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冒頭だけシリーズ  作者: 江菓
11/12

おまけ② 神田の平日

こちらは本編より結構前のエピソードだと思ってください。おまけ①よりも少し前です。

朝、アラーム音で目覚める。スマホを取り、アラームをとめ、時間を確認すると、6時ピッタリだった。

「松尾さんが起きるまで2時間。」

何着もある同じスーツの中から適当にワンセット取り、着替え、顔を洗う。エプロンをつけて、今日のお昼ご飯のお弁当をつくる。

「松尾さんはなんでも食べてくれるから、お弁当のバリエーションが多くて助かるなぁ。」

フフフっと松尾さんにあげる気持ちでお弁当を作る。自身のお弁当と、松尾さんにいつかあげるお弁当を作って満足する。

「あ、まーたふたつ作っちゃった…」

松尾さんのこと考えながら作るとついついふたつ作っちゃうんだよね〜。これが愛?フフフすっごくいい…頭の中では松尾と並んでお弁当を食べる自分の姿が再生される。

「松尾さんが私の作った料理を食べる…それが松尾さんの血肉になる…あぁ…なんて幸せなんだ…」

心の底では松尾さんが自分の作った料理を食べてくれることはないと分かってはいるが、やはり夢を見ることはいくらやってもタダ。夢はいっぱい見てこそ人生の最高の隠し味。ニコニコと笑いながらお弁当が常温になるまでラップをする。

「はぁ、やっぱり料理は楽しいな〜おっと、松尾さんが起きるまであと1時間。さっさと朝食を食べなければ。」

お弁当を作った時にでたおかずの残りと食パンを1枚チンし、新聞を読みながら食べる。飲み物はもちろんコーヒー。ペラペラと新聞をめくる。最近の殺人事件はよくあるナイフで刺したとかそんなもので面白みに欠ける。

「最近は面白い事件がないな〜。というか、人を殺すんだったら上手くやれよ。低脳は人を上手く殺すことも出来ないのかよ。はぁ…」

ズズズッと最後のコーヒーを飲み干す。新聞をゴミ箱に捨て、朝食の片付けをし、洗面台で歯磨きをする。笑顔の練習を鏡でしたあと、お弁当を持って、駅に行った。

電車に乗ると、少し先の座席に松尾が座っている。

(計算通り…松尾さんを朝から見れるなんて…フフフ…)

松尾をチラチラと観察しながら、降りる駅まで待つ。途中、松尾が近くにいた体調の悪そうな男子高生に席を譲っていた。

(はぁ…やっぱり松尾さんはいい人だなぁ…体調が悪い人に席を譲ってあげるなんて…そんなところも大好きですよ…フフフ…)

電車を降りる群衆に紛れ、松尾の後を追って警視庁に入る。松尾とはエレベーターで別れてしまうため、松尾の背中を見送り、自分の場所に行った。

自分の机に座ると、横の机で寝ている山本の頭にお弁当の片方を叩きつける。

「いって!!!」

「ほら、今日の弁当。」

「おっ、あざす笑」

頭を擦りながら山本は笑顔でお弁当を受け取る。ここに来てからこの同期の山本へ毎日お弁当を作ってやっている。松尾さんのために作った弁当だが、誰にも食べられずに捨てるよりはマシだと思って独身彼女なし生活能力ゼロの山本という男に渡している。

「いやぁ〜めっちゃ嬉しいです。」

「ハイハイ。」

「そんな無表情しなくてもいいじゃないすか!」

「あぁすまない。無意識だ」

「酷くないすか!?俺が面白くないみたいな!」

「私としては全く面白くないがね。」

「えぇ〜…」

あからさまにしょぼんとする山本。こんな男と話す暇があったらまだ仕事をした方がマシだ。しかし、明日までの仕事はもう終わらしており仕事はほぼゼロだ。山本の机の上は資料でいっぱいだが手伝いは絶対しない。

