無限の翼
マグナライジングアウルが敗れた。
調子付いたゾゴーリは更なる進撃を続け、サイの参戦もあれどそれすら上回る程の自己強化能力を備えたロボットに、徐々に九人は後れを取るようになる。
だが奏音の行動がある奇跡を起こした!
少年少女の戦いは、果たしてどのような結末を迎えるのか!?
これまで語って来た通り、ジャガックとの最後の戦いが幕を開け、俺はアバターを剥離されて生身になり、奏音を助けようとした隙に押し潰されてしまった。
助けたこと自体は全く後悔はしていないんだが、この状況ではにっちもさっちも行かない。
そもそも俺は生きているのか、それとも死んでいるのか? 自分でも全く分からない。
ただ石と金属の塊で押し潰されただけだから、超能力者がそれしきで死ぬとは思えないが、潰した後にすり潰されたから右手以外の体はミンチになってるし、何より全身の感覚が無い。
そして唯一無事な右手も全く動かせないのだ、本当にどうなっているのやら。
それよりも気になるのはこの戦いの行方だ、一刻も早く復帰しなければ危ないというのに……。
何もできない自分が、ただただ歯痒い。
ついに自分の組織をほぼ壊滅に追い込んだ最大にして最恐の仇敵を倒したゾゴーリは、あまりの達成感に哄笑を上げ続け、対してクインテットと三姉妹、そしてこの様子を見ていた財団及び真鳥市民の心に一気に絶望感が広がった。
「そんな……そんな……なんで……なんでよっ!」
地面を殴りつけながら、ミューズは石の塊から突き出た右手に向かって慟哭する。
「私達……これからだったじゃん!」
奏音の脳裡に、京助とやりたかった事、思い描いていた未来が一気に押し寄せてくる。
「もっと話したい事……やりたい事……行きたい場所が……あったのに……」
親友として仲間として、他の皆のマスク越しの顔が険しくなり、武器を握る手がより強くなっていく。
『ハハハハハ! ふぅ……次はお前らだ! 邪魔者に裏切者、纏めて潰してやる!』
宵闇に聳える見上げる程巨大なロボットに向けて、奏音は燃え盛る視線を向ける。
「ゆる……さないッ‼」
『ギャハハハハハハハハハハ‼ 死ねぇぇぇぇぇえええええっ!』
ロボットが進撃を始めて皆が身構えた直後、 白い電撃を纏った赤い流星が飛んで来てロボットへ衝突し、ロボットを軽く数メートル吹き飛ばしてしまった。
『うおっ! とっ……おお?』
流星はそのまま地面へ着地し、白い電撃を周囲へ迸らせながら手にした斬馬刀サイズの真っ赤な両刃の剣を肩に担いだ。
『お出ましかァ……ガラゼァ・ブランボス!』
「サイ!」
驚く皆に対しても、カプリースは全身から白い電撃を迸らせながら黙っている。
『とうとう直接対決だが、残念ながらマグナアウルですらこのザマだ、いかにお前とて私には勝てまい!』
「……」
『フン! 私と喋りたくないという訳か、まあでも遺言位は聞いてやらなくも』
「お前はすぐには殺さない」
『あァ?』
「手足を引き千切った後バルヴィーに連れて行って、ゼバルの船首にお前を括りつけて星が滅びる様を特等席で見せてやる。そして今際の際にお前は知るだろうさ、なぜこのボクが気紛れなる虐殺の化身と呼ばれているのかをな」
八人はカプリースの言葉に怒気が含まれているのを初めて聞き、そしてその迫力に反射的に背筋が伸びる。
「ボクから友を奪った事、後悔させてやる」
静かながら湧き上がる怒りを紅蛇に乗せ、地面に突き刺して凍り付かせて、一気に下半身を拘束してしまう。
『氷か! 相変わらず厄介な奴だな!』
全身に風の力を纏わせて跳躍したカプリースは、紅蛇にありったけのサイコエネルギーを送り込む。
「フルギュラス・ジア・コーダ」
サイコエネルギーが変化した白い電撃を纏った赤い刃がロボットに向かい、ロボットもショックブレードで対抗するも容易く切断して一刀両断してしまった。
『やるじゃないか、だが無駄だ』
瞬時に斬られた部位を修復し、更に武装を増やしてカプリースに差し向ける。
「チッ……厄介だな」
『喰らえェェェェェエエエエッ‼』
黒い拳の実像に包まれたミサイルを白い電撃弾を飛ばして破壊し、再び攻撃を仕掛けようとした所でレーザービームの一斉射撃を喰らった。
「あぐうううっ! うぅ……あああああああああああっ!」
氷の盾でビームを防ぎながら、クドゥリの悲鳴を聞いたカプリースは歯軋りする。
「超能力者すらその手に納めたか……不愉快極まりないな」
『お前も死んだら組み込んでやろうか?』
「自分に何もないコンプレックスの裏返しに巻き込まないでほしいねッ!」
ロボットはバルカン砲を掃射し、カプリースも水流弾を飛ばして対抗する。
『お前の次元を超えたマグナアウルは死んだ! お前はこいつに勝てるかな⁉』
「超能力者の事を何も知らない馬鹿丸出しの発言だな‼」
激しく戦うカプリースとゾゴーリのロボットを見て、スーツを纏った少女達が様々な思いを抱えていた。
「マグナアウルは、千道京助という人は……私の大切な人だった……小さい時からずっと一緒で、お互いに半身と言っても良かったかもしれない」
ミューズの独白に他の七人もヘルメットの中で沈痛な面持ちで耳を傾ける。
「私は京助を守りたいから戦いを始めて、京助も復讐って目的はあれど、私を守りたいと思っていてくれた……最期の瞬間までね」
命懸けの戦いの中で、京助は自分の身を守るよりも奏音の命を守る事を選んだのだ。
「だから私は、これから京助の為に戦う! この街を守りたいっていう遺志を継いで! だから……皆もついて来てくれる?」
「何言ってんのさ」
皐月が太刀を肩に担ぎながら、奏音の肩を叩いた。
「当たり前じゃん、最後の最後まで付き合うに決まってる」
明穂や麗奈も前に出て皆まで言うなと言わんばかりに頷き、最後に林檎が真っ直ぐ奏音を見据えて言った。
「センキョーはさ……ウチ等にとっても大切な友達だったから。悲しむよりもやる事あるだろって……アイツも言うだろうからさ。行こう!」
皆の思いが一つに纏まった所で自分達の背後で激しい戦いを繰り広げるカプリースとロボットを見た。
「戦うのは良いのですが、どうやってあの最中に近付きますか?」
「良いやり方がある、それも飛び切り最高の武器を使うの」
「最高の武器?」
「あるじゃない、ここに」
ミューズが自分の胸を叩き、力強い口調で宣言した。
「この手が! この足が! この体が! 全部残ってる‼」
「フフッ……確かに最高の武器ですね」
「この命は京助に貰った命だから……その遺志を継ぐために徹底的に燃やし尽くす!」
各々の武器を掲げ、スーツを纏った少女達は叫んだ!
