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不変と恋の戦争物語  作者: 萩原慎二
春恋編
11/41

不協和音を流しながら体育祭は幕を開ける

前回のあらすじ川柳

      正木はね

       本性出ると

         悪魔だよ(内容とは関係ない)

「………なぁ、石蕗」


 体育祭の準備に向けて皆で運動場に行こうとしていた時に、山吹先輩に呼び止められる。


「…………なんですか?先輩」

「石蕗、お前本当は何を考えてる」


 やっぱり、山吹先輩にはバレていた。


「お前の言っていた策は、一年前に篠懸がやった作戦だぞ………相手がもう一度同じ手に引っかかるわけが無い」

「そうですね、俺もそう思います」

「じゃあ、なんで」


 そこで俺は清々しいほど不敵な笑みをが浮かべる。


「一年前、翌檜が提案したからこそ今回この策が使えるんですよ」

「………どういうことだ」


 山吹先輩が俺に問い、俺はそれに答えて作戦の全貌を話す。


「前回は、茜と翌檜のおかげで勝てました。それは()()で行けたからです。でも今回は、翌檜がいない状態での対決。しかも牡丹の分のカバーもしなければならない。こんな状態、強気で行けるとは思えないでしょう。そこで俺は強気で、それも挑発的に行った。相手は復讐しようと躍起になるでしょう。そこを狙うんです」

「………それでうまく行くのか?」

「ええ。それに、相手のメンバーとか、走る順番とかも調べてきました」

「本当か?それは心強い」


「………しかし、当日それを変更してこないか?あいつならやりえるぞ」

「それなら大丈夫です。途中なんて関係ないですから」

「………お前は、小田原がラストに来ると思ってるのか?」


 思わず笑みが溢れる。小田原には無い、この察しの良さ。これだから山吹先輩と話すのは楽しい。


「はい。それに、ぶっちゃけて言えば、ラストが小田原じゃなくてもいいんですよ」

「?………どういうことだ?」


 山吹先輩も知らない、うちのクラスしか知らないことを使う。


「ラスト、茜と相手の差が50メートル〜100メートルだったら、勝利は確定なんですよ」

「はっきりと言え、何を企んでいる」


 山吹先輩の態度がちょっと威圧的になる。


「それは言えません、当日でないといけないんです」

「…………そうか」


 それ以上詮索をしてこない。それが山吹先輩の長所でもあり、短所でもある。

 俺と山吹先輩は運動場に行くのが遅れてしまったので、颯爽と向かった。



 体育祭当日。俺はありえない程の不安に侵されていた。

 今回の作戦の全貌は皆に話したが、肝心の俺が何をするかは教えていない。

 一応楓には教えた。


「ねえ、やっぱり他の方法考えた方がいいよ!もっといい案はあるよ!」


 知っての上で、楓は止めようとしてくる。


「いや、もうこの方法しかないんだ。今更変えられないよ」


 その件についても不安はあった。しかし、それよりもっと不安な事は他にある。

『体育研究部』で小田原と話したときみたいに、本性で話してしまわないかが不安だ。

 あの本性はできれば牡丹や皐月にはバレたくない。


「だけどさ………今思ったんだけど、今回勝ったとしてもまた来年勝負しかけられたら大丈夫なの?」


 茜が不安そうに聞く。


「ああ、そのへんは大丈夫だ」

「へ?なんで?」


 茜は首を傾げて俺に聞く。


「どうせまた勝負しかけて来るだろうけど、どんな挑発にも乗らないでいればいいんだ」

「うぐ………ごめんなさい………私の勝手な行動で」


 そもそも今回の件は、茜が挑発に乗ってしまったことから始まった。だからか物凄く申し訳なさそうな顔をする。


「別に、次やらなければいいよ」


 そう言ってやり、茜の頭を撫でる。


「………ねえ、正木。それ私は何回もやられて慣れたからいいけど、初めて受けたらやめられなくなるよ」

「う………自覚はしてるんだけど………もうクセになって」


 昔から誰かしらの頭を撫でていたので牡丹のときや皐月のときのように勝手に手が出るようになってしまった。


「というか、茜は心配しなくていいから他の競技に集中しろ」

「うん!応援してね!」


 そう言って茜は笑顔で去っていく。うん、やっぱりあいつは元気が一番!

