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新しい住人

明けましておめでとうございます。

アリスが来て2日目。


今日は一通りの料理の仕方を教える予定。


天職料理人だからといって料理法を熟知しているわけじゃない。


貧乏な料理人ってある意味一番不遇な気がするんだけど・・・?


狩人が言っても負け惜しみに聞こえるだけだな。


やめよう。


さて、今日は何をしようか。


晩飯の準備で塩唐揚げでどうだろうか。


つけ込むのに酒がないが、ディクションに赤ワインで造る唐揚げの頁があったので採用。


実技を通して覚えるのが一番だ。


ただ焼くのではなくつけ込むとか、出汁を取るとかの大事さを教えていきたい。


根本を知っていると、本番で指示が多少適当になっても、人は理解して動く者だと親父が言っていた。


この1週間は家に籠ることになるが仕方ない。


さて、屋敷にアリスを迎えに行こう。




「マナウタ様、良いところに・・・。」


屋敷の侍女に呼び止められる。


何か急いでいるっぽい。


俺もおかげさまで忙しいんですが?


・・・おお!!


良かった・・・けどこのタイミングで?


そうか・・・。


「どうします?」


どうって行くしかあるまいよ。


「では、出かける準備をしてきます。その間にあちらの準備をなされては?」


ジャンヌよ、分かるぞ。


気を聞かせてる風に見せてるが、絶対お前が食いたいだけだろ。




屋敷に呼び止められた理由は別に大した事ではない。


ワンコロの主人と思われる少年が目を覚ましたのだ。


随分寝てたな・・・。


そういえば意識不明の患者相手にこの世界では何をするのだろうか?


点滴とかなさそうだけど。


ほっとくっと飢えか脱水で死ぬんじゃないかな。


「管を喉に突っ込んで、パームジュースを流し込むと聞いたことがありますが?」


なるほど。


この世界で意識を失うような行為は絶対避けよう。




警備隊の詰め所に到着すると、話が通っていたのかすぐに案内して貰えた。


「こちらです。」


警備兵めっちゃ敬語。


馬車にある公爵家の紋章パワーかな?


便利だが俺も馬欲しいんだよな・・・。


考え事をしているうちに目的の部屋に到着。


先に警備兵が少年に話をするらしく先に部屋に入る。


「君を助けてくれた人達だ。・・・ではこちらへ。」


促されるまま部屋に入る。


「えっ!?」


少年は俺の顔を見て目を見開いた。


何だろう?


「そんな・・・え?いや、違う・・・。」


見て分かるぐらいの混乱振り。


何かしたかい、俺?


「あ、あの・・・失礼しました・・・。助けて貰ってありがとう御座います。」


ぺこりと頭を下げる少年。


「それで、その・・・。」


何を言って良いか分からなそうだ。


こっちが年上だしね。


俺から話を振るとしよう。


「そんなに恐縮しなくていい。まず自己紹介といこう。俺の名前はマナウタ。マナウタだ。」


「あの、えっと、ボクはハム。ハムです。」


美味しそうな名前だ。


「ハム君って呼んでいいかな?俺はマナウタでいい。」


「あ、はい。マナウタ・・・さん。」


「君、飼い犬がいるかい?」


「飼い犬?・・・キュオーンを知っているんですか!?」


「キュオーン?キュオーンって名前なのかな?この位の茶色と白の。」


「ああ、多分間違いありません!!それでキュオーンは今どこに?」


「今は俺の家で預かっているよ。中々人懐っこくて賢い子だ。」


子かどうかは知らんが。


「え!?キュオーンが懐いた・・・?」


そんなに驚かれても・・・まあいいか。


話を進めよう。


「それで、君はどこから来たんだい?」


「え、それは・・・。」


・・・えーと。


「言えないか、言いたくない感じかな?」


「その・・・。」


あかん。


何か地雷踏んだっぽい。


「答えたくないならいいんだ。それじゃあそうだな・・・君はこの後どうするんだい?」


「その、ボクは・・・。」


ふむ・・・どうしよう。


俺的には目が覚めたならワンコロ引き取って親元に帰って欲しかったのだが。


「我々が身許を聞いても何も話しませんで・・・。」


警備兵が小声でそう教えてくれた。


何か言えないわけがあるんだろうが・・・このままだと困る。


少し話を変えてみようか?


「君年齢は?」


「11才です。」


「じゃあ、天職は?」


「え?・・・それは・・・。」


まただんまり。


言うのが恥ずかしい職業と言うことかな?


・・・狩人か。


「どうします?」


「どうって・・・。」


ジャンヌが聞いてくるが名案があるわけじゃない。


「ひとまず、連れ帰るか・・・?」


詰め所に置いておくわけにもいかんだろうし。


連れてきたの俺達だし、いずれにせよワンコロに会わせる必要あるし。


「犬に会って安心すれば、何か話し出すかもしれんやん?」


「承知しました。」


また子供連れ帰るのか・・・変な噂とかたったらどうしよ?




ハム君を連れて帰るとワンコロ・・・キュオーンだっけ?の反応が凄かった。


『ワニャニャニャン!!キャワワワワフー!!』


「こら、キュオーン、ちょ・・・アハハ。」


顔がてかり輝くほど舐められるハム君。


犬に舐められるハムって書くとよく分からん事になるが、まあ待ち望んでいた飼い主ご対面だ。


暫く放置で。


今のうちに餌でも焼いてこよう。


ほれ、食え。


相変わらずいい食べっぷりだな。


主人より餌が大事か、おい?


「キュオーンが他人から餌を貰っている・・・?」


そんな驚くほど警戒心ないぞ?この駄犬。




「あの、少しの間・・・ここにいさせて貰えませんか?」


「そんなに唐揚げが気に入ったのか?」


「いえ、あ、確かに凄く美味しかったですけど・・・そうじゃなくて!!」


ハム君が夕食の後こんな風に切り出してきた。


「ボク達には行くところがなくて・・・」


「家族は?」


「家族・・・ボクは・・・家族から逃げ出したんです・・・。」


虐待でもされたんだろうか?


「捨てられたボクを、拾ってくれた大事な家族を・・・怖くて・・・ボクは・・・。」


なんかヘビーだ。


「なんでもします。お金はないけど、一生懸命働きますから・・・!!」


「そう言われても・・・。」


どんな仕事が出来るイコール天職は何って話なのだが。


「天職は話せないよね・・・。」


「・・・・・・は・・・い。」


困った。


俺も大人だ。


なんでもじゃねえじゃん、とか突っ込みはしないが。


どうしよ。


一応公爵家の庭であるこの家に見ず知らずの子供を引き取って良いものだろうか?


ねえ、奥様。


「宜しいのではなくて?」


なんで普通にいるのかね?


「助けた子供を見捨てたとあってはドラゴンスレイヤーの名折れというもの・・・養育費の相談なら遠慮なくして頂いて構いませんわ。」


この奥様、思うに金遣い荒いよね。


旦那がいなくなった後直ぐに屋敷改装してる辺りでなんとなく察してたけど。


多分話し通してねえな、この人・・・。


まあ、子供一人暫く面倒見る位いいかな。


「私も問題はありません。」


そうですか・・・。


「じゃあ、何をして貰うかは後で決めるとして・・・とりあえず、ようこそ我が家へ。」


「・・・はい!!ありがとうございます!!」


こうして住人が一人増えた。


部屋が余分にあって良かった。


「ところでマナ?」


なんだジャンヌ。


「まさかそっちの気はないですよね?」


撃つぞテメ。

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