最後の夜は写し鏡のごとく輝く
前回のあらすじ川柳
山吹と
楓の件は
無事終わる
夏祭りも終わり、楓と山吹先輩の件も一件落着して、もう最終日の夜が来ていた。
明日はもう合宿が終わり、普段の日常へと変える時間だ。
翌檜が居なくて本気で不安だったものの、最終的には楽しかった。
大きな問題は解消できたし、後は寝るだけで明日を迎えられる。
しかし、俺にはまだやることが残っていた。
一日目、二日目の夜に共通している俺の行動。
夜間に外出することである。
今日外出すれば皆勤賞。
貰えるわけでもないが、何故か自己満足の為に欲しくなってしまった。
と言う訳で、今日も外出する。
皆が寝静まった時間帯。誰にも音が聞かれないようにドアを開ける。
外は静寂。
その非日常感が、俺のワクワクの増加を加速させていた。
もはや、2つ目の皆勤賞を狙うのも無理ではない。
楓の悩みを聞いたときも。
葵の相談に乗ったときも。
何故か岩場へと行っていた。
それの皆勤賞を取る為に、俺は淡々と歩み出す。
だが、俺はもう気づいている。
岩場に先客が居ることに。
くっきり足跡あるじゃないですか………。
しかも別荘の方から伸びてるから部員の誰か確定だし、しかもだいたい絞れるからたちが悪い。
足跡がまあまあ大きいから牡丹と皐月では無い。
茜は普段からもっと歩幅大きいから違うだろう。
と言うか靴が無かった人くらいわかってるんだけどね。
山吹先輩ですね。
我が部の部長。今回の楓の件の原因と言ってもいいくらいの存在。
そう考えながら岩場まで歩いていると、岩場の上に人が居るのが影でわかった。
そろりと音をたてずに近づくと、うまいこと山吹先輩の後ろへと立つことができる。
ずっと海を見つめる無防備な山吹先輩にそっと近づき、手を肩までやる。
そして、突いたその瞬間!
「ひゃう!!」
物凄い勢いでこちらを向く。可愛い声を上げながら、可愛い声を上げながら!!
大事なことなので2回いました。
「つ、石蕗!なんだお前!居るならすぐに声をかけろ!!」
「すみません。あまりにも反応無かったんで寝てんのかと思ってましたよ」
「だからと言って!わざわざ突っつく必要はないだろ!!」
「ごめんなさい!あんなに驚くと思って無かったんです」
「あ………あれは忘れろ!すぐに記憶から消さないと殺すぞ!」
「無理です!ごめんなさい」
涙目になった山吹先輩がポカポカ叩いてくる。
これがギャップ萌か………こんなに心にグッとくるものなんだな。
正直、心がポカポカして何かいい。
子供を。持ったらこんな感じなのだろうか。
「まあまあ、落ち着いてください、山吹先輩」
そう言って俺は、またまたいつもの癖で頭を撫でてしまう。
「ひゃ!や、やめろぉ!!…………私が私じゃいられなくなる!」
「なにそれこわい」
「バカなこと……いってんしゃなひ………お前は知っているらろ……」
「まぁ………知った上でやってるんですけどね」
「ば、ばかやろー!…………」
俺には撫でられ続けること約5分。
山吹先輩は完全に豹変した。
俺の膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らしている猫のようになっている。
これが、山吹先輩の言っていた私じゃいられなくなる。の正体。
とても可愛い。
初めてこれをやったとき、まだ茜と楓が入っていない時だったので、二人の秘密となっていた。
まぁ、その後は一週間ほど口を聞いてもらえなくなったが。
この状態の山吹先輩は色々とすごい。
まず、正常な判断ができなくなっていつもの半分位まで知能が低下する。
そして、体に力が入らなくなって倒れてしまう。
最終的にはどこかの空間一点を見つめて動かなくなる。
ある意味牡丹や皐月達とは違う、もっとひどい状況になる。
「やめろぉ………石蕗………やめてくれぇ………」
「嫌です。………そういえば、何でここに居たんですか?」
「楓が………私に一緒に寝ようと………しつこく言ってくるかりゃ……」
「別に一緒に寝るくらいいいじゃないですか………せっかく仲が一歩でも戻ったんですから、その記念でも」
「そうとはわかっているんだが………まだ抵抗が………」
まぁ、しょうがないか。今日戻ったばかりなのにいきなり寝ようなんて、誰でも抵抗があって当たり前である。
というか、楓。仲が戻り始めて来たからっていきなりすぎるだろ………まぁ、気持ちはわからなくもないが。
「今からでも、行ってあげたらどうですか?」
「でも………まだわからないんだぁ………どう接すればいいのか……」
「それを理解するために、行くんですよ。運びましょうか?」
「たのむ………」
そう言われて、俺は山吹先輩を抱き上げて別荘へと運ぶ。
とりあえずは順調………かな?