「行くぞぉぉぉおおっ!」
「おおおおおおおっ!」
クインテットと三姉妹は走り出し、遠距離の攻撃手段を持つ者は全員ロボットに向かって強化された攻撃を放つ。
『またお前達か! 懲りない奴らだ!』
カプリースに切り刻まれる度に武装を増やしたロボットは、もはや別物と化していたが、全員構わず進んでいく。
『蹴散らしてやる‼』
「いいう……あああああっ!」
右半身のビーム砲が全てクインテットと三姉妹に差し向けるが、デメテルがシールドでそれを受け止め、エネルギーをミューズとルナとガディに分割して、能力で強化してから打ち返す。
光輪と二つの三日月型の刃が軌跡を描きながらロボットの砲塔を破壊するも、今度はいくつものミサイルを放ってくる。
「今度は私が!」
「オオオオラアアッ!」
「ハッ!」
「やああああっ!」
イドゥンとアフロダイとジェサムがライフルやマシンガン、そして強化弓を使って撃ち落とし、追撃の小型ミサイルもザリスのレーザーウィップが全て絡みついて撃ち落としてしまった。
「ハァァァアアアアアッ!」
重力軽減装置で大きく跳躍したミューズとデメテルとガディは、まずはハルバードと大剣を叩きつけて大きく傷をつけ、そこにデメテルが手を突っ込んで無理矢理こじ開け、そこにありったけの攻撃を叩き込む。
「成程そう来たか、頭良いな……君達! 陽動はボクがやる! だから安心して戦いたまえ!」
「了解! 助かる!」
クインテットを攻撃しようとしたロボットの剣戟を水流弾で妨害し、カプリースは白い電撃波を放って紅蛇の斬撃を食らわせる。
『作戦を大声で明かして良いのか?』
「お前の単純で古びたオツムじゃ対処しきれないだろうから平気さ」
『本当にお前は……虫唾が走る奴だ! 何千年も前から‼』
「気紛れな風を思い通りにしようって考えが! そもそもの大間違いなんだ‼」
大量の鋭く小さい氷の刃が混じった竜巻を紅蛇から放ち、ロボットの装甲を削り取っていった。
「ハァァッ‼」
剥き出しになった内部機構に白い電撃の塊を叩き込むと、武器システムに何か異常を来たしたのか各部からスパークを起こして動きがおかしくなる。
『小癪な真似をォ……しおってぇ‼』
「今だ! 畳み掛けろ!」
カプリースの号令と共にクインテットと三姉妹は更に攻撃の手を強め、こじ開けた装甲から内部装甲へと更に掘り進めて行き、ついに配線が見える所にまで辿り着いた。
「ガディ! ザリス! ジェサム!」
「はいっ!」
「任せてください!」
「おおおおおおおっ!」
配線を引きずり出したデメテルのアームにザリスがレーザーウィップを繋ぎ、三人でロボットの内部機構に干渉する。
「お姉様とのリンクを……断ち切れば!」
「このロボットの攻撃力は必ず落ちる!」
「機能低下も狙えるかもしれませんわ!」
三人は能力を駆使してロボットの内部に侵入し、姉であるクドゥリの反応を探る。
「もしかしたら……行けるかも⁉」
皆が希望に満ちた視線を向ける中、イドゥンとアフロダイが同時に叫んだ。
「ヤバッ! 危ない‼」
「みんな退いてください‼」
それに従って皆一斉にその場から散ったが、カプリースは吹き飛ばされてあわや地面に叩き付けられそうになる。
「何だ⁉」
「今のは……一体?」
傷まみれで一部が凍り付いたゾゴーリのロボットから黒い炎が轟々と燃え盛り、徐々に傷や凍り付いた装甲が元に戻っていき、徐々に全体的な見た目も変化していく。
「あれは……ウィッカーアモンみたいだ」
「死徒め……機械にも因子を植え付けるとは見境が無い奴だな」
肩から巨大な棘がせり出し、更に背中は禍々しい翼を思わせるような巨大な柱状のパーツが放射状に生えて、手足や頭部もより禍々しくなった。
『フハハハハハ! 再起動だ!』
再起動に伴い全機能が回復したらしく、胸部からエネルギーを発する事でクインテットと三姉妹を吹き飛ばしてしまった。
「いいいいいいうああああああああああああっ! あぁ……うぅっ! ぐううううううう……あああああああああああっ!」
一際痛々しいクドゥリの悲鳴が響き渡り、ガディとザリスとジェサムは頭を振って歯軋りをする。
『ハハハハハハ! 死ね死ね死ね死ねぇっ‼』
ロボットは肩の棘から電撃を放ち、地上に居るクインテットと三姉妹を追い回す。
「アグラ・バス・コーダァッ‼」
自身の周囲に水を纏ったカプリースは高圧水流を放って後退させ、自身が纏った水流を凍り付かせて足止めしにかかるも、黒い炎で無効化されてしまう。
「デンパルド・グリエ・バラグ・コーダァッ‼」
攻撃を無効化されたカプリースは即座に氷混じりの竜巻を複数撃ち出し、ロボットも黒い炎で迎撃する。
『そろそろ面倒になってきたな、お前のアバターも剥がしてやろう!』
ロボットはカプリースへ手を翳して念波を浴びせようとするも、その念波が到達するより早く氷の壁を作り出して防御する。
「舐めるなよ、そんな手に誰が引っかかるか!」
作り出した氷の壁を蹴飛ばして目眩ましに使うと、白い電撃を食らわせて後退させる。
『全く面倒だ……喰らうがいい!』
ロボットが手を翳すと切断された足から黒い金属の塊が発生し、自分の敵を追い回し始めた。
「クソが! しつけーな!」
「うっ……うわっ!」
「くっ……離せ……」
クインテットや三姉妹は黒い金属片から伸びる鎖に拘束され、金属の塊に磔にされてしまう。
「しまった! うおっ⁉」
カプリースも気を取られた隙に吹き飛ばされて腕を拘束され、紅蛇を取り落してしまう。
「クソッ! 外れろ!」
磔にされたクインテットと三姉妹と、腕を拘束されたカプリースを睥睨し、ゾゴーリは哄笑を上げた。
『ハッハハハハハハハハハハハハハハ‼ とうとう全員捕まえたぞ!』
前へ進もうと自分を縛る鎖を全力で壊そうと試みるカプリースと、身を捩るクインテットと三姉妹を見ながら、心底満足そうに微笑んで操縦桿を握った。
『この街の希望はこれから途絶える……フフフフフフフフ……アハハハハハハ‼』
ゾゴーリのロボットが足を上げ、磔になっているクインテットに狙いを定めた。
「外れろ! 外れろオオオオオオッ!」
夜闇より遥かに濃い暗闇が迫り、皆覚悟を決めたその瞬間、不思議な事が起こった。
「……えっ? 何?」
何かに阻まれたかのようにロボットの足が空中で止まり、同時にいくつもの風を切る音がし、気が付いたら自由になっていた。
「えっ……自由になってる⁉」
困惑している暇もなくミューズの目の前の空間が歪み、長く美しい艶のある黒髪の少女が現れた。
「采姫様⁉」
「良いか! もう妾には時間が残されていないからよく聞け!」
どうやらロボットの足を止めたのは采姫の念力で、自分達を解放したのはジガルの斬撃であるらしい。
「梟はまだ生きておる!」
「えっ⁉」
「ああなったこやつを止められるのは最早梟しか居らぬ! 何をすれば良いかはもうわかるであろう⁉ どうか妾の故郷たるこの地を頼む!」
渾身の力で全員を念力でその場から押し返すと、采姫は姿を消してしまった。
「梟は生きてる……京助が生きてる⁉」
困惑するミューズに起き上がったイドゥンが手を貸して立たせ、背後の無残な瓦礫の塊に視線を向ける。
「行って」
イドゥンだけではなく、ルナもデメテルもアフロダイも集まってくる。
「彼を蘇らせる事が出来るのは、あなたしか居ません」
「ミューズなら出来るよ」
「希望のバトンはあんたに託された、頼むよ」
奏音は俯いていたが、力強く頷いて拳を掲げて見せた。
「わかった! ここを頼むよ!」
駆け出したミューズを見送り、残された七人はよろめくロボットの方を見る。
「切り札に取っておいたけど……やろう」
「おう!」
皆は足並みを揃えて武器を構えると、同時に叫んだ。
「Bモードオン! バーストッ! GO‼」
一斉に装甲が展開し、それぞれの色に輝くコアエナジーストリームラインが露出した。
「時間稼ぎぐらいにはなるでしょ!」
「何なら倒しちゃおうぜ!」
「行くぞおおおお!」
様々な色の軌跡を残しながら、七人は強大な敵へと向かって行くのだった。
そしてその頃ミューズは。
「ハッ……ハァ……」
京助の右手のみが突き出した瓦礫の前に立ち、呼吸を整えてから話しかけた。
「京助……聞いて! あんたは生きてる!」
奏音の呼びかけには、誰も答える者はいない。
「見えてる? 今が一番あんたの力が必要なの!」
必死に手に話しかけるも、指が動く様子すら微塵もない。
「何をすれば良いかわかるだろ……って……分からないよ」
潰された直後に回復能力を使ってみたが無駄だった、もはやどうすれば良いか全く分からない。
「お願い……生き返ってよ! もう一回……あんたと笑い合いたい!」
自分を助けるために伸ばされた手を見るのが虚しい。もはやこの手を永遠に握ることが出来ないのだろうか?
