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004

 白い空間。無事、異空部屋に戻ってこれたようだ。


 朦朧とする意識の中、気を失うのを必死に耐えて首に『ライトヒール』を痛みがひくまで一心不乱にかけ続ける。何十回目かの『ライトヒール』でようやく痛みがひき、意識もはっきりとしてきた。

 同時に首の痛みであまりわからなかった腕の痛みに気付き、再度『ライトヒール』をかけまくる。


 腕の痛みも治まった。他に痛いところがないことを確認してから安堵の溜め息と共に大の字に床に寝そべる。


 目を閉じてさっきのことを思い出す。

 いくら見つかったからってパニックになりすぎた。せっかく簡単に逃げられるスキルがあったのに、怪我だけで済んだけど運が悪かったら死んでた。

 これからはもっと周囲の確認を重視して、もしさっきみたいに見つかっても落ち着いて対処するようにしないと。


 そういえば、あのゴブリンはどうなっただろう。一緒に落ちた後、ゴブリンのことはそっちのけですぐ転移してきたからなあ。

 マップのレーダーで確認しようとステータスを開いた。




名前:グリム

性別:男

年齢:8歳

種族:普人族(覚醒種)

レベル:3


スキル:【裁縫Lv9】【守護魔法Lv1】【雷耐性Lv8】【治癒魔法Lv2】【算術Lv1】

エクストラスキル:【鑑定】【ステータス操作】【異空部屋】【無限収納】


スキルポイント:1


賞罰:「盗み」




 レベルが上がってる。

 治癒魔法のスキルレベルも上がってるけど、これはたぶんさっき使いまくったからだと思う。


 もしかして、さっきのであのゴブリンは死んだのだろうか?

 急いでマップを開き、レーダーを使う。灰色の点が1つにそれを囲むように3つの赤い点が表示された。

 えっと……これはどういう状況?


 サーチを使い、ゴブリンで検索をかける。他の場所にはいっぱいいるが、さっきいた場所に表示されている点はゴブリンではない。

 あれ?

 赤い点は他のモンスターだとして、この灰色の点はさっきのゴブリンだと思ったんだけど、灰色?ああ、そうか。


 ゴブリンで検索していたのをゴブリンの死体に変えてみる。灰色の点はゴブリンの死体だった。死体は灰色の点で表示されるようだ。


 これで確定だ。俺はモンスターを殺してレベルを上げたんだ。

 まぐれでも、人生初の勝利である。そして、生き残ったのだ。

 あ、いまさら気付いたけど守護魔法の『プロテクト』をかけていれば怪我しなかったかも……今度から『プロテクト』は常時かけておこう。


 なんにせよ、レベルが上がってスキルポイントも増えたことだし、今度は攻撃力の高そうな戦闘系のスキルを習得しよう。火魔法とかカッコイイし強そうでいいな。

 そんな事を思いながら習得可能スキル覧を見る。

 しかし、火魔法が見当たらない。それどころか、他の戦闘系のスキルもないようだ。まさか、俺には戦闘系のスキルの才能がない?

 いや、何かあるはずだと習得可能スキル覧を必死に探した。そして、見つける。




氣操術:生命エネルギーである「氣力」を自在に操ることで身体能力や攻撃の威力を上げるスキル




 1つだけでもあって本当によかった。


 スキルポイントを使って氣操術のスキルを習得する。

 Lv1は『練氣』というのが使えるようだ。これは、体の中の氣力を練り上げ、全身に隈なく巡らせることで身体能力を向上させるなどの効果を得る。


 スキルを習得する前とは違い、体の中にある何かを感じる。たぶんこれが氣力……魔力とは違う。


 例えるなら、魔力は氷のような力の塊が使う度に溶けてなくなっていく感覚。

 逆に氣力は練り上げることで練られた氣力を燃料に暖かい炎のような力が燃え上がっていく、そんな感覚。


 試しに練り上げていた氣力が全身に行き渡り、力がみなぎってくるのが分かる。その場で軽く跳んでみると視線の高さが倍くらいになった。つまり、俺の身長くらい跳んだということになる。


「すごい! すごい!」


 そのまま何度かピョンピョン跳ねていると急に足に力が入らなくなり、ぶっ倒れた。酷い虚脱感、それに飢餓感も感じる。


 自分でも体力がないのは自覚していたけど少し跳ねてただけで倒れるくらい疲れるわけがない。考えられるのは『練氣』による身体能力の向上で氣力の減少し、枯渇した。

 だとしたら、なくなるの早いな。これじゃ戦闘の途中で絶対にぶっ倒れる。


 使うとしたら、そうだな。

 まず気付かれないように近付き、『練氣』を使って上げた身体能力で一気に接近、一撃で仕留める。仕留め切れなかったら異空部屋のスキルで転移して離脱。このくらいだろう。

 せめて武器があれば仕留められる確率もあがるんだけど、簡単に作ったりもできないし。


 あー、駄目だ考え事してたら余計に腹が減ってきた。


 無限収納のスキルでアプルを出して食べる。3個食べると飢餓感がおさまり、しばらくすると氣力が回復したのか虚脱感もなくなる。

 さっきみたいに氣力を消費するのではなく、今度は体の中で血の流れのように薄く張り巡らせて循環させる。爆発的な身体能力の向上は感じられなくなったけど、やる前よりもずっと調子がいいし体も動かしやすくなった。




【氣操術Lv1】武技(アーツ)『練氣』が派生、『促進』を習得




 武技アーツ

 派生?

 知らない単語が続けて出てきた。


 ステータスをちゃんと確認する。

 どうやら武術系スキルの技を武技アーツ、魔法系スキルだと呪文スペル、生産系スキルは技巧テクニックというようだ。派生はたぶん武技アーツなどを改良や応用することで習得するのだと思う。


 そういえば確認するの忘れてたけど【治癒魔法Lv2】の呪文スペルは『キュア』。解毒ができるみたいだ。


 寝転がりながらステータスを眺めていると瞼が重くなってきた。

 ここは安全だけど全方向が白で落ち着かない。例外は泥などで薄汚れてる俺がいま寝転がっている場所だけだ。


 あれ?

 寝転がっている場所ーーだけ(・・)

 おかしい。

 さっきまで跳びはねて汚れた場所も真っ白になっている。そういえば、朝ここから出た時まで汚れていた場所も奇麗になってるな。

 もしかして、この部屋は自動的に清掃されるのかも。

 主婦の人達が喜びそうだ。


 自動清掃機能なんてすごい機能が付いてるんだから壁の色くらい変えられるんじゃないかと思ってやってみた。

 『ライトヒール』の時よりも多くの魔力が消費された感覚の後に壁が茶色というか木の壁になった。色を思い浮かべる時に木みたいな色を想像したのが原因?

 色だけじゃなく素材も変えられるのか。


 今度は床を変える。

 魔力が消費され、背中にモフッとした感触がした。前世の記憶にあった高級そうな黒い絨毯だ。


「気持ちいい……」


 初めて感じる柔らかな感触。

 それまで感じていた睡魔がさらに増し、それに逆らうことなくゆっくりと瞼を閉じた。



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