純情を賭けた戦い
前回のあらすじ川柳
楓との
勝負をシカト
気にしない
楓に勝負を挑まれた俺は、家庭科室へと走る楓を無視して文化研究部へと行っていた。
着いてから、翌檜と山吹先輩に事情を説明していた。
どうやら山吹先輩は楓のことを知っていて、色々と聞いたが普通の子だった。
なら、何であんな性格になってしまったんだ。
きっとどこかで狂ってしまったんだ。そうしよう、そうしないと説明がつかない。
「て言うか、その勝負受けなくていいの?」
「いや、あいつが勝手に茜置いていっただけだし。俺の目的はあくまで茜の奪還だから良いんだよ」
「と言うか、あれから10分ぐらい経ってるけどさ、楓私達のこと探してんのかな?」
「さあ?」
楓が勝負を挑んでから約10分が経った。
それまで向こうからは何も行動を起こされず、いつも通りの平和な日常を過ごしていた。
まあ、そんな平穏は一瞬で崩れるんですけどね。
「石蕗!茜さん!何で家庭科室に来ないんですか!」
「あ、遂に来たか。楓」
「遂に来たか。じゃ無いですよ!勝負するって言ったのに!」
唐突にドアを開けてきた楓が、他の人を気にせず騒いでいた。
それが誰かさんの逆鱗に軽く触れることになるのを、楓は知っていない。
「おい………楓よ………ノックも無しに入ってきて、『失礼します』の一言も言えんのか」
「え?………あ!梓ちゃん!?そ、そういえばこの部活だって言ってたような………」
「注意したのに謝罪も無しか………いつからお前はそうなったんだ」
「ご、ごめんなさい!」
怖えぇ………部室の室温が一気に下がったような気がする。
山吹先輩の逆鱗はまだよくわかっていない。ふとした言葉で触れてしまうことが度々あるので困る。
まあそれは置いといて。
一番気になっていた事がある。
「なあ、何で家庭科室で勝負すんの?」
「お料理対決をするためよ!」
「何で料理対決?」
「………ま、まあ。そこは気にしなくていいってやつよ」
「どういうことだよ………」
あからさまに誤魔化している事がわかる。
目泳いでるし、なんか指を胸の前でこすり合わせてるし。
「正木、こいつの家は小料理店でな。親の影響で料理が得意だから、得意分野で勝とうと思っているんだ」
「最低だ………」
「う、うるさい!あなたは黙って勝負を受ければ良いんです!」
どんどん俺からの楓への評価が悪くなっていく。
なんだこいつ………性格悪すぎだろ………。
まあいいや。それでこそ破壊のしがいがある。
「良いだろう。その勝負受けてやる」
「え?いいの?やったー!!」
「石蕗、大丈夫なのか?」
「ええ、問題ありませんよ。狂うほどボコボコにしてあげますよ」
実際、勝つ自信があった。
普段から料理はするし、時々茜に食わせては『おいしい』と言ってもらってるし、自信はあった。
小料理店の娘と聞いて、少し勝てるか不安になったが、大丈夫だろう。
こちとらガチで命賭けて料理してんだ。自分で自分の料理がおいしいと思ったことは無いが、評価で言えば圧勝できる。
そんな自信を持ったから、すんなりと勝負を受けることを決めた。
「じゃあ!早速行きましょう!」
「おお、焦るな焦るな。鬱陶しい」
「酷くない!?」
そして、俺と楓のお料理対決が始まった。
場所は変わって山吹先輩のお宅。
予約無しでの家庭科室の利用は無理だと担当の先生に言われ、人数の関係で山吹先輩の家となった。
そこでは、俺と楓のお料理対決の準備は着々と進められている。
その間、俺と楓は各々がどんな料理を作るかを決めていて、それに合った食材を選んでいた。
さすが山吹先輩のお宅。質の良い食材に、最高級の調味料。ピカピカの台所に俺達は目眩がしそうだった。
そして、準備も終わり、遂に『俺VS楓のお料理対決』が始まった。
