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不変と恋の戦争物語  作者: 萩原慎二
春恋編
13/41

決心と決意により体育祭は幕を閉じる

前回のあらすじ川柳

       茜との

        過去のいざこざ

            超萌える(ハチャメチャ)

「なあ、石蕗」

「………はい、何ですか?」


 俺は茜の怪我がわかった直後に、山吹先輩に呼び出されていた。


「お前が作戦を決めた日からずっと考えてたんだが、元々お前が考えてた案は私に言ったのとは違うよな?」

「……………」


 ――ああ、やっぱりこの人は凄いな。


「気づいたんですか?」

「ああ………時間はかかったがな」


 時間がかかったとしても、俺の()()()()()に気がついたのは驚いた。誰にもバレない自信があったのに。


「どうやって気がついたんですか」

「気がついたというより、思い出したんだ。去年の事を」


『去年』という言葉に引っかかる。

 やっぱり。今回の俺の元々の作戦は、去年の事を考えればわかるだろう。そう思ってた。

 しかし、今回の注意人物は山吹先輩だけだった。

 茜と楓にはその時俺の作戦を教えていない。教えたのは翌檜と山吹先輩だけだ。なら、今いる中でわかるのは山吹先輩しかいない。


「で、その作戦ってなんですか?」


 わざとらしいが、外れている可能性があるので聞いてみる。まぁ、外れるわけはないが。


「君のもともとの作戦は、『この勝負ではなく、部活対抗リレーを辞退すること』だ」

「………一応聞きますけど、なんでですか?」

「元々この勝負には、『()()()()()()()()勝負をして負けた方が廃部』というルールだ。なら、そもそも対抗リレーすら出なければ、勝負不成立。それに加えて今回の勝負に不戦勝が無かったから、向こうもこちらを負けにさせることができない。それが君の作戦だ」

「……………流石。の一言です」


 やっぱりこの人は凄い。『去年の俺の作戦』という情報しかないのに俺の作戦をバッチリ当てた。


「………何でわかったのか聞いてもいいですか?」

「去年君は3つの案を出した。しかしそれは全て私や翌檜が認めるほどの最低最悪な作戦だ。それに比べて今回は至極まともな案。………一瞬変わったのかと思ったが、今日何回か本性が出ていたのでね、それはないと悟った。だからこそたどり着いた」


 確かに、山吹先輩の導き出した理由は合っている。しかし、俺は何でまともな理由に変えたのかを言ってほしかった。何でそんなことを思ったのかはわからない。


「………君は、皐月や牡丹が入ってきたからその作戦を止めた。だから他の作戦を必死になって考えた。だが、少ない情報で気づけるほどの穴があった。………心優しいのは良いが、いつもの判断力が落ちている」

「っ!………」


 それを聞いて、心に槍が刺されたような感覚を覚えさせられた。

 全く持ってその通り。去年は翌檜のお陰で俺の作戦の使用を阻止できた。しかし、今年は翌檜無しの俺か山吹先輩で決めることとなった。しかし山吹先輩は最初の案ができなくなって焦り、俺の案を承諾した。()()()()()()()


