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青春Double Side  作者: 南乃太陽
決戦編
53/54

宵闇の巨影

逃走した筈のゾゴーリ・ジャガックが戻って来た。

最後の警告と称して電波ジャックを行い降伏勧告を行うも、京助が全人類を代表してそれを突っぱねた為、真の最後の戦いが幕を開けた。

ゾゴーリが言う最終計画とは何か、そして京助はどうなってしまうのか。

青春の日々を燃やした最後の戦いを目撃せよ。

 今から語るのは、ここ真鳥市で起こった最後にして最大の戦いと、俺がどうしてこんな姿になったのかという話だ。

 戦いのきっかけと開戦から、その過程で判明した悲劇、そして俺がぐちゃぐちゃのミンチとなるまでの話を語ろう。

 生まれ育ったこの街に訪れた、夜の闇と邪悪なる巨大な影を。


 クインテットとマグナライジングアウルによる宇宙空間でのジャガック基地艦襲撃は無事成功し、幹部の殆どは無力化されたが、ボスのゾゴーリは逃走した為まだ警戒は必要と発表されたたものの、真鳥市では久しぶりに喜びと平和が訪れた。

 そして宇宙での戦いとクドゥリとの決闘を終えた京助は、思う存分羽を伸ばす事にした。

 勿論一人で休息するつもりは毛頭ない。

「ねぇ……」

「うん?」

「いつまで引っ付くつもり?」

 奏音を呼んでからかれこれ四十分、京助はずっとソファーに座った奏音の膝枕を堪能していた。

「俺はいつまでも良いんだぜ」

「そろそろ楽な体勢になりたいんですケド……」

「だから尻枕だったら楽だって言ったじゃんか」

「それは違うでしょ!」

「良いだろ尻枕ぐらい」

「やだ恥ずかしいッ!」

 赤面して頭を振る奏音の顔を下から眺めながら、京助は奏音の腰を抱きしめた。

「も~! そろそろきついよ!」

「度重なる戦いでカノニウムが不足してるんだ。こうして一緒に居ないと補充出来ないんだよ」

「なんか桃弥さんみたいな事言ってる……」

「まあそんなにきついならやめるけど」

 あっさり起き上がった京助に拍子抜けしたものの、とりあえず頭の重みで滞った足の血流を回復させるべくその場で足をぶらぶらと振る。

「特に予定とか決めてなかったけど、今日どっか行ったりする?」

「そうだな……俺としては一日中奏音と引っ付いて過ごせればそれで良いんだけどさ」

「せっかく久しぶりに一緒に居られるのにそれで良いの?」

「だからこそ良いんだよ! 何かする訳でもなくゆっくり過ごす日があったって良いじゃないか」

「まあそうだね、何か無理に出かけると疲れちゃいそうだしね」

「という訳で今度は抱き枕になってくれ」

「えっ? ちょっ⁉ わっ!」

 奏音が反応する間もなく、京助は奏音に抱き着いてソファーに押し倒し、腹部に顔をうずめた。

「もー! どんだけカノニウム不足してんのよ‼」

「俺はこれが無いと死んでしまうんだ」

「ゴメンだけどあんたが死んでる様子を一切想像できない」

「カノニウム不足による死は深刻だぞ、暴走したサイコエネルギーが濃縮されて全身から結晶化したソリッドレイが生えてきて……最終的には地球どころか太陽すらを破壊するレベルのエネルギーを放出して死ぬ」

「爆弾じゃん?」

「深刻だろ? これを止められるのは奏音だけなんだ、自分の持つ力と課せられた使命を自覚するべきだよ」

 大層なことを言っているが、ただ彼女に密着したいだけに過ぎない。

「そんなに引っ付きたいならいいよ、私も悪い気はしないし」

「本音を言うと今俺の目の前にある二つの山を拝みながらたわわな肉をその手に納め……」

「バカバカバカ! 何言ってるの!」

「ダメ?」

「うっ……」

 口を尖らせてこちらを上目遣いで見てくる京助に、不覚にも奏音の母性本能が刺激されてしまった。

「……わ……わかった」

「わかった? え……いいのか⁉」

「いいよ……私とあんたの仲だし……恥ずかしいからってこれ以上進展しないのも……私としても嫌だし」

 まさかの了承に逆に京助が驚いて固まってしまうも、願ったり叶ったりだと思い直した京助は全神経を指先に集中させた。

「待って!」

「お預けか! いけずやわぁ~」

「なんで京都弁になるのよ……とりあえず待って、よく聞いて……みっ……見るのはまだダメ!」

「え?」

「服の上から……揉むのならいいよ」

「……」

「そっ……そんな目で見ても! あぅ……とにかくそんな見てもダメだから!」

「ぬぅ……まあいっか、これも進展って事で」

 京助はニヤリと笑って指をくねらせ、目の前の双山に狙いを定める。

「目と手付きが……いやらしい……」

「それでは……いただきま~す」


 三十分後、肌艶が良くなるあまり輝いてすら見える京助と、耳まで真っ赤になっている奏音が、同じソファーの上で背を向けて座り合っていた。

「ッフゥー……最高だね」

「は……恥ずかしかったぁ……」

 もはやこの世に未練などないと言わんばかりの笑みを浮かべた京助は、指に残る服越しの双山の感覚の余韻をしっかりと味わった後で、奏音に後ろから抱き着いた。

「わっ!」

「ありがとな~奏音ちゃん」

「か……感謝された……どういたしまし()

