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異形のパレードと、不遇少女の魔法 (1)



結衣と仮パーティを結成してから数週間。


俺たちは立川ダンジョンの中層に潜り、連携のテストと結衣のステータス強化を行っていた。


「……結衣、体の調子はどうだ? 痛むところはないか?」


「はい、大丈夫です! なんだか体が羽のように軽くて……これが、普通の探索者の方たちの感覚なんですね」


結衣は自身の両手を握ったり開いたりしながら、感動したように微笑んだ。


結衣のステータスは、不遇なスキルのせいでろくに経験値を稼げず、MPと魔力はDランク相当、他はFランク(1番下)であった。


俺はパーティの権限(ロック解除)を使い、俺の保留ポイントから結衣へステータスを譲渡した。ただし、無尽蔵に与えたわけではない。


「いきなり何十万もの経験ポイントを与えれば、急激な肉体の変化でどうなるかわからない。だからまずは中層から下層のモンスターに耐えられる『最低限の量』に留めてある」


現在の結衣のステータスは、HPや体力、俊敏といった物理的な基礎値がおよそ「3,000」。そして【魔力】と【MP】も同等の「3,000」――おおよそ、一般的なDランク探索者に相当する数値に調整してある。


「これなら、モンスターの攻撃の余波で即死することはなくなる。だが、それだけじゃまだ不十分だ。結衣自身が最低限身を守れるように、魔法の取得を目指そう」


この世界において、魔法とは一部の固有スキル所持者だけのものではない。


【MP】と【魔力】の二つのステータスに数値が振られている者であれば、後天的に訓練や魔導書を通じて魔法を習得することがある。


MPマナポイント』とは、魔法を行使するための「燃料タンクの容量」である。これが高ければ高いほど、魔法の連続使用や長時間の維持が可能となる。


一方の『魔力』とは、魔法を放つ際の「エンジンの出力」に直結する。魔力が高ければ、攻撃魔法の破壊力や、付与魔法バフ、防御魔法の強度が跳ね上がるのだ。


そして、どのような魔法を習得できるかは、その者の「先天的な才能(適性)」に大きく左右される。


色々試してみた結果、結衣の適性は付与術師のスキル持ちらしいといったらあれであるが、防御と回復の魔法に高い才能を持っているようだった。


「行きます……『光盾イージス』!」


結衣が杖を構えて詠唱すると、魔力3,000の出力によって、彼女の眼前に半透明の六角形の光の盾が展開された。


「よし、いい展開速度だ。これなら不意打ちにも対応できる」


「はい! 天谷さんが魔力とMPのバランスを整えてくださったおかげです。これで、少しは自分の身を守れます」


結衣の魔法習得も成功し、俺たちはさらなる連携を試すため、立川ダンジョンの下層(第18階層)へと足を踏み入れた。


下層特有の澱んだ空気が肌を刺す。


この数週間で、結衣は俺の戦闘スタイルを完全に把握し、俺が最も火力を必要とする瞬間に『完全均衡の祝福パーフェクト・バランス』による全ステータス5倍化のバフを的確に合わせられるようになっていた。俺もまた、常にステータスの一の位を「0」に維持し、彼女の魔法の発動条件を満たし続けている。


「天谷さん、前方からオーク・ジェネラルの群れが来ます!」


「了解。結衣は後方で防御に徹してくれ。……一掃する!」


順調な狩りだった。


――だが、ダンジョンというものは常に、人間の慢心を嘲笑うかのように絶望を突きつけてくる。


ズンッ……!


突如として、ダンジョン全体が大きく脈打つような不気味な震動に見舞われた。

周囲の空気が急速に冷え込み、下層のモンスターたちでさえ怯えたように逃げ惑い始める。


「……なんだ? この異常なマナの濃度は」

俺が警戒して身構えたその時。


遺跡の奥深くから、ズルリ、ズルリと、巨大な「肉塊」のようなものが這い出してきた。


「ひっ……!」

結衣が顔を青ざめさせ、後ずさる。


それは、複数のモンスターの死骸を強引に縫い合わせたような、おぞましい異形のモンスターだった。ライオンの頭、大蛇の腕、蜘蛛の脚。どの文献にも載っていない、ランク不明のイレギュラー。


『ギィィィィィィィィィィィッ!!!』


異形のモンスターが、鼓膜を破るような耳障りな金切り声を上げた。

直後――ダンジョンの壁や床がボコボコと膨れ上がり、そこから無数のモンスターが次々と湧き出してきた。

下層のモンスターたちが、異形の声によって強制的に狂暴化させられ、俺たちを取り囲むように密集していく。


「嘘……モンスターパレード!? しかも、退路が完全に塞がれて……っ!」


前後左右、文字通り数百体を超えるモンスターの群れ。

そしてその中心には、圧倒的な殺気を放つランク不明の異形が、ニタリと歪な笑みを浮かべて俺たちを見下ろしていた。


「……結衣、俺から離れるな。絶対に守り抜く」


俺は空中に自身のステータスウインドウを展開し、冷や汗を流しながら『崩星の籠手』を固く握りしめた。


かつてない規模の死線が、今まさに幕を開けようとしていた。


【ステータス】

【名前】天谷 湊

【年齢】20

【HP】100,000 / 100,000

【MP】6,000 / 6,000

【筋力】315,000

【俊敏】315,000

【体力】100,000

【知力】53,035→53,040

【魔力】6,000

【保留ポイント】96,195


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