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不変と恋の戦争物語  作者: 萩原慎二
夏の花咲く恋日和
30/41

不安と安心が入り混じりながらお祭りは始まる

前回のあらすじ川柳

       かき氷

        夏の風流

         美味かった

時はもう夕暮れ時。

俺は夏祭り会場の前に居た。

女子達は、浴衣を着るのに時間がかかるらしいので、後から来ることになった。

俺は先に行って待っていることに。

こんなことをして意味はあるのか?と思うが、それを言ったらまた乙女心が理解できてないとか言われそうだからやめといた。


会場の中心部では太鼓の音が鳴り響いており、その周辺はたくさんの人々で賑わっている。

年に一度しかないこの特別な時間を謳歌している者は、目障りな程騒いだりしている。

だから、こう言うイベントは嫌なんだ………。

ただでさえ人混みが嫌いな俺は、想像以上の人の多さにもう酔いそうだ。


きっと、一人ならこんな祭りは行かないだろう。

部活の皆と行くからか、単純に自分が折れたか、どちらかはわからない。

きっと、夏の魔力が引き出してしまった一時の気の迷いなのだろう。


「あ!正木居た居た〜。探したよ〜」

「おう。皆、着替え終わったか」


声がかけられた方を見ると、そこには浴衣姿になっている文化研究部の皆が居た。

それを見て、思い出した。


『!!男一人!!』


合宿出発の前から恐れていて、どうにかして避けようと、目を背けようとした真実。

美少女5人をエスコートするのは目つきが少し悪い男子。

うん………悪い未来しか見えない。もう俺予知とかするのが最適なのではないだろうか。


「それで、何か私達に言うことはあるか?」

「ひとまず、別行動を希望してもいいですかね?」

「行け、牡丹と皐月」

「「はーい!!」」


そう言って、ドタドタとかけてきては、すぐさまに俺の腕を掴み取るのは牡丹と皐月。

あ、やばい。腕が幸せ。

そんなこと考えている暇はない。

こうやって腕をホールドされた上に、無理矢理逃げたら可愛そうな雰囲気が流れては、もう逃げられない。


「正木さん!恥ずかしがらずに言ってください!」

「そうよ!言わないと4の字固めするわよ!茜が」

「やめて、あれ超痛いから!」

「もう受けたことあるんだ……」


茜の関節技系はやばい。

確実に人を殺しに来てるような決めの上手さと、かかったあとの力の強さが俺の骨を何度刺激してきたことか。


まぁ、それはいいとして。

正直に、可愛いと言うのは恥ずかしい。

いや、まあ結論から言えば可愛いよ?皆。山吹先輩は美しい、茜は明るい雰囲気で可愛い。楓はボディラインが反則。牡丹と皐月は言わずともやばい。

もし、文化研究部の皆が普通の容姿なら、こんなに周りに嫉妬されることは無いだろう。


先程から殺伐とした視線が怖すぎる。

妬み、僻み、羨み、失望。たくさんの感情が詰まった目を向けられている。え?失望?何それ?

理不尽だとはわかってはいるが、他人から見れば俺はただの幸せ野郎だから。しょうがない………な?