だったらせめて、今のうちに。
「京助……」
奏音はヘルメットと腕だけを脱装し、京助の腕に触れた。
「お願い……また会いたいの」
京助の手に触れ、奏音は自分の願いをぶつけるのであった。
空間の狭間を漂っていた京助の意識は、突然自分自身の手に向いた。
「柔らかくて……温かい? なんでだ⁉」
驚愕しながら意識を自分の体だったものに向けると、奏音が自分の手を握っているではないか。
「奏音が……俺の手を」
奏音が自分の手を握っており、その感覚が伝わっているのだ。
「……まさか……おい! トト! 起きてるか⁉ 起きてるなら返事してくれ!」
ほとんどダメ元だったがすぐに返事が返って来た。
「京助⁉ まだ意識があったのですか!」
「お前も意識残ってたのか! おぉあ……マジで良かった!」
「ええ、せっかく手に入れた体は無残にも粉々になりましたが……でも元より精神生命体の私は兎も角、何故京助の意識が残っているのでしょう?」
「なぁ、今からものすごく突飛な事言っても良いか?」
「ええ、あなたの突飛な言動には慣れっこです」
「俺……まだ生きてるかもしれない」
流石に突飛すぎてトトも閉口してしまう。
「見えてるか? あそこ!」
自分のすり潰された肉体がある所を指し、京助は捲し立てる。
「奏音さんが居ますね」
「奏音が俺の手を握ってくれた! そしたらその感覚が伝わって来たんだ! 感覚が残ってるんだよ!」
「なんと……確かにそれは生きていると言えるかもしれません」
「少なくとも三次元宇宙からのリンクはまだ完全に断たれてないって事さ……つまり何かしらやり様があるんだよ!」
消えかけていた心の炎が再び灯り、京助は頭をフル回転させる。
「どうにかするにあたって、なんで俺が完全に死ななかったのかってのが考える必要がある気がする」
「もはや肉体がこうなってまで生きているのはもはや超能力が関係しているとしか思えませんね」
「でも俺の能力って時空に関係する能力だろ? そんな死者蘇生じみた事が永続的に発動する訳じゃ……いや待て、もしかして違うんじゃないか?」
「違う……何がどう違うのです?」
「思い返してみろ、今までの人生で俺って本当に時空を操る能力を使ってたか?」
京助の言っている意味が分からなくなったトトは、またもや閉口してしまう。
「スマン、ちと興奮しすぎた。まず前提が違うんだよ、確かに俺は時間と空間を操る能力を持ってはいるが、それだけじゃないんじゃないかって思うんだ」
「つまり……あなたの真の能力は別にあるという事を言いたいのですか?」
「そういう事だ、それが何か分かれば俺は元に戻れる! もう一度自分の過去を見つめ直すぞ」
ジガルに師事を受ける前、京助はどのように能力を使っていたのか。
「新しい力を得た時、俺はどうなってた?」
マグナアウルからマグナライジングアウルとなった時、次元収縮能力を覚醒させた時、訓練中初めてアバターを呼び出した時、そして最後に初めて力に目覚めた時。
「俺は何を……どうやって俺は力を得た?」
過去に自分はどのような戦いをしていたのか、ひたすらに考え抜いた末、ある言葉が思い浮かぶ。
「無限……不可能性」
あらゆる不可能の全てを可能にし、ひとつの結果を掴み取る。
「なんで俺はこの言葉に惹かれてたんだ?」
まだマグナアウルだった時に新しい力を探っている時、無性にこの言葉に惹かれたのは何故か。
「無限不可能性ドライブの事でしょうか?」
「違う、ドライブじゃない! 無限不可能性だよ、俺の真の能力は時空を操る事じゃない」
「ですがあなたの属性は時空ですよ?」
「原理が時空に干渉してるって事だろうな」
「成程……ではあなたの能力は?」
「無限不可能性だよ!」
さっきから京助が言っている事が分からない事だらけで、トトはあるか分からない首を傾げる。
「つまりあなたの能力は……あらゆる不可能を可能する力という事ですか?」
「そう! そうなんだ! そうなんだが……まだ問題がひとつある」
京助は唸りながらその問題を挙げた。
「発動のトリガーが分からない、どうやって俺は力を発揮してきた?」
もう一度過去の出来事を思い返し、京助は再び黙りこくる。
「……新しい力にあらゆる不可能を可能にする事で目覚めたと言いたいのですか?」
「そうだな、少なくとも俺はそう思ってる」
「その時に、常に誰かが居ませんでしたか?」
「……あっ」
「他者の強い思いが、あなたとその力の原動力になっていたのでは?」
振り返ってみればそうだった。
力に目覚めた時は、両親の生きて欲しいという願いを受け取った。
アバターを呼び出せるようになった時には、きっと自分の中に居る両親の応援を無意識下で拾っていたのだろう。
次元降下能力の時は、サイの強くなってほしいという思いがあった。
マグナライジングアウルとなった時は奏音を始めとした友人達の思いと願いを受け取った。
「誰かの思いと……俺の思いが一つになった時……俺の力は不可能を超える!」
こうしてまだ生きていられるのは、奏音の思いが自身の生存本能と結びついたからなのだろう。
「強い思いで不可能を超える……それが俺の力だったんだ」
だとすれば、すぐに復活は可能なのではないか?