「なぁ神田!」

「何」

「そんな面倒くさそうに返事するなよ〜」

「用件を言え」

「ヘイ…この資料を元に戻してきて欲しいんだよ〜」

そう言ってドンッとこちらの机に置かれたのは分厚いファイルが3冊。

「なんで私が…」

「頼む!これ1個下の階の資料部屋から取ってきたんだけど、まだこっちが終わりそうになくて…」

山本はあははと頭を掻きながら山のようになった資料を見せつけてくる。

「頼む!神田、下の階に尊敬してる先輩いるんだろ?その人見に行くついでに返してきてくれ!」

顔の前で手を合わす山本。確かに下の階へ行けば松尾さんの様子を見れるし、今ちょうど暇だ。しかも、1階下の資料室は資料の量が多く、戻す場所がわからず1時間かかったという人もいる。資料室に返しに行けば最低1時間は松尾さんを見れる!!

「仕方ないな…」

「ありがとう!!」

助かるよ!と山本はこちらに資料を押し付け、元の作業に戻った。資料を持って一個下の階に向かった。

資料を持って一個下の資料室に着いた。資料室なんてだいたいの場所を覚えている。返すのには5分とかからない。資料のファイル3つを元の場所に返す。

「よし、今から松尾さんの観察だ…」

資料室から出て、松尾さんが見える死角に隠れる。この死角はわざわざ神田が作った死角だ。この場所に隠れていてバレることは無かった。

(あっ松尾さんうとうとしてる…可愛い…)

松尾はうとうとして、横にいた澤田に起こされている。澤田は持っていた缶コーヒーを松尾に渡している。

(あっ、あのコーヒーブラックだ…)

松尾はぺこりと礼を言って、そのコーヒーを飲む。コーヒーを飲んだあと、松尾はゲホッと咳き込む。澤田はそれを見て、笑いながら眠気覚ましにはピッタリだろ!っと言っているのが聞こえる。

(松尾さんはミルク1杯にシュガースティック3本だぞ…澤田め…)

澤田を睨むが、澤田は変わらず仕事をしている。松尾もコーヒーで目が覚めたのか仕事を再開した。

(あぁ…仕事してる横顔もかっこいい…)

松尾の顔をじっと見る。舐めまわすように見る、ただそれだけなのに神田は幸せな気分になる。

(愛を知らない私が人を愛す日が来るなんて…松尾さんに出会わなければ知りえなかった感情が気持ちいいほどに体を侵食してくる…)

心の底から何かが湧き上がってきて、心を満たしていく。これが愛おしいという感情なのだろうか、これが愛しているという感情なのだろうか。湧き上がってくるこの気持ちをどこにもぶつけられないもどかしさがあるがそれでも、松尾への気持ちは止まることはない。

松尾さんを観察しているといつの間にか2時間が過ぎていたようで松尾さんは澤田さんとお昼ご飯を食べに行ってしまった。神田も自販機で缶コーヒーを買って自分の机に戻った。隣の席の山本は朝からあまり減っていない資料に囲まれ、まだパソコンとにらめっこしている。山本の席にゴンッと買ってきた缶コーヒー置く。山本はビクッとしてこちらを見る。

「なんだ〜神田か〜てか遅かったな〜!」

「資料を片付けたあとコンビニに行ってたんだ。これがその証拠。やるよ。」

置いた缶コーヒーを指さす。山本はマジで!?やったー!ありがとう!と受け取り、ぐっと飲む。

(警戒心がないな…すぐ殺せそうだ。)

「あっ、一緒に昼飯食おうぜ!」

「はぁ、どうせ2人とも机で食べるんだから一緒に食う必要ないだろ。」

「いいじゃんか!」

「ハイハイ」

机の上に持ってきた弁当を広げる。山本も資料に囲まれながら、弁当を開く。同じラインナップの弁当を山本は美味い美味いと言いながら食べる。当たり前だ。私が作ってまずいわけが無いと心の中で少しドヤ顔をする神田。

