたら公爵家にいるからって伝えておいて。
屋敷には伝えておくから。
じゃ、よろしく~。
帰りにシプトンさんの所に寄る。
シプトンさんは無事乳酸菌を手に入れたらしい。
精霊ラクトバシラス。
うん、覚えられる自信がまったくない。
乳酸菌は乳酸菌だ。
それでいいじゃない。
「それで今度はこれで何をするのかしら~?」
「新しい調味料を造るんですよ。」
「あら。それはどんなものかしら?」
シプトンさんのパンは好評で今日作ったものが既に売り切れ状態。
通常のパンより高いが公爵家が買った宣伝効果もあり、朝客が行列をつくった。
客が美味い美味いと騒ぎ、更に客を呼び込む。
生地はそれなりに用意したらしいのだが昼過ぎには売り切れたとか。
さっき大量の材料を買い付けたところらしい。
これで気を良くしたのか、味を占めたのか、シプトンさん凄い協力的。
ただ残念ながら、出来るのは米が届いてから。
「それは残念ね~。」
「1週間後、時間空けといて下さいね?多分凄い忙しくなるから。」
「わかったわ。楽しみにしていますね。」
帰宅。
今日は結局アリスたんを借りて終わってしまった。
いや、折角だ。
人手は有効に使っていこう。
よしアリスたん、早速料理だ。
『グルゥゥゥウウ・・・』
ワンコロ、脅すな。
ん、俺?
あ、餌ね・・・てお前そればっかだな!?
ふう。
さてアリスたん、作れるものから練習だ。
「が、がんばりましゅ。」
噛んだな。
こんなものがこんな簡単に作れるの?って驚かせ、ついでに胃袋掴んで期待して貰おう作戦だ。
ああ・・・その前に。
「ジャンヌ、この子風呂に入れてきて。」
衛生概念は大事。
・・・
気を取り直して。
必要な材料は卵、砂糖、牛乳。
バニラエッセンスは無視で。
材料から分かる通りプリンです、はい。
子供を黙らせるには甘いものが一番。
ディクションを見れば作り方の乗っているサイトが腐る程出てくる。
失敗なんぞあり得ない。
余裕で完成。
イエス!!
さて、なれば早速試食。
・・・ジャンヌ。
いや、いて良いんだ。
当然食べたかろう。
ああ、問題ない。
気になるのは横にいる人なんだが。
「プロテスト公爵夫人、エリーザベト様ですが?」
知っとるわ!
なるほど、カラメルの臭いに釣られて来たと。
ああ、嫌な予感がするな・・・。
扉をガチャリ。
おう・・・、ウチの柵の周りを侍女達が取り囲んでらっしゃる。
まあなんだ。
アリスたーん。
これ食べたらもう一回頑張ろう。
「マナウタさんにお任せしたかいが御座いましたわ。これだけでもパーティーの成功は間違いなしですわね。」
そらようござんした。
「ところでそちらの娘・・・アリスさんでしたかしら?」
「はい、アリスです。」
別に呼ばれたわけじゃないぞ。
「この後、アリスさんはどうされるので?」
どうって?
ひとまず、パーティーが終わるまでウチに住まわせる方向でどうだろう。
部屋も空いてるし、ジャンヌが面倒見るだろうし。
ん、なんだジャンヌ?
俺はロリコンじゃねえよ?
「マナウタさん、10才は犯罪ですわよ?」
キサマら・・・。
結局アリスはパーティーが終わるまで屋敷で寝泊まりすることになった。
つーかあの屋敷、平民相手に随分敷居が低くないかな?
堀の意味は?
今日見つかった?
そうだけども。