 奏音は恥ずかしさのあまり錯乱状態になっているらしく、言葉が一部怪しくなっている。

「なんだよどういたしましたって、かわいいねぇ奏音は、耳食べちゃお」

「ひゃんっ!」

 いきなり耳たぶを甘噛みされて驚いた奏音は、京助を引き剥がして全く痛くないぐりぐり攻撃を繰り出し、京助はそれを幸せそうに受ける。

「耳たぶ熱っつ、俺の唇火傷したんじゃね?」

「急に仕掛けるの禁止!」

「ゴメンゴメン、んーまっ」

 真っ赤な奏音を揶揄うように京助が頬に追撃(キス)をし、

「ああああっ! だから禁止って言ったでしょッ!」

「顔も熱いな、今体温計ったらヤバいんじゃね?」

 しばらく京助は奏音による攻撃を幸せそうに受けた後、疲れて攻撃を止めた奏音を抱きしめて囁くように言った。

「俺、今が人生で一番幸せかもしれない」

「そんな、そんな大げさな……」

「大げさじゃないよ、俺の秘密を打ち明けた一番大切な人とこうして長閑な日々を過ごしてるんだから……」

「そっか……確かにカミングアウトした後もこんな時間無かったもんね」

「ああ。だからさ、こうして一切の秘密抱えてモヤモヤとか無しに、一緒に居てゆっくり過ごしてるのって今まで出来なかったからさ」

 確かに京助にとって今この瞬間は、力を得てから初めて出来た、誰かと共に居ながら心から羽を伸ばせる時間なのかもしれない。

 それは奏音に取ってもそうだ、今や千道京助がマグナライジングアウルであることは周知の事実となっているが、クインテットの正体を知る者は少ない。

「よく考えれば私もそうだった」

「んえ? ああ! 確かに。じゃあ二人とも思いっきり羽伸ばすか!」

「そうだね……フフン」

「どうしたそんな顔して」

「さっき私の膝枕したりおっぱい散々揉んだでしょ? 今度は私の番!」

 宣言通り奏音が京助を押し倒し、服を捲って腹筋に顔をうずめる。

「なんだオマエ、自分は直に触らせなかったくせに」

「胸とお腹は違うでしょ! あ~この硬さ! サイッコウ! フーッ!」

 なんだかモヤモヤする京助だが、腹筋に触れる奏音の頬と繊手の感覚が心地良く、こういうのも悪くないと思ってその身を任せるのであった。

「な〜んかすっごい幸せそうな顔……」

「いけないか?」

「いけなくはないけど……なんか私だけ恥ずかしい思いしたの不公平な気がするっ!」

「じゃあ頑張って俺に恥ずかしい思いさせてみなよ」

 また顔を真っ赤にして頭を振る奏音だったが、その直前に視線が一瞬ズボンの方に向いたのを京助は見逃さなかった。

「ちょっと待てい! 今お前俺の何を見た! どこを見た!」

「いっ……言わないっ!」

「言いなさい! しっかり自分の口で!」

「いっ……言わないっ! 絶対絶対絶対絶対に言わないからっ!」

 そう言いながら奏音は京助の腹に顔を埋め、柔らかい唇が当たってとてつもなく幸せな気分になる。

「本当にお前はムッツリだね」

「ムッツリ違う! 私はスケベじゃない!」

「あ、今スケベとは言ってないのに否定したな? さてはスケベな自覚はあるんだな〜」

 真っ赤になりながらも自分の腹の上で頬を膨らませる奏音が愛おしくて仕方ない。

 膨らんだ奏音の頬を手で潰し、唇の隙間から漏れる空気が臍のあたりに当たってくすぐったい。

「本当に……奏音と一緒に居れて良かった」

 まだ熱を帯びた奏音の頬をむにむにと触ってたっぷりと柔肌を堪能した後で、京助は奏音を解放した。

「そーいやお昼どうする?」

「昼? あぁ~どうしよ、作りたくねぇな」

「えぇ~、京助の手料理食べたかったな」

「やだー、奏音と離れたくないー」

「そんな事言ったってキッチン行かないと料理できないでしょ~?」

「奏音が手伝ってくれるならいいよ」

「どうする? 外食しちゃう?」

「お前ホントに!」

「むにぃ~!」

 京助が奏音の頬を上下に引っ張り、奏音は京助の脇に手を突っ込んで阻止する。

「マジでどうするかな……ピザでも取る?」

「あ~いいねピザ! ネット予約する?」

「しようしよう、どこにする?」

 デリバリーピザの会社を選び、京助と奏音はタブレット端末でメニュー一覧を流し見する。

「期間限定でクワトロピザ半額だって、これとこれ食べてみない?」

 奏音が指したメニューはどれも非常に肉々しく、まさしくカロリーの大爆弾である。

「確かにウマそうだけどさ、この肉達どこに行くと思う?」

「え? どこって……」

「全部ここに行く!」

「ギャアアアアアアアッ‼」

 京助は不意打ちで奏音の脇腹を摘まみ、奏音は絶叫して京助を蹴飛ばす。

「やめてっ! 最近増えたからちょっと気にしてるのっ‼」

「いてぇ……」

 ソファーから蹴り出された京助が背もたれから顔を出し、頭を振りながら口を開いた。

「そんなに見た目変わってないんだから気にしなくていいだろ」

「放置してたらあっという間にデブまっしぐらなの! ただでさえ太りやすい時期なんだから!」

「俺ァ肉付きが良い方が好きだけどな」

