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不変と恋の戦争物語  作者: 萩原慎二
夏の花咲く恋日和
20/41

漣が告げる至高の4日間

前回のあらすじ川柳

       合宿で

        正木酔いしれ

           今始まる

夏の美しいものは何か。

そう聞かれたら皆は何と答えるだろうか。

『透き通る様な海』『生い茂る草花』『夜空に咲き誇る花火』たくさんの答えがあるだろう。

しかしそんな中で俺は、こう答える。

『思い出』と。

我ながら粋なことを言っていると思っている。

夏の出来事は、一時の幻想だ。なら、それは人々の脳裏に焼き付いて、一生の思い出となるのだろう。


何が言いたいか。

そんなの最初から決まっている。

文化研究部の合宿で男一人は間違っている。

一日たっても変わらない。やっぱり男一人で女子5人と同じ屋根の下で生活するのは、数日でも緊張する。

出せ!この合宿の立案者を出せ!抗議してやる!………え?山吹先輩?………ならいいです。文句などありません。




文化研究部の合宿の為の買い出しが終わって次の日。

今日は文化研究部合宿の当日。駅前で集まってそこから車で移動するらしい。

できれば公共の交通手段は使いたくなかったので助かる。

女子5人を引き連れてどこかに行く様子をクラスメイトなどに見られては、俺の精神が崩壊する。


前日の反省をして、俺は集合時間より少し早めに駅前へとついた。

一番乗り。と思ったが、そこにはもう牡丹と皐月の姿があった。


「あ、正木さん。おはようございます」

「正木。おはよう」

「あぁ、おはよう。二人とも早いな」

「あんたも、昨日と違って早いじゃない」

「まぁ、連続で遅れたら本気で申し訳ないからな」


時計を確認すると集合時間より10分程早い時間だった。

後輩'sの様子を見ると、来たばっかりと言う雰囲気では無いので、もっと早くから来たのだろう。


「牡丹が早く来るのはわかるけど、皐月が早く来るのは意外だな」

「ちょっと………失礼だと思わないの?」

「ごめん。けど、単純に不思議に思ったんだ。牡丹は律儀だから早く来ても不思議じゃないけど、皐月が早く来るのは何故かわからない」

「まるで私が律儀じゃないって言ってるみたいじゃない」

「………すまんな」

「別にいいわよ。ただ単純に朝起きるのはいつも早いから早く準備ができて、たまたま早く来ただけよ」


ヤレヤレ。という感じでこちらの見つめる。

正直本当に意外だった。皐月は集合とかに遅れはしないだろうけど、ピッタリくらいに来る人だと思っていた。


「朝が早いって、一体何をやってるんた?」

「家庭菜園よ。トマトとか、きゅうりとか、簡単に作れるものを育ててるのよ。それの水やりで早く起きるの」

「家庭菜園か………それまた意外だな」

「正木さん、皐月ちゃんは意外と家庭的な女の子なんですよ?料理とかも結構上手いですし、掃除洗濯何でもできます」

「へぇ。凄いな………俺が言うのもあれだけど」

「あんたは男なのに家事スキルが高すぎるのよ。一人暮らしの長さが物を言うわね」


前にも説明した気がするが、俺は早くから両親を亡くしているため、普通の人より一人暮らしの期間が長い。

まぁ、手助けはいくらかはあったから無事過ごせたけど。

金銭的な面は問題は無かった。

もともと親の稼ぎが良いため、大学に行くまでの金はさほど苦なく用意できる。大学に入ったら働き詰めになるだろうから、今から金銭面で心配することはない。


「皆、おはよう」

「みんな〜おはよう」

「あ、山吹さんに楓さん。おはようございます」


後輩'sととやかく話している内に山吹先輩と楓が来た。

二人とも集合時間にほぼぴったりに来た。

ということは、今ここに居ない茜が遅れていることとなる。


山吹先輩達が来てから十分ほどたったが、茜はまだ来ない。


「茜さん、どうしたんですかね………」

「石蕗、幼馴染として何かわからないか?」

「そうっすね………多分寝坊か忘れてるかのどっちかでしょう。あいつ、行事の前日は楽しみで眠れないタイプですから」

「そんなバカなことあるの?」


実際、昔俺と茜で海に行くときに茜は前日全然寝れてなくて一時間ほど遅れたことがある。

それを踏まえれば、今回遅刻しても不思議ではない。

