018
ウッドゴーレムを狩っていったことでレベルが12に上がった。
スキルポイントを割り振り、氣力感知スキルをLv4にする。
俺よりも多く屠っていたネアリアのステータスも確認するとレベルが10まで上がっている。く
さすがやに単純な殲滅力では魔法のほうが上だった。
途中から俺を真似て核の場所を把握し、そこを正確に攻撃するようになると更にそれが顕著になった。
魔樹を食べていたフィノはお腹がいっぱいになると肩で大人しくしていた。
それ以降に手に入った魔樹はフィノが気に入ったそうなので、全て『無限収納』で仕舞っている。
しばらくそのままウッドゴーレムを狩っていると10数匹ほどのゴブリンの集団を見つけた。
ゴブリンウォーリアにメイジ、アーチャーなどの中に1匹だけよりがたいの良い個体がいる。
種族:ゴブリンジェネラル
レベル:16
状態:正常
スキル:【指揮Lv5】【剣術Lv4】【豪腕Lv3】【加速Lv3】
よく見るとこのゴブリンがリーダーのように指揮をとっていた。
「ネアの姿あいつらに見えないよね?」
『ゴブリン、雑魚、ネア、見えない。殺す?』
「まだ殺さない。俺とフィノも見えなくできる?」
『ネア、触ってる、見えない、できる』
触れたものは見えなくなるのか。
「じゃあ、フィノを連れてあいつらの上に待機。その後のことは念話で指示するから」
『ネア、了解』
念話は誓約を交わした精霊とは普通にできるし、契約した従魔とも相性が良ければできることがある。
俺とフィノの相性はかなり良い。それも従魔にフィノを選んだ理由のひとつでもあった。
ネアがフィノを抱いてゴブリン達の上へ飛んでいく。
本当に見えていないようでゴブリン達の様子は変わらない。
それを確認し、目の前に『シールド』を10枚張る。張った『シールド』を今度は『シールドムーブ』で動かしていく。気付かれないようゴブリン達の背後に移動させ、限界まで近付いたところで『シールド』を突撃させた。
「ゴゲッ!?」
ゴブリンジェネラルだけは何とか避けたが、他のゴブリン達は『シールド』で地面に押さえつけて動きを封じた。
避けたゴブリンジェネラルも無様に地面に転がることでぎりぎり避けられたようだ。
俺は転がったゴブリンジェネラルの上に『シールド』を張り、そのまま下へ叩き下ろした。
「ゴギャッ!」
さすがに転がったままでは避けられず、他のゴブリン達と同様にうつ伏せに押さえつけられている。
《フィノ、ゴブリン達に毒針発射》
《ピュイ!》
念話でフィノに指示を出す。
フィノの尻から毒針が次々に発射される。発射された毒針は上から押さえつけている『シールド』からはみ出た腕や足に突き刺さっていく。1匹、2匹とゴブリン達の状態が毒になり、苦しみもがいて死んでいく。最後まで残ったゴブリンジェネラルも毒が回り、息絶え、ゴブリンの集団は全滅した。
【守護魔法Lv4】呪文『シールドムーブ』が派生、『シールドバッシュ』を習得
さっきの押さえつけで習得したようだ。
本来は『シールド』をぶつけて相手の姿勢を崩したり牽制に使うのだろう。
戻ってきたフィノはレベルが8まで上がっていた。
そのフィノはネアの腕から俺の肩に飛び移り、褒めてほしそうにこちらを見ている。
「ご苦労様」
「ピュイ」
労いの言葉をかけ、指で撫でると頭を擦り付けてきた。
フィノと戯れているとネアが無言で頭を押し付けてくる。押し付けられたそれを少し乱暴にわしゃわしゃと撫で回す。
『えへへ』
お気に召したようで何よりだ。
「次、行こっか」
『行こ、行こ』
「ピュイ」
そのままウッドゴーレムを狩っていてもよかったのだけれど、多少興味ひかれるモンスターがいたためそちらに移動する。
今から向かう場所にいるモンスターはジャイアントベア。ただし、この前の上位種ではなく通常種だ。あれの元がどのくらいのモンスターなのか見てみたいと思った。
通常種と上位種がどのくらい違うのかも気になる。ネアリアの場合は出会ってすぐに上位種になったから差がよくわからない。
遠くに大きなモンスターの姿が視界に入った。
向こうもこちらに気付いたようですぐに突進してくる。
種族:ジャイアントベア
レベル:20
状態:正常
スキル:【豪腕Lv4】【頑丈Lv3】【気配遮断Lv2】【嗅覚感知Lv2】【威嚇Lv2】
上位種より10もレベルが低い。大きさもひとまわりは小さい。
以前のように身体がすくんで動けなくなるといったこともない。
『グリム、熊、来るよ?』
「うん。今回も俺ひとりでやるから見てて」
『大丈夫? 大丈夫?』
「大丈夫」
フィノは肩に乗せたまま、数歩前に出て向かい撃つ。
突進してきたジャイアントベアが右腕で攻撃してくる。大振りのそれを脇を通り抜けるように回避した。