「うっ……いやそういう問題じゃない!」

「まあまあわかったよ、太ったら俺と一緒にダイエットしような」

「えぅ……それは……」

 実際にやっている所を見たことは無いが、京助がやるトレーニングは過酷極まりないらしい。

 以前地下室に皆で来た時、皐月と麗奈が京助とトレーニング器具についてあれこれ話していたのを聞く限り、絶対について行く自信がないと確信した覚えがある。

「まあいい、とりあえず頼もうぜ」

 京助がタブレット端末へ手を伸ばした時、京助と奏音のスマホが同時に震えた。

「……」

「……」

 暫くお互いに顔を見合わせた後で、二人同時に諦めたように溜息を吐いて通知を確認する。

「どうやら世間は俺達を休ませてはくれないらしい」

「一ついい事があるよ」

「いい事?」

「お昼は財団が作ってくれるって事」

「言えてる、それじゃお迎え来るまで待機しましょうかね」


 千道邸に迎えに来た車に乗って二人でいつもの待機所に向かうと、既に林檎と麗奈が先に来ていた。

「お~、さては一緒に居たな?」

「当たり」

「あ、本当に一緒に居たんですね」

「ピザ頼もうって言ってたら連絡が来たんだ、それでなんで集められたか白波博士は何か言ってた?」

「それがお父さんも知らされてないみたいで……とにかく緊急事態なんですって」

 それからすぐに明穂と皐月がやって来て、全員が揃ったところで別室に向かうように指示された。

「なんか……結構ヤバそうだね」

「一体何が来るんだ?」

 別室で待っていたのは財団裏情報部の甘田であった。

「これからお話する事はたったさっき起こった出来事で、まだ公開されていない情報です。どうか冷静になって聞いてください」

 そう言って甘田はリモコンを操作してモニターをつけ、数枚の写真が表示される。

「……何コレ?」

 表示されたものは、映画や特撮作品に出て来るような形の飛行機や円盤がずらりと並んで、ひっくり返って炎上している写真だった。

「どう見ても何かのSF映画のワンシーンにしか見えないな」

「そう見えるのも無理はありませんね、これは月の裏側にある地球の入星管理局の写真です」

 入星管理局とはこんな感じなのかと感心すると同時に、そこにある飛行機が何やら大変なことになっている事に一同にわかに緊張感が走る。

「……これ何があったんですか?」

「まだ確定に至ってはいませんが、信号からジャガックのものである可能性が高いです」

 この期に及んでジャガックとして地球へ向かう者が居るとすれば、それはただ一人しか居ない。

「ゾゴーリ……ジャガック!」

 ジャガックの首領たる女傑ゾゴーリが、ついに自ら動き出したのだ。

「ゾゴーリって……ジャガックのボスだよね、あいつ逃げたんじゃないの?」

「戻って来たのさ……多分何かとんでもないものを引っ提げてな」

「あの時は何か準備が整ってなかったから逃げ出したって事?」

「だからイダムはあの時〝逃がした〟って言ったのか」

 歯軋りする京助の横で、皐月と明穂と林檎の脳裡にザザルの最期の言葉が蘇る。

『覚えて……おくといい……発明家(おや)は……死んでも……兵器()は……生き……続け……る……の……さ……』

 ジャガック科学主任ゲブル・ザザルバン最後の落胤(はつめいひん)とはもしや。

発明家(おや)は死んでも、兵器()は生き続けるって……まさか」

「ザザル最後の発明品が……京助君が言う何かとんでもないものって事?」

「その可能性は大いにあるな。ところでこの写真達、どれも宇宙船がひっくり返って燃えてますが、どうしてこうなったんですか?」

「報告によると何か小型の戦艦のようなものが通過したとの事です。制止しようとした入星管理局所有の戦闘機とのドッグファイトの末、拡大した被害によるものと見ています」

「小型戦艦……」

 まだそんなものが残っていたとは、いずれにせよそれが入星管理局を突破して地球に来ているのは確かだ。

「あの、今その小型戦艦ってどこに居るんですか?」

「正確な位置は特定中ですが……少なくとも地球に向かっているのは確実です」

「皐月、月から地球までってどれぐらいなんだっけ?」

「だいたい三十八万キロだね」

「もしその戦艦の移動速度が光速だったらあっという間だな」

「光速で動けるんだったら入星管理局で無暗に戦ったりしないんじゃない?」

「そうか、なら良かったんだが」

 しかし亜光速航行技術が備わっていないとは言え、そこは地球にとって未知の技術が使われた宇宙船。もしかするとあっという間にここに辿り着く可能性だってある。

「ワープとか、あの時ジャガック基地艦から逃げ(おお)せた時みたいに空間爆縮とか使われたらヤバいかもな」

「空間爆縮ってなんかすごそう……」

「よく分からんけどどんな技術なん?」

「簡単に言えば自分の後ろの空間を爆縮して、それを一気に元に戻して進む方法だ。ゾゴーリはこれを使ってジャガック基地艦から逃げ出して、俺はそれに巻き込まれて吹っ飛ばされた」

