2品目 チョコレートケーキ殺人事件
そういえば、少し前にお土産で貰ったチョコケーキが冷蔵庫にあったな〜食後のデザートにしよ〜
もう少しでクリスマスというこの時期に殺人事件の現場に足を運んでいる自分はつくづく不幸なものだと思う。助手席の澤田は携帯で誰かにメールしている。もっぱら娘への謝罪メールだろう。
「はぁ…今年はちょっと高めのケーキを買って帰らないとな…」
「娘さんですか?」
「あぁ…一緒に過ごせそうにないって言ったらじゃあ美味しいケーキ買ってきてってな…ははは、嫁に似ててついついワガママ聞いちまう。」
「いいじゃないですか。俺なんてクリスマス一緒に過ごす彼女もいないんすよ〜」
「はっはっはっ、大丈夫だろ、松尾ならいい人捕まえるわ。」
「その根拠が聞きたいですね〜」
澤田はポケットからガムを取りだし食べ始める。
「神田からのメールで今回もアイツみたいだ」
「また、ですか…」
「あぁ…もうすぐでクリスマスってのに殺人なんて、寂しいやつだよ。」
そう話しながら車を運転していると、現場であるケーキ屋についた。
中に入ると神田がおり、店の中に充満する砂糖の甘い匂いが鼻腔をくすぐる。神田に案内され、ケーキ屋の奥にある厨房に入る。厨房の台にはケーキ作りに使うのであろう道具たちが置かれており、ケーキを作る準備は万端と言ったところだった。
「これです。」
神田が指さしたのは、業務用の冷蔵庫だったら。冷蔵庫の蓋を開けると中に、チョコレートを被った男性の遺体があった。
「ここのケーキ屋のオーナーである女性の兄だそうです。それと、またこれが…」
神田が例の封筒を渡してくる。やはり封筒には『チョコレートケーキ』と書かれている。
「今回はお菓子か…」
「クリスマスが近いからですかね…読んでみます。」
封筒を開けるといつもの3つ折りの紙。開くといつもの小説のような文章。
『彼はチョコレートケーキを作りたかった。しかし、彼の父はそれを許さなかった。彼の父は男はケーキのような甘いものは食わないと彼にケーキを食べさせることは無かった。彼はいつも母が妹たちのおやつに作るケーキを見ていた。母も父に怒られたくないと彼にはケーキを食べさせなかった。だが、作らせてはくれた。ケーキを作る時だけが彼の至福のひとときだった。特にチョコレートケーキを作るのが好きだった。手間と時間がかかるチョコレートケーキを作る日は父がいない日と決まっていたからだ。しかし、幸せは長く続かない。母が病気になって死んだことで父は前よりも彼に手をかけ、彼はチョコレートケーキを作れなくなった。妹がお菓子を作っている姿を見ながら父の目の前で勉強をさせられる。そんな日々を送って彼は一流企業に入った。パティシエになった妹を羨ましく思いながら。死ぬ前、彼は私に教えてくれた。チョコレートケーキは彼にとって自由の象徴であり、数少ない母との思い出であると。私は彼の作ったチョコレートケーキを食べ、彼をチョコレートケーキにした。彼はきっと今幸せだろう。まぁ、もう幸せという感情も抱けないだろうが。』
「クソ…」
「さっさと捕まえないといけませんね…」
神田に封筒を渡し、現場の調査を始める。
次回は7月22日に投稿します!