周りの目が厳しくても気にせず、お祭りを楽しもう。



牡丹と皐月と向かうは焼きそば屋。

昼ご飯が少なかったから、皆腹が減っており、まずは主食を食べよう。と言うことになった。

とりあえず、皆にちょうどよい場所の確保をお願いして俺は屋台に並ぶことにした。

人気の焼きそば屋なのか、かなりの人が並んでいて、買うのにはしばらくかかりそうだ。


その時、俺の後ろに並ぶ見覚えのある人物と目があった。


「お、小田原!」

「あら………石蕗じゃない」


そこに居たのは小田原祥子。

体育研究部の部長であり、体育祭で我ら文化研究部を壊滅に追い込んだ張本人だ。

会った瞬間、どう接すればいいのかわからなくなった。

あまり話していない存在で、しかも一度プライドをズタズタに引き裂くような行動や発言までしている。


お互いに認識してしまって、話さないことが不自然のような空間になってしまった。


その時、焼きそばの購入の順番が来てしまい、ちょうど逃げれるのでは、と思ってしまった。


「待って………少し話し語したいわ………」

「………なんだよ………俺は皆に焼きそばを速く届けないと行けないのだが」

「お願い……時間はあまりかからないから。話を聞いてくれない?」

「………………ああ、わかった。そっちで待ってる」


そう言って俺は誰もいなさそうな所へ行き、小田原を待っていた。

そして、焼きそばを2つ買った小田原がこちらに走ってきていた。


「………焼きそば、そんなに食うのか?」

「いいえ。弟と一緒に来てるから、弟と食べるの」

「そうか…………いきなり言うけど、性格少し丸くなったか?」

「………そうなのかもしれないわね………色々あったから」

「まぁ………あの時はお前が事の発端だからな」


そう言うと、とても申し訳なさそうな。以前の小田原ならするはずの無い顔をしていた。


「それを………それを謝ろうと………」

「………お前、茜達に謝ったんだろ。なら良いよ。茜の怪我も軽くで済んだし」


実際、茜は驚異の回復力で一日程で殆ど治していた。


「そう………やっぱりあなたは、部員達の事になると必死になるのね」

「あぁ………そうなのかな」


余計なお世話だ。

いや………この考えは間違ったのかもしれない。

『羨ましい』と思っているように取れてしまった。


体育祭の後、小田原の行為についていけなくなった連中は部を抜けていった。最終的には花宮しか残らなかったらしいが。

だから、俺の、この状況が羨ましく見えたのだろうか。


「実はね、赤松と蕁麻に謝ったときに赤松から言われたことがあって………それで性格が丸くなってしまったのかも………」

「茜が?何か言ったのか?」

「ええ………『大事な人を守ろうとか、仇を打とうとか思えないやつには何も勝てないよ』って」

「茜………そんなことを言ってたのか」


茜の性格に反して、至極真面目な言葉。

心に深く残るような、最高な言葉だ。


「よくよく考えてね。来年、私の弟が楼陽に入学するつもりなのだけど、悪評で被害を受けたら可愛そうだから………」

「少しでも………罪滅ぼしを。って感じかしら」


小田原の話をからは、聞いていて悪いものでは無かった。

弟の為。私利私欲も考えて入るだろうけど、大切な人を第一に考えた清い考え。

本当は裏でドス黒い事を思っているのかもしれない。

それはあくまで可能性の話。結局は誰にも、自分自身にしかわからないものだ。


「………皆が待ってるから俺は行くぞ」

「ええ。引き留めて悪ったわ」

「いいよ………けど、変わったからと言っても文化研究部との深い干渉は禁止だからな」

「『深い』干渉ね。わかったわ」


そう言って俺は皆が居るであろう場所へ向かう。


小田原は変わった。

変わった動機がどうとかは関係なく。変わった。

今までの卑劣な考え方を完全にしなくなったとはまだ言えない。

けど、多少なりとも善の考え方をするようになったのだ。

それが、良い方向に向かっていくのかはわからない。

酷く、最悪な結果へ向かうのかもしれない。

だから、俺は変化が嫌いだ。いつまでも。

けど、小田原の変化は。

―――良い方へと進んでほしいと思った。