「え? 巻き込まれた⁉」

「今その情報初めて聞いたんですけど……」

「よく無事だったね」

「俺だから良かったようなものの、危険なのは変わりない。まあいずれにせよ、常に警戒を怠るべきじゃないって事だな」


 その後、食事を済ませてから待機所に戻り、数時間経って空も暗くなり始めた頃に警報が鳴って再び京助達六人は別室へ呼び出された。

「動きがあったんですか⁉」

 慌ただしく動く職員たちに指示を出しながら、礼愛が皆の方を振り返って答えた。

「ええ! 地球の衛星軌道上から謎の電波が発信されてるのが分かったの!」

 その隣に居た白波博士が苦虫を噛み潰したような顔で言う。

「恐らく日本全域に電波ジャックを仕掛けるつもりだろうな……」

 電波ジャックによってする事と言えば一つしかない。

「いつもの降伏要請でも流すつもり?」

「多分これが……最後の降伏要請になるんだと思います」

「つまりこれが……ゾゴーリとジャガックにとって最後の作戦で切り札になるって事なんだ」

 多くの人々の声でざわめいていた一室は、ある一言で完全に静まり返った。

「映像来ます! 映します‼」

 全員が作業の手を止め、中央のモニターに一斉に釘付けになる。

「お前はどんな(ツラ)してんだ? ゾゴーリ・ジャガック」

 乱れたモニターが像を結び、画面に三つ目で四本の腕を持ち、そして邪悪極まりない本性が滲んだ笑みを浮かべた女が現れる。

「あれがジャガックの首領(ボス)か……」

「あんな悪い笑顔……生まれて初めて見た」

「心底地球人(こっち)を見下してる顔ですね」

「サイが言ってた通りだ……見てくれは良いけどクソババアだな」

 映像が鮮明になった頃、ゾゴーリがついに口を開いた。

『地球人よ、真鳥市民よ……私はゾゴーリ・ジャガック。何度も名乗って来たが、姿を見せるのは初めてだな』

 ゾゴーリは不気味な笑みを更に深くし、それに伴い京助の眉根が寄って険しい表情になる。

『先日はよく我々の本拠地に向かい、絶大な被害を齎してくれたな……全く感服したよ』

 感服したと口では言いつつ、こちらを舐め腐っているのが丸わかりな口調と表情に京助達六人虫唾が走る。

『部下も殆ど失った私は、ついに最後の計画を実行に移す事にした』

「最後の計画……か」

 やはり京助の見立て通りゾゴーリがあの時逃走したのは何か準備をする為であり、そしてこうして戻ったのはその準備が完了したからなようだ。

『これは私からの慈悲であり、そして最後の宣告だ……即刻降伏し、真鳥市を明け渡せ。そうすれば無駄な犠牲を出さずに済む』

「マイクはありますか?」

「えっ? マイク? ちょっと待って……これでいい?」

「ありがとうございます」

 礼愛からマイクを受け取った京助は、一人堂々と歩き出して財団職員たちが使っている機械に手を置き、能力を使って何やら勝手に操作を始めた。

「ちょっと! 千道君!」

「京助!」

 しばらく無言で機械に干渉していた京助だが、やがて手を離してマイクを持ってスイッチを入れた。

「よく聞けゾゴーリ・ジャガック。俺は千道京助だ」

『なっ……どうやってここに干渉した⁉』

「そんな事はどうでもいい。お前はさっき最後の慈悲だの宣告だの抜かしてたが、俺が真鳥市民……いや、この地球に住む全人類と全種族を代表して答えてやる」

 最初は困惑していた職員や奏音達も、なんだか胸が熱くなってくる。

「そんなものは犬も食わねぇ!」

『何ッ⁉ 犬も食わないだと!』

「お前の慈悲など誰も乞わない! 俺達は断固として最後まで戦い! そしてお前を必ず倒す‼ それが俺達の答えだ! 覚悟しろ!」

 通信を切った後、白波博士が拍手したのを皮切りに、その場に居る全員が啖呵を切って見せた京助を称えた。

「すみません、勝手に借りて」

「いいんだよ、ナイスだったよ」

「もう一個聞いてもいいですか?」

「ええ、何でも聞いて」

「電波の発信源は特定できましたか?」

「出来た?」

「出来てます!」

 発信源を記憶した京助は、クインテットの五人の方へ向かう。

「いいか、これから戦いが始まると思うから、その準備を整えててくれ」

「センキョー、あんたは?」

「俺は今からやる事があるから、それが終わったら合流する」

「やる事って? 一人で大丈夫なの?」

「なに、すぐ終わる。とにかく準備だけ頼むぞ!」

 去って行く京助を見送り、五人はお互いに顔を見合わせる。

「いよいよジャガックとの最終決戦かぁ……」

「高一の時から始めてだいたい三年間……長いようで短かったね」

「皆も見てるし一際気合入れて行こう」

「おっしゃァ……やったるぞ」

「ええ、京助君の言った通り、必ずゾゴーリを倒しましょう」

 転送鍵を取り出して突き合わせ、五人は戦いの準備に取り掛かるのであった。

 