さっきから電話をしているのに出ないところがそれを物語っている。

『待たされる方ってこんな感じなんだな。ごめんね皆』と心の中で思いながら茜を待っていると、遠くから急いで走ってくる人影が見える。


「ごめん!!遅れちゃった!!」

「茜、遅いぞ。遅刻厳禁と言っただろうが」

「ご、ごめんなさい。寝過ごしちゃって」

「たく………昨日と言い今日と言い。お前らは遅刻グセが強い奴らだな」

「ま、まぁ、山吹先輩。ここらへんにして行きましょうよ」

「あぁ……そうだな。そこに車があるから荷物を乗せて乗り込むがいい」


そう山吹先輩が言うと、皆それぞれがカバンやキャリーケースなどを大きな車へと詰め込む。

6人分の荷物があるのに楽々入るというのは凄い車だな。流石は山吹家所有の車。

そして、皆が車に乗り込むのを見て、俺は助手席に乗り込もうとする。


「おっと石蕗……お前は後ろだ」

「はは……山吹先輩、冗談はよしてくださいよ。流石に女子と座るのは抵抗が………」

「昨日の件、荷物持ちで許したとでも思っているのか?」

「いや、でも」

「正木さん、観念してください」

「さっさと乗るわよ!正木」

「いや、待って?その手の引っ張り方だと俺真ん中?無理無理無理。せめて端にしてくれない?ねぇ、なんで無言なの?」


そうして、俺は牡丹と皐月の間に座ることとなった。

この後輩'sは俺の気持ちを理解してやっているのだろうか………そうなら是非遠慮してほしい。

今だけは牡丹の背中に悪魔の羽根が見えた。皐月はいつもだけど。




〜出発から約一時間後〜


「正木さん、私のグミ上げます」

「おう。ありがとう」

「正木、チョコよこしなさい」

「はい………」


俺と後輩sは早めのお菓子タイムに入っていた。

牡丹と皐月の俺への対応の違いは気にしてはいけない。むしろこれがデフォルトです。

それに対して他の文化研究部のメンツは、山吹先輩は寝ており、茜と楓は楽しそうに喋っている。

後輩sに挟まれて座ると聞いて、初めはどうなるかわからなかったが(主に父性的な意味で)何とか到着まで過ごせそうだ。


後輩sとは入部のときの話をしていた。

俺が文化研究部に入部した理由や、牡丹と皐月が皆をどう思ったかなど。

俺の知らない情報が入手できて楽しかったし、牡丹と皐月の事をもっと知れてよかった。



〜出発から約ニ時間後〜


「正木さん………大丈夫ですか?」

「だ、大丈夫なの?」

「すまんな二人とも………メッチャ酔ったわ……」


俺は車酔いしていた。

もともと俺は車でチョコを食べると酔う体質なのにすっかり忘れていた。

しかもこの酔は吐くとかじゃなくて単純に気分が悪くなるものだからたちが悪い。

しょうがないから少しうたた寝しながら車に揺らされることにした。


他の部員達は茜が眠りこけて、山吹先輩が起きてから本を読んでいる。楓は誰かとメールらしき事をしている。

相変わらず自由な部活だな。そもそも部活として維持できていることを不思議に思う。

まぁ、今何かを考えることは控えよう。反動で脳がやられてしまう。

そして、俺は深い眠りについた。




「………さん…………正木さん………正木さん!」

「ふぁ?何?」

「つきましたよ。山吹先輩の別荘につきました」

「おう………」


牡丹にゆさゆさと揺すられて目を覚ますと、目の前に大きな家があった。家というよりシェアハウス。何人も生活できるような大きな家。

他の人達は皆もう荷物を下ろして玄関の前で待っている。

どうやら俺が起きるのを待っていたようだ。

このまま待たせても悪いので駆け足で皆のところへと向かう。


「あ、正木やっと起きたんだ」

「おう。すまんな。すっかり寝てたわ」

「で、酔は覚めたの?」

「ぜんぜん。まだ気分悪いよ」

「そ、そう………大変ね」


実際、まだ俺の頭はグルグルしていた。

単純に具合が悪い。吐くとかでは無いからただ休む事しか対処法が無い。そんな感じ。

どうやらこの後海に行くらしいが、俺にそんな気力は残ってない。というかよくそんなはしゃげるな……。


俺の疲れを横目に、皆は別荘の中へと入っていく。

それに続いて俺も別荘に入ると、まず広々としたリビングが目中に広がる。

一般的な家庭ではありえないようなサイズに皆驚愕していた。


「凄いですね……こんなに広いんですか」

「まぁ、大人数で止まることを想定して建てたらしいからな。自然と大きくなるだろう」

