潤う体と失う記憶
前回のあらすじ川柳
海水浴
美少女陣と
戯れる(正木が)
「おーい!そろそろ引き上げるぞ」
山吹先輩の声がかかる。
空を見渡すと、もう夕暮れに照らされて真っ赤に燃えている。
楽しい時間は過ぎるのは早い。そう思ってしまう。
白熱したビーチバレー勝負や、茜との水泳大会。
様々な事をした。
しかし、時間はもう夕暮れ時。晩ご飯の準備をしなければいけない時間だ。いや、少し遅いかな?
「帰ったら、茜と牡丹で風呂を沸かしてくれ。広いから時間はかかるが、なるべく早めに頼む」
「はーい。わかったよ」
「わかりました。茜さん、先に行きましょうか」
そう言うと二人は走っていった。
しかし、沸かすのに時間がかかる風呂とは、どれくらいの大きさなのだろうか。
きっと旅館の露天風呂並の大きさがあるのだろう。
「正木、風呂が沸いたらお前が先に入れ」
「いいんですか?」
「ああ、早く風呂に入って晩ご飯の準備をしててくれ」
「はい。わかりました。………風呂沸くまで軽くやってますわ」
「ああ、頼む」
早めに準備をしたほうがいいと判断し、俺も二人の後を追って走る。
一瞬、山吹先輩と楓を二人っきりにすることに抵抗を感じたが、気にせず走ることにした。
別荘につくと、風呂場から楽しそうにしゃべる声が聞こえ、それを聞きながら料理の下ごしらえをしていった。
材料があまりない。と山吹先輩は言っていたが、ぜんぜんそんなことはなく、すこし凝った料理を作れそうだ。
下ごしらえがちょうど終わったときに、風呂場から二人が出てきた。
「お!正木、ちょうどいい。風呂沸いたから入っていいよ」
「いれたての一番風呂ですよ」
「おう。ありがとう。茜、牡丹」
浴槽を見ると、俺の予想は的中していた。
まんま露天風呂。よく旅館とかの風呂にあるような見事な露天風呂だった。
大きな部屋に広いリビングやキッチン……そして絶景が見える露天風呂。山吹家って本当に凄いわ。
感心しながら風呂に足を入れると、ちょうどいい温度に設定された水に体が包まれて心地がいい。
「ハアァァァァ………」
思わず大きなため息をつく。
それは今日の疲れから来たのか、それとも今後を不安と思う心から来たのか、俺にはわからない。
けど、悪くない時間だった。
案外翌檜を呼ばなくて良かったのかもしれないな。
……………それは無いか。
いつか再開したら盛大に愚痴を吐いてやる。
そう心に決めながら、俺は心地よい風呂を楽しんだ。
楽しかったのも束の間。これからお料理タイムが始まる。
きっと女子陣は皆で入るだろうから、手伝いなしで大量の料理を作ることになるだろう。
はっきり言えば、心躍る。
俺にとって料理は、少ししか無い生命維持の方法だし、誰かに自分の料理を美味しいと言ってもらえる。これは本当に嬉しくて、心が暖かくなる。
しかもそれを言ってくれるのが美少女達………どうやら、俺の今の境遇は悪くないらしい。
俺は同性愛者では無いし、特殊な性癖を持っているわけではない………多分………。
だから、美少女に褒められる。というのは素直に嬉しい。
それが親しい人達なら尚更だ。
だから、続くはずの無い。いつか終わってしまうこの関係が、文化研究部が、変わってほしくないと願っている。
「上がったから、皆入っていいぞ」
「ああ、わかった。料理の方は頼んだぞ。………では、入るとするか」
そう言うと、皆で風呂へと向かっていった。
………よし、ここからが俺の大仕事だ。楓とかの手伝いがない今、俺の独壇場となったキッチンを好きに使える。
こんな最高な瞬間はあるのだろうか。いいやきっと無いだろう。多分。
そんなことを考えながら、手はしっかりと料理をしていたので、意外にも早めに終わりそうになった。
まぁ、早く終わったのなら休んでればいい。束の間の休息ではあるが、休ませてもらおう。
テーブルにたくさんの料理を並べて、皆が風呂から上がるのを待っていた。
静かで、時計の針の音しか聞こえないこの空間は、心地が良いが何か物足りない。
………だいぶあいつらに毒されてしまったな。
騒がしい。とは言えないが、賑やかだったあの空間がどうも恋しくなってしまう。
俺も丸くなったなぁ。
そう自覚してしまった。
「ひゃあー、本当に広いねぇー」
「茜ちゃん。湯加減ちょうどいいですよ」
「おう。もちろん。牡丹もありがとうね、手伝ってくれて」
「いえ。私も担当だったんで気にしないでください」
私達は仲良く風呂に入っていた。
