008
異空部屋に戻ってすぐ調理室へ向かい、狩ってきたポイズナスネークとハードカウを解体する。肉を【無限収納】で仕舞って皮だけ残す。
さて、靴作りだ。【裁縫Lv9】の本領を発揮してやろう。
まず、皮を技巧『生地加工』で鞣し、革の生地にする。その生地を技巧の『裁断』でそれぞれのパーツ毎の形に切っていく。
道具なしでも魔力を大量に消費することで魔法のように生地ができ、切ることも出来た。『紡績』で作った糸で技巧『縫合』を使い、切り分けた生地を靴の形に縫っていく。
すごい魔力の消費だ。やっぱり俺って魔力量が多いのだろうか、まったくなくなる気がしない。
最後に技巧の『調整』をかけて全体を奇麗に仕上げる。
出来上がった靴に【鑑定】をかけてみた。
『剛蛇のレザーブーツ』
防御力:B
耐久:B+
能力:【脚力上昇】【耐久上昇】【毒付与】【衝撃吸収】【耐水性能】【耐火性能】【サイズ調整】
俺は口を開けたまま固まっていた。
なんだこれ。すごいのが出来てしまった。
さっそく履いてみると、少し大きめに作ったのにサイズがぴったりになる。これなら成長しても履き続けられるな。
『練氣』を使った時のような跳躍力、靴を履く前より『氣動法』での移動が楽に、より速くなった。それに最高速度からでもピタリと急停止できる。
全て魔力を消費している感覚がしたので逆にこっちから魔力を流せばどうなるか。魔力を流してその場で蹴りを放つと脚が通った空間を紫色の光が軌道を描いた。能力の『毒付与』だ。魔力を流して攻撃した相手を毒状態にする効果がある。
その日から数日、靴に慣れるために作った広く何もない修練室をつくって蹴りを中心に練習した。
突きは『集氣』を使ってもゴブリンくらいまでにしか効かなそうだからあまりやらない。
ガリガリだった身体に少しは肉がつき、体力も付いていた事と氣力で上がる身体能力で格闘の真似事をしている。
見切りのスキルは自分にも効果があり、体を動かす時の無駄がわかる。誰にも教えてもらえない今の状況ではその無駄をとにかく無くすように動くようにしている。
あとは今までに食らった攻撃を思い出してどう避けるかを試行錯誤するくらいだ。『氣動法』での緊急回避を使わなくても無駄なく避け、攻撃に繋げられるように。
魔法のほうも同時に鍛えられるように、主に蹴りの的に『シールド』を使っている。
なるべく無規則に張った『シールド』を蹴り、消してまた張る。これをやっていて気付いたけど、守護魔法の防御力は想像以上に硬かった。全力の『集氣』を使っての蹴りにも耐えた。
まあ、氣操術スキルを使っているとはいってもまだ子供の攻撃。今まで以上の攻撃力を持ったモンスターなら突き破ってくる可能性はある。
だから、鍛える。自分の命を守れるように。
単純な強度を上げることも試しながら、それだけじゃない工夫も考えた。それまで1枚だけ張っていた『シールド』を同時に何枚も張れないか。でも、これが実に難しい。
『シールド』を張るのは体を動かす時でいう腕を使うのに似ている。したがって、2枚までは難なく同時に張れた。
問題はそれから先。
3枚以上は人の身体にはない3本目の腕を操らなくてはならない。体感では得られないものを想像のみで再現するのは至難の業だった。考えても、考えてもいまいちよく分からない。なので考えるのを止めてみた。
『氣動法』を習得する前にやっていたとにかく何度も『シールド』を張り、消すことを反復する。魔力を消費してから『シールド』が現れるまであったタイムラグをなくし瞬時に張れるように。
思い描いた場所に寸分の狂いなく正確に張れるまで、飯を食べることも忘れるくらい必死に繰り返す。
