Another story2 茜と正木の過去
前回のあらすじ川柳
茜がね
悪魔の手により
再起不能(字余り)
今回は、正木視点と茜視点が頻繁に切り替わります。
俺、石蕗正木は小学校の時から茜とは親友だった。
その頃から茜は運動の超人。その学校には茜に勝てる者はいなかった。
そんな茜が何故俺と親友なのか。それは、ある出来事があったからだ。
小学4年生の頃のお話。その日私は、体育の時間で使ったボールを片付けていた。
その時に、同じクラスで厄介事を押し付けられた正木が一緒に片付けをしていた。
「ふぃー………こんな感じでいいかな?」
「アホか、まだそこに色々あるだろ。さっさと運べる」
「へーい」
その時私と正木は接点のないクラスメイト。言うなればほぼ初対面のような状態。
最初は正木の態度が少し失礼に見えた。
それからも正木と片付けをして、もう終わりそうだった時に。
「あ!ボールを棚の下に転がしちゃった!」
「はぁ!?何してんだよ………時間がかかる………」
しかし、正木はそう言いながらも私の代わりにボールをとってくれた。
実は優しいのではないのかと思った。
その時だった。
「あれ?倉庫の鍵空いてる。誰か締め忘れたか?たっく………閉めなきゃな〜」
――カチャカチャ……ガシャン!
「あ………」
「え?どうした赤松」
「正木………閉じ込められちゃった………」
「………はぁ!?嘘だろ?おい………まじかよ………」
正木は口元に手をやって考えている。
「窓はあるけど小さすぎて無理………校舎から離れてるから助けも来ない………あれ?終わった?」
「………えー!!」
そう………私達はこの時、倉庫に閉じ込められてしまいました。
「くっそ………赤松、今日陸上の練習は?」
「え?陸上?たしか………今日はお休みだよ?」
「まじか………このままじゃ誰も来ないぞ」
正木がそう言ってマットによしかかる。
その時の私には、そんな状況がとても怖かった。
「そんな………それじゃ私達、どうなっちゃうの?」
少し涙混じりに話す。今思えば情けなくて恥ずかしい。
「あ?そんなの、夜になったら親が気づいて探しに来てくれるだろ。まぁ、俺の親はいないから無理だけど」
今ならその言葉がどれだけ辛いかがわかる。けど、昔はそんな言葉がよくわからなかった。
「え?私の両親今日親戚の家に行ってていないよ?」
「……………………終わったな」
「えー!!」
「放課後の片付けだったし………明日から土日だし。一晩こすかも知んないぞ」
「ええ………そんなのやだよぉ………」
突然のことで混乱した私は、もうほぼ泣いていた。
「………別に、人間は一日何も食わなくたって死なないよ。それに、マットとかあるから寝ることはできる。幸い今は夏だから体温の心配もなし」
「だから………大丈夫だから泣くな」
それは私が泣いているのを気にかけてか、とても優しく発してくれた。
「うん………私、頑張る!」
「でも、問題が一つある。」
唐突に正木が言って、私はキョトンとした。
「その………トイレが問題だ………」
正木が恥ずかしそうに言う。
「あ………」
「生理現象だから我慢にも限界がある。かと言ってするわけにもいかない………本格的にまずいぞ」
沈黙が流れる。
「正木…………」
茜が申し訳なさそうに呼びかける。
「うん、なんとなく察したけど言ってみろ」
「トイレしたい………」
「まじか………どうしよう」
事態は非常に問題だった。何か代わりになるものを探したほうがいいのだろうが、茜は女子だからさせずらい。
「茜、とりあえずできれば何でもいいから探せ。窓から捨てればいいから」
「えー!?………恥ずかしいよ………」
茜は顔が真っ赤になっているが、今はそんな事を気にできる状況ではない。
俺と茜は観念して何か代わりになるものを探す。
「………あっ!!正木!あったよ!」
茜は少し大きめな缶を持っている。
「おお!よくやった!それもう一個ないか?」
「え!?………んーと………無いよ?」
「…………まじか」
さらに何分か探したが、ちょうどいいものは見つからなかった。
「………やばいな………見つからん」
「これじゃあだめなの?」
「お前………人がしたのでしたいのか?」
少し意地悪に言ってしまう。
「!!………そりゃ………嫌だけど………今はそんな事気にしてる場合じゃないから………」
「そ、そうか。それより、お前しなくていいのか?」
先程したいと言っていたので、そろそろ限界じゃないだろうか。
「うん………したいけど………音が」
「あっ!!すまん。全力で耳塞ぐから、終わったら窓から捨てて俺の肩叩いてくれ」
そう言って俺は後ろを向き、耳を思いっきり塞ぐ。
しかし。周りが無音なせいで、少しの音は聞こえてしまう。違う!これは………そう、雨音だ!けして尿の音なんかじゃない!
そう自分で答えを言いながら待っていた。
しばらくたって、俺の肩がチョンチョンと突かれる。
「お、おう。終わったか」
「うん………終わったよ………缶は窓際に置いてきたから」
そう言って茜は窓際の例の物を指差す。
「あ、ああ………わかった」
しかし照れくさくなってすぐに目を背ける。
「…………………………」
茜と俺はしばらく言葉を交わさず、お互いに黙っていた。
気まずい………まだ4年生とはいえ、物心がしっかりついた年齢だ。
「ねぇ………そういえばさ、正木は何で私が陸上部に入ってること知ってたの?」
茜がその沈黙を切り裂いて喋る。
「ああ………クラスの皆の習い事ぐらいは把握してる。ちらほら話し声が聞こえるから」
「そっか………」
そしてまた沈黙が走る。
そんな感じのやり取りを続けて、何回も沈黙が走っては無くなり。を繰り返している。
それをしていたら夜になっていた。
「………まだ夏に入りたてだから普通に寒いな………」
「うん………」
茜が体を抑えてプルプル震えている。まぁ、おれもだが。
「ねぇ………正木………くっついてもいい?」
そう言って茜はこっちによって来る。
「え!ちょっと………待って………もう寄ってるじゃん」
言う前に茜は俺にピタリと体を合わせていた。
「えへへ!暖かい!」
そう言って茜はこちらに体を預けて休んでいるようだ。
「…………もう寝るか」
「…………うん」
そう言って俺と茜は、マット上で寄り添いながら寝た。
その後、朝に帰ってきた私の両親が教師と一緒に探しに来て、私達は無事保護された。
正木の両親はやっぱり来ておらず、その時に親が何か事情があっていないことに気がついた。
今考えると、その時から私は正木に惹かれていたんだと思う。ほっとけないとも思っていた。
だから私は、次の日から皆との遊びそっちのけで正木と話した。
皆からは不思議そうに見られたが、そんな事では気にしない。
中学校に入って陸上をやり、正木と遊ぶ時間は減ったけど楽しかった。
勉強も頑張り、正木と同じ高校に入ったときは天にも昇る気分だった。
高校はずっと一緒に居たいと思って文化研究部に入った。
正木には陸上部に入ればよかったのにと言われたが、私の中ではもう決まっていたんだ。
これからも、ずっと正木の隣で笑っていようって。
萩原慎二です。
ついに?明かされた茜と正木の過去。二人は昔からの絆で結ばれています。
かと言って付き合うのかどうかは不明です。
誤字脱字、感想等も受け付けております。
ブックマークなどしてくれるととても光栄です。
次回予告川柳
正木のね
本気は最高
皆唖然(凄いよ)




