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パーティーへのお誘い

柔らかパンは屋敷の人達にも好評だった。


俺が広められる手っ取り早い顧客は屋敷の人達。


トイレットペーパーももう普及した。


まだ俺はトイレットペーパーのストックがある。


契約した20000枚の一部を持って帰り、屋敷の侍女に渡す。


最初に使ったのは子供を産んでもう復活気味の奥様。


定期的な購入を決めたらしい。


その一部が俺の家にも支給される。


来年からは支出ゼロでトイレットペーパーが手に入りそうだ。


俺来年もここにいるかな?


分からんが。


で、パンの話。


柔らかパンは既に翌日からシプトンさんに大量の注文を入れたらしい。


こっちはアグネスさんが戻ってきたらアグネスさんの仕事になるようだ。


シプトンさんは俺達の分を造りつつ、市場で売り上げを出す予定。


知られれば人気が出るかも知れないが、どうだろう。


「公爵家が大量の注文をだしたことが強力な宣伝になりますよ。」


なるほど。


噂話って言うのは馬鹿にならんからね・・・。


良い意味でも悪い意味でも。




ところで、昨日の発酵についてちょっとした疑問がある。


シプトンさんの手から出た光だ。


この世界じゃ菌は光るのか、と思っていたが冷静に考えよう。


菌なんぞそこら中にいるんだ。


じゃあ、なんで光ったのか。


多分技能だ。


まだ推定段階だが、菌を格納出しても空気に乗って大半は流されそうな気がする。


つまり発酵職人の菌・・・じゃなくて精霊格納には菌を格納時まとめてアイテム化する機能が合わさっているのではないだろうか。


そしてヴィティスの精霊なんとかミセスは、誰かが偶然見つけ手以来代々受け継がれる守り神とされている。


なまじ神聖さを感じる輝きを放つことで、守り神として疑われることもなく。


だから発酵職人達は受け継がれた精霊を大事に守って来た。


他の精霊に目もくれず。


そう、これはシプトンさんと話して分かったことなんだけど。


少なくともシプトンさんはサッカロミセスしか精霊を格納していない。


だが、実際菌には麹菌だったり乳酸菌だったりがいるし、俺の生活改善にはコイツ等が必要だ。


つまり・・・俺が捕まえんのか・・・。


自分の為だ、頑張ろう。


ディクションで麹菌は米があれば捕まえられることが分かっている。


醤油と味噌には麹菌が必要で、酢の原料は米。


つまり今完全な米待ち。


だからなんもしないよりは、まず乳酸菌をとっ捕まえようと考えたりしてみた。


・・・どうやって?


考える時間が欲しい。


だからジャンヌ、そろそろ訓練は勘弁しないか?




午後屋敷に呼ばれた。


俺は乳酸菌を捕まえたいのだが・・・そうか、行かなきゃダメか・・・。


まあ、牛乳を放置しておけば乳酸菌は勝手に繁殖することが分かったからな。


ジャンヌに口聞いて貰って侍女にでも頼んでおこう。


普通に置いておくと腐るかもしれんので発酵促進で。


()()促進だからね。


腐敗はしないはずだ。


「それはヨーグルトでは?」


知ってんのかよ。


俺食ったことないぞ。


「好んで食べるものがいませんから。というかあのような酸っぱいだけのものをどうする気で?」


そっか・・・ヨーグルトが健康に良いとかをそもそも知らないのか。


元の世界でも砂糖とかジャムとかかけて食べる人が多かったもんな・・・。


ヨーグルト自体を好んで食べる人を少なくとも俺は見たことがない。


まあいいや。


じゃあ、それにたくさんいる精霊を格納するよう手配してくれ。


「あれは悪霊の仕業では?」


どんだけ嫌われてんの、ヨーグルト?




屋敷に行くと奥様が迎えてくれた。


「こうして話すのは始めてですわね。エリーザベトと申しましてよ。」


どうも。


息子さんは、・・・侍女に任せたと。


で、なんで御座いましょう?