遅い。見切りスキルでも完璧に躱しきれなかったあの速さがない。
これが上位種と通常種の差かレベルからくる差なのかはいまいちわからないけど、こいつの攻撃なら当たらない。
何度も、何度も攻撃を近距離でかいくぐり、苛立ちと疲れが溜まるのを待つ。
目に見えて攻撃のキレが無くなってきたところでこちらも攻めに転じる。ジャイアントベアが腕を振るってきた攻撃、その力の向き、速さ、奴の体勢を見定める。迫ってきた腕を避け、今度はその腕を掴む。攻撃の勢いをそのまま利用する形でジャイアントベアを投げた。
武術書にあった、相手の力を自分の攻撃力に変える戦い方だ。
「グガアァァァァァ!」
数回、同じように投げ飛ばして地面に叩き付けてやったのにまだまだ倒れる様子がない。
重量のある相手なだけにそこそこ効いていると思うけど、頑丈スキルで外側から受ける攻撃には強いのだろう。
攻め方を変える。攻撃を躱した後、投げ飛ばすのをやめ、『氣動法』で顔の前に移動する。顎目掛けて『集氣』を使った蹴りを放った。正確に顎を捉え、仰け反らせることはできた。
まだ足りない。
『シールド』を足場に使って再度『氣動法』で背後に回る。仰け反ったことで目の前にある頭部に手を添え、全力の『貫氣』を放つ。低く響く音と衝撃の後、ジャイアントベアの目から鼻から口から血が吹き出した。
背中を蹴って飛び退くとジャイアントベアがゆっくりと倒れ、辺りに土誇りが舞う。
死亡を確認すると緊張が解け、後ろに倒れ込んだ。
倒れる途中でネアリアに支えられそのまま抱きしめられる。
『グリム、疲れた?』
「ちょっと氣力使い過ぎた。すぐ回復させる」
『促進』での回復も慣れてきたことでより早くできるようになった。立って歩くくらいはすぐできるようになるはず。
『本当、グリム、すごい』
「そうかな」
『臆さない、強い、意思、グリム、中、ある、わかる』
「スキルの効果だけどね」
『それでも、格好、良かった、よ?』
「……ありがと」
寄りかかっていた姿勢から自分で立ち上がる。
「ピュイピュイ!」
肩にいたフィノも今の戦いを賞賛してくれた。
「フィノもありがと。大丈夫だった?」
「ピュイ!」
フィノも特に問題なかったようなのでジャイアントベアの死体を確認する。
上位種の黒い毛色に対し、茶色の毛皮は傷もなく綺麗なものだ。
死体を仕舞うと次のジャイアントベアがいる場所へ移動する。
ネアリアもひとりでやるらしい。
ジャイアントベアを見つけると歩いて近付いていく。遠距離から魔法で仕留めないのか。
しかも、どうやらジャイアントベアに自分の姿を見せているようだ。
攻撃の射程に入ったジャイアントベアが俺の時と同様に腕をネアリアに向けて振るう。いつでも守護魔法で防御できるようにしていたがいらぬ心配だった。振るわれる腕はことごとく空振り、かすりもしない。
「ピュイ」
「うん、綺麗だね」
すべてを躱すネアリアはまるで優雅に舞う踊り子のように見えた。
疲れたジャイアントベアの大振りの攻撃を懐に潜り込むように躱す。直後にネアリアがふわりと浮かび、片手をジャイアントベアの頭部に添えて倒立した。その手には渦を巻くように風が集っている。
『ストームインパクト』
ネアリアが呪文を唱えた。
集っていた風が勢いよく渦巻き、ジャイアントベアの頭部に流れ込む。次の瞬間、頭部だけが爆散した。
頭を失ったジャイアントベアは当然即死だ。
それをやったネアリアは何故かしょんぼりした様子で戻ってきた。
『失敗、した』
「失敗?」
『魔法、威力、出過ぎ。制御、失敗』
あの爆散は予定外だったのか。
『ネア、グリム、みたい、やりたかった』
「俺みたいに?」
『うん。グリム、相手、動き、先、読む、上手。ネア、真似、できる、思った』
俺のは見切りスキルがあってこその先読みだ。スキルなしでどうやったんだろう?
『ネア、グリム、みたい、相手、動き、見る、だけ、先、読めない。でも、空気、流れ、読む、相手、動き、先、わかる』
つまり、疑似見切りスキルってところか。
『グリム、おかげ、魔力、上がった、けど、大きい、力、完璧、扱う、難しい』
まあ、確かに自分の持つ力を習熟させるのは大切だ。武術書にも、使いこなせない強力な力は熟練された弱い力に劣るとあった。
『グリム、魔力、使う、無駄、ない、制御、完璧。ネア、それ、できる、なりたい』
自覚はないけど精霊であるネアリアが言うならそうなのだろう。
「ネアならできるよ」
『うん、ネア、がんばる』
俺もさらにスキルを使いこなせるようにならなければと改めて思った。
首のないジャイアントベアの死体を仕舞い、日が落ちてきたので異空部屋に帰るべく転移した。