「ルールとして、制限時間は一時間。使っていい食材は各々が選んだ食材と、使いたくなった物。まあ、つまりは全部使っていいぞ」
「後は………調味料は好きに使っていいぞ。そして、審査員は私と翌檜と茜だ。つまり、2対1で勝てば良い」
「それでは………スタート!」
スタートと同時に、俺と楓は調理場に着く。
今回、俺が作るのはハンバーグ。
慣れれば簡単に作れるからこそ、自分の腕が求められる。
そして、楓の材料を見て察した。
―――こいつもハンバーグを作る。
同じものを作る。と言うことは、単純にどちらが美味いかがわかる。
考えてもしょうがないので、とりあえず俺は作業に取りかかることにした。
俺と楓の作業があらかた終わり、もうすぐ出来上がるというところで審査員たちを見ると、各々が見事にだらけていた。
山吹先輩はどこから取り出したのか本を読んでいて、茜は半分眠っていた。
翌檜はと言うと、これが珍しく俺達の作業を真面目に見ている。
まぁ、まともな事を考えているとは思えないが。
そして、遂に俺と楓のハンバーグが完成した。
よくよく考えればハンバーグを2個食べるとか女子的には大丈夫かと思ったが、茜は大食いだし、山吹先輩は………俺が処理するとしよう。
まぁ、それは置いといて。
俺と楓はそれぞれの料理をテーブルに並べる。
テーブルには計6個のハンバーグが並んでいる。こう見るとやばい光景だ。
「よし……それでは、実食と行こうか」
「いただきまーす!!」
そして、3人はセッセと俺と楓のハンバーグを食べ比べる。
何度も何度も吟味して、それぞれが結果を言う。
「石蕗だな」
「正木かな」
「正木で」
「…………え?全員石蕗?ほ、本当に?」
「残念だが事実だな。さぁ、俺の勝ちだ。特に景品とかは無いがな」
「あ、その事だがな、勝ったほうが負けた方に何でも命令できるようにした」
「はぁ?いつの間にそんなこと……」
「まぁ良いだろう。ほら、さっさと決めるんだ石蕗」
そう言われて俺は黙ってしまう。
別に、俺は命令とかそういう事でしたい事はないから、ぶっちゃけどうでも良かった。
だから、しょうがなくこう言う。
「命令権を茜に譲渡。茜、頼んだ」
「待ってました!正木ならそう言うと思ってたよ!」
「流石だな………この意思疎通の完璧さ」
「命令かー………そうだな……よし!」
ポンと茜は手を叩き、楓の肩をポンポンと叩いてこう言う。
「文化研究部に入部してほしいな!」
「え?…………い、いいんですか?」
「いいんだよ!命令だよ?逆らうの?」
「いや………でも、私色々迷惑かけちゃったし………」
そう言って楓は俺の方をちらっと見る。
「………まぁ、命令ならしょうがない……な」
そう言って俺は、プイとそっぽを向く。
「正直じゃないな、石蕗は」
「めんどくせぇな、こいつ」
「うるせぇな翌檜。ちょっと黙れ」
「なんで俺だけ………」
誰に何と言われようと俺からはノーコメントだ。
命令権は茜に移したし、俺から何も言う事はない。
「じゃあ、楓は今日から文化研究部の仲間だね!」
「………いい、の?」
「め・い・れ・い。部員になって?」
「わ、わかった………あ、ありがとう」
………とまぁ、楓とはこんな感じで出会った。
今思えば、だいぶ摩訶不思議な出会いとは思うが、これも何かの運命だろう。
まぁ、この時は楓と山吹先輩の仲のことを知らずに入部させてしまったから、少しは申し訳ないと思う。
まぁ………これも運命というやつだろう。
萩原慎二です。
これで、楓の過去編は終了です。
これからもちょくちょく、誰かの過去編を混ぜていこうと思っています。
なので、これからも宜しくお願いします!
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