起業の第一歩
孤児院の子供達はやはりほとんどが農業職だった。
やはり、というのは技能がやはり関与してくる。
結局人の世界で人が不自由なく生きていくためには、結局財力がものをいう。
農業職が底辺と呼ばれるのは、早い話が稼げないからだ。
特に狩人、漁師、木樵、駆除士は辛い。
人より強いモンスターが蔓延る世界で、モンスターを倒せなければ基本役立たずの職業だから。
加えて食糧の確保では同じ農業職の、農耕士、能牧士がいる。
余りに不遇すぎないだろうか?
ちなみ天職というのは例外はあるが基本的に親から引き継がれる。
つまり農業職の子供の親は農業職、稼げない人達だ。
そこに生まれ、まだ力のない子供達。
工業職や商業職なら子供でも技能をつかって出来ることもあるだろうけど・・・。
子供にモンスター倒せはない。
だから本当に身寄りのない子供でもなければ、孤児は農業職に寄る。
考えてみたらミサさん、よく子供達にも出来る仕事をとか言ったな。
まあ、今回俺にとっては都合が良かったが・・・。
ちなみに例外は6人。
ジャック溺愛のアリスたんは料理人だ。
どっちが父親に寄って、どっちが母親に寄ったのかは知らないが、逆じゃなくて良かったね。
ひとまず子供が今15人いるらしい。
折角なので公爵家も巻き込んだ。
大体1ゼラ=1円みたいな感覚。
5000万って大金だが、事業に起こすには少額過ぎる。
トイレットペーパーにインクで絵を書く。
あんまり絵心ないけど、ひとまず書いたのは庭のワンコロ。
一応それように分厚く作ったので破れず書けた。
見せたら当主は食いついた。
というのも羊皮紙は確保するのが凄く大変だからだ。
その字の通り羊の皮である羊皮紙は、作るのに羊を捌かなきゃならない。
材料となる皮は1頭につき、解体職人経由で50枚。
仕事に使う紙としてはとても少ない。
加えて羊・・・ムフロンという種らしいが、此奴ら教会に神聖な獣として指定されている。
時代背景には羊皮紙を金として使うことになったため、羊を保護する必要ができた、といった理由もあるらしいが。
だから普通の人は何書くときは木の板や皮を使う。
でも、そこは天下の公爵家。
見栄だけではない。
公爵が木の板に手紙を書いても、偽物だとしか思われないらしい。
だが、公爵領が発明した新たな製品ならば・・・ということらしい。
書くようならもうちょっと糊材を気にしたり、紙液を考えるべきかも知れないが、まあ、よし。
実際受注が少なく、人手が余るようならもっとやって欲しいことはある。
設備投資で1000万ゼラをどかんと使う。
孤児院を改装し、紙すき部屋を作るためだ。
更に孤児院運営費として1000万ゼラをミサさんに。
材料費こっち持ち。
一年で20000枚契約。
ちょっと多めにお願いした。
1枚500ゼラ・・・。
たっけ・・・。
ミサさんは子供達と話し合った後、快く承知してくれた。
子供達も笑顔だから問題なしと思おう。
・・・
「さあ、次は砂糖です。お菓子を作るときです。」
ジャンヌ・・・。
一度チョコ味のカロリーバーを食べさせてるし、ステータス見せてるし、ジャンヌはなんとなくこの世界
の人間じゃないことも、美味い食い物の知識があることを知っている。
知識がなくても調べられることも知っている。
まあ、コイツが俺の侍女を立候補した理由は多分それだし、実際助かっている。
しゃーない、なんとかしよう。
まあ、煽ってくるだろうなと思ってパームの実は屋敷に返さず、俺が格納している。
悪くなられても困る。
砂糖とパームの実を持って、農業セン・・・いや、違うな。
折角手に入れた人手だ。
今後生活改善をするならどんどん投資は必要だ。
投資し続けるなら収益が必要だ。
子供に砂糖・・・嫌な予感もするが、ここは任せてみるべきではないだろうか?
ミサさん、追加で依頼だ。
・・・・・・。
材料費俺持ち、砂糖は孤児院と俺で折半。
報酬は金じゃなくていいらしい。
甘いは正義か・・・。
「安心して下さい。私がしっかり見ておきます。」
一応ズルされないように10個のパームでそれほどの砂糖が採れるか確認しておく。
えー、君は・・・キリエちゃんね。
いや、年齢は聞いていないが・・・12才。
そっか、ありがとう?
この白い粉をね、これから抽出して欲しいんだ。
いや、怪しいものじゃない。
そ、登録して。
・・・
出来るものだ。
何もしてないパームから、いきなり白い粉がさらさら落ちる様は何というか。
試しに残り物を飲んだら、まだ微妙に甘かった。
果糖のせいかな?・・・わからん。
10個でお椀1杯くらいの砂糖。
思ったより多い。
では、あと10個置いていこう。
今後届ける手段を考えないと。
ジャンヌが手配する?
あ、そう。
家に帰って、ひとまず最初に作ったのはジャムだ。
手頃に出来るものがこれくらいしか思いつかなかった。
帰りに買ったラズルブスという果物がイチゴに似ていたので使ってみた。
分量はイチゴジャムと一緒で良いだろう。
異世界定番ものと言えばプリンだ、冷やす道具がない。
魔導師のお嬢様に冷やして貰うか・・・?
こっちに回ってこなそうな気がする。
作りたての熱々ジャム。
パンに染み込ませて食べる。
・・・パンがかてぇ。
ジャンヌは嬉々として食べている。
いや、俺はもういい。
好きなだけ食え。
つかなんでパンがこんなに硬いんだ?
答えは作り方。
聞いてびっくりした。
小麦粉捏ねて焼くだけ。
発酵させないの!?
そりゃ、硬いわな・・・。
ってことは発酵させれば柔らかいパンが食べられるのか・・・。
そういえば天職に発酵職人というのがいたな。
知り合いの発酵職人・・・アグネスさん。
転がしやすそうだ。
「柔らかいパンを食べさせてあげれば、ジャックの胃を掴んでイチコロさ。」
うん、これで行こう。
酢と醤油と味噌は後回し。
新しいものより今あるものを良くする方が簡単だし。
因みになんとなく気になって、元の世界では昔どうだったのか調べてみた。
おんなじだった。
パンを発酵させた人。
誰だか知らんが、出来るなら賞を上げたい。
なあ、ジャンヌ・・・。
ウッソ・・・マジで全部食いやがった。
「ウップ・・・。」
・・・ゴメン。
流石に同情も出来ない。