「いち早く復活しましょう」
「いや、まだダメだ」
「何故です? 奏音さんだけではなく、サイですら危険な状況に……」
「考えてもみろ、このままの状態で行った所でまた負けるだろ? この状態を利用してより強くなろうと思う」
「なるほど……一理ありますが、やり方の当てはあるのですか?」
京助は一呼吸置いてから口を開いた。
「分子レベルの肉体の再構成ってのはどうだ? アバターの基礎スペックは元の肉体に依存する訳だし」
「妙案ですね、必要なエネルギーを計算しましょうか?」
「頼む! なる早で!」
数秒後、トトが沈んだ声で京助に告げた。
「……残念ながら、今のあなたの状態では到底実現不可能です」
「……もしこんな事があれば、可能になるか?」
「聞かせてくれますか?」
京助はトトに作戦を告げ、トトはあまりにも突飛かつ大それた作戦に驚いた。
「そんな事……出来るんですかね?」
「計算してみてくれ」
「その程度なら今の状態でもできますが、どうやってやるつもりですか?」
「今の俺は五次元宇宙あたりに居る、それを利用すれば、真鳥市全域はカバーできる筈だぜ。んで本命の作戦はどうだ?」
トトが急に黙り込んだ。どうやら計算を始めたらしい。
「……結果が出ました」
京助の早く言えと言わんばかりの期待の圧を感じながら、トトは答えた。
「可能です……むしろエネルギーが余ります」
「どれぐらい?」
「それはもうかなり余りますよ、マグナライジングアウルを同時に十万体は呼び出せます」
「そうか……」
ここで京助に新しい妙案が浮かんだ。
「じゃあ……これこれ使ってこんなのは実現できるか?」
そう言って京助はあるものを差し出し、トトは思わず息を飲む。
「本気ですか? 確かに成功すればあなたはゾゴーリ・ジャガックの駆るロボット以上の力を発揮することが出来るでしょう、ですが……前代未聞の挑戦過ぎて何が起こるかわかりませんよ」
「でもやる価値はあるし、必ず成功するさ」
「根拠はあるのですか?」
「あるさ、俺には無限の可能性を実現する力があるんだからな」
「相変らず……思い切りと突き進む力だけは凄いですね」
京助は微笑んでから準備を整え、白み始めた真鳥市の空を見上げて言った。
「それじゃあ……始めるぞ‼」
これまでの激闘はずっと遠くの方からテレビ中継されており、様々な者達が夜通しで中継を見ていた。
マグナライジングアウルこと千道京助の死亡により、一時は絶望感が襲ったが、サイの加勢や諦めず立ち向かい続けるクインテット及び三姉妹の懸命な戦いぶりに徐々に希望を取り戻し始めていた。
そんな真鳥市民の一人である木幡家では、まだ小学生である末子の夏穂以外の家族が、長姉の活躍を見届けるべくテレビ中継を見ていると、突然リビングのドアが開く音がする。
「……ん? 夏穂?」
パジャマ姿で目を擦りながら、夏穂がそこに立っていた。
「どうしたの? ああ、うるさかったか」
茜の問いに夏穂は首を横に振り、ひとつ欠伸をしてから答えた。
「京助お兄ちゃんが夢に出てきたの」
「え?」
茜が夫の直樹の方を振り返るも、夢の専門家である彼すら首を傾げる。
「ちょっと協力してって……」
その時テレビにノイズが走り、うねるカラフルなマーブル模様の背景にした京助が現れた。
「んえ⁉ 京助さん⁉」
これには颯司だけではなく、公安X課で様々な経験をして来た直樹と茜も驚いた。
「どうも木幡家の皆さん! 少し協力してほしい事があります」
「協力って、君は死んだんじゃ……」
「色々省きますが厳密には死んだわけじゃないんです! いいですか? 超能力者一家であるあなた方に協力してほしい事があります」
超能力者一家って何だと言わんばかりに颯司が両親とテレビの京助を交互に見る。
「協力って……何のための?」
京助は真剣な表情と口調になって答えた。
「これからの勝利と……無限の未来の為に」
場所は移って佐川家にて、そこには京助の親友達である弘毅と圭斗が集まっており、幹人とその姉藤子の四人でテレビに釘付けになっていると突如テレビにノイズが走った。
「あれ? 壊れた?」
「なんでだよ、最近買い替えたばっかなのに」
「局側の不調かもよ? 変えてみたら?」
幹人がチャンネルを変えようと手を伸ばしたその時。
「変えるな!」
「うわあああっ⁉」
突如画面に現れた京助に幹人はひっくり返り、同時に皆も体を震わせる。
「チャンネルを変えられると面倒なんだ」
「京助君……なんで?」
「やっぱり……生きてたって事か?」
「いや、こんな事になってるって事は……」
「大丈夫だ、俺は生きてる。幽霊でもない! ……いや、それに近い状態ではあるけど、兎に角生きてる」
皆の親友が生きていたという事実に、心の奥底に蔓延っていた黒い雲が晴れ渡った。
「良かった……生きてたのか……」
「だから言ったでしょ? 超能力者はあれしきで死なないって」
「お前泣いてただろ」
「いやいやそんなワケ……」
「良いから聞けよ、あんまり時間が伸びるとあいつらに負担がかかる!」
「アッ、ハイ正座」
全員が姿勢を正して京助の話に耳を傾ける。
「皆に協力してほしいんだ、藤子さんにも」
「協力って……俺達何の力もないんだぞ?」
「大丈夫だ、すぐ終わるし簡単だ」
そう言うと京助は、説明を始め、皆は真剣に耳を傾けるのであった。
頬に涙の跡を残す和沙と、その横で拳を震わせながらテレビを見ている誠だったが、突如乱れた映像に困惑した。
「あら?」
「どうしたんだろうな」
「フウッ! おじさん、おばさん! どうも!」
「うおっ⁉」
「……京助君!」
うねるカラフルなマーブル模様の背景にして何でもない風に笑う京助に、二人はまず困惑する。
「京助君……これは一体……」
「色々あったけど生きてます、完全復活の為に二人に協力してほしいんです」
「協力……」
「やるわ、何をすればいいの?」
即決した妻に驚いたが、誠もすぐに頷いて協力の意志を伝えた。
「助かります、では今から説明しますね」
自室のモニターに釘付けになっていた桃弥は、モニターが乱れた事でキレ始めた。
「おいふざけんな! 妹の勇姿を見れるって時に乱れるなんてぶっ壊して……」
「壊さないでくださいねぇ!」
「おおっ⁉ 京助君じゃないか! いや、彼の霊魂というべきか」
「残念ながら考察はハズレです、少し協力してほしい事があります」
「ハズレか……でも協力って何をすれば良いんだい?」
「すぐ終わります、ユメリンゴは超能力者なんだから、桃弥さんもすごいポテンシャルを秘めている筈ですから」
ウィルマース財団ではどうにかクインテット及び三姉妹に救援を送るべく、様々な方法を模索していたが、ロボットの能力により妨害されてしまう。
「こちらからの攻撃は出来ずとも、何とか相手の攻撃を封じる方法は無いか?」
「近付くだけで撃墜されます」
白波博士が悔しそうに首を振ったその時、礼愛のタブレットに京助が映った。
「圭司さん、礼愛さん。俺です」
「はっ⁉ えっ⁉ 京助君⁉」
白波博士が礼愛のタブレットに顔を寄せ、一体どうなってるのかと困惑する。
「京助君……君は一体……」
礼愛のタブレットに突然京助が現れたという状況は瞬く間に広がり、財団職員は作業の手を止める。
「あなたは、岩に潰されて……」
