表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オオカミと赤いずきんのベリー売り  作者: ねこじゃ・じぇねこ
踊り子ウサギと銀幕の町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
50/57

7.カラス様の言う通り

 三名分の飲み物がそろうとポップは翼を広げて言いました。


「カア、飲み物も来たことだし、乾杯と行こうか」

「ええ」


 ラズが快く頷く一方で、その隣のブルーは気まずそうに耳を倒しました。しゃべるオオカミ用のグラスに前脚を添えるのですが、持つことはやはりできません。念のため、それを確認してから、ブルーはポップに小声で訊ねました。


「どうやって乾杯するの?」


 その質問にポップは不思議そうに首を傾げましたが、ブルーが一生懸命、前脚で自分のグラスを持とうとしている事に気づくと、慌てたように翼を広げました。


「そうかそうか。ブルー君。どうやら君はまだ多様的な乾杯の方法を知らないらしい」

「多様的な乾杯の方法?」


 ブルーが訊ね返すと、ポップは得意げに頷き、咳払いをしてから器用な足でカウンター席に置かれたスプーンを握り締めました。


「ご紹介しよう。精霊鳥せいれいどり式の乾杯だよ」


 それを見て、ラズもすぐさま手元のスプーンを握り締め、ブルーに耳打ちしました。


「ポップが音頭を取ったら、一緒に『乾杯』って言って前脚の爪で軽くグラスを叩くの」

「それでいいの?」

「そういう乾杯なの」


 ラズの小声の説明が終わるのを待ってから、ポップは言いました。


「出会い、そして再会を祝って、乾杯!」


 直後、ポップが足で握ったスプーンで、グラスを軽く叩きました。それに合わせて、ラズとブルーも口々に「乾杯」と言ってから、ラズは手に持ったスプーンで、ブルーは前脚の爪で、軽くグラスを鳴らしました。

 こうして、三名の楽しい夕飯の会は始まったのです。

 ラズとポップがそれぞれ飲み物に口を付けるのに倣って、ブルーもまた「子猫ちゃんの瞳」を飲みました。「狐の隠れ家」で飲んだものとほぼ同じですが、ほんの少しだけ趣の違う味が広がるのを感じながら、ブルーはそっとポップの飲み物に視線を向けました。


「それが『カラス様の言う通り』っていうんだね」


 太いくちばしでも飲める猛禽類用のグラスに注がれているのは、わたし達のようなヒト族の人間の目では黒く見えがちな飲み物でした。真ん中にはベリーの大粒が沈んでいるのですが、これもまた黒光りしているように見えました。


「そのベリーはなんていう名前なの?」

「これはね、七色ベリーさ」


 ポップは答えました。


「七色?」

「そうさ。綺麗だろう」

「確かに綺麗だけど……でもなんで七色なの?」

「なんでって、そりゃ七色だからさ」


 そう答えたところで、ポップはハッと気づいたように小さな頭に翼を添えました。


「カア、そうかそうか。考えた事もなかった」

「なにが?」


 不思議そうなブルーに対し、思わず口を挟んだのは「ドラゴン・テイル」の味を存分に楽しんだ後のラズでした。


「七色ベリーはね、鳥──とくにカラスの目線で名付けられたベリーなの」

「カラスの目線?」


 首を傾げるブルーに、ラズは微笑みながら頷きます。


「今知られているベリーの多くは古来よりワタリガラスの一族とそのパートナーとして一緒に暮らしてきたしゃべるカラスたちが語り継いできたものばかりなの。やがてコヨーテの客人がやってきて、海外式の研究や調査が盛んになった後も、古くからの知見は大事にされてきた。七色ベリーもその一つだよ。コヨーテの客人目線だったら、七色ベリーなんて名前にはならなかったでしょうね」

「つまり……ポップには七つの色が見えるの?」


 ブルーの問いに、ポップは言いました。


「数えた事はないがね、色鮮やかな飲み物に見えるよ」

「へえ。じゃあ、ラズにはどう見えるの?」

「わたしには真っ黒に見える。言われてみれば、薄っすらと違う色があるような、ないような……そうだなぁ。ポップさんの羽根の色と同じに見えるかも」


 これを読んでいる皆さんの目の前に「カラス様の言う通り」が置かれていれば、恐らくラズと同じ感想になったでしょう。

 ポップの色ってどんな色だろう。そう疑問に思った人は、ぜひカラスの色を思い出してください。黒い鳥のイメージは強いですが、よく見ればただの黒ではないはずです。見れば見るほど不思議に思えるその色こそが、七色ベリーの色なのです。


「ちなみにマスターはどんな色に見えるんだい?」


 ポップが話を振ると、ウサギ族のマスターはすぐに答えました。


「私もラズさんと同じですよ。ポップ。君と同じ色に見える。ただ……七色ねえ」


 その答えを聞いて、ポップは「カア」と短く唸り、グラスにくちばしを突っ込み、「カラス様の言う通り」を少し飲んでから再び言いました。


「不思議なものだね。それこそ吾輩にとっては七色なんだがなぁ」


 そして、つぶらなその瞳を輝かせながらラズとブルーに言いました。


「実を言うとね、コヨーテの客人がやってくるまで、この事実を吾輩の先祖は知らなかったそうなんだよ」

「どういうこと?」


 不思議がるブルーに、ポップは軽く笑いながら答えました。


「これにまつわる面白い言い伝えがあるんだよ。聞きたいかね?」

「ぜひ」


 ラズが短く促すと、ポップは上機嫌になって翼を広げました。


「では語らせてもらおう。昔々のお話さ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