 一方部屋を出た京助は瞬間移動で真鳥市で一番高い山の頂上に向かい、胸に手を当てて前に突き出す。

「アウルブラスト‼」

 生身のままアウルブラストを取り出した京助は深呼吸を繰り返しながら、ゾゴーリが居る座標に見当をつけた。

象徴(マグナアウル)としてじゃない……千道京助という一人の人間としてこの一撃を叩き込んでやる」

 空気中の素粒子をエネルギーに変換してアウルブラストに取り込み、更に自分で作り出したありったけのサイコエネルギーを送り込む。

『言っても聞かないでしょうが、これ以上は体に障りますよ』

「そんなモノすぐ治るだろ? 最終決戦の幕開けには意味のある一撃にしたいんだ」

『そうですか、では派手な花火を打ち上げましょう』

 京助を中心に膨大な風が巻き起こって木々が揺れ、アウルブラストの二つの銃口が虹色の光を放ち始める。

「うおおおおおおおっ! 喰らえゾゴーリィィィィィィイイイイイッ‼」

 それはもはや光線や奔流などではなく、複数に枝分かれした光の柱とも言うべき一撃だった。

 さながらそれは天に帰る虹色に輝く龍のようで、螺旋の軌跡を描きながら夜闇を蹴散らして衛星軌道上のゾゴーリの居城に向かって行く。

「うぅ……」

『大丈夫ですか?』

「なに、ちょっと眩暈がしただけさ」

 膝立ちになって自分が放った虹色の光の柱を見上げ、ジャガック最後の兵器である小型戦艦に命中する所を見守る。

「……決まったな」

『ええ、シールドで防がれて完全に威力は伝わってはいませんが、確実に大ダメージを与えています』

「戻ろう、戦いが始まる」


 財団に戻った京助は皆が集まっている所に合流した。

「スマンな、待たせて」

「良い宣戦布告だったね」

 どうやら皆も京助が放った光の奔流を見ていてくれたらしい。

「確かに派手で最高の宣戦布告だったけど、あれでガス欠とか止めてよ?」

「念のため、ハイ」

 京助は差し出された奏音の手を取って回復を受け、微かな疲労感が吹き飛んで元気が湧き出てくる。

「ウゥッ! ありがとよ、元気になった」

「じゃあ準備が出来た所で……やろうか!」

 クインテット五人が転送鍵を取り出し、京助もライジングアウルレットを出現させる。

「Vモードオン!」

「ハァァァ……」

「GO! クインテット‼」

「翔来ッ‼」

 京助の姿が星が瞬く青い闇に包まれ、五人の方も黒いパワードスーツにその身が包まれていく。

「よっしゃ!」

「準備万端‼」

 戦装束となった六人は白波博士と礼愛の方を振り返る。

「これはジャガックとの一世一代の戦いになる。今までよく頑張ってくれたと思っているが……きっとこれが最後だ。我々も全力で支援するから思う存分戦ってくれ!」

「あなた達の背中には私達が居る。だから安心して任せて!」

 激励の言葉を背に、六人は戦場へと向かうのだった。


 すっかり夜も更けたが、ゾゴーリの動きはまだ見られない。

「まだ来ないのかな?」

 戦場となる場所の避難も完了し、遠くのビルの上から報道陣がこちらの様子を撮影しているのが見える。

「フクロウちゃんの一撃で機能不全になったんじゃね?」

「トトの見立てじゃ大ダメージは入ったけど、完全にはぶっ壊れてないらしい……ただこんなに時間が空くのは何だか変だよな」

「財団曰く、ずっと同じ場所に留まってるらしいんだよね……なんか不気味だよね」

「警戒は怠らない方が良いですね」

 そんなことを話しているうちに、財団から通信が入った。

『動きがありました! 警戒してください!』

 スーツの望遠機能を使って上空を見ると、何やら莫大なエネルギーが一点に収束しているのが見えた。

「なんか撃つ気だ!」

「アウルブラス……」

 マグナライジングアウルがアウルブラストを取り出そうとした直後、財団の方角から一筋のレーザービームが飛来し、宇宙から来たビームを相殺した。

『言ったでしょ? あなた達の背中には私たちが居るって』

『イオンブラスターとガルバニックキャノン、最終決戦だから我々も武装を解禁した!』

「おお! ありがたい!」

『このほかにも色々と支援するつもりだから! 安心して戦って!』

 心強さを感じていると、突如周囲を影が覆った。

「……あれが」

「……ジャガックの最終兵器」

 いつもやってくる戦艦級とは異なり、各部が角ばって鋭利な印象を受け、更に夜闇が船体を大きく見せるのに一役も二役も買っている。

「待てよ……何かおかしい」

 マグナライジングアウルが違和感を抱いたのも無理はない、何故なら渾身のアウルブラストの一撃を食らわせたのにも関わらず、この戦艦は全くの無傷だったからである。

「確かに、なんでキズひとつないピッカピカなん?」

「いや、それだけじゃない。こいつには……〝何か〟ある」

 この戦艦から漂う奇妙で恐ろしい何かを感じ取っていると、ノイズのようなものが発せられた。

『私の慈悲を蹴るという愚かな選択をしたな』

 スピーカーから割れるような大音声でゾゴーリの声がして、思わず耳を塞ぎたくなる。

「愚か? 賢明の間違いだろ」

『その減らず口がいつまで続くか……見物だなッ‼』

 強力なビームが主砲から発射され、六人は念力でそれを押し返した。

「ぐあああああああっ! あああっ!」

 ビームを発射されたと同時に戦艦から絶叫が響き渡り、その声を聴いた六人は目を大きく見開いた。

「この声……まさか!」

「マジで? いやそれ以前にどういう事?」

「……クドゥリ?」

 響いた絶叫はクドゥリのものであると皆すぐに分かった、ではなぜクドゥリの声が、それも身を切るような痛々しい絶叫が戦艦からするのか。

『いい声で鳴くなクドゥリ! ククククク……これまでで一番役に立ってるぞ~』

「どういう事なの⁉」

「説明しなさいゾゴーリ!」

『この船はな、莫大なエネルギーを食うんだ……だからクドゥリにはバッテリー兼電池になってもらった』

 それはつまり、生身のままこの戦艦に組み込まれ、無理矢理能力を行使させられているという事ではないのか。

「このっ……くそ野郎!」

 デメテルが怒り任せにロケットパンチを連続で飛ばし、着弾と同時に船体が爆ぜる。

「ホントに胸糞悪ィ……テメェは畜生以下のクソババアだ‼」

 デメテルの後を追う様にマグナライジングアウルも青い炎に包まれた黄金の金属球を射出し、イドゥンとアフロダイも光弾や光矢を放って追撃する。

『ククククク……カカカカカカカ! 胸糞ついでに教えてやる、この艦はお前の父親の技術を使って作ったのさ!』

「何だと⁉」

『つまりクドゥリを苦しめているのはお前の父親の技術だ! キャハハハハハハハッ‼』

 以前のマグナアウルやウィッカーアウルを思わせる強烈な殺意を放ちながら、マグナライジングアウルは黄金の翼を展開して跳躍した。

「ぶち殺す!」

 戦艦の各所から複数の武装が展開し、マグナライジングアウルへとビームやミサイルが降り注ぐも、その全てを平然と受け流して拳を振り上げる。

「おおおおおおおああああっ!」

 ソリッドレイを纏った拳が船体に叩き付けられ、穴が穿たれると同時に大きく船体がぐらつく。

『キャハハハハハッ! いい拳じゃないか……だがそんな事をしても無駄だがな』

「何ィ⁉」

 マグナライジングアウルの目の前で穿たれた穴が内部機構ごと修復していき、完全に無傷な状態に戻ってしまった。

「あの一撃を受けて無事だったタネはこれか!」

 どんな技術を使ったのかは知らないが、驚異的かつ瞬間的な修復能力で攻撃を受けた傍から傷を修復する事で無傷な状態を保っていたようだ。

『どこまで耐えられるか見てやろう! キャハハハハハハハハッ!』

 無邪気で邪悪な笑い声を上げながらゾゴーリは空中のマグナライジングアウルを集中砲火し、マグナライジングアウルは回避しながら反撃を続ける。

 

 地上に居るクインテットもただ見ている訳にはいかないと、ミサイルやビームを大量に吐き出す戦艦の下へと走る。

「マグナアウルを援護するよっ!」

「了解! エナジーアンプリファイヤ飛ばすよ‼」

 デメテルはナックルアームをエナジーアンプリファイヤに変えると、ロケットパンチの要領で数十個近くのエナジーアンプリファイヤを飛ばして戦艦を囲った。

「行けッ!」

「ホラッ!」

「ハアアアッ!」

 ミューズの回転刃やルナの飛ぶ斬撃、デメテルの高火力ビームにイドゥンの光弾にアフロダイの光矢が威力が何倍にもなって飛び交い、マグナライジングアウルに降り注ぐ攻撃を防いだり、逆に戦艦へと攻撃を加え始めた。

『このっ! 五月蝿い奴らだ!』

「ありがとよみんな! アウルカリバーッ‼」

 アウルカリバーを取り出してから即座に両刃へと変形させてソリッドレイの巨大な刃を形成する。

「梟爪! 流星墜連‼」

 刃を振り抜くと同時に無数の十字のソリッドレイが降り注ぎ、追い打ちのようにウィルマース財団から放たれたガルバニックキャノンとナパーム爆弾が投下され、戦艦は瞬く間に炎に包まれる。

「今だ!」

 翼で体を包んでアウルカリバーを突き出して旋回しながらゾゴーリの戦艦に突入しようとするも、(きっさき)が少し刺さっただけで弾き飛ばされてしまった。

(硬ぇ! このままじゃクドゥリが!)

 中に何とかして入らなければクドゥリを救出する事が出来ない、だがしかし見慣れない閉鎖空間へのテレポーテーションは非常に危険である。

『成程、お前達の強さを肌で感じた……クフフフフフ、お前達にこいつの本分を見せてやる!』

 戦艦が急浮上すると同時に各部が変形し始め、角柱状のパーツが四本せり出してきた。

「オイオイオイなんだよあれ……」

「何アレ……手?」

 船体各部を変形させ、せり出した角柱状のパーツの先端に手足が生えて、最後にモノアイを備えた頭部が出現し、戦艦は全長五十メートル程の人型ロボットに完全変形してしまった。