「ええ、ですが完全には死んでません、生きてますよ」
京助が生きているという事実に、財団職員はにわかに沸き立った。
「生きてるのか⁉」
「どこに居るの?」
「多分五次元宇宙だと思いますが、よく分からないですね。それより何より圭司さんと礼愛さんに協力してほしい事があるんです」
「私達二人にかい?」
「財団ではなく?」
「ええ、二人の力が必要なんです……いや、三人か。実久さん呼べますか? 天海実久さん」
天海実久、クインテットのルナである皐月の母である。
白波博士は部下に内線を掛けるようにジェスチャーで表し、数分経ってから実久が現れた。
「えっと……私はどうしてここに? 皐月に何かが」
「いえ、彼女は無事ですよ」
「えっ⁉ 京助君⁉」
「色々説明省きますが生きてます、今から俺の完全復活の為に実久さんにも協力してほしい事があるんです」
京助の説明に真剣に耳を傾けた三人は、最後に一つ質問を投げかけた。
「これで勝てるのか?」
「ええ、勝てます。必ず誰も死なせません」
「……わかった、やってくれ!」
最後に京助が訪れたのはふとしたことから知り合い、そしてマグナライジングアウルとなる切っ掛けを作った少年、八坂清桜の夢の中だった。
「よう、清桜」
「京助君!」
清桜が京助に駆け寄って捲し立てた。
「ジャガックはどうなったの⁉ 勝った⁉」
「いいや、実はまだなんだ、だから勝つために協力してほしい事があってな」
「僕に? でも僕超能力者でもないし、ただの小学生だよ?」
「すぐ出来るし、簡単な事さ」
京助は清桜にこれからやるべきことを伝えると、清桜は目を輝かせながら京助の方を見た。
「やっていいの⁉」
「ああ、今日だけは特別さ。清桜の力が、俺の力になるんだ。お前の言葉があったからマグナライジングアウルになれた、今回も力を貸してくれるな?」
「喜んで!」
目覚めた清桜はすぐに腕を確認し、しっかりとあるものが生成されている事を確認して微笑むと、部屋の窓を開けた。
「京助君! 受け取って!」
采姫から京助が生きていると聞いてありとあらゆる呼びかけを試し、最後の手段として奏音は手を握ってみたものの、返答も無ければ握り返される事も無かった。
「生きてても……答てくれなきゃわからないよ」
京助をどうにかして復活させなければならないが、皆が背後で戦っている。
自分も参戦しなくてはならないが、京助の事も気になってしまう。
「うん……Bモードオン! バーストGO‼」
バーストモードを起動し、ミューズはハルバードを構え、瓦礫の前に立ち塞がる。
「私はここで戦う、希望を絶やさない!」
今ここで無防備な京助を守ることが出来るのは自分だけだ、自分の戦いをするならば、今この瞬間以外何があるだろうか。
「私はあんたより弱いかもしれないけど、こんな時ぐらい守らせて」
遠方では親友であり戦友が激しい戦いを繰り広げている。
懸命に戦ってはいるものの、死徒の力すら制御下に置いたゾゴーリのロボットはあまりにも強敵であり、バーストモードを発動したことに加えてガディとザリスとジェサムの能力で威力の底上げをしているものの、あまり効果的な攻撃が出来ていない。
サイの方も本気で自分の力を振るえば天変地異を引き起こしてしまうが故に思う様に力が出せず苦戦しているらしい。
「やっぱり……私も行くべきかな?」
そう呟いた直後、ゾゴーリのロボットが操る金属の塊の欠片が飛んで来て、ミューズは咄嗟にハルバードからシールドを展開して防いだ。
「いや、ここを守れるのは私だけ、自分の役割を忘れちゃダメだ!」
その後も飛んで来る金属の塊やミサイル、そしてビームから瓦礫の中の京助の体を守り抜き、京助の復活を待ち続けた。
『いい加減に……くたばれぇぇぇぇぇぇぇっ‼』
苛立ったゾゴーリの叫びと共にロボットの肩と背中の突起から赤黒い稲妻が噴出し、ありとあらゆる周囲の物体を粉砕し始める。
「うっ⁉」
この死徒の力が凝縮した赤い稲妻だけは防ぎようがない、ミューズは腕を広げて自ら盾になろうとした。
「……あれ?」
いつまで経っても激痛や衝撃がやって来ず、恐る恐る目を開けると、自分の周囲にドーム状の黄金のバリアが張られていた。
「これは……何?」
『何だこれは! 誰がやった!』
顔を上げると前線で戦っている者達にもそのバリアが張られており、ロボットの攻撃から守られているではないか。
「皆の所にも……あっ!」
どこかから放たれた空中でいくつもの金色の光が収束し、徐々に京助の手に向けて集まっていく。
「京助……」
「呼んだか?」
金色の光の粒子を纏った半透明の京助が奏音の隣に現れ、嬉しさのあまり反射的にヘルメットを解除した。
「京助!」
「心配かけたな、俺は大丈夫だ。最後の戦いを始めるために少しばかり協力してくれ」
そう言って京助は右手から黄金の光の束を発し、それらはクインテットと三姉妹、そしてカプリースの右腕に収束していった。
「え? ナニコレ?」
「いきなり出てきたんだけど……」
「これ……アウルレットじゃね⁉」
最後に京助は奏音の右腕を取り、直接アウルレットを送って取り付けた。
「これを通して、お前達のエネルギー俺に送られる」
「これを使えば、京助は復活できるんだね?」
「復活? いいや、もっとすンげぇ事を起こしてやるよ」
「ホントに?」
「ああ、見てな。それじゃ頼むぜ」
京助が消えた後で、ミューズは皆の方へ駆け寄って右腕を差し出した。
「ねぇ、これって?」
「京助が私達に託してくれたんだ、私達のエネルギーを京助に送るの!」
「これを使えれば送れるの?」
「どーやって使うんだよこれ……」
「京助がやってる通り使えば大丈夫なはず」
「成程ね……考えたな」
カプリースがアウルレットをつけた右腕を差し出し、それを切っ掛けに皆も右腕を突き出して、まるで円陣のような格好となる。
「やろう、私達が京助を助けるんだ!」
奏音の宣言と共にブレードが展開し、皆同時に腕を掲げてから叫んだ。
「翔来ッ‼」
九人のアウルレットから同時に黄金の光の束が放出され、京助の体へと降り注ぎ、開かれた手が光を掴むように握られた。
「来た来た来た来たァ! すげぇエネルギー量だ!」
友人や自分の保護者達から送られてきたエネルギーが、京助の周囲に渦を巻く。
「それでは……始めましょう!」
「おう……ハァァァァアアアアアアアッ!」
自分の周囲を渦巻く黄金の光を自分の目の前に収縮させると、ありったけの力を込めて圧縮して眩い光を放つ球に変える。
「次は……こいつだ!」
京助は右腕にライジングアウルレットを、左腕にゼロアウルレットを出現させてそれぞれブレードを展開すると、エネルギーが凝縮された球体に両腕を突っ込んだ。
「うぅっ……こいつぁ……トンデモねぇエネルギーだ!」
凄まじいエネルギーが京助の顔の真横を駆け抜け、それに構わずより深く手を突っ込んでいく。
「全部全部……受け止める! こいつは皆の! 思いの集合なんだ‼」
やがてそのエネルギーを受け止め切った京助は、両手のライジングアウルレットとゼロアウルレットを確認する。
「最後の仕上げです」
「ああ、上手く行ってくれよ」
双方のアウルレットを念力で浮かせて分解すると一つに合成し、全く新しいアウルレットを形作っていく。
「……出来た!」