ご飯を食べ終わり、片付けをしていると新しい事件が起きたと速報が入った。

「えっ!また殺人事件ですか!?」

「最近多いですね…」

「神田!一緒に行こうぜ!」

「食べながら喋るなよ汚い。先いくぞ。」

「ま、待ってくれよ!」

弁当の残りを口にかきこむ山本を置いて、事件現場に向かった。

いち早く現場につき、新鮮な死体を見る。この瞬間が神田にとって松尾を観察する以外の唯一の楽しみだった。今回の被害者は、20代前半の女性だった。背中を滅多刺しにされた状態でソファに倒れ込んでいる。部屋の中は荒らされ、強盗殺人事件で間違いなさそうだ。第一発見者は女性の彼氏。今日はデートの約束だったが、待ち合わせ場所に来ず、家に様子を見に来ると鍵が開いていて中に入ると彼女が死んでいた。

(なるほど…)

部屋を見回す。カレンダーの今日の部分にはマークなどなく、女性に争った形跡はない、服もスーツのまま、化粧も落としていない。お風呂いっぱいに張られた水は冷たくなっている。キッチンの流しには2人分の食器があり、女性が倒れ込んでいるソファの下には何かのアクセサリーの一部のようなものが落ちている。

(ふむ…昨日は仕事終わりに知り合いがここに来て一緒に晩御飯を食べた…化粧を落とさなかったのは会社関係者か…それともすっぴんを見られたくない相手…言い争いになって逃げようとした所、背中を滅多刺しにされた…最後の力を振り絞って犯人のアクセサリーを引きちぎった…?)

外で震えている彼氏の方を見るとピアスが片方なくなっている。

(あぁ、犯人は彼氏か。言い争いは金銭的要求でもして彼女に怒られてカッとなったか?荒らしておけば強盗殺人になるとでも思ったのだろう。)

そう推理していると、松尾さんが入ってきた。

「あっ!松尾さん!」

「あぁ、神田か。神田も一緒だったんだな。よろしく。」

「はい!よろしくお願いします!」

「澤田だ。よろしく。」

「よろしくお願いします。」

「死体はあちらです。第一発見者は彼氏さんです。」

「ふむ…」

(ふむ…って何!?可愛すぎる!あぁ…好き!)

松尾は死体に手を合わす。その動き一つ一つを神田は目に焼きつける。松尾をちらちら見つつ、捜査をする振りをする。正直もう犯人はわかっている。こんなの答えを知っている脱出ゲームと同じだ。しかし、しっかり捜査をせずに犯人を当ててしまうと面白くないし、松尾さんとの仕事が少なくなってしまうし、松尾さんに当ててもらわないと、私が当てても面白くない。そう思い、犯人は言わずに松尾との捜査を楽しんでいると、遅れて山本が来た。先輩に遅い!と怒られている。

(馬鹿だなぁ…)

「おーいー神田ー!置いてくなよぉ!」

「うるさいですよ。もう捜査してるので黙ってください。」

「えっなんで敬語…あ、澤田さんに松尾さん!」

「君は山本か、よろしく澤田だ。」

「松尾です。よろしく。」

「はい!よろしくお願いします!」

山本は地味に澤田&松尾コンビに憧れている。それで私にベッタリと引っ付いて第2の澤田&松尾コンビになりたいのだ。

(こんな馬鹿とコンビなんて無理だけどね。)

そんなことを考えながら、捜査をしていた。

暗くなり、帰宅時間になる。松尾さんにさようならと挨拶して帰る振りをして、松尾さんの後を追って電車に乗る。松尾さんを後ろをつけて、家まで無事に見送る。

(今日は松尾さんの1週間の楽しみの晩酌の日…あぁ…いつか私がその晩酌の相手になりますよ…)

フフフッと笑って、松尾の家から自宅に帰った。

おまけ③は8月19日に投稿します!

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