無邪気な娘は優しく微笑む
前回のあらすじ川柳
茜とね
プールで起きた
ハプニング(ラッキースケベ)
一言で言おう。
気まずい。
日も落ちてきて、世界が紅く染まり始める頃、俺と茜は帰路についていた。
先程から一言も話していない。
いつも元気に喋っている茜でも、流石にあのような事があったら話す気も無いようだ。
いや、普通に話しづらい、と言った方が良いのかな?
まぁ、どのみち話せないでいた。
俺も、あんな事があったのに、元気に振る舞えるほど肝が座っていない。
何かと話題は無いか、と考えるが、結果は何も無くして時間はただ過ぎる。
「あ……ま、正木。今日は………ごめん」
「ん………いや、お前が謝る必要は無いよ……こっちこそ………すまん」
お互いに謝罪し合い、そして見つめ合う。
そして、お互いに笑ってしまう。
あんなハプニング、昔なら日常茶飯事だったのに。何故今となっては恥ずかしく思うのだろう。
それは、歳のせいだろう。
お互い、物心がしっかりとついて、『異性』として意識してしまったから気まずくなる。
まぁ、ごく一般的な考えだ。
「と言うか、茜もちゃんと謝れるようになったんだな」
「な!?失礼な!私だって、それくらいできるよ!」
茜がプクッとふてくされる。
俺はそれを見て、笑いながら否定してやった。
「いいや………違う。強くなったって言いたいんだ」
「強く………なった?」
困惑する茜を見て、その後に空を見上げる。
だだっ広い空を、ニ羽の鳥が飛んでいる。
お互いがぶつかることも無く、かと言って離れるわけでも無い、最高の位置を保っている。
それを見ながら、茜に言ってやる。
「自分の非を認めて謝る事とか、相手の非を受け止めて、その上で許すと言うのは、強い人にしかできないんだ」
「何それ………よくわかんない」
茜は俺の言葉を聞いて、首を傾げる。
どうやら本当にわかっていないようだ。
「まずはな、自分の非を認めて謝るって事だけど、これは自分の過ちと向き合えて、受け入れる『覚悟』が無いとできないんだ」
「そして、相手の非を受け止めて、その上で許すってやつだけど……相手の過ちってのは、どうしても許せないのが人なんだ。自分の事では無い、『他人事』だから、感情移入ができないんだ。だから、どんだけその人が苦しんでるのかがわからない」
「けど、それを受け止める事ができて、そしてその人の感情がわかる事で始めて『許す』事ができるんだ。それをできるのが茜だから、強いんだ」
「…………………そっか」
それを聞いて茜は黙り込む。
多分、俺の言っている意味が理解できたのだろう。
茜の強さは、さっきのように自分から謝る事のできる『覚悟』
や、合宿で楓の悩みをはぐらかされたのを怒り、その上で許す事ができる『優しさ』の事だ。他にも例は沢山あるけど。
「………なら、正木も強い人だよ」
「俺が?………何で」
「正木、文化研究部に入ってからさ、素直になったんだよ」
「だから、昔と違って心から謝ることができる。それは正木の言う『覚悟』なんじゃないの?」
そう言われて、黙ってしまう。
自分の事を一番よく知ってるのは自分だ。誕生日・好きなもの・嫌いなもの・家庭環境。全てわかるだろう。
しかし他人は自分の知らない自分を知っている。
だから、茜の言っていることがわからなかった。
「あまり過信するな。俺はお前が思ってるほど強くない」
「いいや。正木は強いよ………だって、あんな私を許してくれたんだから」
「ああ………あの時の事は忘れてほしい。俺もどうかしてたんだと思う」
「いや。忘れないよ。だって、あれが無かったら私は今、文化研究部居なかったかもしれないんだから」
そう言われて、俺はつい黙ってしまう。
正直、茜がそんなことを言うことが意外だった。
茜が『もしかしたら』の事を言うのは珍しい。しかも、大好きな文化研究部に居ないかもと言うのは茜らしくない。
そもそも、茜がそのようなことを気にするのが意外だった。失礼な話だが。
「あれが楓との出会いでもあるしね」
「そうだな。まあ、結構おかしな出会い方だけどな」
「あはは………まあ、楽しくはあったけどね」
ここで、一つ小話。
茜&俺が、楓と出会った時の話である。
「正木!さっさと部活行こうぜ!」
「ああ、わかったから。離れろ」
茜が文化研究部に入ったころ、俺たちはこんな感じでいつも二人で部活に行っていた。
そんな時、ある一人の少女。楓が茜の元へと来た。
そして、茜の腕を掴んでこう言い放った。
「あ、赤松さんは私のものです!」
………うん、この時点で少し理解不能である。
当時、俺達と楓には接点がほとんど無かったため、意味がわからなかった。
呆気に取られた俺は、茜が楓に連れて行かれるの見つめていた。
気がついたときには、もう茜の姿は無く、窓の外から聞こえてくる鳥の囀りだけが聞こえてきた。
しばらく考える。
俺はポケットから携帯を取り出す。
「………あ、山吹先輩。部活行くの少し遅れますわ」
「ああ、わかった」
パタンと携帯閉じて、俺は足を進める。
どこに行ったかはわからない。
だけど、茜を連れているならそう遠くは行ってないだろう。
さすがに茜でも、誘拐?されたなら抵抗はするだろう。なら、まだ近くでもたもたしてるはず。
「んーと………さっきここ曲がったから………まだそこら辺に」
「………居ねぇ」
居ると思ったに、そこには誰一人として人間の姿が無かった。
………その瞬間、俺の茜探索大会が始まった。
萩原慎二です。
今回は、少し短めで終わってしまいました。
急な休み、誠に申し訳ありませんでした。
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