金と黒、そしてオパールを思わせる七色の輝きを放つ乳白色のパーツで構成されたアウルレットを手に取ると、秘められた力の一部が漏れ出したように京助の周囲に風が吹き荒れる。
「すげぇな……ハハッ……こんなの初めてだぜ」
「怖気付いたのですか?」
「いいや、楽しみなんだよ」
新しいアウルレットを取り付けた京助は、自分の体に駆け巡る膨大な力を感じ取った。
「無限の可能性を……掴み取る!」
手を翳してブレードを展開すると、莫大な力が解放されて次元の壁を次々と突き破り始める。
「無限の未来へ! 今飛翔び立つ! 無限……翔ッ来ッ‼」
京助の姿が眩い光となって高次元の彼方に昇って行った。
「……あっ! 見てください!」
ジェサムが指した先を見ると、瓦礫の中の京助の腕が光に包まれて消えていくのが見えた。
「京……助?」
復活より凄いものを見せると宣言していたが、それがこれなのだろうか。
『フッフフ……ハハハハハハハ……アハハハハハハ! 何やらしていると思っていたら何も起こらなかったようだな!』
今のゾゴーリの表情が手に取るように脳裏に浮かび、カプリースは紅蛇を握り締める。
『もはや全ての手段は断たれた……もはやこの地は私の物!』
目下の九人など今すぐに潰せると言わんばかりの宣言に、ミューズはヘルメットの中で歯軋りする。
『終わりだクインテット……もはや希望は潰えた!』
「違う!」
どこからか聞こえた声に振り向くと、そこから徐々に朝日が昇ろうとしていた。
『マグナアウル⁉』
「希望は残ってるぜ……ここにな!」
昇り行く朝日を背にし、光り輝く新しい姿のマグナアウルが現れた。
「おお!」
「復活した!」
「ただの復活じゃない……マグナアウルを進化させたんだ!」
新しいマグナアウルは、兎に角派手であった。
七色の光を反射する乳白色の装甲をベースに、金と黒の外装が覆う一目でより強くなったとわかる姿になっていた。
『バカな……いかに超能力者と言え、あれだけやれば確実に死ぬ筈だ!』
「バカめ、あれしきで死ねるかってんだ。お前みたいな奴が居る限り、俺は何度でも強くなって蘇るのさ!」
『貴様は……何度私の邪魔をすれば気が済む!』
「何度でもな、何故なら俺は!」
地平線から出て来る朝日に照らされて眩い輝きを放ちながら、新しいマグナアウルは名乗りを上げた。
「無限の可能性と未来の化身にして……夜に終わりを告げる者! マグナインフィニットアウルだ‼」
京助は肉体の再構成に成功しただけでなく、皆からのエネルギーと二つのアウルレットを利用して次元上昇を果たし、無限をその名に刻んだ新しいアバターを呼び出したのである。
『うぅ……えぇいっ! 名前が変わったとて関係ない‼ もう一度お前を殺すまでだ!』
「始めようか、これで最後だ‼」
その宣言と共にマグナインフィニットアウルはゆっくりと歩き出し、ゾゴーリは四本の腕をコンソールに乗せる。
『ウオオオアアアアアアアアアッ! 死ねぇぇぇぇぇええええっ!』
ゾゴーリは雄叫びを上げながら金属の塊を差し向けるも、マグナインフィニットアウルは軽く腕を振るうだけで、全ての金属の塊が消え失せてしまった。
『消し去っただと⁉ だったらコレだッ!』
「うぐうううっ……ああああああああああっ!」
クドゥリの絶叫と共にロボットのモノアイと頭部の角から死徒の力が混じった赤黒いビームを放つも、マグナインフィニットアウルに着弾する寸前に曲がって空へと消えてしまった。
「すぐそっち側に行くから大人しくしてろ」
そんな宣言と共にゆっくり歩くマグナインフィニットアウルが徐々に巨大化し始め、ゾゴーリのロボットの前に着く頃は全く同じ大きさになっていた。
『なんだ……お前は何なんだ⁉』
「言っただろ、無限の可能性と未来の化身ってな」
巨大化したマグナインフィニットアウルの拳がゾゴーリのロボットを殴りつけて吹き飛ばし、ソリッドレイの楔を投げつけて装甲の一部を破壊する。
『このっ! だあああああっ!』
肩と背中の禍々しい突起から赤黒い稲妻を、更に装甲各部に備わったミサイルを放って変わらずゆっくりと歩いてくるマグナインフィニットアウルへと次々攻撃を仕掛けるも、マグナインフィニットアウルはそれらを発生させた時空の歪みに放り込み、蹴り飛ばして空中に浮かせたロボットへと返却して叩き込んだ。
『クソッ……厄介な奴だ!』
ゾゴーリのロボットは背中の突起を広く展開してエネルギーの翼を展開し、足のジェットを起動して空中へと逃げ出した。
『必ず地球を……』
「オイ、何勝手に終わらせて逃げようとしてんだ」
地球外へ脱出しようと目論むゾゴーリのロボットを思い切り殴り飛ばし、マグナインフィニットアウルは背中から黄金と白に輝く二対の翼を展開して空を翔ける。
『おのれおのれ……おのれマグナアウルゥゥゥゥウウウウウウッ‼』
ロボットは自分の周囲に赤黒い拳の実像を発生させて後方へ飛ばすも、マグナインフィニットアウルはその全て青い炎に包まれた黄金の剣や槍を飛ばして弾き、羽角と鶏冠から発せられる波打った光線で反撃する。
「アウルカリバー‼」
片刃の大剣からソリッドレイの斬撃を飛ばし、ゾゴーリのロボットは出力全開の赤黒い稲妻で辛うじてそれを撃ち落とし、ようやく改めてマグナインフィニットアウルと戦うべく振り返った。
『殺す! 殺してやる!』
ゾゴーリはショックブレードを更に禍々しく改造したかのような武装を展開し、赤黒い光の刃を形成する。
「やっと正々堂々やる気になったか! ハァァァァァアアアアアアアアッ‼」
『貴様などこれしきで倒せるという事だ!』
マグナインフィニットアウルとロボットが切り結び、数多の雲を蹴散らしながら壮絶な戦いを繰り広げる。
『邪魔ばかりして……なぜそこまでして私に歯向かう!』
「ここは俺達の家だからだ! 俺達の家と……その安寧と平和がそこにはある! それを脅かすような奴には絶対に渡さない!」
『いいや! ここはいずれ私のものになる! そしてこの地球の全てが! 私のものになる!』
「だったら放っておくワケには行かねぇな! 必ずお前を倒す‼」
七色の光を纏う刃と、赤黒く不気味な輝きを放つ刃を激しく打ち合わせ、マグナインフィニットアウルは隙を突いて刃を斬り落とし、四枚の翼の羽撃たきで大きく距離を開けた。
「アウルブラスト‼」
アウルカリバーをアウルブラストに変化させると、がら空きになったロボットの胴体にありったけのソリッドレイの弾丸を叩き込む。
『うううううっ! このっ! このっ! このおおおおおおおっ!』
「がっ! ううっ……あああああああっ! うおおおおあああああああああっ!」
ソリッドレイの弾丸を胴体に受けたゾゴーリは、武装を展開してレーザービームを放って対抗する。
「胸糞悪ィ……ロボットだ‼」
アウルブラストから拡散弾を放ち、ロボットの胴から放たれるレーザービームを押し切る。
『だったら……これだ!』
レーザービームを無効化すると見るや、ロボットは翼にもなっている突起から赤い稲妻を放つも、マグナインフィニットアウルは片手でそれを受け止める。
『出力全開ッ!』
受け止めた電撃を弾くと、マグナインフィニットアウルは腕を広げて黄金の翼の羽を飛ばして防御する。
「飛んでけ!」
再生成した黄金の翼とその下の白い翼で羽を飛ばし、空間爆縮で機体に大ダメージを与える。
