連行された先
中心街トースタ
俺達は、手錠を掛けられたまま未だ歩き続けていた。
俺達の周りを囲う様に、衛兵が付き、少しでもおかしな行動をすれば剣を突き付けてくる。
前方の衛兵に担がれているミライが気にかかったが、何か行動を起こせる雰囲気ではなかった。
「……ぅぅ……ぐすっ」
「……大丈夫か? サチコ」
泣いているサチコに、小声で声を掛ける。
すると、サチコはこちらを見て、小さく頷いてから小声で口を開いた。
「ぅぅ……私……聞いた事があって……この事……」
「……奴隷に話し掛けると……捕まるってやつの事か?」
「は……はい……」
「……だから、俺があの子に話し掛けるのを、最初止めてくれたんだな」
「……本当は……言おうと思ったんですが……言えなくて……私のせいで捕まった様な物です……」
「……サチコ、それは違うぞ」
なるべく優しくサチコに言葉を掛ける。
本当に、少しだけサチコの肩に肩で触れてやる。
両手が自由なら、抱きしめてやりたいんだが……
「これは、俺の責任だ。お前は悪くない」
「……先生……」
「もし、このままどこかに捕まったら、何とかしてお前達だけは許してもらえる様に俺が頑張る。だから、安心しろ」
「……でも、それじゃ先生が……」
「心配すんな、先生は生徒の責任を持つのなんか慣れてる、屁でもないさ」
「……先生……」
「だからほら、涙を拭いて」
そう言って、サチコの瞳に溜まった涙を指で拭く。
少しくすぐったそうな顔をするサチコを見ながら、俺は……あれ……?
思わず差し出した手を見ながら、俺とサチコは顔を見合わせる。
「あー……っと……ドラマが産まれてる所申し訳ないのですが……」
そう言って、俺達の横から声を掛けてきたのは真っ白のドレスを身に着けた青く長い髪の女性。
頭についているのは、ティアラだろうか……。
そして。辺りを見渡せば繁華街は見る影も無く、美しい湖と石畳ではなく磨かれた大理石の様な質感の足場、それに目の前に聳える学校の校舎の何倍もありそうな巨大すぎる城が立っていた。
どうやら、全ての方向に湖が広がっている事から、俺達は湖に掛かる巨大な橋の上に立っており、城は湖のど真ん中に建てられているらしい。
既に、俺達の手錠は外され、ミライも衛兵から話し掛けられていた。
「え、っと……これは……?」
俺は、あまりの好転に意味が分からずその青い髪の女性に質問を飛ばす。
「はい、貴方達は奴隷交友罪で捕まったんです」
「……いや……でも、その……手錠も外されてるし……それより、衛兵がその罪犯してますけど……」
「う~ん……まぁ、こういう事……としか言えないのですが」
「皇女様、僕が説明いたしましょう」
「あ、お願いしますね。クリケット親衛隊長」
そう言って、困る女性の横から、俺に剣を突き付けた衛兵が会話に割り込んでくる。
というか……クリケット? ……皇女?
「実は」
「あああああああああああああああああっ!」
目の前に居る男の正体に気が付いた俺は、叫んで男に近寄る。
俺の叫び声が余程うるさかったのか、正彦以外の人間が耳を塞いでいるが気にしない。
「っ……な、何だ貴様……唐突に叫ぶな!」
「お前、リーンの兄貴か!」
「何? 貴様、妹を知っているのか?」
「知ってるも何も、職場が同じで結婚させられそうになった。へー、偶然もあるもんだな」
「昨日中止になった妹の結婚式のか……確かに魔法学校の教員の服は着ているようだが……」
「やっぱり、顔も似てるのか? 見せてくれよ。ほらほら」
「顔? 僕は男だぞ。妹と顔が似るなんて……というか止めろ! 兜に触るな!」
「いいじゃん、ほらほら脱いだ脱いだ」
「このっ……離れろ! 貴様斬り捨てるぞ!」
「へー、口調とか怒り方までそっくりなんだな」
本当に剣に手を掛けたため、俺はリーン兄から距離を取る。
なるほど、アイツの口調はここから来てたのか……。
「貴様……ちっ……兜の遮光プレートに指紋が付いたじゃないか!」
「へぇ、その目のあたり覆ってる黒い部分って前が見えるんだな」
「見えなかったら戦えないだろ!」
「いや、衛兵だし心眼で捉えるのかと」
「そんな馬鹿な……あっ……これは見苦しい所を、申し訳ありません皇女様」
俺とやり取りをしていたリーン兄は、唐突に横に居る青い髪の女性に頭を下げる。
対する青い髪の女性は、俺とリーン兄を見てくすくすと笑っている。
「いいえ、良いのですよ、クリケット親衛隊長。今みたいな貴方は、初めて見ました」
「……」
悪戯っぽく言う青い髪の女性に、何も返さないリーン兄。
どうやら、照れている様だ。
「というか……皇女? ってことは……」
「あ、はい。申し遅れました。私が、魔法国家ベル皇帝の娘、メリー・ドット・クリストマスです」
「……あー、なるほど……貴方が」
「はい、今回は奴隷交友罪を犯した貴方達と、お話をする為にここまでお呼びしました」
「……お話?」
青い髪の女性、もといメリーは丁寧に俺にそう言った。
ただ、意味が分からず俺は、言葉をそのまま返す。
「はい。サチコ・ライトスタンドさん。甘粕正彦さん。甘粕誠さん、それで間違いありませんね」
「は、はい!」
「む……?」
「……」
唐突に、皇女に名前を呼ばれ、サチコは驚いたように返事をする。
俺も、正彦も口を開かず皇女からの言葉を待つ。
正彦と誠が逆だったが……あえて突っ込まない。
「貴方がたには、私の力になっていただきたいのです」
「……皇女様の……力?」
皇女からの言葉に、そう俺が言葉を返すと皇女は俺達をゆっくりと見ながら、口を開いた。
「はい、この国から奴隷を無くし、奴隷の無い未来を目指す為の力に」




