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 目が覚めた。

 起きたばかりでぼやけ気味の視界から回復すると、まず目に入ったのは白。まだぼやけているのかと思い目をこらすがやっぱり白。俺は今、何故か床、壁、天井にいたるまで全てが白い不思議な部屋にいる。


「異空部屋?」


 それしか考えられない。

 もし転移のようにどこからでもここにこれるのだとしたら物凄く便利なスキルだ。


 そういえばと、他にもまだスキルがあったことを思い出し、傷を癒すことができないか調べてみた。


 守護魔法は守ることに特化した魔法でLv1の現在使えるのは『プロテクト』という指定した対象の全体を見えない鎧で覆い、ある程度のダメージを無効化する魔法だけ。


 【無限収納】は触れた物を異空間の倉庫のようなものにいくらでもしまうことができて、取り出すことも自由自在。中に入れたものは入れた時の状態で時間が止まるため、生物をしまうことはできない。


 【ステータス操作】は自分のステータスを可視化でき、1レベル上がる毎に1ポイント入手できるスキルポイントを消費することで習得可能スキル覧からスキルを習得できる。また、スキルポイントを消費することでスキルレベルを上げることも可能。他にも外で使ったログや、周囲の地形を確認できるマップがある。


 これだ。

 傷を癒すことのできるスキルはなかったけど、ないなら新しく習得すれば良いさっそくステータスを出し、習得可能スキル覧を見る。

 違う…これも…これも違う。


「あった!」


 見つけることができた嬉しさでつい叫んでしまったが、ぴったりのスキルがあった。




治癒魔法:傷や病気の治癒、解毒などが可能な魔法。




 Lv1なら今持っているスキルポイントの1ポイントで習得できる。1レベルだけでも上がっててよかった。

 ちなみに、レベルは生き物を殺すことで上がり、より高いレベルの生き物を殺すほうがレベルが上がるのは早い。そして、レベルが上がると身体能力や、保有魔力量が上昇する。


 それと、レベルが上がっていたのは村にいた時の俺の仕事が主に家畜の世話やその屠殺をさせられていたからだろう。まあ、それも俺以外の奴等が食うための肉で俺は一度も食えたことはなかったけど、今だけはやらせてた奴等に感謝してやる。


 スキルポイントを消費し、【治癒魔法Lv1】を習得する。Lv1は『ライトヒール』という軽い傷を癒す魔法が使えるみたいだ。


 結構あちこちに火傷とかあるけど何回か使えば治るかな?


 自分を対象に『ライトヒール』をかけてみると、異空部屋に転移した時のように何かが体から抜けていく感覚がした直後に全身があたたかい光に包まれた。徐々に痛みがひいていき、光が収まるとあらかた治ってしまった。


 そして、たぶん今の感覚が魔力を消費した感覚なんだろうな。でも、今回は虚脱感とかはまったくないしもちろん気絶もしない。ここへの転移ってそんなに魔力を消費するのか?転移する度に気絶するってかなり危険なんじゃ……すぐに魔力を増やす方法とかあるといいんだけど。


 守護魔法はどうだろう?

 『ライトヒール』と同じLv1だし、いきなり気絶はないと思う。

 自分を対象にして『プロテクト』をかける。さっきよりも弱く全身が光り、一瞬だけ何かに覆われる感触がした後すぐになくなり光も収まった。特に虚脱感はなし。魔力にはまだまだ余裕がありそう。


 これで本当にダメージを無効化できるのかちょっと試してみたくなったので、壁を殴ってみることにした。思いっきり振りかぶって壁を殴る。ゴッ と鈍い音がして今度はさっきの覆った感触が離れていく感じがした。

 殴った手に痛みはない。ガリガリの俺の突きなんてたいしたダメージではないだろうけど、無効化されるのは本当のようだ。


 俺は今、魔法を使った。

 治癒魔法を使った時は傷が治ったことに意識が向きすぎて思い至らなかったけど、俺は魔法という「力」を得た魔法使いになったのだ。

 この世は力が全て。武力、権力、財力。何の力も持たない者は簡単に淘汰され、死ぬ。前世の世界よりもこの世界は命が軽い、軽すぎる。

 俺は前世の俺のように死ぬのは御免だ。

 だが、幸いにも俺は力を手に入れることができた。いや、もっとだ。もっと力がいる。

 誰にも脅かされない強い「力」を持った存在。

 そうなるためにはレベルを上げるのが手っ取り早い。まずはこの辺のモンスターを倒していこう。


 そうだ、殺すんだ。



 殺されるくらいなら、俺は






 「何だって殺してやる」






 グゥ〜。



 ……とはいっても生きていくためには食べることが必要。腹ごしらえ大事。

 盗んできた外套の中に括り付けていた皮袋を2つ取り出す。片方の袋の中には干し肉が5個、もう片方には飲み水がいっぱいに入っている。もちろんこれも盗んできた物だ。

 袋の中から干し肉を1個取り出して齧る。


 噛めば噛むほどに旨味が溢れてくる。あいつらこんなうまい物をいつも食ってたのか。1個全部をゆっくり味わうように食べ、水を1口飲む。

 まだ腹八分目にすらなってないけど、残りはとっておくことにする。貴重な食料だ。我慢、我慢。


 残りの干し肉と飲み水を外套にしまおうとして、無限収納のスキルがあったことを思い出した。干し肉が入った袋を手に持ち、収納しろ〜と念じると一瞬で消えてしまった。

 仕舞えたのだろうか?

 今度は出してみようとすると、ステータスが開き、アイテムという欄が増えていた。アイテム欄を選択し、開くとポツンと1つだけ皮袋と記載されている。

 仕舞った皮袋をイメージしながら出ろと念じると仕舞う前と同じ手の上に現れた。

 これはいい。どんな物もこのスキルがあれば荷物にならない。今は袋が2つしかないけど、きっとこの先増えてくるだろうし。

 もう一度、【無限収納】を使って干し肉が入ったほうの皮袋を仕舞い、飲み水の入ったほうの革袋も仕舞った。


 さて、これからどうしよう。寝床は絶対安全なここがあるからいいとして、やっぱり食べるものと水場の確保かな。

 【異空部屋】は行ったことのある場所にしか出ることはできない。

 俺は村から出たことがないから、出れるのは転移した森か村しかないけど村に帰る気はない。出るなら森しかないけど、ここから出る時に危険な動物や魔物がいたらLv1の守護魔法だけでなんとかなるとは言い切れない。どうにかして外の様子を知ることが出来ればいいんだけど。


 それからしばらく考え続け、【ステータス操作】で使えるマップを思い出した。マップには地形を確認できるだけでなく、レーダーという周囲に何があるかを狭い範囲で探知することができる機能があった。

 レーダーを使って周囲を探ると、小動物などがいるだけで危険そうな動物や魔物はいない。

 あとは気絶してる間に何もないことを願おう。


 覚悟を決め、不安を拭えないまま元いた森に転移した。



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