『ああああっ! ぐうぅっ! クソッ! クソッ!』
「ハアアアアアアアッ!」
マグナインフィニットアウルは短距離ワープを重ねて速度を上げ、タックルで思い切り吹き飛ばしてし、マグナインフィニットアウルはすかさず畳み掛けるべく右拳にエネルギーを凝縮する。
「地球から……出て行けェェェェェェエエエエエエッ‼」
強烈なアッパーカットによってロボットが空中高くに打ち上げられ、余剰エネルギーが空間に穴を開けてゾゴーリのロボットを地球外に追放してしまった。
『ううううおおおああああっ!』
地球より何億光年離れた無限に広がる宇宙空間に放り出されたゾゴーリは、急いで各部位を簡易点検と修復し、宇宙空間に耐える形態に変化させる。
『ここは何処だ⁉ ……はっ⁉ ビーバフ星系から二百ベフ先だと⁉』
急いで空間の穴に戻ろうと試みるも、そこからマグナインフィニットアウルが現れて、ロボットの頭を掴んで押し出した。
『うぅっ……貴様!』
「ここなら思う存分戦れるぜ……さぁ! 終わらせようか!」
手始めにゾゴーリのロボットを蹴り飛ばし、マグナインフィニットアウルは両拳から電撃状の光線を放ち、距離を放した所で肩からアウルウィングを取り出す。
「まずは死徒の残滓の力を……断つ!」
二つに分割したアウルウィングの銀色の刃がまるで舞う様に閃き、何度もゾゴーリのロボットを斬りつける。
「こいつで……決まりだ!」
合体して双刃剣となったアウルウィングの一閃でロボットの背後に空間の裂け目が発生し、マグナインフィニットアウルの旋回斬りでロボット全体に張り付いた死徒の残滓によって形成された装甲を引き剥がして背後にある空間の裂け目に吸い込ませ、完全に死徒の残滓の力を剥離した。
『あああっ! くそっ! 何故だ! どうなってる!』
急に死徒の残滓の力が使えなくなったことでゾゴーリは焦りながらコンソールを操作するも、今ので不調を起こしたのか、もはやまともに動けない。
『何故だ……何故動かない!』
「うぅ……くっ……千道……京助‼」
「……クドゥリ⁉」
ロボットの機構の一部に組み込まれて無理矢理力を引き出され、身体中に走る激痛で心身共に大ダメージを負っている筈のクドゥリが、なんとこちらにテレパシーで語り掛けてきた。
「今……私側からこのロボットの制御を奪った! だから……私ごとやれ」
「なんだって⁉ そんな事出来るわけないだろ!」
「今の私にできる事は……それ位しか……ない……だったら……全力でやるまで……それが……うっく……せめてもの……贖罪に……なるかは……わからないが……」
ここでようやくゾゴーリはこの不調の原因がクドゥリにあると突き止めた。
『おのれクドゥリ! よくも裏切ったな‼』
乱れた髪の中からまだ力強い光を宿す目を覗かせ、クドゥリはニヤリと笑ってから言ってのけた。
「どうせこれから死ぬんだったら……悪人一人ぐらい道連れにした方が世の為だろう? 初めて私が……真の意味で誰かの役に立つんだ」
『今までの恩を忘れたか⁉』
「私はあんたのものなんだったら……共に地獄に堕ちようじゃないか。なあ、ゾゴーリ・ジャガック?」
心底ゾッとした表情を浮かべ、ゾゴーリはコンソールのレバーをめちゃくちゃに動かし始めた。
『クソッ! クソクソクソクソ……このっクソ共がぁっ!』
いくら悪罵を垂れ流そうが、自分の言う事を聞く部下はもういない。もはやゾゴーリは、自らの行いの代償を支払うのを待つばかりである。
「アウル……カリバーッ‼」
クドゥリの思いを受け取ったマグナインフィニットアウルは、アウルカリバーを取り出すと各部を変形させて、七色の輝きを放つ両刃の剣を構える。
「夜は終わりだ」
マグナインフィニットアウルの背の二対の翼がより大きく広がり、翼を動かしてロボットと自分自身を異次元空間へと送り込んだ。
「そして故郷に……全ての人に」
ソリッドレイの刃を構え、マグナインフィニットアウルは最後の一撃を放った。
「希望の朝を」
刃を振り抜くと同時にゾゴーリのロボットは時空操作によって何度も切り裂かれて細切れになり、ゾゴーリの絶叫と共にバラバラになったロボットの欠片ごと異次元空間を収縮させ、ついに全ての戦いを終わらせたのだった。
刃を振り抜いた姿勢のまま、しばらくマグナインフィニットアウルは動かなかったが、やがて全身が分解を始めて収縮して京助の姿に戻った。
「……ハァ」
無限に広がる宇宙と、その中で輝きを放つ星々の光が、京助の目に飛び込んでくる。
「宇宙って……こんなに綺麗なんだな」
誰にも届かぬ声でそう呟くと、ふと自分の肩に暖かい感触があった。
「そうだな、宇宙は綺麗だ」
「出来る事なら、生身の目で見たかったけどね」
懐かしい声に、京助は思わず笑みが零れる。
「やっぱり……二人とも見ててくれたんだね」
父の万路と母の美菜は、まだ京助の中に留まっていたようだ。
「よくやったぞ京助、お前は地球を救ったんだ」
「地球だけじゃないわ、地球にやって来たいろんな星の人達の命もね」
我が子が成し遂げた偉業を見届けた二人は、大変誇らしそうであった。
「地球を救っただけじゃない、お前はもっとすごい事をやったんだぞ?」
「もっとすごい事?」
「ええ、地球人類初の快挙よ」
地球人類初の快挙と聞き、京助は目を輝かせて父と母の方を向く。
「俺そんなすごい事やったの?」
「たったさっきね」
「お前は、神々の領域に純粋な地球人類として初めて到達したんだ」
「えっ⁉ じゃあさっきので……俺次元上昇にも成功したの?」
一人の超能力者としてより強くなるのは嬉しい事だ、それも同種族として初めての快挙ならば誇らしい。
「お前は凄い奴だよ、とっくに俺を追い越してる」
「あなたのお母さんになれた事……私はとても誇らしく思ってるよ」
最大級の賛辞の言葉に、京助は照れ臭くなって目を逸らす。
「そうだ、言っておくことがある。これからお前は、宇宙そのものと契約してより広い世界を見る事が出来る権利を与えられる」
「こんな景色をいくらでも見れるし、あなたの背中の翼があれば、好きな所に行くことが出来るわ。なんだって好きに選べるのよ」
確かにそれは魅力的だ、こんなに宇宙が美しいとは思わなかったし、そんなものが見放題だと思うと非常に心惹かれる。
だが京助は首を横に振って微笑み、二人の方を見て言った。
「確かにそれも魅力的だけどさ……俺には帰る場所があるから」
「そう……京助ならそう言うと思ってたわ」
「それでこそ俺の息子だ」
「俺さ……二人が居なくなって辛いし寂しかったけど、友達が沢山出来たんだ。それだけじゃない、彼女も仲間も出来て……とても充実してるよ。これからは皆となんとかやっていくから……だから心配しないでほしい」
寂しそうに笑いながらそう言う京助に、万路と美菜は涙ぐみながら両手を広げた。
「じゃあ……最後にお父さんとお母さんにハグして」
「今度こそ、お別れだ」
千道一家三人で抱き合い、遥か彼方の宇宙空間で本当の餞を交わし合った。
「……」
気が付くと両親の姿が消えていた。
もう大丈夫だと感じたからだろうか。
「さよなら……ありがとう」
京助は涙を拭い、背中に四枚の翼を展開してから目の前を見た。
「トト」
『はい』
「帰ろう!」
『ええ!』