「それにしても大きいよね〜」


リビングにはテレビやフカフカなソファ、いくつもの料理が置けるような大きなテーブルがある。

キッチンからはリビングが見渡せるようになっており、とても料理が運びやすい。

なんか物件紹介みたいになってるな。


一度、荷物を整理するために皆山吹先輩に分配された部屋に行くことにした。

2階にある部屋の位置的に後輩sの間になっていることに悪意を感じました。

部屋もかなり広く。一人どころか3人ぐらい泊まれるのでは?と思えるほど大きかった。

しかし意外に、部屋は割とシンプルな内装をしていて、セレブ特有の花柄などは一切無かった。

きっと山吹先輩の正確に合わせて作った物なのだろう。


────コンコン


衣服や持ち物をまとめていると、ドアがノックされた。


「はーい。どうぞー」

「あ、正木?ちょっとごめんね?」


そう言いながら茜が入ってきた。


「茜?どうしたんだ?」

「山吹先輩が支度が終わったらリビングに集合しろって。何か色々役割決めるらしいよ」

「おう。もう準備できてるから行くわ」

「うん。じゃあ一緒に行こう」


そう言って部屋から出ていく茜を追いかけて俺達はリビングへと向かった。


リビングにはもう皆集合しており、それぞれがリラックスしていた。


「俺が最後だったのか。すまんな、待たせちゃって」

「いや、皆の準備が早く終わっただけだから問題は無い」

「そうですか。で、役割分担するんでしたっけ?」

「ああ、さっき保存していた食材を見たんだが、量がかなり少なくてだな。ひとまず今日は過ごせるが、明日からは買い出しに行かなくてはならないんだ」


明日からなら、ひとまず今日はそのことを考える必要は無いだろう。

問題は他の役割だ。


「後は料理役、片付け役、洗濯役、掃除役などをとりあえず決めようと思ってる。幸い家事全般ができる人が多いからな。選びやすくはある」

「そうですか。だいたい決まってるんですか?」

「ああ、お前が全部担当することはもう決定している。後はそれぞれに何人か分担する。という感じだ」

「まぁ、今更ツッコミませんよ」

「うん。なら、後はどうするかだが……」


そう言って女子グループは役割分担を始める。

俺がすべての役割を担当するのはいつものことなのでまぁいいとしよう。


役割が決まると、皆それぞれ部屋に戻って水着に着替えたりなど、海に行く準備をすることになった。

まぁ、俺は格好だけ整えて後はお休みですが。

どうせまた荷物持ちになるだろうから持っていくのは覚悟だけで十分だ。

うら若き乙女たちが水着姿で戯れる……なんと言うか、きっと至福な時間なんだと思う。

とりあえず。先に準備を終えた俺はリビングで少しの間待つことにした。

遠くからは小さくはあるが漣の音が聞こえてくる。

きっと俺への安らぎと不安を運んでくる漣だろう。プラマイゼロで幸せ(?)だね!

後書きstory

『石蕗正木の憂鬱』

リビングで役割分担をしているとき、また空気になった。

どうやら俺は空気になるのが得意なようだ。

ふと、窓へ視線を向けると木々が揺れ、それに合わせて海が波を打っていた。

これから海水浴に行くようだが、俺は休もう。でなきゃこれからの体力が間に合わない。

考えれば、いつも山吹先輩から無理を言われているような気がする。

きっとそれは非人道的行為で、とても残虐な行為だ(決定)

しかし、それが俺の中で『あまりまえ』になってしまった。

俺の不変を望む性格上、それが変わらないで欲しいと願ってしまう。なんと面倒くさいことか。

そして、なんと皮肉なことか。

自分が幸せになるためのポリシーで、自分の首を絞めている。

ドMじゃないのに、耐えなければいけない。しかし、それが俺の望んだ不変だから、それが幸せなのだろう。

きっと、いつか山吹先輩の無理を耐えることを後悔するだろう。

そのことを考えると、酷く面倒臭く、憂鬱だ。

本当に、憂鬱だ。

                ーfinー



というわけで萩原慎二です。

今回から次回予告川柳の代わりに『後書きstory』がスタートします。楽しみにしていただければ嬉しいです!

誤字脱字、感想等も受け付けております。

ブックマークなどしてくれると嬉しいです!

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