第14話 オルト帝国、発展する
宴会が終わった翌日、オルト様はいなくなっていた。
だが、ゾヴァエルからの雑な置手紙があったので、状況は把握できた。
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オルト様は時間が惜しいと、すぐにここを離れることになった。
オレはオルト様についていく。
合図がわかったら知らせる。
あとは頼んだ、いい国を作れ。
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この内容を知って、私たちはその日から建国に向けて動き出した。
まずはオオクニツ・オークあらため、クロード・オークとの集落合併。
拠点はオルト様の意志を尊重し、勇者の遺産が眠るというこの洞窟を起点として国づくりをすることにした。
国を作るにしても先立つものがなければならない。
そう考えクロード・オークの精鋭と私たちの精鋭で、勇者の遺産を探すため遺跡に向かった。
遺跡はオルト様の言った通り、洞窟のとある箇所を一か月かけて掘り進めていき、そこで教わった文言を発言すると遺跡への扉が見つかった。これは全てを知るオルト様にしか見つけられない場所だと思った。
遺跡の中には、数えきれないほどの強力な守護天使がいた。
「なあ、私たちは本当にこの遺跡を攻略できるのか?」
攻略を始めておよそ三か月、私たちは勇者の遺跡に苦戦していた。
守護天使が強すぎるのだ。
そのせいでなかなか思ったように探索ができていなかった。
遺跡が広すぎるかつ迷宮のような構造になっているため、二の足を踏む日が多かった。
何よりも、ときおり現れる勇者の幻影が私たちを苦しめた。五歳の頃の勇者様、七歳の頃の勇者様、十五歳の頃の勇者様――と幻影勇者と出会うたびに勇者は成長していき、そして十歳の勇者があまりに強すぎて私たちの心は折れかけていた。
それでも諦めなかった。
すべてはオルト様のために。
クロード・オーク族の族長であるダリスタと、私は今一度気を引き締め合った。
二人三脚で攻略を進めていき――。
勇者の遺産攻略、185日目。
ついに遺産の最終地点まで到着すると、私たちは歓喜した。
そこにはオルト様がおっしゃっていた勇者の遺産があったのだ。
国の保護下で豊穣の祝福を与える神話級魔道具。
魔獣除けとなる魔道具。
勇者だけが扱えたアイテムの数々――など、数えきれないほどの遺産がそこにはあった。
すべてオルト様の言っていた通りだ。
これで、この土地に強大な国をつくることができる。
オルト帝国――いつか、そう各国へ名乗る日が来るであろう。
それまで地道に土台を作り上げ、各国への密かな侵略を開始していくつもりだ。
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勇者の遺産を攻略した――数日後のことだった。
私たちの身に奇妙な変化が起きた。
神の加護が、皆に与えられていたのだ。
我ら魔族は、魔呪が「勇者の祝福」に変わった。
魔呪の暴走がいっさいなくなり、能力もデメリットのない、まさに祝福だった。
大幅な戦力増強となり、今まで戦士だった魔族は全員がS級冒険者以上の強さを発揮できるようになった。戦士ではない子供たちも、皆が能力を制御しようと励みだし、みるみる成長していくのだ。まさに強くなるための祝福であったのだろう。
クロード・オーク族の皆々は「地福」という加護を与えられていた。
この土地にいる限り、すべてが幸運に変わる――という能力だった。
その効果は絶大で、元々疲れ知らずな彼らだったが、睡眠がなくとも活動できるだけの体力を手に入れていた。それ以外にもひとたび畑を耕せば、翌日には立派な土壌ができあがっているのだ。それ以外にも元々知力の高かった個体は、オルト様が置き土産として教えてくださった知識の数々の再現に勤しみ、つい最近「イド」と「ジョウゲスイドウ」なるものを完成させ、大幅に生活が豊かになっていった。
こうして私たちは、戦力を大幅に増強させた。
建国に必要なものが徐々に整っていき、私たちは本格的に計画を進行させた。
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建国の土台を作っていく中で、私たちは別の問題に直面した。
これから先、組織を大きくしていくと直面する――他国との衝突。
それに向けて、先んじて私たちは各国の情報収集も開始した。
これには我ら魔族の中でも情報収集の能力に長けた子らが志願し、各国へと赴いた。
その中には情報を伝達する勇者の祝福に開花した子もおり、瞬く間に情報は集まっていく。
情報が揃っていくと、私たちはあらためて驚かされた。
オルト様の慧眼は正しかったのだ。
オルト様から聞いた各国の情勢――すべてが一致していたのだ。
戦争や内戦の結果、王族や暗殺などの情報、重税による貴族の降格など、未来を知っていたと言われても納得できる状態だった。まさに神の知略と呼ぶべき能力だ。
私たちは再認識した。
オルト様にこれからもついいこうと。
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私たちは情報だけにとらわれず、各国で密かに活動を始めた。
魔族やオーク族のような苦しむ亜人の救済していき、今では千人を超える国になった。
各国で情報収集を捗らせるために商会を開き、人脈を広げていく。
同時に金を収集し、いつかの日のために蓄えも始めた。
優秀な学者を我が国へ招待し、今も「ヘイキ」の製造に勤しんでいる。
そして何よりも変化があったのが――私たちの純粋な戦力増加だ。
前提、祝福で我らは以前より強くなっている。
だがそれだけに留まらず、オルト剣術を日々学んでいる。
ときおりゾヴァエルから送られてくる文で、オルト様の剣技の一端を知り、私たちも私たちなりに体系化し、皆の訓練に落とし込んでいった。
個々の戦力でいえば、もはや周辺の国家に負ける未来は見えない。
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あっという間に、建国から三年が過ぎていた。
私たちは順調に帝国を大きくしていった。
新たにやって来た帝国民たちも、毎日笑顔が絶えない幸せな国をつくれている。
この地に来れば、魔族と蔑まれた魔呪持ちは勇者の祝福を受け、苦しみから解放される。
土地神の信仰に洗脳された亜人たちは、自由な生活を送れるようになっている。
食文化もオルト様の指示通りに発展し、今では誰もが毎日三食お腹いっぱいに食べられるようになった。学び舎も設立し、子供たちはスウガクやカガクを毎日学んでいる。
カガクとオーク族、そして招待した優秀な学者の知識が融合し、新たな武器が誕生しつつある。オルト様の知識から作られた、テッポウやテツドウなどが完成間近だ。
来たる日に備えて、私たちは力を蓄えている。
たとえ他国と衝突しようと、圧倒できるだけの武力を築く必要がある。
いつか、オルト様が役目を終えられてこの場所に来るとき――。
私たちは国をあげて、彼を向かい入れよう。
賢王として再び、我が国を導いてもらわなければならない。
いずれその日がくる。
そのために――。
「ダリスタ、ゾヴァエルから新たな文が届いた」
「おお、オルト様のご報告が聞けるとは嬉しい」
「内容はこうだ。来たる日が近づいている。オルト様は為すべき目的のため、まずは王立魔術学園の編入試験に参加される予定だ。続報を待て」
「そうか。そこで何かがあるのだな」
「王立魔術学校はカイスト王国にある学び舎だ。すでにカイスト王国には多くの同志を潜入させている、いつでもオルト様を支援できるよう、私たちも役割を果たそう」
「理解した」
ダリスタとモモッチは、熱い握手を交わした。
「それにしても、お前も随分流暢になったな」
「ああ、学ぶのは楽しいよ」
建国は順調。
あとはオルト様による革命の合図を待つだけである。




