表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不変と恋の戦争物語  作者: 萩原慎二
夏の花咲く恋日和
31/41

山吹梓の本当の思い

前回のあらすじ川柳

        後輩s

         足止め失敗

           走る正木

「どうしたの?梓ちゃん」


石蕗達が私を誘導しようとしていた丘に、私が逆に楓を誘導していた。

そこにいる楓は、私が来て驚いてはいたが、すぐに普通の顔に戻って私に聞いてくる。


「………もうわかってるだろ。この場所に連れてきた意味も、お前を呼んだ用も」

「わかってるよ………けど、私は梓ちゃんの口から聞きたい」

「それになんの意味がある。わかってるなら説明はしない。時間が無いからな」

「じゃあ、わからないよ。なんで私を呼んだの?」


話しながら楓は笑う。

しかし、その笑顔はとても悲しそうな笑顔で、無理をして笑っているような感じがした。


「鬼灯と七竃に足止めは頼んでいるが、あいつはすぐに来るだろうから手短に話す………。そもそも、お前達の計画はあの夜から知っていた」

「何で………とは聞かないよ。茜の後を追ったんだね」

「ああ、茜が出ていくのが見えて、心配になってついていったらあんな相談をしててな」

「それで、本当に何を言いたいの?」


それを言われて、私は黙る。

何を言おうか迷ってるとか、本当は用がないとか、そう言う訳ではない。

単純に………言うのが怖い、臆病者なだけだ。


「何で………必死になって私の気持ちを壊そうとする」

「……………………そっか、そういうことか」


私にキッと睨まれても、楓は怯む事無く淡々とした態度を取っている。


「やっぱり………あの時の事をまだ引きずってるんだね」

「私が………私が初めて恋をした人が梓ちゃんに告白したことを」

「そうだ………いや、それだけならきっと引きずらないよ」

「そうだよね。その後が大事な事だもんね」


しっかりとためを作って、楓は口を開く。


「私の恋をした人が………梓ちゃんに振られて自殺未遂をした事だよね。気にしてるのは」

「………ああ、そうだ」


楓が好きだった奴が私に告白して振られたあと、そいつは自殺しようとした。

家で首を吊ろうとしていたところを親に発見されて、無事に一命を取り留めた………。

それが私の気にしている事だ。


「私……何回も言ったよね………それも梓ちゃんのせいなんかじゃないのに、勝手に悪い気持ちになって私に気を使って」


楓の口調がきつくなっていく。


「私も………そう思おうって努力はしたんだ………けど、いくら考えても私の脳裏からはお前と、あいつの事が離れなかった」

「お前のせいだ。とでも言うように………私の頭から………」


自殺未遂が発覚してからほぼ毎日、私は楓とあの男の夢を見るようになった。

真っ黒な暗闇の中で、ひたすらお前のせいだと言う二人の姿を何回も見た。

違う。違うと何回も自分に言い聞かせたが、いつも帰ってくるのは『本当か?』と言う疑問ばかりだった。


「振られたのも、梓ちゃんが好きじゃないからだし、と言うかもう全然好きじゃないのに………まだ引きずって………」

「ちがう………過去の話はもう気にはしていない」

「じゃあ何で!!」

「未来の話が怖いんだ!………またお前の愛した人を奪ってしまい、今度はお前に精神的な苦痛を与えてしまうかもしれない事が!」

「それってさ………私が振られるとでも言いたいの?」


楓も私も、どんどん声が低くなっていき、苛立ちが目に見えてくる。


「そういう訳じゃない!………あくまでも可能性の話で、もしそうなったときに………お前との仲が崩れ去っていくのが嫌なんだ………」

「何で………そもそも今の関係の方が崩れてるようなものだよ!こんな関係は嫌だから!今日で終わらせようとして──」

「違うんだ!!」


楓の喋っているところを遮り、私は怒鳴ってしまう。


「前の関係に戻って………普通に顔を合わせるのが怖いんだ………私は酷く臆病者だから………危なげで、いつ崩れるのかわからなくても保っている。この関係のままで居たいんだ………」

