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2話

ところで私たちが何を職業にしているかというと、探偵である。この貴族社会で珍しい職業というのも重々承知である。もちろん先生がなぜこの職業を生業にしているのかはわからない。態度的に先生がきっと貴族階級であることはうっすらと察せるのでなお不思議である。こんな寒いところじゃなくて温かいお家にいればいいのに。でもそんなこと聞く気はない。というか、先生は別に隠す気も無さそう。何ヶ月に1回帰ってるし。


「はぁ、上司に飲み物を注がせるなんて…」

「泣き真似やめてください。というより先生のほうがコーヒー淹れるのお上手ですよね?」

「僕は極力何もしたくない。動きたくないんだ」

「最悪すぎる」


さて、なぜ私がここで雇われているのか。何度も考えたが残念ながら答えは出ていない。なぜなら私に記憶がないから。ただ、貴族のような裕福な暮らしはしていなかったから、きっと平民だったのだと思う。私の記憶は、ここの事務所のソファで目覚めたところから始まる。記憶がなくても生活に困っているわけではないから気にしないことにした。きっと記憶が無くなる前の私も、こうやって過ごしていた気がするし。


「はー、疲れた」


先生はまた椅子に座る。本当に動きたくないんだな…この人。私も誰かが来るまで一服しようと店にあるお菓子を漁った。これは先生がたまに家に帰るときにへそくりで持ってくるものである。長期間保存できるクッキーはとても珍しく、当時は目を輝かせたものだ。食べるのがもったいなくて結局腐らせたのはいい思い出だが。


「僕のも欲しい」

「自分で取ってください」

「そこにルケーレがいるから頼んでるんだ。一石二鳥だろう?」

「そうです…っね!」


多分私の投擲の能力は日に日に上がっていると思う。クッキーを顔面に命中させられたのは大きな進歩だ。


「あぁ…おいしいな」


先生の家から持ってきたものだからそりゃそうでしょうよ。私は来客用の椅子に座り、バターがふんわりと香るクッキーに口をつける。思わず口角が上がった。一口一口味を楽しんでいると、ふと、扉の方で小さな鐘がなった。来客を告げる音である。私は食べかけのクッキーを急いで口に放り込み、急いで扉を開ける。


「こんにちは、ようこそフォクス探偵事務しょ…!」

「先生!」


中肉中背、栗色の髪に、少し高めの洋服を身にまとっている男。…よくも私を突き飛ばしたな…なんて恨んでも仕方なく。女である私の身分は低いわけなので眼中にないのも承知の上だ。私は男と一緒に勢いよく入り込んだ少しの雪を外に蹴り飛ばして扉を締める。


「こんにちは。はじめまして。お名前とご要件を」


先生はそんな来客に特に動じることなく、コーヒーを一口すすった。


「私の名前はタリア・リクス。どうか私の領地の、いや、この国の連続殺人事件について調査をしていただきたい」


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