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技能に呑まれる事なかれ

気がつけばもう9月、もうすぐ夏が終わる。


まだまだ暑いけども。


こっちに来て1ヶ月か・・・月日が経つのが早い。


孤児院の件は警備隊とジャンヌから当主に伝わり本格的な調査が始まったそうだ。


ピラト商会完全ロックオンの調査だ。


商会長は逃げ出したのか見つかっていないらしく、それは逆に関与がはっきりしていると言うこと。


容疑は脅迫、暴力未遂への関与、並びに危険生物の国内侵入援助。


「良くやってくれた。」


とは当主の言だが、若干居合わせただけ感があるから感謝されてもなんだかねって感じだ。


さて、終わったことは置いておいて。


ジャックが米を手に入れるため動き出してくれたので、その間に終わらせてしまいたいトイレットペーパー作り。


で、ここでいいお知らせと悪いお知らせ。


いいお知らせは紙すきの道具が出来たこと。


金属網は一本一本を作るのが難しい。


どうしようかと考え、じゃあ昔はどうやってた?と調べたら、ザルでやる方法が見つかった。


ザル自体はこの世界にもあったらしい。


孤児院に通っている間にジャンヌ経由でゴモラさんに発注。


市販のザルをぶった切って木枠で挟むという豪快な手段により短期間で作ってくれた。


刃物を入れるため、念のため端を少し木材でガードするようと俺からの面倒くさいお願いにもちゃん応えてくれている。


折角だから今日試してみよう。


繊維も解体職人の方で抽出可能と連絡があった。


やったね。


つまり材料は揃ったわけだ。


悪いお知らせは、出来たとしてどう量産するかが決まっていないこと。


適した技能は見つからずじまい。


ふむ、困った。




紙すきを終えて乾かし出来上がりを待つ。


少しだが格子に絡みついてきたゴードの蔦を眺めてニマニマ。


ワンコロ、ココはイタズラするなよ。


一応柵を作った方が良いだろうか?




さて、出来ないことを考え込むより出来ることを進めることも大事だ。


いい加減、食の改善も進めたい。


料理と言えばさしすせそ。


砂糖、塩、酢、醤油、味噌。


この5種を手に入れたい。


で、まともに手に入りそうなのが塩だけっていうね。


ふぁっく。


砂糖はないわけではないが、高級品。


酢は米事情からお察し。


醤油はない。


魚醤があるが別物なんだよね・・・。


味噌もない。


つまり塩しかねえんだな・・・。


他、胡椒、唐辛子、ニンニクまでは確認。


他にも使われているものがあるかも知れないが、厨房に入ったことがあるわけではないからまだ詳しくない。


まずは何から行こうか・・・。


・・・・・・。


検索してたら1日終わってしまった。


ひとまず分かったことは酢と醤油と味噌はかなりハードルが高いってことだ。


一方砂糖は・・・運次第かな。


まずはこれからいこう。


翌日意気込んで砂糖の精製準備に取りかかろうかと思ったら、屋敷から連絡があった。


商会長の部屋の暖炉からチンピラ共からの報告が記された手紙が見つかり、証拠も見つかったと。


ドラマか。


一方商会長本人はまだ見つかっていない。


逃亡した模様。


見つかるのは時間の問題だし、逃亡中では頼みの金も使えない。


少なくとも孤児院がもう狙われることはないと思われると。


ジャックも一安心だろう。


よかったよかった。


では、砂糖を・・・あ、まだあるのね。


教会の神父も関係者として取り調べを受けているらしい。


裏金は対した罪にはならないが、聖職者だ。


おそらく教会より追放されるだろうと。


で、問題になるのは孤児院への資金援助。


今回の件が明るみになると教会への寄付が当然減る。


結果孤児院へ廻す費用が減る。


とはいえ、黙っておくことが良いことではない。


報告を受け悩んだ当主は、孤児院に意見を聞いた。


君達はどうしたい?と。


孤児院管理者のミサさんは暫く子供達と話し、答えたそうだ。


不正は不正、明るみにすべきだが、孤児達がその為に飢えるのを黙っているわけにも行かない。


そもそも援助のみに頼っていたのが問題だ。


これからは何か子供達にも出来る仕事をしながら生計を立てていく。


どうか裁かれるべき悪は裁き、皆が知るべき情報は知らせて欲しいと。


ご立派な覚悟だが、社会ってそんな甘いのだろうか?