 しかしそんな和やかな雰囲気も壊される。


「あら、文化研究部、諦めてなかったんですか?」


 その声を聞いて俺の精神が滲んでいく。

 この聞いていて不快な声、嘲笑めいた喋り方はどうも嫌いだ。


「………何しに来た?小田原、遺書でも持ってきたか?」


 俺の本性が垣間見えていた。


「な、何か正木さんが怖いです………」

「正木から黒いオーラが見えるよ………」


 後輩二人が体を撚り合わせてプルプルと震えている。


「ちょっと、正木!本性見えかけてるよ!」


 楓が耳打ちする。


「………小田原、場所変えて話しようぜ。ここじゃうるさすぎる」

「ええ、いいわよ。なら、うちの部室に来なさい」

「………ああ、わかった。」



「あなた、文化研究部の前ではいい子ちゃんなのね」


 小田原と共に体育研究部の部室へと行く途中、小田原に聞かれる。


「ああ、というか、本性見せるの多分お前だけだよ」

「あら、それは嬉しいわね」

「なんでだ?」


 そう言うと小田原は不敵な笑みを浮かべ、


「あなたを破滅させれる手段が増えるじゃない」


 小田原は素敵に笑う。それは惚れもしないし腸が煮えくり返るような笑いだ。


「あなたのその裏の顔、なんて言われてるか知ってる?」

「あ?知らないよ。噂なんて興味ない」


 そう言うと小田原は大笑いして。


「悪魔の四人に唯一男子で入った。それはあなた、石蕗正木ですよ?」

「へえ、そうなんだ」


 俺は素っ気ない態度を取る。


「あら、本当に興味が無いのね。感心するわ」

「そういうお前は気にしてんのか?たかが肩書に」


 小田原の顔が濁る。山吹先輩には無いこの表情の変わり方は俺は少し好きだ。弄りがいがある。


「それで、何で話しかけてきたんだ」

「あら、私はただあなたと話したくて」

「あ、そういうのいいから」


 そういうと小田原はムッとした顔をする。


「で、本当はなんで来た」

「いえ?ただ様子を見に来ただけよ。無駄に練習したり、作戦会議をする姿を」

「そっか。なら、最後に確認したいんだけど」


 俺は小田原のいつものような見下しをスルーして問う。


「ルールは変更なしでいいよな」

「ええ、もちろん。ルールのもとで廃部させてあげるわ」

「言ってろ」


 そう言って俺はその場から立ち去ろうとする。


「あ!そうだ!一つだけアドバイスを上げるわ」

「……………」

「ゲガには注意してね♪」

「!!………テメェ!」


 俺は運動場に向かって走り出す。今の一瞬で予感してしまった。外れたほうがいい、そんな予感を。


「……………流石天才。理解が早いわ。けど、もう遅いんじゃないかしら」

(勝つのは私、復習は果たすわ………どんな手を使おうと)



 運動場まで全力で走った。息切れなんて気にしない。

 俺達がいたところには人はいない。競技に向かったのならそれがいい。

 しかし、皆の姿は救護テントに集まっていた。


「………楓………どうした」

「あ………ま、正木」


 楓は目に涙を溜めていた。


「茜が………競技中に接触して………怪我を………結構悪い怪我で……」


 思わず唇を噛みしめる。


「………相手の………相手の名前は」


 思わず声が濁っていく。本性のことなど忘れて、苛つきを露わにして喋る。


「花宮………花宮正太郎(はなみやしょうたろう)


 花宮正太郎、それは体育研究部の部員であった。


「ま、正木………グスッ………ど、どうしよう!」


 楓が泣きながら俺に問う。


「正木さん………茜さんはもう………競技出ないほうがいいって」


 牡丹が申し訳なさそうに言う。悪いのは牡丹ではないのに。

 俺は茜の前へ近寄る。


「正木……ゴメン………私のせいなのに……押し付けて……」


 茜は泣きじゃくってもう顔にあとがついている。

 ………心底見損なった。小田原祥子。こんなゲス野郎だったなんて。


「………大丈夫だ茜………俺がカバーする………」


 俺は茜の頭をポンポン叩いて言う。


「ま、正木さん?」


 牡丹は気づいてしまったのか、俺の声のトーンが低くなっていることに。

 ────もう………もう本性の事なんてどうでもいい。

 ────()()()()()()

どうも!萩原慎二です!

8作目の物語、最近は正木が語って終わるのが多いですが、全て小田原のせいです。責めるなら小田原を。

誤字脱字、感想等も受け付けております。

ブックマークなどしてくれるととても光栄です。

次回予告川柳

   正木とね

    茜の過去は

      唯一無二(字余り)


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