「ザザルの最後の発明品(こども)は……」

「千道家の遺産を使った……変形するロボット!」

 ゾゴーリの巨大ロボは地面にヒビを入れながら着地し、夜闇の中でマグナライジングアウルとクインテットを睥睨する。

『これがジャガックの最終兵器にして……私の力の究極だ! ギャハハハハハハッ‼』

「いいいいいっ‼ あうううっ……うわああああああっ!」

 クドゥリの絶叫が響くと同時に頭部のモノアイにエネルギーが収束して、マグナライジングアウルに太いピンク色のレーザービームが直撃してしまう。

「うわっ!」

 クドゥリの能力を無理矢理引き出した事で数万倍にも強化されたレーザービームは、空中のマグナライジングアウルを撃ち落とすには容易だった。

「うおっ!」

 地面に叩き付けられる寸前に瞬間移動を応用して体勢を立て直し、そこへミューズとイドゥンが駆け寄ってくる。

「大丈夫⁉」

「……アレ、何かあるぞ」

「何かって……何よ」

「父さんの遺産や組み込まれたクドゥリ以外にもまだ何かがある! 気を付けねぇとヤバいぞ……」

 ゾゴーリは哄笑を上げながら腕のバルカン砲を発射する。

「そんなバカスカ撃ってたら街が壊れんだろうが!」

 腰のスイッチを押し込んでオーバーチャージを発動したイドゥンがロングライフルから緑色のビームを放ち、ルナも冷凍弾を放ってどうにか動きを止めようとする。

 だがしかし、それらは着弾の寸前に全て霧散してしまった。

「うううううううっ! うぐぅっ! ああああああああああっ!」

 クドゥリの苦悶の叫びが聞こえ、何が起こったか六人はすぐに察知する事は出来た。

「フォースフィールド……じゃない!」

「クドゥリの能力を使って無効化したんだ!」

「だったら……こいつはどうだ!」

 マグナライジングアウルが腕を翻すと、無数の剣や槍や護手鉤、そして銃器類が次々とゾゴーリのロボットの真上に生成され、(きっさき)や銃口がロボットへ向く。

「半物質弾ならクドゥリの力でも無効化できないだろ! アウルブラスト‼」

 アウルブラストを半物質弾モードに切り替え、マグナライジングアウルは念力を駆使して一斉にロボットへと攻撃を仕掛けた。

『ククククククク……馬鹿め。()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!』

 回転しながら飛んで行く刃が突如現れた巨大な拳の実像に殴り飛ばされ、雨霰と降り注ぐ青白い半物質弾は巨大な平手に防がれてしまった。

「これは⁉」

「あれは……まさかイダムの⁉」

 皆の脳裡で凄まじい勢いで点と点が繋がっていく。

「繋がれたクドゥリ……サイコキネシスを凝縮した実体像……そして修復能力」

 サイコキネシスの応用による実体像はイダムの能力、異様な程高い自動船体修復能力はパテウのもの、クドゥリを繋いで能力を酷使し、それらを一つにまとめる京助の父万路の超能力者の遺伝子を機械に付与する技術。

 つまりこのロボットは超能力者の遺伝子を用いた半生体ロボットという事になる。

「これがザザルの……最後の兵器(こども)

『言っただろう……これが私の力の究極だとな!』

 ロボットの腹部からミサイルポッドが展開して拳の実像を纏ったミサイルが射出され、マグナライジングアウルが実像を相殺し、ミューズとアフロダイが刃を飛ばしてミサイルを破壊する。

「何が……〝私の力の究極〟ですかっ!」

「所詮全部全部借りモンじゃねぇか!」

「借り物じゃない……全部奪った物だよ!」

 皆の糾弾に対し、ゾゴーリは嘲笑を浮かべるのみ。

『何とでも言え! お前達のこの街も奪ってやるからな!』

 ロボットは複数のビームを射出し、マグナライジングアウルとクインテットを追いかけ回す。

「うぐああああああっ! あああ……いうあああああっ!」

 クドゥリの悲痛な悲鳴が響き渡り、六人は仮面の下で歯を食いしばる。

(なんとかしねぇと……クドゥリがマズい!)

 おそらくパテウの超回復能力の恩恵により死ぬことは無いだろうが、それは生き地獄と変わらない。

『おやおや、そういえばこんな物もあったっけ? そォらッ‼』

 ゾゴーリが何か操作すると、ロボットの腕から赤い電撃が迸り、周囲一帯を無差別に攻撃する。

「うわあああああっ‼」

「くぅわあああああっ!」

「ううううっ! ああっ‼」

「あいつ……死徒の力まで使えんのかよ‼」

 クドゥリとイダムは死徒の因子の保有者(キャリアー)であった為、その遺伝子を組み込んでいるが故に力を引き出す事が出来るのだ。

「全部奪った力とはいえ……厄介ですね」

「だからこそそれを従えてたアイツのヤバさが際立つな」

 死徒の力でダメージを受けたマグナライジングアウルとクインテットを見て気分を良くしたゾゴーリは、哄笑を上げて周囲の建物を破壊し始めた。

「あのクソババア……街を!」

「何とかしないとまずい……」

「とりあえずこっちの攻撃を当たるようにさせないと」

『攻撃が当たるようにすれば良いんですね?』

 通信越しに聞こえてきた声に、皆は驚いて財団の方を見る。

『私達ならそれが可能です。だから……共に戦わせてください!』

『ゾゴーリを止め、お姉様を助けたい! 今こそこの地球の為に戦います!』

「ガディ! ザリス! ジェサム!」

 待機していた無重力ジェットが透明化を解き、そこから三人がジェットから飛び降りて着地する。

「来てくれたんだね!」

「ええ、お姉様の、そして友人の危機ですから」

「これを贖罪の第一歩として……歩き出しましょう」

「私達の力を……平和のために!」

 明穂(デメテル)だけでなく、皆も胸が熱くなってくる。

『何処の誰かと思ったらクドゥリの妹達じゃないか……邪魔者と裏切者を同時に始末できる絶好のチャンスという訳だな』

「いいえ、それは違うわゾゴーリ・ジャガック」

「今日はお前が倒される日」

「そしてジャガックが終わる日ですわ!」

『フン! 丸腰のお前らに何が出来る!』

「丸腰? いいえ」

 そう言って三人は四角い手のひらサイズのデバイスを回しながら取り出した。

「それって……転送鍵⁉」

 ガディとザリスとジェサムは笑みを湛えると、転送鍵のブレードを展開して夜空へ掲げた。

「Vモードオン! GO! テルツェット‼」

 三人の体に黒い鎧が装着されていき、それぞれセルリアンブルー、フォレストグリーン、そしてファイヤーレッドのエナジーストリームラインが灯る黒い鎧が現れた。

「C―SUIT!」

「これって……バージョンⅤ?」

「ええ、お下がりです!」

「とりあえず任せて下さい」

「すぐに攻撃が通るようにします」

 それぞれがグリップを取り出し、ガディが大剣、ザリスがレーザーウィップ、ジェサムが二丁のマシンガンを携え、ゾゴーリのロボットへ走り出した。

『多少増えた所で同じ事! 喰らえ!』

 ロボットがミサイルやビーム、電撃や拳の実像で三人を攻撃するも、ビームや電撃は全てエネルギー操作で無効化し、ミサイルはクインテットが迎撃して拳の実像はマグナライジングアウルが全て防ぎ切る。