練習を初めてから5日が経った。
1枚目の『シールド』を張る。
目を瞑って呼吸を整えた。
そして、2枚目、3枚目……と次々に『シールド』を無規則に張る。10枚張ったところで止め、動き出す。
目は瞑ったまま、これまで散々使ってきた魔力が感じられるところを蹴る。近い場所にあるものから無駄なく、流れるように。
蹴った『シールド』は消し、また別の場所に張り直す。
使っている武技は『促進』のみ。
なるべく威力を出すため、体の回転で得た遠心力を殺さないように動作を繋げ、蹴りまくる。あれから見切りのスキルがLv3に上がったことでさらに無駄が無くなった。
蹴った的の数は次で100。
『集氣』で氣力を脚に集中し、鞭のようにしならせて蹴りを放つ。蹴った衝撃で『シールド』がズドンッという大きな音をさせ、罅が入って霧散した。
【魔力感知Lv1】を習得
【体術Lv1】を習得
魔力感知のスキルは氣力感知の魔力版。
体術のスキルは身のこなしをなめらかに、より効率化させるスキル。
どちらも習得可能スキル一覧にあったスキルだ。
守護魔法もLv3になっている。Lv3の呪文は『スフィアシールド』、使うと球体状の『シールド』が体を覆った。これなら全体をカバーできるし、それに『シールド』のように空間を指定することで任意の場所にも張ることができた。
転移で外に出た。
転移した場所にはゴブリンが3匹、目の前にいる。ゴブリンはいきなり現れた俺に驚いていたがすぐに獲物と見て襲ってきた。
最初に攻撃してきたゴブリンの棍棒を見切りスキルと『氣力感知』を使って右肩を引くことで避ける。その勢いを利用し、身を翻してゴブリンの側頭部に右脚の踵を叩き込む。すぐに別のゴブリンが振り下ろしてきた棍棒を躱し、顎を蹴り上げた。
「ギギ!?」
仲間が続けてやられたことで動揺している隙を逃さず、さらに体を回転させてゴブリンの上から頭を蹴り抜いて地面に叩き付けた。地に伏せる3匹のゴブリン。全てまだ息がある。『練氣』も『集氣』も使わなかったからだ。
『促進』とブーツの効果で蹴りの威力は上がっているはずだが、元々の俺の攻撃力が低すぎて昏倒させるのが精一杯だった。
倒れているゴブリンをナイフで殺す。
威力は抜きにして戦闘自体はうまくいったと思う。
ただ、少しでも威力を出す意識がいって少し大振りの攻撃になってしまった。ゴブリンなら問題なかったけどもっと強い奴なら躱されることもある。気をつけよう。
その後はなるべく防御力の低そうな相手を探して狩っていく。
蹴りだけで殺せたのはホーンラビィだけだ。
ポイズナスネークは長い身体と柔らかさでとにかく蹴りにくかった。
そして、中には初めて見るモンスターもいた。
種族:フォレストウルフ
レベル:7
状態:正常
スキル:【嗅覚感知Lv3】【加速Lv2】【鋭牙Lv2】【連携Lv1】
こいつらは常に群れで行動していて、これまでにない連携攻撃は少し厄介だった。
フェイントを織り交ぜたり、囮を使って死角を突いてきたりなど多彩な攻撃を見せてくれる。それに、厄介だった分、得られるものも多かった。レベルが6に上がり、体術のスキルレベルもLv2になっている。
フォレストウルフの攻撃を見て取り入れていた結果なのかLv2になった体術スキルが武技『フェイント』を習得していた。
その日は夜になるまで狩りを続け、異空部屋に戻った時に思い出したように疲労感がやってきた。
眠りたい気持ちを抑え、身体を洗ってから絨毯に寝転がって毛布をかぶる。ちなみに、この毛布はホーンラビィの毛皮で作ったものだ。
すでに限界だった眠気に身を委ね、泥のように眠った。