元が学生だからよく分からんが、親父の眉間の皺がなんであんなに深かったのかと考えるとね。


なんか孤児院やべえんじゃね?って思う。


まあ、俺がどうこうする話でもないのだろうが。


・・・


さて、それはともかく今度こそ砂糖だ。


砂糖は超簡単にいうとサトウキビを搾って、煮詰めれば・・・なんだよ、ジャンヌ。


「トイレットペーパーの出来は確認しないのですか?」


そうだ、忘れてた。


「ああ、ジャンヌ、ついででスマンがアララト農場にパームの木があるかを確認出来るか?」


「パームの木?・・・実ではなくてですか?」


「木から多分砂糖ができるから。」


「な、なんですって!?」


「まだ推定段階だけどな。成功すれば・・・」


って、もういねぇ・・・。


因みに。


この世界で砂糖は一般的に黒砂糖を意味する。


白砂糖を分離、抽出する技術がない。


サトウキビ・・・ここではケインと呼ぶらしいが、それから抽出するらしい。


つまりケインの成分入り砂糖だから、他の植物から抽出できない、と推測している。


砂糖は果物にも含まれているらしい。


ただ元の世界では果糖とかその他が多く含まれ、煮詰めても砂糖にならないらしいが。


純粋な砂糖があれば素材抽出に登録することで採れるだろうが、純粋な砂糖がないからこの世界には果物から砂糖を採った例がない、と思われる。


だが少量だが俺は持っている。


因みにケインはサウスラファが主な生産地。


輸入物の上、数も多くはないらしい。


ミカエスト王国でも採れるらしいが、生産量はサウスラファより遙かに少なく、余り砂糖は出回ってこない。


だから砂糖は高いと。


まあ、豆知識はともかく、次行ってみよう。




さて、紙を確認。


やっぱり若干・・・若干か?デコボコしているが、この辺りは慣れの問題だと思う。


つーかケツ拭く紙にそこまで精度は求めまい。


使って捨てるわけだし。


うん。


周囲を果物ナイフで切って剥がす。


破れないようにペリペリと。


おー、行けるものね。


ひとまず出来ることは証明できた。


後はどうやって量産するか。


毎日明日使う分を作るとか・・・やだー、面倒くさーい。


でも最悪それだな。


技能に頼れないなら人手に頼るしかないわけで、俺が使える人手なんてジャンヌと屋敷の善意位だ。


都合良く職にあぶれて絶賛お仕事探してますー、なんて人達がいれば話は別だが・・・いたね。


いた、いたじゃんか・・・!!


これはちゃんとWINWINじゃないか?


この仕事なら孤児院の子供達でも出来るだろう。


そもそも機械や職人みたいに、薄くまっすぐなもの作れってんじゃないんだし。


慣れれば出来るようになるかもしれんが・・・まあそれは置いておいて。


よしよし・・・完璧。


つか俺はなんで技能ばっかりに拘っていたんだろうか?


まず人手を集めるのが基本だろうに。


お、ジャンヌ良いところに戻ってきた。


これから孤児院行くぞ。


交渉したいことがあるんだ。


どうした?泣きそうな顔して。


え、パームの木がなかった?


そうか・・・しゃーない。


俺に怒るなよ。


必死か。


実なら大量に余っているのに?


あ、実は安いんだ。


そういえば野外市場でもお手頃価格だったね。


実を使っても採れるかもしれんぞ


どのくらい採れるかは知らんが。


嬉しそうだな。


げんきんな。


それより孤児院行くぞ。


砂糖?


後回し。


優先順位というものがあるのだよ。


・・・泣くなよ。


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