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不変と恋の戦争物語  作者: 萩原慎二
夏の花咲く恋日和
39/41

癒やしは心の奥に。そして買い物

前回のあらすじ川柳

       楓との

        お料理勝負

          正木勝ち

『触らぬ神に祟りなし』

俺は一度、この言葉を褒め称えていた。

以前、牡丹とプライベートで買い物をしたときにこの言葉の大切さを再確認した。

そして、それは『触わった髪は癒やしあり』に変わり、ついでに『ご褒美上げれば子犬喜ぶ』と言う自作のことわざを重宝することになった。


まぁ、この軽率な行動が後に皐月も撫でることに繋がったけどな。

まぁ、今はそんなことどうでもいい。

何故それを今思い出すかと言うと、今日は再び牡丹とお出かけするからである。

正確に言えば皐月も来るが。


牡丹が前回のお出かけで、俺の服選びなどができなかったのが申し訳ないので今日行こうと言われた。

そしてそれを皐月が聞いて、一緒に行く事になった。

凄く、凄く不安です。

主に父性が。

それに、皐月と牡丹がいつも言っている、『乙女心』の理解ができるか不安である。

合宿では乙女心が無いと言われた事と、殴られまくった記憶しかない。

そんな俺が、思春期真っ盛りの少女二人をエスコートできるのだろうか。

いや、服を選んでもらうからこの場合はエスコートされる側かな?


まぁ、どうでもいい。

言ってしまえば牡丹と皐月が俺をエスコートするのはその場面しかない。だから、その後を考えることを優先しよう。



そんな事を考えて約30分。

ちなみに俺は、いつもの駅前の公園で待っていた。集合時間の2時間前から。

別に楽しみすぎて早く来たわけではない。むしろ不安だから早く来た。

楽しみ20%不安70%程である。残りの10%は虚無である。

全力で逃げ出したい気持ちを抑え、無理やり楽しみと幸せの感情を引き出した。

そして、その気持ちは一瞬で本物になった。


「正木さーん!おはようございます!」

「正木。おはよう」

「おお、二人ともおはよう」


後輩sが来た瞬間、俺の幸せ度はやばいぐらい上がった。

もう猫の癒し動画を漁り回らなくてもいいくらいに。だって、目の前に猫と犬がいるんだから。

全力で撫で撫でしようとしている手を抑えて、父性を今までに無いくらい制御して、俺は爽やか笑顔で言う。


「それで、何も決めずに来たけどさ、どこか行きたいところはあるか?」

「とりあえず前回できなかった正木さんの服選びと、私と皐月ちゃんの服選びをして………」

「近くの遊園地に行こうと思って!」

「遊園地か………行った事無いな………」

「そうなの?」


俺は、子供の頃はとにかく生きることが最優先だったから、あまり娯楽と触れる機会が無かった。

唯一触れれる機会といえば、隣人の家で遊んだ時ぐらいだ。

まぁ、中学校に上がった時に登校距離と高校の関係も考えて、今の家に引っ越したからその娘とも疎遠になったが。

隣人といえば、その家の娘は今年受験だけどどこに行くのかな?

まぁ、今そんなことはどうでも良い。


とにかく娯楽に触れることが稀だから、遊園地なんて初めてだ。

しかし、二人の顔は活き活きとしてるから、大丈夫であろう。

楽しみは後に取っておいて、今は先に来る幸福を楽しみとしよう。

というわけで、俺と後輩sは服を買うために足早にショッピングモールへと向かった。



ショッピングモールについて服屋に行き、俺の精神は再び混沌で満ち溢れている状態になっていた。

男物の服を選ぶのだから、俺でも多少なりはわかると思っていた。

しかし、現実は非常である。


どんな服が自分に合うのかなんてわからないし、どんな色の組み合わせが良いのかもわからない。

そこら辺は適当に二人に任せたのだが、二人の顔がガチになっている。


服を一枚一枚取ってみては、俺の体を見つめて合うかどうか確認し、二人で議論しては何度も戻してを繰り返している。

怖い………この二人怖い!

