表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

問2

「えっとですね……まず、湖の形や幅、森の位置、二人の関係、家の配置などは先日の問題とほぼ一緒なんですが、いくつかの追加情報がありまして――」

 私はノートにメモした新たな内容を読み上げました。

「――ある時、向かいの家に住んでいた兄が、自宅で何者かに首を絞められて殺されたそうなのです」

「それはまた……物騒な展開だな」

「……ええ。しかもこれ、かつて、本当にあった殺人事件の話らしいんですよ……」

 その瞬間、前崎さんの眉がピクリと動きました。

「ってことは、昨日の問題はそれを改変したものなのか?」

「そう、なりますかね……」

「とんでもない教授だな」

 これには私も同感です。前崎さんはやれやれと首を振りました。

「――まあいい。それで?」

 私は再びノートに目を落とします。

「はい。えっと、玄関の鍵は開いていましたが、遺体に争ったような形跡はなく、警察の調べで、容疑者は三人に絞られました。湖を挟んだ反対側に住む弟。弟の家から見て左手の湖、つまり、倒したフラスコで言うところの、球体の底にあたる位置で釣りをしていた男性。そして右手の森の中でキノコ狩りをしていた男性です。弟の話によりますと、その前日、彼は兄の家で一緒に談笑した後、今度は自らの家に場所を移して、お酒を飲みながら時間を過ごしたそうです。二人が一緒に兄の家から弟の家へ行ったのは、釣り人が見ています」

「つまり、手前の弟の家から見て、左のルートを通ってきたというわけだな」

「はい。右のルートにある森は、前回のルールと違って、迷うことは無いのですが、ただ、兄だけは花粉アレルギーを持っていたため、その森を通ることが出来なかったそうです」

「……なるほど。だから二人で遠回りになるルートを選択したわけか」

「ええ。その後、忘れ物をしたということで、弟だけが兄の家に向かいました。この時、アレルギー持ちの兄は弟の家で待っていたため、近い右のルートを使って往復したそうです。その姿は、森でキノコを採っていた男性が目撃しています」

 前崎さんは下唇に指を沿わせ、状況を真剣に考えているようでした。私はその妨げにならないよう、端的に話を続けました。

「それから数時間して、夕方前に兄は千鳥足で自宅へ帰ったそうです。もちろん、遠回りのルートで。その時の様子も、釣りを続けていた男性が再度目撃しています。そしてその翌日に、兄が自宅で殺されているのが発見されたそうなんです。死亡推定時刻は、弟の家から自宅へ戻った直後だということが分かっていますが、翌日まで誰も兄の家を訪ねてはいないと主張しています。この情報から、犯人は誰なのか。また、どうやって犯行をしたのかを説明するのが、若狭教授によって出された新たな課題なんですが…………分かりそうですか?」

 前崎さんはしばらくの間、机の一点だけを見つめながら、考えをめぐらせていました。

「今回も湖を突っ切る事は出来ないのか?」

「やはり二人ともカナヅチで、不可能なようですね……橋のようなものもありません」

「ふむ……。因みに、キミの予想は?」

 前崎さんは前回と同じように、私の考えを訊いてきました。

「いやあ……さっぱり分かりませんよ。考えたって、どうせ当たらないだろうし」

 私は手を広げ、諦めモードで苦笑しました。

「そうかもしれないが、万に一つという可能性もあるだろ? だから一応訊いておこうと思ってな」

「……」

 さり気なく馬鹿にされた気がしましたが、私は喉元まで出かけた文句の言葉を、寸前で留めました。

「まあ、釣りをしていた人が一番疑わしいんじゃないですか? 最後に一人で歩く兄を見かけたのは、この人ですし……」

「けど、ただの釣り人に殺害の理由なんてあるのかね? 仮にあったとしても、あの教授は、そんな単純な問題を出さないんじゃないか?」

 私の推測は、やはり即座に反論されました。

「それはそうですけど……、じゃあ前崎さんはどう思うんですか?」

 すると前崎さんは頭を掻きながら、きっぱりと言いました。

「こういう場合は、一番遠い人物が怪しかったりするもんだ」

「遠いって…………え? じゃあ、弟が犯人ってことですか? いやでも無理でしょう。二つのルートにはそれぞれ人が居たようですし」

 湖も渡れません。いったいどうやって犯行をしたというのでしょうか……――?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