暖かい風呂に浸かりながら、楽しく談笑する。こんな心地の良い空間はいつぶりだろうか。
久しぶりに使う風呂なのだが、しっかりと機能してくれたから安心した。
「ふぅ………」
「山吹先輩の家系って何者なの?」
皐月が私に語りかける。
それに対し私は、ニコッと微笑んで言ってやった。
「人の家庭事情は探るものじゃないよ」
「ご、ごめんなさい。じ、じゃあ、この風呂って何でこんなに広くしたの?」
気まずくなったと察したのか、皐月は急いで話を変えた。
話を変えたのなら、別に話してやる必要は無いだろう。家系の事はあまり言いたくなかったから良かったが。
「別に、父が見栄を張ってか、お客様をもてなすためか、どちらかのために広くしたのだろう」
「へぇ………お金持ちって人間関係が面倒なのね」
「ああ………何なら、人生を交換してみるかい?」
「いえ!いいわ!遠慮しておく」
皐月がブンブンと手を降る。
皐月はしっかりと理解してくれて嬉しい。
私なりの苦労を知らない奴らは、とにかく私を羨ましがった。そして、真実を言われると怒っていた。
理不尽………いや、それはきっと妬みが進化してしまった感情なのだろう。
感情なら、それを責めることはできない。
そのとき。
ーブーン………
「「きゃあァァァァ!!」」
「え!?」
風呂場から悲鳴のような、というか悲鳴が聞こえてきた。
声から察するに牡丹と楓だろう。
急に心配になった俺は、急いで浴室へと走っていった。
「大丈夫か!?」
浴槽の引き戸をガラリと開く。
そこにはうずくまっている牡丹と楓と、何かを風呂桶で叩いた茜と、それを見ている皐月と山吹先輩が居た。
まぁ、予想通りのメンバーで安心した。一人増えてるとかなら冗談じゃない。
「あ!正木さん!ご、ゴゴゴゴ………ごき、ゴキブリが!」
「ままま正木!た、助けて!黒いGが!」
「おい、落ち着け。……茜が退治してくれたみたいだぞ」
「ふぇ?」
「あ、本当だ」
「うん。すばしっこかったけど私には及ばないな。あの世から出直してこい!」
そう言いながら茜は胸を張っている。
まぁ、何事もなくて良かった。不審者が入ってきたとかならどうなってたかわからない。俺が。
「……………おい………正木?何故ここに居る」
「へ?だって、悲鳴が聞こえてきたから……」
「それはわかっている。何故女子の入浴中に躊躇いもなく入ってきた?」
「………………あっ!」
たった今気がついた。そう言えば今は女子の入浴時間でしたね?テヘペロ!
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
「……………………ごめんなさい。痛くしないでください」
「確保ー!!!」
山吹先輩が皆に命令し、茜が俺に当身をしてくる。
そして、顔を真っ赤にした後輩sがオレの動かない体を拘束する。
楓は何かよくわからない物を持ってきていたが、気にしないことにした。
今日改めてわかったことは、皆の戦闘力が意外に高いこと……。
そして俺は眠ってしまった。
後書きstory
『牡丹と犬耳』
正木さんとビーチバレーの勝負をした末に、負けて犬耳をつけられた鬼灯牡丹です。
まさか、ここまで持ってきているとは思いませんでした。
というか、この合宿自体に持ってきているとは思っていませんでした。
犬耳をつけると、正木先輩が笑顔で微笑んでくれます。
暖かい微笑み………とても心が暖かくなりました。
合宿一日目は、まだ終わっていないのにとても幸せです。
正木さんが作ってくれた昼食も美味しいし、皆で遊んでても楽しいです。
山吹先輩と遊べなかったのは残念でした。
遊ぶのも終了して、別荘に急いで変えると、綺麗な夕日が私達を照らして眩しかったです。
振り返るだけでも感じる。そこには短時間で数多な思い出が作られていました。
このあとの夜も、明日も、その次も時間がタップリあるはずなのに、少ないと感じてしまう。
だから、少ない時間でより楽しもうと努力します。
もちろん。あの人へのアプローチも忘れずに。
別荘に入ると気に、茜さんが私をじっと見て言いました。
「………ねぇ、牡丹。いつまで犬耳つけてるの?」
「ふぇ?………あっ!!」
どうも!萩原慎二です。
海水浴も終わり?お風呂回も終わりました?
合宿はたった3泊4日だというのに、投稿は3泊4日ではいきません。
タップリと楽しんでいこうと思います。
誤字脱字、感想等も受け付けております。
ブックマークなどしてくれると嬉しいです!