「すまんなー、屋台結構混んでて遅れたわ」

「ああ、かまわないよ。楓は手洗いに行っているよ」

「さ、速く食べましょ!もうお腹ペコペコよ!」


皐月に急かされて、俺は皆に焼きそばを配る。


「あ、正木さん。焼きそば何円でしたか?」


そう言って牡丹はお財布を手に持って首を傾げる。


「別にいいよ、これくらい。高く無かったし」

「そ、そう言う訳には………」

「もう腹減ったから食おうぜ、楓はすぐ来るだろ」


そう言ってそそくさと牡丹の前から消えると、牡丹は困ったような顔をしてお財布をしまった。

まぁ、他の人は払う気すら無いから別にいいだろう。


「食べる前に、私も手洗いに行ってくるよ」

「はーい。先食べてますね」

「ああ、わかった」


そう言って山吹先輩は手洗いに向かった。

取り残された俺と茜と皐月と牡丹は、いただきますをして焼食べ始めた。



焼きそばを食べてから約10分。

牡丹でも食べ終わるような時間がかかっても、楓と山吹先輩は帰ってこない。

流石に茜も不審に思ったのか、俺と顔を見合わせては困った顔をしている。


「皆、俺ちょっと2人探してくるわ」

「わ、私も行くよ!」


そう言って俺と茜が立ち上がると、歩き出すより速く後輩sが俺達の腕を掴む。


「だ、だめです。まだ行かないでください!」

「そ、そうよ!入れ違いになったら困るでしょ!」

「なら、一本メールか電話でも入れてから………」

「「だめです!!」」


俺達が2人を探そうとする身振りをすると、後輩sは異様に焦りながら止めてくる。

………おかしい。

止める理由がそもそも無いし、こんなに焦る理由はなんだろう。

………。

………。

………。

まさか!


「お前ら、山吹先輩に買収されたな!!」

「そ、そそそそそんなこと無いですよ!」

「そ、そそそうよ。ばばば買収されたなんで、あるわけ無いじゃない!」


絶対に買収されたな。

やばい。本格的にやばい。

俺達の行動が山吹先輩にバレていた。

何故かは知らないが、楓と二人っきりになって、俺と茜を牡丹と皐月を使って足止めしようとしている。


「たのむ!離してくれ。これは大事なんだぞ!」

「二人の問題ですから!二人で解決すべきです!」

「楓は、助けを求めたんだよ!だから、私と正木と楓で解決しないと!」

「本当に!今はだめ!………せめて………二人が帰ってきてから!」

「それじゃあ遅いんだ!頼む。離してくれ」


俺達がどんなに引き離そうとしても、二人は離れない。

無理矢理引き剥がす事はできるが、そんなことをしたら怪我をしかねない。

しかも、この人混みなら何とか引き剥がせても小さい二人の方が有利だ。場所もわからないのに、時間もないのに!


けど………居るかもしれない場所はわかる。

問題はこの二人だ。

…………。


「茜………二人、頼めるか」

「できるけど………大丈夫?」

「できる……かわからないけど、やれるかもしれない」

「なら、行って。二人は食い止めるから。速く!」


そして、俺は掴んでいる牡丹の頭を撫でて力を抜かせる。


「フニャ!!」


一瞬腕が解けた瞬間。それを見逃さないで牡丹を茜の方へ引き寄せ、茜に掴ませる。

後輩sの身動きが取れなくなった瞬間。俺は走り出す。

後輩sの叫びを無視して走り出す。

俺と茜と楓の三人で。

どこで作戦を実行するか決めたときに見つけた絶好の場所。

少し離れた、誰も居ないような丘へ。

後書きstory

『その頃の虎杖家』

「葵ー。ご飯よー」

居間から母の声が聞こえる。

夏祭りの日に、日常と同じようなご飯が並ぶ、我が家の食卓。

まぁ、私のせいなのだが。

楼陽高校に行くために、私は勉強をしていた。

夏祭りも、勉強をするために行かなかった。

中学生の思い出は大事だというが、楼陽高校での思い出の方が大切だ。

だから私は勉強をする道を選んだ。

後悔してももう遅い。

きっと正木達が居るのだろうが、皆と夏祭りを行く思い出は来年まで取っておこう。

だから、私は勉強する。

あの人と、同じ高校に行くために

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