そんな恐怖を覚えていると、俺は周りの空気の異変に気がついた。

いつの日か、文化研究部の皆と買い物へ行ったときと同じ。

侮蔑と嫉妬と軽蔑が混ざり合った眼差しが俺を見つめる。


もう何度目だろうか。

もはや日常の光景となっているこの視線を、今回だけは何とも思わず受け止められた。

だって、そんな視線を感じたときに後輩sを見ると、あり得ないほどに癒される。

あぁ………尊い………。


そんな現実逃避をしながらも、周囲の視線は受け続けている。

そんな時、俺の目の前の二つの小さな物体が動いた。


「正木さん。これ着てみてくれませんか?」

「ん?おぉ………いつの間に上下一式揃えたのか。わかった、着てくるよ」

「じゃ、私達は試着室の前で待ってるわ」


俺は、早足で試着室へと向かった。

中に入り、一度二人の選んだ服を確認する。

黒いパーカに灰色のデニム………。

二人の考える俺へのイメージとはこんな感じなのか。随分地味な人なんですねー(棒)

けど、二人が選んだ服ならきっと正解なのだろう。

それなら後悔は無い。全てを受け入れ、全てを愛しく思おう。

でもまあ、奇抜な色を選ばれるよりは良いだろう。


そう自分に言い聞かせ、俺は着替える事にした。



着替え終わり、俺は試着室のカーテンを開く。

どう思われるのか、内心不安になったが、大丈夫であろう。

合宿の買出しのとき、女子陣が試着ショーをやったときもこのような気持ちだったのだろうか。

まぁ、その時よりは布面積は多いから、緊張する必要は無いだろう。


「おし、着替え終わったけど………どうだ?」

「………………………」

「………………………」

「む、無言になるなよ………に、似合ってないのか?」


そう聞くと、二人はブンブンと手を振って焦りだす。


「いえ!その………予想以上に似合ってて………どんな反応すれば良いのかがわからなくて………」

「そ、そうよ………凄いピッタリな服装だったから………その………」

「………お、おう………そうか………」


皆、一瞬で赤面する。

皐月と牡丹は選んだ人なのに、何故赤面しているんだ。まぁ、俺も人の事は言えないが。

お互い、しばらく無言になる。

そんな空気に耐えられず、俺は試着室へと戻っていった。


「す、すまん。着替えるのに時間掛かりそうだから、先店の外に出ててもらっても良いか?」

「は、はい!先行ってますね」

「は、早めに出てきなさいよ!………ま、待ってるから」

「あぁ………すまん」


外で二人がとたとたと歩いて音が聞こえる。

それに安心して、俺は悶えながらも試着を終わらせて会計へと向かった。

会計を終わらせて、俺は皐月と牡丹の元へと向かう。



そこには、皐月と牡丹の姿は無かった。

変わりにそこにあったには、牡丹と皐月が考えたであろう今日の予定を書いたメモがだった。

それを手に取ると、可愛らしい文字で『正木さんとお出かけ!』と書いてあった。

その時、一人の男が俺の元へと駆け寄ってきて言い放った。


「い、今!君の連れの二人が集団に連れて行かれて!」


俺の中で、何かが崩れる音がした。


「二人って………背の小さい女の子二人ですか?」

「う、うん。そうだけど………は、早く行ったほうが―――」

「どこに………」

「へ?」

「どこに行きましたか」


その時、俺はどんな顔になっていたかわからないが、それは話しかけてきた男の顔が物語っていた。


「ヒイ!!あ、あっちの曲がり角の方に!」

「そうですか………ありがとうございます」


そう言い、俺は走って二人が連れて行かれて方へ向かった。

走っている途中、俺の心が今までに無いぐらいの闇に染まった。

本性が………自分でも感じ取れるほどに。

溢れ出ていた。

萩原慎二です!

今回は、後輩二人とのお話を書きました。

次回も続きます。

本当は、牡丹と皐月をさらわれたことにしようかどうか迷いましたが、さらわれてもらいました。

次回、正木の本性が暴走するでしょう(仮定)

誤字脱字、感想等も受け付けております。

ブックマークなどしてくれると嬉しいです!

次回予告川柳

    正木がね

     二人を追って

        闇深まる

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