「俺達がお前らを必ず守る! だから早い所やっちゃってくれ!」

「了解です! ハッ!」

 三人が同時に跳躍し、ジェサムが足のジェットとマシンガンを駆使して姉二人より先んじ、念力で二人を引っ張って三人で手を繋いで連結する。

「ハアアアアアアァッ! やああっ!」

 ジェダムとザリスが思い切りガディを投擲し、ロボットの腰の部分に張り付いた。

「虫けらが! 叩き潰して……くっ⁉」

 腕を動かして物理的に叩き潰そうとするも、マグナライジングアウルとクインテットが念力を使って動きを封じ込める。

「させるもんか!」

『地球人如きがァァァァアアアアッ‼』

 ロボットに張り付いたガディの腰にザリスのレーザーウィップが巻き付き、三人の力が一つになった。

「お姉様、必ず助けます。だからしばしの……辛抱を‼」

 ガディが大剣を逆手に持って突き刺して三人分の力を注ぎ込み、エネルギー操作能力を遮断した。

『うううっ! クソォッ‼』

 再び着地した三人の元へ、マグナライジングアウルとクインテットが合流する。

「揃いましたね」

「ええ……心強いわ」

「よし……皆行くぞ‼」

 九人は武器を構えて一斉に走り出し、マグナライジングアウルは黄金の翼を展開して跳躍し、アウルブラストを乱射する。

『攻撃が通るようになったぐらいで……私を倒せると思うなよォォォォォォォオオオオッ‼』

「いいいいっ⁉ ぐおおおおおおっ!」

 モノアイから放たれるレーザービームを防ぎながら突撃し、アウルブラストごと突きを繰り出し、インパクトと同時にソリッドレイを放って顔面を抉る。

「まだまだ! 喰らえッ‼」

 更に羽角と鶏冠から収束した電撃状の光線を放ち、回復を許さず畳み掛ける。

「こっちも行くよ!」

 ミューズとガディがオーバーチャージを発動し、それぞれの得物の刃を巨大化させて脚部を斬りつけ、ザリスがレーザーウィップを振り回して伸ばし、そこにイドゥンとジェサムがそれぞれ自分が持つ銃器でエネルギーをチャージして更に伸びたウィップを足に巻き付ける。

「まず足を……落とす!」

 ルナとアフロダイが斬撃を飛ばして支援し、デメテルはロケットパンチを何十個も飛ばして無理矢理押し込もうとする。

『このっ! 取るに足らないクソ共の分際で!』

「じゃあテメェはそれに集る卑しい羽虫だなッ!」

 足を落とされそうになっている所に強烈な念力波を浴びせられ、ロボットは大きく傾きかける。

「ザリス! ジェサム!」

「はい姉さん!」

「やりましょう!」

 ガディとザリスとジェサムは深呼吸して自身の能力を発動し、三人のスーツにそれぞれのエナジーストリームラインに対応したオーラが発生する。

「ハァァァァ……」

「おおおおお……」

「シィィィィ……」

 オーラが一際濃くなり、三人の声が重なる。

「「「セヤッ‼」」」

 燃え盛るようなオーラが爆発的に広がると、全てのC―SUITの出力が大幅向上し、攻撃の威力が増した。

『うううっ! あああっ! このっ! 何とかしろクドゥリ! あああああああっ!』

 足を断たれそうになっている事で焦りを増したゾゴーリだが、クドゥリの能力による攻撃無効化は三姉妹の干渉によってもはや不可能になっている。

「大した最終兵器だ……なッ!」

 念力波とソリッドレイを纏った拳をマグナライジングアウルが叩きつけ、ついに足が完全に断たれて仰向けに倒れてしまう。

『ああああああああああっ⁉ ごふっ!』

 スピーカーから聞こえる声を聞く限り、ゾゴーリは今の一撃で気絶してしまったらしい。

 

「ヨシッ! 畳み掛けるよ!」

「応ッ‼」

 九人全員が足を断たれたロボットに一斉に群がり、破壊と言うより〝解体〟しにかかった。

「ハァァァアアアアッ‼」

 ジェサムが横たわるロボットの上に飛び乗って二丁の銃を真下に乱射しながら疾走し、その後を追う様にデメテルとザリスが、上空からはマグナライジングアウルが自分の真下に攻撃を仕掛ける。

「まさかあんたとこうして一緒に戦えるとは思ってなかった!」

「こちらもですわ、生後数ヶ月といえど人生何があるか分かりませんわね!」

 ミューズのハルバードがマゼンタに、ガディの大剣がセルリアンブルーに輝いてロボットの胴に食い込み、徐々に装甲を剥がしにかかる。

「よぉし、耐久テスト兼威力テストと行きますかね」

 イドゥンはレールガンを転送すると、バージョンアップで新たに追加されたロングバレルユニット装着した。

「レールガンとタッパは長ければ長い程良いのだ!」

 至近距離で放たれた実弾は装甲に深々と突き刺さり、その威力に大変満足したイドゥンはマスク越しにニヤリと笑った。

「このまま横断して真っ二つにしてやらァよ」

 イドゥンがレールガンを乱射している頃、アフロダイとルナは腕を斬り落とすべく奔走していた。

「いつもの手を使おう!」

「ええ、氷と熱!」

「そう! 凍らせてバラバラに砕く!」

 左手に持ったナックルアームを乱射して腕を氷結させると、アフロダイが跳躍してトライデントを氷の塊に突き刺し、氷が砕けると同時に手の一部が粉砕される。

「さっさとぶっ壊れて……その汚ねェ中身を見せやれェェェェェェエエエッ‼」

 青い炎に包まれた黄金に輝く剣や槍や護手鉤を無数に生成したマグナライジングアウルは、それらを雨のように降らせてロボットの装甲を破壊しようと試みるが、どうやらこの一撃の衝撃で気絶していたゾゴーリの目が覚めたらしい。