この翼があれば、きっと何処にでも羽ばたいて行けるだろう、だからこそ行くべき場所がある。
そこはきっと、気兼ねなく過ごすことが出来、皆が待つ日の当たる故郷なのだ。
空中に消えたマグナインフィニットアウルを待ち続けて数分後、突如青空の一部が宇宙空間と繋がり、皆は驚いて目を見開いた。
「これは⁉」
「どっちだ?」
「おぉ~い!」
背中に四枚の翼を生やした京助が、皆の方へと向かって飛んでくる。
「おお!」
「帰って来た!」
ミューズは真っ先に京助の方へ走り、スーツを脱ぎながら手を広げた。
「京助!」
「おっと! ハハハハ!」
着地しながら奏音を抱きしめ、京助はそのままの勢いで口付けを交わす。
「おぉ~! アツアツだねぇ~」
「これが……キスってやつですか」
互いが生きている事を実感した二人は唇を離すと、奏音は赤くなりながらも京助の方をまっすぐ見て伝えた。
「おかえり」
「ああ、ただいま」
他の皆もスーツを脱いだりアバターを解除して素顔のまま京助の元へ集まり、仲間にして友人達の顔を見た京助は腕を上げて宣言した。
「俺達の勝ちだ‼」
懸命に戦い、勝利を勝ち取った少年少女達を祝福するかのように、朝日が降り注いでした。
二週間後。
真鳥市の観光スポットである展望台で、京助と奏音はベンチに座って往来の人々を眺めていた。
「なんだか……この前までが夢みたい」
「だな」
ゾゴーリ・ジャガックの死亡によって宇宙的犯罪組織ジャガックが事実上壊滅した事で、真鳥市を脅かす脅威は完全消滅した。
それに伴って開かれた地球安全保障会議にて〝洗濯機〟の発動が決定。一般人に対するマグナアウル、クインテット、そしてジャガックに関する全ての記憶と記録が削除・改変される事となった。
つまり今ここで往来を歩いている人々はマグナアウルやクインテットの事を知らず、ジャガックによって日々が脅かされていた事も覚えていないのだ。
「みんなみんな、あの日の事を覚えてないんだね」
「道歩けばサインをねだられた日々から、謎の鳥人間と忍者軍団に逆戻りだな」
あの激動の戦いの日々は、もう自分達を含めて限られた人々しか覚えていないのだ。
「まあ、それが一番じゃないか? あんな事知らないで生きていく方がよっぽどいいじゃん」
「全くだよ、あんなことあったっていい事ないしね」
京助はニヤリと笑って奏音を見てから異を唱えた。
「そうかぁ? 全くってワケじゃないだろ?」
「えぇ? 良かったことある?」
「まず進路が決まった事だな」
「あぁ~……確かに」
京助達六人は、今回の功績が認められ、ウィルマース財団と提携している大学の進学が認められた。
「大学だけじゃなくて就職先も決まったもんね」
「しかも世界的大手企業だからな。それだけじゃなくてサイにも会えたしさ、それに……ヒヒッ……また貰える金が増えた……ヒヒッ……」
口を手の甲で押さえて体を震わせながら引き笑いするあたり、京助はよっぽど収入が増えた事が嬉しいのだろう。
「ま……まあ私達の方も友達増えたしね」
「ああ、あの三人元気でやってるか?」
「うん、この前皐月と明穂ちゃんと麗奈ちゃんがまとキューに連れて行ったってさ」
「楽しんでくれてると良いな」
本人が望んだこととはいえ、京助はクドゥリの命を奪い、自分と同じ思いをガディとザリスとジェサムにさせてしまったことを悔いていた。
だがそんな京助を三人は許し、関係が拗れることは無かった。
「もうあの三人はあんたの選択を怒ってないと思うよ。明穂ちゃんに聞いたら『お姉様はその身で代償を支払った、そんな選択をしたことを誇りに思います』って言ってたし」
「なら良いんだけどな……しっかし俺の周りにゃ女子ばっかだな。肩身狭いぜ全く」
「浮気したら死刑だから」
「しねーよ、こんな世界一の美少女と付き合ってて誰が浮気するもんか」
「ホントにぃ?」
「しないしない、する訳ない」
「なら良いんだけどさっ」
「付き合うと言えばさ、幹人と木原っちってまだ続いてるらしいよ」
「嘘ぉ⁉ 切っ掛けってジャガックだったのに?」
これには奏音も目を丸くして大声を出し、京助は思わず唇に指を当ててシーと言い、奏音は両手で口を塞いで周囲を見回す。
「馴れ初めは交通事故って事になってたけどさ、結構順調らしい。この前惚気られたよ」
「そっかぁ……これもいい事かな?」
意外とジャガックの侵攻が切っ掛けで起こった良かった事は多いらしい。
「まあでも一番良かった事は……お前に全部話せたことかな」
そう言う京助に奏音はしみじみと頷いて返した。
「私達、前よりもっと強く結ばれた感じがするもんね」
「ああ、本当の意味で結ばれたと思う」
すっかり平和になった街並みを眺め、京助と奏音は互いに微笑んだ。
『オゥーイ』
突然二人のスマホから着信があり、見ると林檎からであった。
「何? 事件?」
『そそ、緊急集合かかったから来て』
戦いは終わった、だがしかし地球を脅かす脅威はまだ完全に消えたわけではない。
だからこそ誰かが立ち上がり、その脅威を取り除いて平和を守らなくてはならない。
「了解、奏音と一緒だからすぐ行くよ」
『うぃー、待ってっからね』
通話を切ると、奏音が上目遣いのキラキラした瞳でこちらを見ていた。
「やめろ」
「なに~?」
「お前が言わんとしてることは分かる。だからそんな目で見るのやめろ」
「じゃあ言って良いの~?」
「言ったら聞かなくちゃいけなくなるだろ!」
「分かってんじゃ~ん。それじゃよろしくね、京助」
これには明らかに語尾にハートがついている。
京助は大きく長く溜息をついて降参し、その場から立ち上がった。
「これな、バレないようにするの大変なんだぞ」
「でも気持ちいいじゃん」
「そうだけどなぁ……声出すなよ?」
京助と奏音は人が居ない場所に向かうと、数秒後に凄まじい勢いで奏音が空中に射出され、その後で背中から黄金のサイコエネルギーで形成された翼を生やした京助が飛び立って奏音の両手を取ってから、より高い所へと羽ばたいていく。
「フゥーッ! アハハハハハッ! 最ッ高ッ!」
「ハハハッ! やっぱ空飛ぶのは最高だよな!」
二人は手を取り、足元の真鳥市を見下ろしながら風を切って進んでいった。
これから何があるのか、何が起こるのか、それはまだ分からない。
だがきっと、この少年少女たちは未来を向いて進み続けるだろう。
何故なら彼らには不可能すら可能にする程の、無限の可能性が秘められているのだから。
仲間たちと支え合いながら、これからも自分の人生を全身全霊で駆け抜けていく。
そんな生き様を現すかのように、青空に黄金の翼が生み出す軌跡がひとつ、駆け抜けていくのであった。
完
To Be Continued?
いかがでしたでしょうか?
これにて青春Double Side完結です。
一年と少し、お付き合いいただきありがとうございました。
拙い所もありましたが、次回作に生かして行こうと思います。
ちなみに本作はシェアドユニバース作品となっておりますので、他作品を読んでいた時、もしかしたら京助達に再会できるかも?
感想コメント、Twitter(現X)のフォロー、友達へのオススメもよろしくお願いします。
それではありがとうございました。
これからも私の作品をよろしくお願いいたします。