「君の本性は、文化研究部の部員には優しい。しかし、その優しさが今回の穴だらけの作戦を生んだ。……もっと冷静に考えるべきだった」

「………そうっすね」


 俺は見透かされていた。全てを。後輩二人に廃部を味合わせたくなかったが故に、焦って全てを山吹先輩に理解された。


「赤松はきっと対抗リレーには出られないだろう。さて、君ならどうする?」

「………それもお見透し。って事ですか?」

「もちろん。私を舐めるでない」


 ああ、やっぱりバレていたのか。そんな気はしたが、こんなにも簡単にバレるとは思っていなかった。まぁ、穴だらけの作戦だから仕方がないか。


「最終的な走順は、楓、鬼灯、私、七竃、お前でいいな?」

「はい、お願いします」

「わかった………頑張りたまえよ………キーマンは君なんだから」


 そう言って山吹先輩は去っていく。きっと走順の変更を本部に告げにでも行くのだろう。

 この、この見透かされた感じは、酷く気持ち悪くて、そして心地良い。それが山吹先輩の見通しだ。



 会場に行くと、もう部活対抗リレーの前の競技の終盤に差し掛かっていた。


「あ!正木さん、お帰りなさい」

「おう、牡丹。ただいま………茜はどうだ?」


 そう言っていつの間にか客席に戻っている茜に目をやると。そこには顔をグシャグシャにして泣いている茜がいた。


「茜さん、もう部活対抗リレーには出られないって………すごい泣いているんですよ」


 そう言って牡丹はとても心配そうな視線を茜に向ける。


「牡丹………走順は山吹先輩から聞いたか?」

「はい………でも、大丈夫ですかね………」

「ああ、心配すんな」


 そう言った後に、俺は茜の元へ行く。


「まざぎ………グスッ!………ごめんね………わだじのせいで……ごめんね………グスッ」


 茜は大声をあげないで泣いているが、今にも大声を出して泣きそうだった。


「………茜、応援頼んだ」

「…………へ?」


 そう言って俺は茜の頭に手を乗っけてやる。

 その時。


『次は、文化系の部活動による、部活対抗リレーです。出場する生徒は、ゲート前まで集合してください』


 アナウンスがかかる。


「じゃ、行ってくるわ茜!………見ててくれよな、悪魔祓いに行ってくるから」


 そう言って俺はゲートに向かう。

 茜の見守りは、同じクラスの何人かに頼んで代わってもらい、他の部員達もゲートへと集合した。


「お前ら………山吹先輩に聞いたとは思うが、アンカーの俺にバトンが渡ったときに、50メートル以内に相手がいれば、負けててもいい。だから、茜のためにも、全力で走れ!」

「「「ハイ!」」」


 そして俺達は入場し、それぞれ各区間の位置へと着いた。

 我が高校のトラックは400メートルとなっている。一走目とニ走目が50メートル。三走目が100メートルで、四走目が200メートル。そして最後に五走目が400メートルと、合計800メートルを5人で走る。


「あら、あなたは5区間目を走るのですね?」


 そこには今回の勝負の首謀者、小田原祥子がいた。


「おお、どうもどうも………さっきはご連絡どうもな」

「あら、間に合わなかったのにお礼なんて、勝負の放棄でもするつもり?」


 俺は本性全開にして小田原と喋る。もう周りのことなど気にしてはいられない。


「まさか。無様にお前らを負けさせて、勝負を挑んだことを後悔させてやる」

「あら、それは楽しみね」


『それでは、第一走者、第2走者は準備をお願いします』


 アナウンスが始まりの準備を促す。

 それに合わせて楓と牡丹は準備をする。

 楓は鬼のような形相で体育研究部の部員を睨んでいる。その姿はまるで怒り狂った獣のようだ。

 それに対して牡丹は不安げな表情で準備体操をしている。


 不思議と二人への心配は無かった。少しの間とはいえ、茜の特訓を受けたのだ。速くはなっている。


『それでは皆さん、位置について………よーい!』


 スターターが火薬銃を天へと向けて、引き金を引こうとする。それまでの時間は酷く静寂で、時が止まっているようだった。


『ドン!!』


 その合図と同時に、楓は飛び出す。

 50メートルという短い間ではあるが、油単をしたら抜かれる。それが楓の精神を蝕んでいるのか、楓のスピードばあまりあがらず………


「おいおい………嘘だろあれ」

「そんなことが………嘘でしょ」


 俺と小田原が絶句する。

 楓のスピードは、遅くなどなっておらず。むしろその区間では他の走者と大幅に差をつけてゴールしようとしていた。

 そして何よりも、地面を蹴るタイミングに合わせて楓の豊満な胸が上下左右に揺れている。豊満な胸が!


「牡丹ちゃん!」

「はい!」


 そして、楓は颯爽と牡丹にバトンを渡し、牡丹は走り出す。

 せっせと走る姿は、さながら小動物。しかし、あまりスピードはでず、後ろとの差を詰められる。


「山吹さん!」

「任せろ!」


 牡丹は必死に走った。差は詰められはしたものの、抜かれずに山吹先輩へとバトンを渡すことができた。

 山吹先輩は、縮まった差をグングンと広げていた。

 まぁ、山吹先輩は元々足が速く、茜には劣るがその速さは常人よりも速かった。

 そして、山吹先輩は100メートルを難なく走り、


「七竃!」

「はい!」


 そしてバトンは皐月へと渡る。

 皐月も足は速い。でも、速いと言うより皐月は持久力がある。

 それを活かし、200メートルも難なく走り抜けようとしていた。

 俺も準備を始める。

 しかしその時。


「あっ!」


 ――ドサ!


 皐月は転んでしまった。

 皐月が起き上がる前に、後ろの集団は皐月を追い抜こうとしていた

 抜かされる前に皐月は立ち上がるが、どうしても減速してしまい、とうとう後ろの集団に抜かされた。


「ふぅ………一時はどうなることかと思いましたけど、これで私達の勝ちは決定ですね」


 そう言って小田原はバトンを受け取り、走っていく。

 そして皐月が来て。


「ごめん………正木………私、私!」


 皐月はもう涙を溜めて、弱々しくバトンを渡す。

 体育研究部との差は大体………30メートルくらい!