『うぅ……ッ⁉』

 最終兵器の上で好き放題やっている九人の姿を認めたゾゴーリの怒りは、あっという間に頂点に達した。

『この……下等生物共がァァァァァァアアアアアアッ‼』

 怒りに任せてゾゴーリは拳でスイッチを押し込み、同時にロボットの全身から赤い稲妻がスパークする。

「うわっ⁉」

「ぐおっ!」

 ロボットの近くに居た者達は全員吹き飛ばされ、背中のジェットを駆使して立ち上がる。

『許さんぞ……ぬおおおおおおあああああっ!』

 力を合わせてやっとの思いで皆で切断した足があっという間に強化再生成され、更に粉砕された腕が落ちてそこから巨大なショックブレードが出現する。

「クソ! 目覚めやがった!」

「しかも……強くなってるし!」

 死徒の力に晒された影響でC―SUITが一時機能不全に陥ってエナジーストリームラインが点滅するが、バージョンⅥは自動回復機能で、三姉妹は自身の能力で無理矢理回復させた。

 だがしかしスーツを通り越して身体に到達したダメージは深刻らしく、マグナライジングアウル以外はまだ完全には動けそうになかった。

『気が変わった、完全に……徹底的に潰してやる!』

「こっちのセリフだゾゴーリ・ジャガック!」

 アウルブラストとショックブレードを互いに向け合って撃ち合い、爆ぜた隙に自身の黄金の羽を飛ばしてロボットの装甲を大きく削り取る。

「せやあああああっ!」

 更にアウルカリバーを振り抜いてダメージを与えるも、ロボットは負けじと装甲を修復してビームやミサイルと拳の実像で応酬する。

「くっ……あああああっ!」

 苦痛に喘ぐクドゥリの声が響き、それがマグナライジングアウルを焦らせる。

『厄介な奴だマグナアウル……貴様から潰すことにしよう!』

「やれるもんなやってみやがれ!」

『ハァッ!』

 ゾゴーリが何か操作すると、なんと切断された元の足が変形してそこから無数の鉄塊が出現し、浮遊しながらマグナライジングアウルへと差し向けた。

「あいつめ……破片も操れんのかよ! だったら……こうだっ!」

 マグナライジングアウルはその場で高速旋回すると、無数の分身体を生み出してついに数百人近い分身を生み出した。

「オラッ!」

「サッ!」

「エェェェェェェェエエッ‼」

 各々武器を携えて飛んで来る瓦礫を次々粉砕し、ある程度瓦礫を跳ね除けた後に一斉に武器を合体銃に切り替えてゾゴーリのロボットに狙いを定める。

「超翼……大乱舞‼」

 数百人のマグナライジングアウルによる強烈な半物質弾の一斉発射を受け、拳の実像をいくつも重ねて防ごうとするも、数の暴力に押し切られてロボット本体に大ダメージを喰らう。

『お前を最初に殺しておくべきだった!』

「残念だったな‼」

『その歪みを今……正す!』

 死徒の残滓に関する武装の出力を上げて、黒い炎と共に赤い電撃が四方八方へ放たれ、次々と分身体が消滅していく。

「くっ……畜生」

『もう一度役に立ってもらおうかなクドゥリ……フンッ‼』

 マグナライジングアウルにロボットが手を翳すと、何か強烈な波動に拘束されてしまった。

「うおっ⁉ 何だこれっ⁉ 体が……」

 まるで戒められたかのようにマグナライジングアウルの動きが止まり、磔にされたようなポーズになる。

「何⁉ 何が起こってるの⁉」

「あれは……マズいです!」

「見りゃわかる! どうマズいの⁉」

「あれはお姉様の技……アバターの強制剥離です!」

「アレか……だったらマズい所じゃない!」

 かつて初めてマグナアウルと戦った際に見せた技で、高次元と三次元空間の間の繋がりに干渉する事で、強制的にアバターを剥がしてしまうという技である。

「でもこの前の戦いの時にクドゥリは出来ないって!」

「もしかするとあのロボットは、複数の超能力者の遺伝子を使っているが故に到達次元が上がって、干渉が可能になっているのかもしれません……」

 ミューズはハルバードを杖代わりにして立ち上がると、自分を含めて全員に回復をかけ、完全回復とは行かないものの、ある程度動けるようになった。

「ちょっとミューズ? どこ行くの⁉」

「助けないと! このままじゃ死んじゃう!」

「危険です! アバター剥離に巻き込まれたら肉体が崩壊する可能性があるのですよ‼」

「それでも助けたいの! だって()()は私の恋人だから‼」

 一人でも向かおうと前を見た直後、分解されつつあるマグナライジングアウルの背中からから京助が吹き飛ばされるように飛び出し、叩き付けられて地面を転がる。

「京助ッ!」

「うぅ……クソが!」

 上空四十メートル近い所から地面へ叩き付けられたが、京助はすぐに立ち上がった。

『剥がれたな、では次のステップだ!』

 断たれた足から発生させた大量の鉄塊と、ロボットが破壊した街の瓦礫が京助へと降り注ぐ。

『アバター無しでどこまで行けるかな?』

「ナメんな! 無しでも十分俺は強い‼」

 飛んで来る瓦礫を蹴って念力やソリッドレイを駆使して抵抗していたものの、畳み掛けるような激しい攻撃に京助も徐々に対応しきれなくなる。

『チッ……んん?』

 ゾゴーリの目に京助を助けようとダメージの残る体を引き摺ってこちらに向かうクインテットと三姉妹が映る。

「ほぉー……クククククククク」

 巨大な瓦礫の一部が先頭のミューズへ向かい、京助は即座にそれに気付いた。

「危ないッ! 奏音‼」

 右手を突き出し、ミューズの真上の瓦礫を粉砕して吹き飛ばすと同時に、大量の瓦礫と鉄塊が京助へと振り注ぐ。

『貰った!』

 轟音が響き渡り、クインテットと三姉妹は舞う粉塵から腕で顔を覆い、フィルター装置をオンにして警戒を確保した。

「……ウソ、そんな」

 真っ先に奏音(ミューズ)の目に飛び込んできたのは、血が滲む瓦礫の山から突き出た、京助の右手だった。

『キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ‼ やったぞ! ついに我が最大の仇敵を殺したぞ! 私はやったんだ‼ クカカカカカカカカカカ‼』

 頭を抱えて膝から崩れ落ちながら奏音(ミューズ)は声の限り叫んだ。

「京助ェェェェェェエエエエエエエエエエッ‼」


To Be Continued.


 地球かジャガックか。

 決着は、近い。


次回 最終回

冒頭の京助の謎が解けましたね。

果たして京助抜きでクインテットと三姉妹はゾゴーリのロボットに勝てるのか、そして京助は本当に死んだのか。

次回、最終回。

お楽しみに。

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