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世界の変異




渋谷奪還作戦は、甚大な被害を出しながらも、特異知性体・魔将の討伐と、『二次核』破壊によって、一応の収束を見せた。


崩壊したビル群とモンスターの死骸が散乱する街には、依然として不気味な静寂が漂っている。


   * * *


数日後。


防衛省・地下大講堂。


日本国内のトップ探索者や防衛省の幹部、ダンジョン管理庁の重役たちが、円卓を囲んで重苦しい沈黙を落としていた。


湊は雪乃と共にその末席に座らされていた。結衣は一般の探索者扱いとなるため、別室で待機している。


「……以上が、渋谷エリアで確認された『人語を話す特異知性体』に関する報告です」


神代が、スクリーンに映し出された魔将のシルエットを前に、静かに説明を終えた。


「単なる破壊衝動ではなく、明確な意思と戦術を持ち、魔法を操るモンスター。それがこの日本で確認された事実は、我々のダンジョンに対する認識を根底から覆すものです」


ざわ、と会場がどよめいた。


「あり得ん……。モンスターがなぜ知性など……」


「新宿の『九尾』といい、この魔将といい、ここ最近のダンジョンに我々の予想を超えたなにかが起こっている……」


幹部たちが不安げに言葉を交わす中、神代はさらに重大な事実を口にした。


「異常は、日本だけではありません」


スクリーンが切り替わり、世界地図が映し出される。


アメリカ、ロシア、中国、イギリス……主要なダンジョン保有国の首都が、赤く点滅していた。


「現在、世界各国のダンジョンでも、同様のモンスターパレードと『特異知性体』の出現が報告されています。……特に深刻なのは、イギリスです」


神代の声が、一段と重くなる。


「数時間前、イギリスのロンドン・ダンジョンから、魔将と同等……あるいはそれ以上の力を持つ知性体が出現したという報告を最後に、イギリス政府および現地の探索者ギルドとの通信が完全に途絶しました」


「なっ……!?」


湊は思わず息を呑んだ。


通信途絶。それはつまり、イギリスの中枢がダンジョンのモンスターによって完全に陥落した可能性が高いということだ。


「世界は今、未曾有の危機に瀕しています。知性体たちは、明らかに我々人類を『殲滅』する明確な意思を持って行動している」


神代は円卓を見回し、最後に湊へとその隻眼を向けた。


「この危機を乗り越えるため、国は戦力の再編を行うことを決定しました。……先の渋谷防衛戦で戦死した『金剛』の空席を埋め、新たな『七星』を任命します」


会場の視線が、一斉に湊へと集まった。


「天谷湊。新宿の九尾討伐、そして渋谷での魔将討伐の功績を評価し、国は君を新たな『七星』として正式に認定する」


「……俺が、七星」


湊は戸惑いながらも、その言葉を反芻した。


かつては遠く見上げていた、絶対的な強者の称号。獅子神や神代と同じ、日本のトップ7。


だが、湊の胸に驕りは微塵もなかった。


九尾との戦いではポイントをすべて燃やし、魔将との戦いでは結衣のバフと乱戦の中でのポイントの綱渡りで、辛うじて勝利をもぎ取っただけだ。


自分はまだ、あの称号に見合うほどの圧倒的な「個の力」を持ってはいない。


「……謹んでお受けします。ですが、俺の力はパーティメンバーの二人がいてこそです。俺一人だけの力じゃありません」


湊が真っ直ぐに答えると、神代は満足そうに小さく頷いた。


「それでいい。慢心なき強者こそが、今のこの国には必要だ」


神代はスクリーンを切り替え、国内の地図を映し出した。


「新たな七星の誕生を祝う暇はありません。現在、国内の郊外ダンジョンでも、パレードの余波による被害が拡大し続けています。……我々『七星』は、これより手分けして、被害が甚大な各地方のダンジョン鎮圧へと向かいます」


神代が次々と指示を出していく。


獅子神は北海道へ。雪乃もまた、特例としてSランク部隊を率いて関西方面へと派遣されることになった。


「天谷。君には、長野県の『深緑の迷宮アルプス・ダンジョン』へ向かってもらいたい」


「長野……」

「あそこは広大な森林エリアを持つダンジョンだが、現在、内部から強力な『毒』と『瘴気』が溢れ出し、周辺の街が深刻な被害を受けている。……原因は不明だが、何らかの異常事態がおきていることは確かだ」


神代は真っ直ぐに湊を見つめた。


「君のその『イレギュラーを打ち破る力』に、長野の命運を託したい」


「……了解しました」

湊は静かに頷き、立ち上がった。


会議が終わり、退出する湊の背中に、雪乃が声をかけた。


「湊」

「雪乃さん」

雪乃は少しだけ寂しそうな、けれど誇らしげな笑みを浮かべていた。


「七星就任、おめでとう。……私、置いていかれちゃったわね」


「そんなことありません。雪乃さんのフォローがなきゃ、魔将には勝てなかった。」


湊の真っ直ぐな言葉に、雪乃はふわりと微笑んだ。


「ありがとう。……でも、長野には結衣さんも一緒に行くんでしょ? 彼女にしっかりサポートしてもらってね。……私が戻るまで、死んだら許さないわよ」


「ええ、雪乃さんも気をつけて」


最強の相棒と一時的な別れを告げ、湊は待機室へと向かった。


そこには、湊の帰りを待ちわびていた結衣が、不安そうにウロウロと歩き回っていた。


「あ、天谷さん! お帰りなさい! 会議、どうでした……?」


「結衣。……少し、遠出することになった。長野のダンジョンだ」


湊は、自身のステータスウインドウを空中に展開した。


魔将討伐で得た80万のポイント。


これをどう割り振るか。これからの戦いは、今までのように単純なバフのゴリ押しだけでは通用しない。


「行くぞ、結衣」


世界が変異し、知性を持つバケモノたちが牙を剥く


新たな『七星』となった青年と不遇スキルの少女は、次なる死地、長野の迷宮へとその足を踏み出すのだった。


【ステータス】

【名前】天谷 湊

【年齢】20

【HP】30,000 / 30,000

【MP】0

【筋力】270,000

【俊敏】262,000

【体力】150,000

【知力】30,000

【魔力】0

【保留ポイント】800,000


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