「皐月………上出来だ!」


 そして俺は皐月からバトンを受け取り、全力疾走する。

 俺と小田原の距離はグングン縮まり。


「な!?」


 遂に抜いた。

 まあ、当たり前だ。皆は茜の特訓を数日受けてあんなに速くなった。でも俺は、小学中学と5年以上もその特訓を受けているんだ。速くて当たり前である。

 そして俺はどんどん後方との差をつけて。


『ゴール!!優勝は、文化研究部!!』


 アナウンスが鳴り響く。

 それを聞いて体が震える。

 そして何よりゴールした瞬間に、近くで応援していた茜の喜びの顔、牡丹と皐月の歓喜の声。楓と山吹先輩の微笑み。

 それを見て、聞いて、体に喜びが走る。

 これが………勝利の感覚。


「何で………何で何で!!」


 2位でゴールした小田原が怒りと疑問を乱暴に投げつける。


「お前は………人を舐め過ぎだ」


 それを聞いて小田原は、とてもとても悔しそうな顔をしてその場に膝を落とす。

 退場も速やかに終わり、俺は早足で茜の元へと行ってやる。


「正木!正木正木正木!!よがっだよー!!」


 茜は泣きながら俺に抱きつく。

 そんな姿は久しぶりに見た………あの日の夜のようだった。


「正木さん!凄かったですよ!!あんに速くて!」

「まぁ………かっ、かっこよかったわよ!」

「素敵でしたよ♪正木!」


 皆から褒め言葉を頂く。

 でも、今回頑張ったのは俺だけではない。


「皆も、凄く速かった。数日茜の特訓受けただけなのに凄い成長ぶりだったぞ!」


 まぁ、こんな日ぐらいは喜んだっていいだろう。

 ………でも、まだ全ては終わっていない。まだ用事が残っている。

 最大の用事が。





 誰もいない渡り廊下。

 酷く静寂でそれは恐ろしさまで感じさせる。

 表彰式も終わり、皆それぞれ帰路についている頃に俺達文化研究部はそんなところに来ていた。


「………あら、文化研究部の皆さんお揃いで」


 そこにはただ一人。今回の件の元凶、小田原祥子がいた。

 酷く冷めた目で、笑っているような喋り方で全然笑ってなどいない。


「まぁ………勝負には負けましたので、体育研究部は廃部と言う事で」

「………いいや、廃部はしなくていい」

「………は?」


 小田原は不思議そうな声を上げる。それはそうだろう。今回のルール、負けた方が廃部なのに、それをしなくて良いと言うのだから。


「ただし………今後一切の文化研究部との干渉の禁止、そして何かしようとしたらこの動画を先生方に流す」


 そして俺はスマホの動画を見せる。

 そこには今回、茜を怪我へと導いた花宮正太郎が居た。

 そしてこう喋っていく。


『………私、花宮正太郎は、部長の小田原祥子さんの命令で、赤松さんを怪我させてしまいました………誠に申し訳ありません!』


 そこに写ってたのは、花宮の謝罪動画。

 バッチリと小田原に命令されたって言っている。


「小田原……もう言い逃れはできないぞ……」

「ひっ!!」


 俺の代わりか、山吹先輩が威圧的に発言する。

 それを聞いて小田原も恐怖の顔を見せる。


「そ、それで何か脅しでもするつもり?」

「おお、察しがいいな。そうだよ、さっき言った通りにしないと、この動画を先生方に流す。と言うことだ」

「んな!?卑怯な!」

「どの口が言ってやがる………お前には軽すぎる罰なんだがな」


 最後まで卑劣な小田原に、牡丹をそっと前へとやって言わせる。


「………正木さん………もう、今回だけですからね」

「おう、上下関係とか気にしなくていいからズバッと言ってやれ!」


 そして牡丹はスゥッと息を吸う。


「……バカー!!アホー!!マヌケー!!」

「……………」


 皆、黙り込む。

 あの日と同じように、牡丹は小田原へと罵倒?した。


「……………」


 小田原はずっと黙っていた。

 可愛い牡丹は置いといて、俺は皆に呼びかける。


「よし、皆もう行くぞ。これで一件落着だ」

「ええ………これでいいの?」


 皐月がツッコむが、そんなのは気にしない。

 茜がニコニコしているからいいだろう。

 これで、もう小田原は復讐しにこないだろう………多分………。


「正木………ありがとう!」


 茜はやっぱり、笑顔と元気が似合う運動ガールだな。

 皆俺の作戦で疲れたようなので、次の部活は俺がお茶でも入れてやろうかな?

 まぁ、皆の絆が見られたいい機会だったかな?

どうも!いつもの萩原慎二です!

今回で体育祭編&茜回が終わりました。

ここで疑問に思うことがある方がいるかもしれません。

『皐月との二人三脚は?』

と、思うかもしれません。

バッチリ優勝しました。

ということは………と思いますが、それは次回です。

誤字脱字、感想等受け付けております。

ブックマークなどしてくれると幸いです。

次回予告川柳

    一年の

     歓迎会って

      まだだっけ?(今更)

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