まさかいきなり一緒に寝るという発想へいくなんて、と思ったが、楓らしいと言えばらしいな。
山吹先輩も、拒否をしていないところを見たら成長した感じかな?
………いいや、成長じゃなくて原点回帰かな?
どうでもいいや。
ひとまず、二人の仲が戻って?くれて嬉しい。
そして、ふと思う。
二人は変わった。
大きな大きな一歩を踏み出して変化した。
それ以外にも、この合宿で変わった人はたくさんいる。
2日目の夜にあった虎杖葵だって、楼陽高校に行こうとして決断をしっかりとした。
祭りであった小田原祥子だって変わった。
自分の愛する弟の為に、自分の過去の罪を悔い改めた。
────なら、俺は………俺は何をしているのだろう。
変わるのが怖い。変わるのが恐ろしいと決めつけて、何も変わらないでいる。
それは、今も昔も一度も変わることの無い意見だ。
もちろん未来でも、変える予定はない。
でも………でも、最近になって思う。
過去に誰かが言っていた言葉。
『変化とは素晴らしい事だ。変わることは立派な事だ。それは進化への架け橋となり、進化した人間は精神的にも身体的にも成長する。』
誰が言ったのかは、もう覚えていない。
しかし、その言葉だけは鮮明に覚えている。
当時の俺は、両親はもちろん。それ以外のたくさんの人と離れ離れになった。
近所の優しい家族。
その娘で、俺を兄と慕ってくれた子。
唯一俺の話をちゃんと聞いてくれる先生。
信頼し合って、いつも一緒に居た親友。
全て俺から離れていった。
その時、神は酷く残酷な運命を俺には与えた。と思った。
そんな絶望していた中、あの言葉を言われて俺は悟った。
家庭も、隣人も、恩師も、親友も………皆変わってしまったから俺から離れてしまった。
別に、誰も俺の所有物ではないから、離れたことを咎めることはできない。
だからこそ………だからこそ……。
あの言葉は俺の心に深く突き刺さり、抉りながら俺にその信念、心情を埋め込んでいった。
『変わらなければ、何も失わないと』
そして、俺はその心情な形成されてからずっと思っている。
茜と。
楓と。
翌檜と。
山吹先輩と。
牡丹と。
皐月との出会いは。
変わらない事を望む俺への、変わるための試練。
酷く。酷く苦しくて、残酷な。
────神からの、俺への罰
後書きstory
『一通のメール』
山吹先輩を楓の部屋へ連行した後。
俺は自分の携帯のメールを見つめていた。
翌檜へ送った最後のメール。
『今日、部活の皆と合宿へ行くことになった。まぁ。元々決まってたんだがな。お前も呼ぼうと思ったが、今このメールの存在と、翌檜の事が知られたらまずいから、誘わないことにしたわ。悪く思わないでくれ。でも………そろそろ頃合いじゃないか?』
このメールは、既読にもならずにただ存在している。
向こうが読まなくたっていい。今はな。
もし、あいつがまだ来れないというなら、俺は今、このメールを一応送る。
入力して、送った後に俺は勢いよく閉じる。
そして、そのメールはしばらく見られることはなかった。
『報告。
小田原がついに変わった。
もう害は無いから安心して来ていいぞ。
まぁ、今は夏休みだから来れないがな。
もう一つ。
楓と山吹先輩の関係が元に戻り始めてきた。
今年で一番の収穫だ。
後の問題はただ一つ。
それを解消するにはお前の力が必要だ。
だから、なるべく部活だけでもいいから来てくれ。
期限は文化祭まで。
以上』
既読
はい。萩原慎二です。
今回は、合宿三日目の夜でした。
山吹先輩のあられもない姿が見れて、執筆中もニヤニヤが止まりませんでした。
これからも、文化研究部のラブコメ?を楽しんで貰えれば嬉しいです!
誤字脱字、感想等も受け付けております。
ブックマークなどしてくれると嬉しいです!