「………それじゃあ、ただ逃げてるだけだよ………梓ちゃんは!変わらなければ崩れかけでもいいの!?一つ衝撃がかかれば崩れ去るような………そんなのでいいの?」


楓は目に涙を溜めて、必死になりながら私に語りかける。

しかし、その言葉が私の心に響くことはまだ無い。閉じたままで隔離された心には………いつまでも届かない。


「ちょっとでも衝撃を加えれば崩れるから………このままで居たいんだ………崩したくないから、そのままで保つんだ──」

「嫌だよ!そんなの嫌だよ!」


楓は目の涙が流れるのもお構いなしに私に話している。

いつの間にか、私の目から見える世界も歪み始めていた。


「梓ちゃんの気持ちが崩れそうな物なら………私はそれを補強する存在になりたいんだよ!梓ちゃんを………守っていきたいんだよ………」

「………あ………わたしは………迷惑をかけたくないんだ。友達のお前に、迷惑をかけたくなかったから………」

「迷惑をかけあうのが友達なんだよ!………相手に迷惑をかけては自分もかけられ………そうやってお互いを補強し合うのが友達なんだよ!」

「違う!それはただの都合のいい関係だ!」

「お互いに都合が良くて!時には良くなくて………お互いをしっかり尊重できるのが………私の望む友達なんだよ………」


そう言われて私は黙ってしまう。


「梓ちゃんのそれが友達と言うならなら………それは違うよ……友達じゃ無くて『親しい人』だよ………結局は他人と変わりない……そんな物だよ………」

「友達も………初戦は他人だ………それ以上親密になれない………ただの他人だ」

「なら!………なら………私は梓ちゃんのなんにでもなるよ………望むなら……妹にだってなってやる……」


楓の言葉を聞いて、私は思う。

他人とは………親しい人とは………何の違いがあるのだろうか。

結局はただの他人。それ以上でもそれ以下でも無い、ただの他人。

それに、何の価値があるのだろうか………。

価値が無いなら、どれも一緒。別にどれだっていい、選択肢のある関係だ。


────それでも………それでも楓は何かを望む。

私が知らない何かを。延々と望んでいる。

果たしてそれは何なのか。わかるには何日かかるのか。全てわからない。

そんな関係のどこがいいのか………私には理解できない。


「何故………何故そこまで私にこだわる………赤松だって、石蕗だっているだろ!」

「梓ちゃんが………梓ちゃんが大好きだから!!昔から一回も変わらないで好きだから………親密になりたいんだよ」


好きだ。その言葉を聞いたのは初めてではない。

あの時の告白と合わせて二回目。

たった2回………だけどとても苦しくて、幸せな2回目だ。

楓の告白を聞いて………。

私は嬉しくなってしまった。


何故………何故私はこんなに心が弱いんだ………。

たった一つの言葉で揺れ動くような、そんな軽い意志になったんだ………。


「どうして………なんだ………嬉しいと思ってるのに………言葉にはしたくないんだ………」

「梓ちゃん!──」

「教えてくれ!何で私は………私は!」


「それはですね、山吹先輩。あなたがそれ程楓を大切に思ってるからですよ」


突然のこと。

後方から聞き覚えのある声が聞こえる。

石蕗正木。楓と話している間に来てしまった。


「大切に思ってるからこそ、傷つけたくないんですよ。答えを出すのを怖がってるんですよ」

「なら………なら私はどうすれば!」

「答えを出せばいいじゃないですか………それがもし間違った物なら。誤解だったなら………直せばいいんですよ………もう一度、とき直せばいいんですよ」

「それができないから悩んで!こんな事になったんだろ!」

「できます………と言うか、それができるからこそ、本当の友達なんじやないですかね?」

「本当の………友達………」


石蕗は私に語りながら、暗い暗い空を見上げる。


「間違えて、それで終わりなら、結局はそれだけの仲だったって事ですよ。………けど、あなた達は違う。間違えても、食い違っても、こうやって何度も正そうとしている………つまり、間違えても許せる仲なんですよ」

「……………なら………なら私は、どうすれば本当の友になれるんだ………」

「簡単ですよ………よく考えて、答えを出せばいい。それが間違いなら、何度でも正してくれますよ」


そう言って、石蕗は楓の方を見る。

それにつられて、私も楓の方を見てしまう。

そこには、微笑みながら優しい目でこちらを見つめる楓が居る。


「私は………私は………答えは出せないけど………楓と………友で居たいんだ!」


もう、クシャクシャに泣き崩れて、プライドなど気にせずに叫ぶ。

醜くても、格好良く無くても、美しくなくても、そんなことは気にしない。

心の中の、奥深くに眠っていた思いをただ我武者羅に叫ぶ。


「なら………さ、一緒に答えを出して行こうよ………探して探して、時にはこうやって喧嘩して………『本物』を見つけようよ」


そう言って楓は私に手を差し伸べる。

私は遠慮がちに、その手を掴もうとする。

これで良いのかと迷いながら、正解を求める子供のように。

そんな私の手を、楓は自ら掴みに来る。

一緒に探そう。と、安心させる友のように。


私と楓の手が繋がったその瞬間。

──夜空に一輪の大きな花火が打ち上がった。

後書きstory

『小田原祥子とその弟』

「ごめんね、祥平。遅れちゃった」

お祭りの会場から少し離れた位置で座っているのは、私の弟の小田原祥平。

中学生3年生で、自慢の弟だ。

私とは正反対の性格で、とても優しい子だ。

この子は来年、楼陽高校に入学しようと考えているらしいが、とても嬉しく思ったと同時に、とても気まずく思った。

弟の前であの姿を見せたことはない。

だから、私の悪評を聞いてどんなことを言うのかわからない。

弟に知られたくないから、私は罪滅ぼしを頑張っている。

この頑張りは、祥平に伝わらなくてもいい。

楽しそうに過ごしてくれればそれで良い。

「祥平………あんた受験頑張りなさいよ」

「わかってる………姉ちゃんも、俺のこと気にして、無理しなくたっていいからね。俺は何と言われても構わないから」

バレてた。

でも………その上でこの反応。

あ〜好き。

大好き、祥平。



はい。萩原慎二です。

もう山吹先輩との事件もあらかた終わり、後はもう帰るだけ………。

考えたら、合宿編だけで春恋編を越したような気が………。

これは、気にしたら負けです。

まぁ、春恋編が極端に短いだけで、これからは一章一章短くはならないでしょう(仮定)

これからも、応援お願いします!

誤字脱字、感想等も受け付けております。

ブックマークなどしてくれると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