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現代陰陽師生活  作者: さば
13/18

総会

月に一度ほどのペースで行われる総会の中でも今回は年に二度しかない全体総会だ。通常の総会は名家と呼ばれる陰陽師の世界の中でも限られた家柄のみの集まりである。もはや総会というより親戚の集まりみたいなもんである。しかし今回の全体総会は違ってくる。これは基本的にそこそこの家柄の主家や一門の当主まで参加するものであり、そこそこ真面目な会議になってくる。


ここで宣言することで少なくともほとんどの家に伝えることができるってわけだ。


「この度私は隣にいる天堂雪さんとの婚約と、以前より活動を休止していた陰陽師としての職務に正式に復帰させていただくことを報告させていただきます。全体総会という場での宣言という形になってしまったことはお詫びいたします。」


周りがざわついていることがわかる。幸いなのは好意的な感じの人が多いことかな。まあそんなに興味ない人も多いけどね。


「少々お待ちください。天堂家といえば黒川家との縁談が決まる寸前だったのですが?その件はどうお考えで?」


お、こいつか?堂々と牽制してきた感じかな?


「それについては誤解があったようで…許嫁だったのですが私の休止などで少しバタついてしまいましてね。そのため黒川家へは断りを入れていたはずですが…」


黒澤が絡む前は断ったことは事実だからな。向こうも脅しについては公になってほしくないはずだ。それに黒澤側はもう既に興味はなさそうだ。


「とはいえ私の一件で行き違いとはいえ、黒川家の皆様や本家の皆様方にご迷惑をおかけしたことを謝罪申し上げます。本来なら久我家当主として父総一郎から申し上げるべきかと存じますが今回の一件の当事者として私から詫びを入れさせていただきたくこの場をお借りしました。未熟ではありますが…」


「あーもういいよ。その件は天堂さんからも久我さんとこからも聞いてるからね。正直謝罪なんてどうでもいいんだ、それよりさ君本当に復帰するつもり?僕としてはそっちが重要なんだよね。きっかけはやっぱりそこの幼馴染の子と結婚するためってことだよね。君たちが本当に許嫁だったとしても確かに君が陰陽師を引退した身じゃあ問題もないとはいえない。今回の誤解が生まれてしまったって件はどうでもいいし許すよ。なんといっても君の復帰はこちらとしてもありがたい話だ、有栖川家当主として君の復帰と婚約について支持させてもらうよ。」


いま話をしている男は光明の父であり有栖川家の当主である有栖川時光である。陰陽師一の名門家である有栖川の当主が認めたってことは少なくともこの件は大丈夫ってことだな。まあ内心ほんとに興味ないんだろうな。


「けどさ問題なのは名ばかりの復帰だと困るんだ。それに君が今どれだけの力を持っているかも気になるところでね。何年も現場を離れていたわけでいまの君にどれほどの価値があるか、それについては楽しみにしているよ」


こーれがこの人の怖いところですよ。俺が大した成果を出せなきゃ婚約も何もかも白紙に戻されかねないからな。まあ俺が納得させられる成果を出したときは有栖川家とはいえ身内の話、それも俺が誰と結婚するかなんて口出しはできなくなるけどな。それに誰も口にしてないだけでこの場にいる連中みんな品定めするような目で見てきやがってるしな。相変わらず嫌な空気感だよ。子どものときから散々経験してきたけどこの空気ほんとに気味が悪いんだよな。


「それじゃこの件に異議がなければ終わりさせてもらおうかな」


ふー何事もなく終わってよかった…


「お待ちください!天堂家との縁談は以前から進めてきたものなのです!それをいきなり反故にするのはいくらなんでも横暴では?」


そうですよね、そううまくはいかないですよね! 

すると隣にいた雪が少しひるんだ様子を見せる。はーこいつが例の黒川さん本人ね。黒澤家と同じ源流を持つ家で家格こそそこまで高くはないが歴史はある家だな。ってことはさっきのやつは部下ってとこか?


「雪も何回か会ったことあるんだっけか?」


「うん…おじいちゃんが常にそばにいてくれたから何かされたってわけじゃないんだけどうちのことは完全に下に見てるから言動とかもひどくて…私が嫁ぐものと確信してたからその…セクハラ的な言葉も何度かあってね。おじいちゃんも注意することくらいしか出来なかったから。あの時はほんとに結婚するしかないって追い詰められてて、あの人の声を聞くと今もちょっと怖くて…」


あいつやっぱ殺しておくべきか…?


