問1
「――――あるところに、湖を間に挟んだ形で、二軒の家があったんです。そこには兄弟が住んで居まして、手前の家には弟、湖の向こう側には兄が、それぞれ一人で住んで居たんです。湖の形は少し特徴的で、理科や科学の実験などで使う丸底フラスコを、右に倒したような形をしているんです」
私はその絵を簡単にノートの余白へ描いて見せました。
「兄弟は、そのフラスコで言うところの、細い部分のちょうど真ん中辺りを挟んだ位置に、お家があったそうなんです」
前崎さんは足を組み、ドーナツをゆっくりと味わいながら、私の話に耳だけを傾けているようでした。
「それである日、二人は会って遊ぶ約束をしたんです。弟は午前の十時に家を出て、兄はその五分後に家を出ます。その際、二人が一番早く目的を達成するには、どうしたらいいでしょうか? というのが課題の内容なんです」
私は上手く説明出来ているか不安になりながらも、話を続けました。
「お互いの家に行くには二つのルートがあって……一つは、手前にある弟の家から見て、左に進み、湖を迂回するルートです。ただ、こちらはフラスコで言うところの、球体部分を迂回するので、兄の家に到着するまで二十分の時間が掛かるそうです。対して、右の道は、フラスコの細い部分を迂回する形なので、半分の十分で着きます。ただし、その道中には森があり、ちょうど真ん中の地点は、木々が非常に入り組んでいて、なんと九十パーセントの確率で迷ってしまうそうなのです。因みに、迷ってしまった場合は、十分のタイムロスをしてしまいます」
「それ、二人は絶対に歩かなきゃいけないのか?」
そこで初めて前崎さんから質問がありました」
「いいえ、戻るのも止まるのも大丈夫らしいです。あ、走るのはダメです」
「湖を直線で突っ切る事は?」
「それもダメです。細い部分の幅は十メートル程度ですが、橋も無い上に、二人ともカナヅチらしく、湖を渡ることは出来ません。また、歩行速度はそれぞれ全く同じとするそうです」
走れない上に、歩行速度も全く同じだなんて、なんともご都合主義な話だなと、私は思ってしまいました。まあ、問題というのは、基本、そういうものかもしれませんが。
「とりあえず、情報としては、これで全てなんですが――――」
私はノートから顔を上げると、
「――――……如何でしょうか?」
伺うように、前崎さんを見つめました――。