・・・。


暫く雑談に付き合わされた。


内容は俺が造った石けんから始まる新しいアレコレの素晴らしさ。


「特にやはりシャンプーとリンスというのは革命ですわね。ワタクシの髪もこんなに・・・。」


結婚しても美貌を保ちたい。


この辺りはどの女性も一緒だ。


「それに、マナウタさんは食についても博識なようですわね。今までのものとは違う新たな白い砂糖の製造法に、ふんわりと柔らかなパン。ジャンヌが侍女に教えたジャムでしたか?頂きましたが大変美味でしたわ。」


話がなげー・・・。


つかあの砂糖手に入れたのか・・・。


砂糖は一度手に入れてしまえば、特別必要なものはない。


加工職人が必要だが、別にめっちゃレアな職業じゃないし。


多分、その内砂糖は流通するな。


「そこでマナウタさんにお願いが御座いましてよ?」


・・・ふむ・・・ん?


ヤベ、聞いてなかった。


何かいつの間にか俺へのお願いになっている。


「な、なんで御座いましょう?」


若干テンパって聞く流れになってしまった。


「実は今月末のワタクシの息子クリスのパーティーをアナタに取り仕切って頂きたいのです。」


・・・急になんて?


「マナウタさんならきっと今までにない料理を並べ来賓の方々を驚かせてくれるでしょう。勿論ワタクシも今から楽しみで仕方ありませんわ。」


いや・・・だからなんで俺が?


「パーティーにはおそらく国王陛下もいらっしゃるでしょう。娘となる家のパーティーですから。・・・ここで三公爵の末端と言われるプロテスト家がこれから何をこの国にもたらすのか、披露するチャンスですのよ。」


国王て・・・え、マジ?


お嬢様何してくれてんの?


「どうかこの領の民として、我が領に力を貸しては頂けませんか?」


・・・俺、日本人・・・。


世の中には理不尽でも断れないお願いという名の命令がある。


マジか・・・。


その後も抵抗を示しつつ話し、折れちゃった弱い俺。


くっ・・・。




折れちゃったんだから仕方がない。


家がここにある以上ばっくれる訳にもいかないし。


ここに家を建てたのは失敗だったかな・・・いや、それよりも目前の課題を考えよう。


俺の役目をもう一度整理する。


パーティーというのは祝って貰うという名目の元、政略的に領地の力を見せる場所でもある。


来賓は宿泊していくはずなので、そこで洗い場、バイオトイレ、トイレットペーパーを見せつける。


これは公爵家が動くから問題なし。


俺の役目は早い話が料理の取り仕切り。


今までにない料理で来賓の度肝を抜けば良い。


今までにない料理というのは早い話、新しい調理法と新しい調味料だ。


つまり1週間後に来る米を元に、酢、醤油、味噌をつくり、知っている料理を並べればいい。


言うのは簡単だな、おい。


じゃあ、この1週間はどうしようか。


「因みに屋敷の料理人は何人いるんだ?」


「天職、という意味であれば3人程ですが。」


そういえばいたね料理人。


えーと、技能は・・・冷却があるんだ。


「とはいえ、料理人でなければ料理が出来ないわけではありませんが・・・。」


いや、食材分析はよく分からんが、包丁捌きに焼き加減・・・凄い天職これ。


3人か・・・。


「パーティーって何人位集まるんだ?」


「そうですね・・・少なくとも100人位は。」


うん、絶対足りない。


「ジャンヌ、料理人を集める。あては?」


「公爵家のパーティーです。その気になれば街中の料理人を集められますよ。正し、当日であれば、ですが。」


頼もしいようなそうでもないような。


当日だけいても、今までにないものを扱うとなると混乱しそうだ。


いないよりは当然いいんだが。


何人か事前に使えるようにしておきたい。


そもそも俺が料理得意ってわけじゃないからな・・・。


せめて他の料理人に目の前で実演できる人材を一人でも確保しておきたい。


・・・いたな、アリスたん。


まだ10才だが、戦うわけじゃないんだから良いだろう。


ある程度アリスを仕込んでおき、数日前から屋敷の料理人をアリスを通して仕込む。


で、当日集まった料理人を屋敷の料理人に仕切らせる。


・・・いいんじゃないだろうか。


よし、これで行こう。


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