『葵、私ならすぐやれるぞ。お前の許可さえあれば今すぐにでもな!今では雪は私にとっても守るべき存在だ!そんなこの子を怯えさせる輩は許せん!』


いつの間にそんな気に入ってるんだよ!


『一瞬ほんとにありかなって思ったけどさあ!さすがに当主をこの場でやったら俺もやばいって!まあもしさ、雪になんかしてくるようだったら殺さない程度にやっちゃっていいよ!』


うちからつけてる使い魔も数増やそうかな… というかこのまま黙ってても異議は却下されるのは目に見えてるけどどうしようかな。変に言い返して恨み買っても面倒だしな


「久我家の!お前も恥ずかしくないのか!?元神童だか知らんが人の女を横からかっさらうようなマネをして!」


こいつまじでむかつくなあ!よし!恨まれたら殺そう!


「お言葉ですが先ほど申し上げた通り彼女は私の許嫁であり、過去も現在もそれが事実です。私の都合もあり皆様に誤解を与えてしまったことは先ほどもお詫び申し上げましたが。それに私は器が小さいのでね、私の婚約者に対して戯言とはいえ人の女などの発言は到底見過ごせるものではありませんよ。二度目はないと思っていただきたい。」


「このような横暴許せるはずがない!」


「あんたは自分が運がよかったことを自覚した方がいい。今回は多少強引なことや問題行動はあったが許してやるよ。ただ万が一にもあんたが雪に手なんかだしてたらこんなもんじゃ済まなかったからな。そのことを覚えておいてほしい。」


全く失礼しちゃうぜ! こっちは本気だぜ? あんな脅すようなマネしやがったくせによお!ほんとに手なんか出されてたら殺してたね!


ってあれなんか雪ちゃんはすごい顔赤くしてるし、父さんと光明はニヤニヤとこっちを見てる。そして天堂のじいさんは複雑そうな顔でこっちを見てくるし… あーなんかいまになって恥ずかしいよ!


『雪は照れておるが喜んでるぞ。それに私も葵にそんな甲斐性があるとは思ってなかった。実に嬉しい誤算だな。」


『ミカエル、お前さ鳳凰と口調が移るくらい話してるんだからあいつの余計なことは言わないとこも見習ってくれよ!』


とはいえ黒川の野郎も完全に俺をなめてたな。最近分かったけど俺が関わりあった名家や旧名家の一部の本家を除くとさ、俺のイメージって名門の重圧に耐えられなかったやつって感じらしい… まさかそんなやつに言い返されるとは思ってなかったんだろうけどなんかショックだよ…


「これ以上異論がないなら今回の総会はこれで終わりにさせていただこう。…それでは今度こそ今日はこれでお開きだよ。みんな気を付けて帰ってね」

ーー


いやーなんとかなってよかったあ!とはいえ明日から陰陽師としての働きってのをしないとだなあ


「葵、光明さんが来てほしいって。なんか話?があるみたい」


えーもう帰りたいよ… 有栖川家の本家ってなんか苦手なんだよ。光明が住んでる別邸のが落ち着くんだよねー


「顔からすごい嫌ってことは伝わってくるけどね、多分復帰についての話だと思うから行った方がいいよ。あ、それとさっきはありがとね…。黒川さんに言い返してくれたの嬉しかった、かっこよかったよ!」


不思議なんですけどね、もう疲れが取れた気がします!くそかわいいじゃねえかよ!


「じゃあ雪も一緒に来てくれない?さっきの件もあるし一緒にいてくれると安心できるし嬉しいんだけど、ダメかな?」


「ぜ、全然ダメじゃないよ!でも私も行っていいのかな…?有栖川家のご当主様がいたら私は入れないんじゃ…」


「そんなことはないよ。俺は雪と一緒にいたくて復帰するんだから超重要人物だしね。さあじゃあ行こうか。」


このまま帰ってのんびりしたかったけど呼ばれたら断れないよなあ…。今回の件もある意味借りになっちゃったし。






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